その日暮らし、に惹かれて
2023/07/21 09:37
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投稿者:佐々木 なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ズバリ「その日暮らし」というフレーズに惹かれました。
ピンときました。
究極の「その日暮らし」を探して、
著者の小川さんは海外のあちこちへ出かけます。
そのうちの一つ、アマゾンの奥地住む狩猟採集民ピダハンのエピソードが特に印象的でした。
ちょっと引いてみますね。
「彼らは直接体験したことのない他の文化に興味がなく、自分たちの文化と生き方こそが最高と思っており、(中略)
彼らはよく笑う、
自身に降りかかった不幸を笑う、
過酷な運命をたんたんと受け入れる。
未来に思い悩むわたしたちにくらべて、何やら自信と余裕がある。」
ピダハンのその日暮らし。
何やら自信と余裕があるその一人ひとりの笑顔が脳裏に浮かんでくるようでした。
〜その日その日を生きている〜このあたりまえを実感すると、
いつも見ている景色も変わってくるというもんです。
この思いが熱いうちに、タイミングよく会えた友だちに
「この本、すごくよかったよー」と紹介しました。
そうして、私はその場で、彼女からおすすめの絵本を紹介してもらい、お互いにメモメモ。
こうして読書の輪が広がっていくのが,なんとも幸せ。
読みたい本がいつもある。
これはその日暮らしの日々の積み重ねであってもうれしいものです。
資本主義の根源を覆す
2016/07/19 22:41
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投稿者:こけさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
マックス・ウェーバーのプロテスタンティズムと資本主義の精神を覆してくれると期待してしまう。しかしよく考えてみると、未開民も経済的合理性に基づいて行動しているわけであり、それも広義の資本主義と考えればその通りの話である。でも、未開民が先進諸国のようになっていないのは、そのような資本主義を越える何かを持っているのだろうとも考えられ、それは何なのか是非とも読んで知りたいと思う!
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投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る
リセットさせてくれるのが人類学の読み物のいいところだと思うので、こういう本は大歓迎です。ぜひ、今後もガンガン書いていただきたいです。
アンチアベノミックス
2016/10/01 17:57
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投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
所得意識が未発達な非経済人には貧困は発生しない、騙しを含む実践知によりそれぞれの局面をうまく切り抜け結果としてそのときに約束を守れた人が信頼できる人、よく壊れる製品は不経済だが高すぎる製品は意味が無い、必要に迫られるまで買わない。生きるための生活力を感じさせる書。
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“日本製は高いけど長持ちするから長い目で見たら日本製の方が割安だよ” この理屈、Living for Todayの人には響かない。彼らはすぐ壊れると分かっていても安い中国製を選ぶ。その日暮らしの論理とはそういうもん。
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文化人類学:
この世界に存在する、わたしたちとは異なる生き方とそれを支える知恵やしくみ、人間関係を明らかにする学問である。わたしたちの社会や文化、経済それ自体を直接的に評価・批判するよりも、異なる論理・しかたで確かに動いている世界を開示することで、わたしたちの社会や文化を逆照射し、自問させるという少々回りくどい方法を採る学問ともいえる(P.25)。
本書のねらい:
わたしたちの社会で支配的である未来優位、技術や知識の蓄積にもとづく生産主義的・発展主義的な人間関係に問いを投げかけること(P.25)。
所感:
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評価の難しい本。純粋な人類学的フィールドワークの本としては非常に面白いが、その先の「その日暮らし」を肯定的に描こうとする部分で引っかかりを感じる。
私は経済学的に読んでしまったが、資本が蓄積されていない市場において、売り手の個人がとる戦略のパレート最適は二つあって、一つは先進国がとったもので「協調して資本を蓄積しその資本を集中的に投入して拡大再生産していく」、というもの。もう一つが本書に描かれている「その日暮らし」。何が起きるのかわからないという事態には時間軸でも分野でも徹底したリスク分散をはかる。本人たちが意図しているかどうかは別として、状況にあった生き残り戦略である。
ふむ。それだけで充分ではないか。なにか高貴な野蛮人の暮らしぶりから学ぼうとするのはオリエンタリズムではないか。
中国製品や中国人にたいするアンビバレントな感情(安いコピー品はありがたいが信用ならない)の説明ロジックも面白い。批判するくせに益だけはいただこうという言葉がブーメランにならないロジック。
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<目次>
はじめに
プロローグ Living for Todayの人類学に向けて
第1章 究極の Living for Todayを探して
第2章 「仕事は仕事」の都市世界~インフォーマル経済のダイナミズム
第3章 「試しにやってみる」が切り拓く経済のダイナミズム
第4章 下からのグローバリズム化ともう一つの資本主義経済
第5章 コピー商品/偽物商品の生産と消費に見るLiving for Today
第6章 <借り>を回すしくみと海賊的システム
エピローグ Living for Todayと人類社会の新たな可能性
<内容>
Living for Today(その日暮らし)のアフリカ、タンザニアの事例を基に、我々先進国がやっている資本主義とは違う経済が回っている様子を描く。そこは我々から見ると、「かわいそうな」「世も末」な生活をしているのかというと、そうではなく、従来の経済体制に新しいスマホなどを利用した決済サービスなどを利用しつつ、でも人対人の活動の中から、生き生きと生活をしている様子が見て取れる。その話とそこで売られている中国の「コピー/偽物」商品を介在しつつ、この経済システムも「あり」なのではないか?むしろ現在の世界の中で、主流なのではないか?と問う。
