紙の本
アメリカ現代文学の一面
2019/06/12 23:13
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
9・11は当時多くのアメリカ国民に恐怖を与えたが、テロの危機という圧倒的現実を前にアメリカの現代作家たちがどのように文学と向き合ったのかがよくわかった。作家たちも試行錯誤を繰り返しており、決して正解の出る問題ではないが、アメリカの文学の営みの一端を知ることが出来てよかった。
また、9・11を題材にした作品だけでなく、アメリカの戦争文学の歴史についても触れており、大変勉強になった。
紙の本
テロと文学の戦い
2018/05/19 07:23
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
同時多発テロ以降扉を閉ざしてきたアメリカ社会について考えさせられました。文学によって、自由を取り戻す強い意志を感じました。
紙の本
どの立場から描くのか
2022/12/31 17:15
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投稿者:amisha - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある人曰く、インド側から書かれた文学はけっこうあるが、パキスタン側から書かれた作品はあるのだろうか、邦訳となると非常に少ない気がすると。
確かにそうかもしれない。私たちはなんだかんだいっていつもアメリカやヨーロッパのメディアを通して目の前のニュースを見ている。アルジャジーラの英語ニュースや、シンガポール放送などもあるが、なかなかそこまで辿り着く人は少ない。
このような視点の文学が増えては欲しくはないが、多面的な切り口で物事を捉えるのに文学は必要である。
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日本を代表する米文学者・上岡伸雄先生の名著。複雑化しているアメリカと中東との関係性やテロの問題を、文学という切り口で多角的に論じている。第1章から終章まで、一分の隙もない緻密な論理展開で構成されており、一冊の本として非常に完成度が高い。本書の結論に当たる部分は、文学の力を切々と訴える名文である。
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著者は、2012年9月から2013年3月まで米国ニュージャージーの大学に滞在した米文学者。そこでの研究テーマは「9.11テロ事件後の文学」。
映画化され、日本でも公開になった『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』をはじめ、9.11を扱った小説を取り上げて、テロに対して文学に何ができるかを検証している。かつてピカソが「芸術は飾りではない。武器だ」と語ったとされているが、著者のインタビューに応じた作家たちからはこの文学版とも言える言葉があふれ出る。「歴史において、人生において、われわれの時代を反映する最も強力な没入型の方法は今でも文学」「文学は他者の経験に共感するような形で関わる機会を与えてくれる」
なにも9.11に関わる文学でなくても到達できそうなポイントではあるが、読後に残ったのは文学が持つ強さや永続性。もちろん、9.11ならではの指摘、すなわち、アラブ系やパキスタンの作家が描いた9.11の視点や、徴兵制がなくなった後の戦争小説の質の変化など、興味深いものもいろいろある。しかしながら、読後にもっとも強く残ったのは、やっぱり小説を読み続けようという思い。中途半端なビジネス本を3冊読むよりは良質な小説を1冊読みたい、と常日頃思っているのだが、その意をますます強くした。
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いろいろな意味で9.11は世界を変えてしまった。ジェット旅客機がツインタワーに突っ込む光景は、あの時代に生きていたすべての人の脳裏に消すことのできない光景を焼き付けている。
たまたま9.11の10日前に僕はニューヨークのマンハッタンにいたし、10年後の2011年にもニューヨークに住んでいて、そこで働いていた。このブクログの自分のアイコンも当時ニューヨークで見つけた絵を使っている。ニューヨークにとって9.11は今でも消すことのできない悪夢だ。
この本は、9.11後の各作家たちが描いた小説を紹介している。アメリカ人作家だけでなく、イスラム圏の作家の小説も紹介しており、いろいろな角度から小説を紹介している。
残念ながらここに紹介された小説は翻訳ものも含め一つも読んだことがないが、ぜひ、読んでみようと思う。とりあえず下記の書いたのを優先的に・・・。
○9.11の当日を描いた『墜ちていくゆく男』ドン・デリーロ著
○9.11で父親を失った少年の心情を描いた『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』ジョナサン・サフラン・フォア著
○9.11メモリアルを建設する際の人々の葛藤を描く『サブミッション』エイミー・ウォルドマン著
○9.11の現場に駆け付けた警察官が精神の均衡を失っていく状況を描いた『ザ・ゼロ』ジェス・ウォルター著
○イスラム圏にルーツを持つ青年が住んでいるアメリカに幻滅していく状況を描いた『コウモリの見た夢』モーシン・ハミッド著
○一兵士の視点から描いた『一時帰還』フィル・クレイ著