小倉昌男 祈りと経営 ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの
2016/02/24 13:18
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:如水 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヤマト福祉財団を小倉氏から直接創れと命じられたものとして、懐かしく読ませて頂きました。
どの様な財団を創るのでしょうか?「障害者の雇用促進ですか?」それとも「障害者と健常者が一緒に生活できる社会環境創りですか?」とお聴きしましたら、即座に後者だと答えられました。それでは、所轄は、厚生省で宜しいでしょうか?「それで宜しい。」と言われ、申請書類等準備するのに1年程掛かりましたが、申請後3ヶ月で認可されました。
最初は、持ち株を全てを寄付すると言われましたが、200万株で基本財産として申請できますと言ったことを思い出しました。
家庭の不幸は諸悪の本
2016/10/08 09:52
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「家庭の幸福は諸悪の本(もと)」と言ったのは太宰治だが、家庭にはそもそも幸福ばかりがあるのではない。
どんな家庭であっても色々な問題がある。それが家庭という極めて個人的な単位がゆえに表面に出ないだけだ。
「お金や仕事、怪我や介護といった表面的に明らかなものもあれば、感情的な仲違いや性格の不一致、そして外部にはわかりにくい精神障害の問題もある」。
公的な立場があればその立場で毀誉褒貶もあろうが、いったん家庭の中に入ればそれは踏み込んではいけない世界となる。
この本は一人の経営者の入り込んではならなかったはずの家庭の姿をえぐりとった衝撃の一冊である。
小倉昌男。いうまでもなく宅急便の生みの親であり、ヤマト運輸の元社長である。近代の名経営者の一人でもある。
亡くなったのは2005年6月。覚えている人もあろうが、小倉は日本国内でなくアメリカの地で亡くなっている。
おぼろげな記憶であるが、私もなんだか変だなと感じたものだ。
小倉昌男のような人であれば大々的に送られてもよさそうなものだ。
ノンフィクション作家の森健もそこに小さな違和感を持った。そして、その理由を訪ねる旅に出る。
本書はその報告書だ。
結論からいえば、名経営者と称賛された小倉昌男にも人には言えない家庭の事情があった。もちろん、その事情を知っている人たちはいたが、そのことを広言することはなかった。
家庭とは重い鎧を被っているようなもの。
そのことを明らかにすることは、果たして私たちに許されているのだろうか。
つらく、重い、ノンフィクションである。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ももたろう - この投稿者のレビュー一覧を見る
感想を軽々しく言葉に出せない重い内容。
私自身、子どもや親や家庭に深く関わる仕事をしてきた。
仕事の報酬が高かったせいであるが、世間の目でみれば裕福で恵まれている家庭ばかりだった。
しかし、中に入ってみると、実に様々な問題があった。
問題のない家庭はなかった。
「うちは幸せですよ」と強調する家庭もあったが、「もし、本当にそうなら、まだ問題が起きてないだけですよ」と私は心の中で言った。
あのクロネコヤマトの産みの親である小倉昌男さんの家庭の真の姿を知り、
涙なくしては読めなかった。
詠み終えてから表紙の写真を見ると、
そこには深い悲しみと諦めと悟りがあった。
ただ、息子さんと娘さんの生きていく先が希望に満ちているようで、
心が軽くなった。
家族や友人など大切な人に読ませてあげたい。
投稿元:
レビューを見る
小倉昌男と言えばヤマト運輸を創設した名経営者という印象が強いが、本書は経営者という一面ではなく、素の小倉昌男という人物面が強く滲み出たものとなっている。
妻や娘とのやりとり、そしてその中で起こる内面の葛藤。先立たれた妻と残された夫、そして寄る辺のない娘との距離感。そういったものが至る所に散りばめられ、一人の人間としての小倉昌男について思惑をめぐらさずにはいられなかった。
当時の時代背景や立場ももちろんあるのだろうが、一時代を築いた人もやはり一人の人であり、その中でもがき苦しみながら日々を過ごし、また生きていかなければいけない人間としての宿命。本書は、それに対する意味を嫌が応にも考えさせられる作品となっている。
投稿元:
レビューを見る
3-4時間で一気に読みました。
稀代の経営者の知られていない物語。「なぜ福祉事業を始めたのか?」という筆者の疑問から壮大なストーリーが始まる。傑作です。
※改めて小倉昌男さんの「経営学」を読み返そうと思います。
投稿元:
レビューを見る
これはこれで良かった。感激を受けるかどうかと正しいかどうかは別にして、これはこれで感激を受ける。
どんな宗教かはさておき、家族だとか愛だとか、なにかを慈しみ祈ることは人として大事なことだと思う。
ただ、私には論理しか祈るものがないから、論理的にしか祈れないけどね。つまり、論理的であることでしか祈りは存在しない、ってことなんだけどね。
投稿元:
レビューを見る
『経営学』『福祉を変える経営』を以前に読んで
非常に感銘を受けました。また、赤坂の日本財団の
スワンカフェをよく利用させてもらっています。
そんな小倉氏の半生や、なぜ宅急便の生みの親であり
官庁と規制と闘う伝説の経営者が障害者福祉。とくに
精神障害の人々の社会的自立を目指した活動に没頭された
のかという謎をたどっていく内容です。
ある意味感動する内容です。