思ったのとはちょっと違ったが、結局グローバル化、IT化がどんなに進んでも、おそらく生き残る人々は、コミュニケーションが豊かで、図々しく、たくましさを持った人々なのだと思った。それは日本は主流派ではないのだろうな、と感じた。
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我々が当然のごとく依っている資本主義経済には馴染みのない様々な価値観を持った形態が存在している。多様性という言葉の重要さを改めて覚えるとともに、日々あくせく働いて立ち止まることを忘れがちな読者には目から鱗の一冊。
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「子ども時代に豊かな暮らしを両親から与えられ、学校に通え、大人になって良い仕事を得た人がある日とつぜん仕事をクビになると、身動きがとれなくなってしまう。だが行商人は違う。商品をすべて盗まれても、翌日から歩き始める。そんな経験には慣れっこだからだ」(衣類の路上商人、男性、30歳)(p.68)
タンザニアの都市民の仕事に対する姿勢や態度は、生存の危機感のうえに成立している。生き馬の目を抜く中国に挑戦する姿勢にある種のサバイバル意識が通底している。だが、「前へ前へ」の行き方は、危機に直面した不透明な世界でみずからを見失っている状態を意味しない。むしろ、ままならない他人や状況にゆだねるからこそ得られる喜びや苦しみがあり、それでも生きているという自身に誇りを、自分を生かしている社会的なものに確信を持っているように思われる。(pp.123-124)
わたしが長年、調査してきたタンザニア都市住民は、即応的な技能で多業種を渡り歩くジェネラリスト的な生き方をしており、また「一つの仕事で失敗しても、何かで食いつなぐ」「誰かが失敗しても、誰かの稼ぎで食いつなぐ」という生計多様化戦略を採っていた。彼らにとって事業のアイデアとは、自己が置かれた状況を目的的・継続的に改変して実現させるものというより、その時点でのみずからの資質や物質的・人的な資源に基づく働きかけと出来事・状況とが偶然に合致することで現実化するものであった。このような仕事に対する態度には、均質的な時が未来に向かって単線的な道筋を刻んでいくという近代的な時間とは異なる時間が流れていた。
不安定で不確実な生活は、人びとに筋道だった未来を企図することを難しくさせるが、代わりに好機をとらえ、その時々に可能な行為には何でも挑戦する大胆さをも生み出す。(pp.216-217)
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研究者のみならず、アフリカの人々と関わったことのある人ならあるある感を共有できる内容。
本書を読み終わって、それではビジネススクールなどでこうしたインフォーマル経済の場に参戦する術を指南することは果たしてニーズや意味があることなのだろうかと、ちょっと気になったしまった。
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人間は未来に向かって進んでいく生き物だ。モノを蓄えることで未来へのリスクに備え、技術や知識を蓄えることで将来の発展を促す。
確かにそれはそれでいいことなんだけど、そんな未来志向的な考え方とは別に、現在を楽しく生きる、未来のために現在を犠牲にしない生き方もあっていい。「その日暮らし」という言葉はなんとなくネガティブなので、著者は「Living for Today」という言葉を使い、「3・11」以降、将来のぼんやりとした不確実性に対しての有効性を説く。
今でも発展途上国や原始民族社会では「Living for Today」の考え方が当たり前。だからといって、彼らは不幸で同情される存在ではない。むしろ、将来への不安を考えない点では幸せなのかもしれない。
要するに、将来のため「現在」を犠牲にする考え方はほどほどに、ってことだ。
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ニートの本だと思って読む。わりと読み応えのある文化人類学の本だった。アフリカで「その日暮らし」をする人たちを丁寧に解説した図書。テーマは「Living for Today」。その日暮らし。インフォーマルな経済がどのようなものか知った。挑戦とか転職とかとてもやりやすそうな経済だ。
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新書にしては文章が固く、専門書を読んでるような気分になりましたが、なかなか濃い内容でした。
アフリカ(タンザニア)がメインのケーススタディなのですが、そこでは社会のインフラが整っていないため、「長期間にわたって同じ会社に勤める」という選択肢がほとんどない。
結局、零細商人として、その日暮らしの商いで生計を立てる人が多くいる。
零細商人というのは、例えば、中国製の安かろう悪かろう的商品やコピー商品を仕入れてきて販売するような人たちです。
で、何が売れるか?というのを常に見てるわけで、「これが行ける!」と思えば、それに飛びつく、でもその「売れそうな商品や販売手法」のノウハウをすぐ親戚友人に教えてしまうから、あっとう間にレッドオーシャンになり、また次に売れる商品を探すというのを繰り返すそうです。
なんで他人にすぐ教えるの?と聞くと「え、教えないなんてことは思いもつかなかった」「どうせ隠してもすぐ広まるししょせんおんなじ」などという返事。
つまり、シェアしないというのは、人間としてよろしくない文化みたいです。
基本自転車操業の生活なので、お金に困ることは多々ある。
で、親戚友人にお金を借りることになるが、必ずしも返さない。
前回手元にお金があるときに、友人に貸して、今回自分が困窮したからお金が必要になったとしても、かならずしもその友人に取り立てにはいかない。
その時、お金をもっていそうな人に借りに行く。
そうやって、貸し借りのサイクルが回っている感じ・・・。
彼らはそういう生活をしていることで、「売れるものを見つけ、販売するスキルが身につく」と考えてるし、何があっても他人との関りで何とか生きていける感覚を得ている。
起業家の人ってこういう感覚があるのかも、という気がします。(←想像ですけど)
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積読になっていたまま寝かせたままだったので、思い立って急ぎ読了。タイトルにある「その日暮らし」=Living for Today で生きるアフリカの人々へのフィールドワークを示しながら、グローバル化によって生まれた「インフォーマル経済」を描く。