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謹聴、謹聴。乱歩翁、海外探偵小説について大いに語る
2004/08/12 20:50
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
1951年(昭和26年)刊行、探偵・推理小説の巨星、江戸川乱歩の評論集です。
読み進めながら、「奇妙な味と称されるミステリー、特にその手の海外ミステリー短編へ私を導いてくれたルーツは、この書の中にあったんだな」と、改めてそう思いました。
本書の中の、「英米短篇ベスト集と〈奇妙な味〉」の一章。ここで取り上げられ、乱歩翁がその「奇妙な味わい」について語っている短編群は、創元推理文庫の『世界短編傑作集』の5冊に収録されているんですよね。中学生の時、そのアンソロジーを読んで、「へえっ。海外には、こんな味わいの小説があるんだ。がつんと一撃食らわせられたり、ぞくぞくさせられる妙な味わいがあったりして、面白いなあ、これは」と感じた当時の気分が、なつかしく甦ってきました。
戦後間もない昭和20年代。海外の探偵小説、怪談作品を興の赴くまま、あれこれと読んでいった乱歩翁。
その作品のどの辺が面白かったのか。この種の探偵小説(今で言うところのミステリー小説)のジャンルとしての味わいは、どの辺にあるのか。この作品とあの作品を比べてみると、探偵小説としてどちらがより魅力的だろうか。
といったことを書かずにはいられない、そんな気持ちで熱を込めて書き綴っていく乱歩翁。幻影城の主の、探偵小説への愛着と熱意が、行間からひたひたと伝わってきます。
ただし、取り上げた探偵小説の話の筋、トリックの妙味などをかなり詳しく語っているところがあるので、クラシックな海外ミステリー、特に本格作品をまっさらな気持ちで読んでいこうと考えている方には、不向きの評論集かもしれませんね。
でも、私にとって本書は、小泉喜美子さんの『メイン・ディッシュはミステリー』(新潮文庫 ※絶版。なんでなんだあ!)とともに、最もシンパシーを感じる海外ミステリーの評論・エッセイ集です。
乱歩翁が住まう「幻影城」が今でもあったなら……門番か、できれば執事として雇ってもらいたい、そしてこうした夏の夕べ、時には城主と探偵小説について言葉を交わすことができれば……うーん、なんて贅沢なひとときだろう。
本書の頁をめくりながら、ふと、そんな「夏の夜の夢」を見ていました。
あっ、言い忘れるところでした。江戸川乱歩の作品に愛着がある方、もっと乱歩のことを知りたくなかった方、そんな方におすすめのムック本があります。
『文藝別冊 江戸川乱歩——誰もが憧れた少年探偵団』(河出書房新社 2003年刊行)。国内の探偵小説のこちらも巨星のひとり、横溝正史に宛てた乱歩の書簡も掲載されています。
批評家乱歩
2004/03/07 17:25
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投稿者:けんいち - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸川乱歩という人は、自身推理小説作家であると同時に、その優れた読み手でもあった。もちろん、こうした事態は、あまたいる作家に多かれ少なかれ該当することかもしれないが、乱歩の場合は、事態がいささか本格的である。
そもそも、日本における推理小説というジャンルが、ヨーロッパの推理小説の文法(骨格)を学びながら成長してきたことを考えれば、何度かの旧筆を挟みながらも、乱歩が長い推理小説作家人生を歩んでこれたのも、そうした読者としての徹底した勉強があったからだと思われる。その上、乱歩には収集癖と分類癖があった。そのことは、本書を一読するだけでも明らかだが、それが単なる「癖」にとどまらず、血肉化したものであったことは、本全集の小説群が鮮やかに示すことになるだろう。
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