ぶっ飛び感が愉しい。
2024/01/31 19:22
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投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
書題は『法哲学入門』。法律とその哲学について述べられた一書か・・と。確かにそうです。ですが、読了した所、何となくハチャメチャ感が横臥している様相でした。
読み易さというか親近感が湧くのは、紹介事例が現代のネタであるからだという事。逆に硬いなと感じるのは、曲がりなりにも哲学の要素が刻み込まれているからだという事。事実、本書では飽くなき程に洋の東西の古典著書(哲学だけではなく)からの引用が盛り込まれています。
法哲学というと案外聞き慣れないものですが、本書から窺う限り得体が知れないような印象を受けました。それだけに汎く拡がりを見せる雰囲気があります。
かなりの数の著書が引用されている為、興味が湧いた本は個別にチェックをしました。是非読んでいきたいと思います。
思想史の様相を呈しています
2017/06/05 05:15
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投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「法哲学とは何か」という学問分野としての根拠となるべき定義が確立されていないこと、つまり、そもそも『法哲学』なる学術分野が成立するのか否か自体があいまいであるという認識からこの入門書が始まります。西欧的科学の理解の観点から見ると、この時点ですでに『法哲学』は独立した分野として成り立っていないと思いますが、何はともあれ『法哲学』の名の下に、多種多様な考察がなされてきたので、そのぼや~っとしたくくりとも言えないくくりのための入門が本書ということになります。
著者の言葉を借りれば、「法哲学には「概説」などというほどの共通の基盤などはどこにもない。本書は、法哲学「入門」と題したが、この門が正門か裏門か脇門か、この門の中が法哲学の本陣か別宅か、わかりはしない。」だそうです。
「哲学」は非常識の世界に、「法学」は常識の世界に属しているため、両者は本来相容れない緊張関係にある、ということを念頭に置いた上で、「法哲学」なるものを考えると、確かに訳が分からない。
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本書の題目に「入門」と冠されれているが、これが「正門」か「裏門」か「脇門」か分からないということは、後書にも留保されている。それだけ、「法哲学」という学問が「十人十色」の分野であり、「法哲学」なるものに「概論」があり得るのかという著者の慎重かつ謙抑的な姿勢が如実に現れているといえる。
内容に関しては、著者がハンス・ケルゼン研究に重きをおく研究者であったことから、随所にケルゼンが引用されているが、他にもギリシャ思想、中国思想を始めとした古典古代の哲学思想、あるいは哲学分野にも留まらない分野からも哲学的問題を引き出しており、著者の所見の幅の広さには驚嘆させられる。そして、その内容は、「入門」と冠した題目とは裏腹に、深淵な含みのある文章が展開されており、法学、哲学、そして法哲学の基礎知識を前提にしないと平易には理解できない部分も少なくない。しかしながら、本書で法哲学的課題として取り上げられているものは卑近な例が多く、この分野を専門にしない読者でも共感を得やすいのではないだろうか。
また、本書は1980年から1982年に『法学セミナー』に連載された「法哲学講話」をまとめ、1982年に日本評論社から刊行された『法哲学入門』を文庫化したものである。
また、本書と合わせて、著者の師にあたる碧海純一氏の『法哲学概論』(弘文堂)、弟弟子にあたる井上達夫氏の『法という企て』(東京大学出版会)にもあたると、より一層「法哲学」という学問分野に対する知見が広がるのではないかと思われる。
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思えば高校生くらいの時は、こういう議論がしたくて法学科を目指したんだよな~と懐かしくなりました。
およそ車の通りそうもない田舎の農道でなら、信号無視してもよいか?
それを取り締まることの可否。
悪法もまた法か?
そもそも、なぜ人は法に従うか?