これらの内容を読んで、小倉氏のことをより尊敬する
気持ちが強くなりましたが、少しだけ境遇が似ている
との思い込みから、こういう人になりたいと思いました。
恥ずかしいくらいおこがましいことではありますが。
『サービスが先、利益は後』『障害者に月10万円の収入
を』に続いてこの本での、子どもや奥さんに対する
深い愛や贖罪。立場の弱い人々に対する思いや、
そこからくる精神障害の方々への思いなど、強く心に
残る内容です。
4月2日の世界自閉症啓発デイに読み終えました。
またスワンカフェを利用させてもらいます。
投稿元:
レビューを見る
宅急便で成功する陰に家族の犠牲があった。その贖罪のため福祉の仕事に晩年を障害者にささげた人生はクリスチャン以前の小倉昌男の生き方なのだろう。
小倉昌男の愛情深さと心の強さ弱さがよく出た作品でした。
投稿元:
レビューを見る
小倉昌男は取り上げられすぎてるし、どうしようかと思ってたがこれは買い。すこし都合の良い解釈な気もするが、しかし、できた人に苦難が襲うとは…とも言えるが、きちんと消化して世のために動ける人を選んで苦難が襲ったとも言える… なんとも畏敬の念は強まる。
投稿元:
レビューを見る
衝撃の一冊でした。小倉昌男経営学に続くビジネス書かと思いきや、社内の者でも知りえない小倉昌男のプライベートでの戦いが赤裸々に綴られています。最近特に感じるがどのような人でも必ず影の部分がある。その影との向き合い方について考えさせられます。
筆者の書き味としてはノンフィクションのサスペンスのように引き込まれます。それにしてもよく調べてあります。
投稿元:
レビューを見る
46億円という全財産を財団に献げてまでの障害者福祉事業への情熱、法を守っての行政の規制緩和を勝ち取る闘い、法を守らない佐川清から宅配便ニーズのヒントを得、占部都美氏が著した「危ない会社」からの立ち直り。会長時代に2年間、”毎日“教会へ通って祈りを捧げ、カトリックへの改宗、早世した妻への愛。穏やかな人間性が驚き。一方、長女真理のわがままに振り回され、精神的に崩壊した玲子も抱えた家庭の地獄、後年の真理と黒人ダウニィとの孫への愛情。今では自らを境界性パーソナリティ障害だったと語る真理。小倉の福祉への情熱の源泉でもあったのだ。これが小倉の没後もヤマト福祉財団に継承され、2011年の東北大震災では143億円の寄付に及んでいく。妻の死後、「土曜日の女性」遠野久子との絆は晩年の小倉にとっての救いだったことがほのぼの伝わってくる感動を呼ぶ!
投稿元:
レビューを見る
宅急便の創始者であり、日本のロジスティクスを変革し、ヤマト運輸をここまでの大企業の育て上げた名経営者、小倉昌男。彼は障がい者雇用や福祉活動にも積極的だったことで知られているが、福祉活動に入れ込んだその動機は何だったのか。
ノンフィクションライターの著者は小倉本人が自伝などでは決して明かさなかった何かがあるのではないかと思い、関係者への調査を続ける。その結果、彼が抱えていた苦悩の存在が明らかになる。
本書では、最終的に小倉昌男の長男・長女の二人のインタビューにまで成功し、彼が抱えていた苦悩を描きだすことに成功する。その結果、本書を通じて優れた経営者として成功を収めた彼の人間的な側面を痛切なまでに感じ取ることができる。
最終章で長女が新たな生き方を見つけて進もうとする様子が描かれるが、これは小倉昌男の意思を自ら継いでいこうとするコミットメントとして、深い感動を呼ぶ。
投稿元:
レビューを見る
新聞の書評欄で紹介されていたので手に取ってみました。
本書は、理不尽な規制権力に立ち向かった闘士としての稀有の経営者「小倉昌男」氏の知られざる一面を明らかにした著作です。
ここまで踏み込むか・・・、私としては、個人のプライベートを露わにするジャーナリズムの姿勢に諸手を挙げて賛同するものではありませんし、またその伝えられる情報には玉石混交の観があると考えていますが、本著作の筆致は徒にセンセーショナルに煽るでなく、対象に寄り添おうという心が感じられる至って穏やかなものでした。
投稿元:
レビューを見る
後日、著者の森さんと会食する機会があっていろいり取材話をきいた。で、オチになるので詳しくはいえないが、クライマックスの話をきく米国に西海岸の海辺ってどこですか?ってきいたらなんとレドンドビーチ。ここはくしくも自分の人生の転機になるような大事な話、数日をすごした場所でもある。レドンドビーチという場所は、人を素直にして話をさらけだせるなんともいえない力をもった土地だ。
投稿元:
レビューを見る
クロネコヤマト宅急便で知られる、ヤマト運輸の元社長・会長であった、小倉昌男氏の生涯を伝える、ノンフィクション。小学館ノンフィクション大賞受賞。
日本で初めての、個人から個人への宅配サービスを始め大成功を収めた小倉氏の、事業の成功と私生活の失敗、クリスチャンとしての生き方、引退後の慈善活動などが描かれている。もともと由緒正しい家の出で、東大に行き、親が創業した事業を受け継ぎ発展させ、人柄はまったく派手さがなく、誠実そのものだという。
一方、家庭は家族の病気などで崩壊し、自分を責め懺悔の日々を送る。お金がうなるほどあっても、幸せとは限らないのだな、と皮肉にも感じる。本書は、小倉家の恥部とも思えるプライベートなことを、小倉昌男を直接知らない著者がディスクローズしてしまっているが、いいのだろうか。家族に会ってはいるようだが。
妻が死んでから面倒を見てくれた女性の件も、考えさせられた。現在の日本では、やはり籍を入れていないと、最期に立ち会うことはできないのだ。
小倉氏のことを手放しで称賛するだけではなく、フェアな視点で書かれた本ではある。
次に帰国したら、スワンベーカリーに行ってみよう。