等々
今また考えると楽し。
原著が出たのは30年くらい前だそうですが、
そういう時代を全然感じさせないのが凄いです。
皮肉っぽい感じの文章も面白くて、いいです。
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法律勉強のため。
と思ってたが、法解釈学とは視点が違うため、直接的な勉強にはならなかった。ただ、社会科学的には面白い。
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著者自身も言うように捉えどころがないのが法哲学。ですのでこの本も少し捉えどころがないかな。
でも著者が謙虚にギリシャやらローマやら古代チャイナとかの思想•哲学を紹介。勉強にはなります。善とはなにか、法とはなにか、答えはないんですけどね。
個人的におもしろかったのが日本の雇用形態について触れてるところ。会社に貯金してあとでおろすみたいな給料とか。おれは最近知ったけど昔から言われてたんだなぁって。
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これは、法的視点を意識し始めるのに適当な一冊のように思う。とても興味深く読んだ。それは分野を問わず様々な事例に対するいつもと異なる視点を得るために。政治学も流行りの政治哲学とも関わりが高い。さて、本書は法哲学とは何か?その分類と各論点、問題点をコンパクトに纏めている。初めて法哲学に触れるには適当な量(約250ページ)と質(雑誌の連載、洋の東西を問わない文献紹介)だと思う。その中でハンス・ケルゼンの論考を多く採用しており、著者の本書の中心的主張として「哲学の本質は求知心の暴走で、これを暴走として非難するのは、実践的価値による認識への介入であって、非哲学的議論に過ぎない。(中略)現代法哲学でその精神を最も継承しているのはケルゼンだ」としている。
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ふとしたきっかけで購入した本書であるが、
予想を大変良い意味で裏切ってくれた。
様々な分野からの引用を交えて、
法哲学というとっつきにくい分野を
分かりやすく紹介している。
連載を書籍化させたものであるため、
内容の統一性が薄く、一部重複する部分もあるが、
そのことが逆に本書の良さでもあるだろう。
兎にも角にも、筆者の知識量の多さには驚かされるばかりであった。
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法哲学の入門書。古代ギリシャや古代中国、シェークスピア、現代の家庭におけるテレビのリモコン権争いまで様々な事例を出しつつ、法哲学とは何か概説する。著者の教養(雑学?)の幅には尊敬する。
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法哲学における様々な問題を、古今東西の思想家・哲学者の言を引用しつつ、軽妙な語り口で書き出している。学術書的な内容を求めているといささか不満足を覚えるかもしれないが、読みやすさという点で非常に好著である。
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学生時代に,一度,手にしたのですが,どうしてだか,通読できませんでした。学術文庫で出てたのですね,無性に読みたくなって,今度こそと通読してみましたが,学生の時とは全然違う印象で,とても興味深いものでした。今の自分の実践に何か欠けている気がしていて,これらの分野にも目配りしていきたいと思った次第。
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タイトル「法哲学入門」という格調高く、読むのが難しそうな印象を受ける。が、内容は思ったほど難解ではない。
基本的な構成は、まず章の初めに論点を述べる。例えば、自然法とは何かなど。それに対して、過去の名著を引用し(ヨーロッパの法学者や哲学者からの引用とそれと対比するための中国の思想家を意図してまんべんなく引用している印象を受ける)、それに対する歴史的な論点を紹介するというもの。
著者の考えも述べられているが、上記の引用を踏まえて彼らがこのように言っているし、それを否定するような根拠もあまりないので、これが現在の主流です、的な説明であり、やや消化不良である。
本書のテーマである「法哲学」というのは理系の人にとってはあまり馴染みがないので、そもそも自然法や実定法とはなんぞや、という(私のような)人は本書から読み始めるのは適当でないと思う。
やはり、大陸法や欧米法の生みの親の原著を読み解くのが早いのであろうか。。。。
しかし、HobsやJohn Lockeをいきなり読むのはいささかハードルが高い、、、なにか適当な著書はないものであろうか。
「法」は、各国で内容は異なるが、その根底となる考え方は何か。それに対する歴史的な経緯、そしてその問題点、今後の展望が書かれているものがあれば是非、一読したいものである。
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法哲学入門という名前だけあって、読みやすい。しかし、「○○入門」という名前でありながら、内容が濃い本も多いため、そういった類いの本かと気構えていたため、やや肩透かしという感想を持った。
法律と縁が薄い人にはこれくらいの方がよいのかもしれない。
もっとも、法律についてある程度知っており、哲学もある程度知っている自分にとっては、内容が少し薄いように感じられた。
しかし、多様な引用があり、教養は増えるのかもしれない。また、よく言えば、哲学たる理論だけを書いているわけではないので、読みやすい。悪くいえば、理論部分があまり書いていない。法哲学の紹介という意味ではこれくらいでよいのだろう。法哲学にこれから入門するための準備としての本なのだろう。
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法律や法学に興味を持った子どもたちに、そもそも法ってどういうものだろう?という根本を、著者一流の博識とユーモアで語る名著。電子書籍版があるので、家から一歩も出なくても読めます。