紙の本
石岡の、男としての再生のお話
2001/08/13 17:04
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投稿者:ちょこらんたん - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分を置いて、遠く異国の地に旅立ってしまった御手洗。そんな御手洗を理解することもできず、あいかわらず横浜の馬車道のアパートで暮らす石岡は、まるで「老婆」のような生活をしていると自ら例えていた(なぜ「男」ではなく「女(婆)」と例えているのだろう石岡は? その時点でちょっとおかしくないか?)。
そんなある日、御手洗探偵事務所に一人の少女が訪ねてくる。ここから物語は石岡を巻き込んで思わぬ展開を見せ始めるのだが。いつもワトソン的な役割をしていた石岡だが、今回は頼りになる御手洗がいない。この難事件を自分ひとりで解決しなければならないのだ。慣れぬ役割とプレッシャーに押しつぶされそうになりながらも、着実に謎をといていく石岡。今まで御手洗の影に隠れ、自分でもそのポジションに慣れきっていた石岡だったが、門前の小僧が習わぬ経を読むように、常に間近で御手洗の推理を見てきた石岡には、知らず知らずのうちに解決までの道筋が見えるようになっていたのかもしれない。
推理小説で主人公が登場人物を集め「犯人&犯行」を解き明かしていくシーンがあるが、もし違っていたらどうしよう! というプレッシャーの中、犯行現場を実演して謎を解き明かすことに成功する。ここで初めて石岡は御手洗のことを心の底から尊敬するのだった。見事事件を解決した石岡にほんとは「御手洗」なんて人物はいないのではないか、石岡自身が御手洗なのではないか、と周りの人間は言う。それほどまでに見事な解決をした石岡は一人の人間として、男として生まれ変わることができたのだった。
紙の本
胸打たれる津山事件の真相
2020/06/07 03:03
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
この事件は、現実にあった津山三十人事件をモチーフにしているらしく、中盤でその事件を克明に描写。そのページ数は200ページ超。読んでいて、本編の内容がどうでもよくなりましたf^_^;津山事件はリアリティに溢れていて、優等生だった睦雄が結核に侵され、人から疎まれていく様子が書かれており、もちろん睦雄に非はあるものの、田舎の小さな閉鎖的な社会の怖さを感じさせられました。龍臥亭事件の結末はまぁトリックは島田さんらしい、そんなんありか?と思いつつも何となく予想ができたもので、むしろ津山事件に胸が打たれました。
電子書籍
過去の事件の比重が大きすぎる
2018/12/29 11:51
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投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
下巻でようやく過去の因縁や龍臥亭の連続殺人の中で施されている奇妙な見立てがなんであるかが明らかになるような様々な過去の事件の記述にかなりページ数が費やされます。特に実際に起こった津山事件の都井睦夫の人物像が詳しく記述されており、本書の「都井睦夫の間違ったイメージを正す」という目的がここで十二分に果たされます。しかしながら、ストーリーの流れとしては過去の事件の比重が大きすぎるきらいがありますね。
津山事件は横溝正史の『八つ墓村』のモデルともなっているので、この『龍臥亭事件』もなんとなく横溝正史的雰囲気というのが漂っている感じがします。
石岡の自信回復の物語としてよめる微笑ましさもあります。
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下巻。陰惨な場面も多いけれど、やっぱり島田荘司の文章は美しくて 冴え冴えとした綺麗さ。すごい本だと思う。
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援助交際が大々的に取り上げられていた矢先に犬坊里美と石岡くんの恋愛要素を描く辺り、何気に時代に迎合している要素も描いている島田荘司の抜け目のなさと、御手洗からの手紙が冴える一作。
歴史モノに逃げると作家は才能の虎穴を囁かれるけれど、私としては、その虎穴の象徴が犬坊里美って気がしないでもない。
ラストシーンの印象も含め、面白かった今作を最後に、ここで私は以降の長編作品には手を伸ばさなくなった。
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御手洗潔・吉敷竹史シリーズ
御手洗からの手紙と電報。「リュウコワセ」の謎。行方不明になった使用人の守屋敬三と藤原。貝原のバス停で発見された守屋の遺体。自分の家族に降りかかる不幸を娘にかかる前に振り払おうと100度参りを行うミチ。何者かに銃撃されているミチ。石岡のガード。中に発見した犬坊一男の遺体。連続殺人事件の遺体の状況に不振を持った石岡の捜査。地元の歴史研究家・上山評人の話を聞く石岡。昭和初期に起きた猟奇殺人事件と今回の殺人事件に隠された秘密。都井陸雄が起こした30人殺しの実際の姿。ミチを狙う謎の人物。
2003年3月8日購入
2003年3月19日読了
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御手洗潔シリーズ。(?)
今回は石岡和己が探偵役です。
御手洗が石岡に優しい手紙を出しています。
そこも結構重要な見所ですヨっ!!
お話し自体は津山三十人殺しが題材になってます。
調べてみるとかなりそのまんまです(笑)
相変わらず上下共分厚いですが、
私は面白くてサクサク読めました。
石岡探偵も結構様になっているのでは??
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あまりに有名な、現実に起こった「あの事件」をモチーフとした作品。これは超大作。なんといっても「龍臥亭」が凄すぎる。これはぜひ、訪れてみたいような館だなあ。
密室?トリックもさながら、動機には唸らされたなあ。ひとつひとつは単純そうに思えても、複雑に絡み合った様がなんともいえず魅力的。後半に入ってからは一気読み間違いなしの作品。しかし御手洗……あの電報だけで解れってのはあまりに酷な話でしょう(笑)。
ちなみに個人的には、見立て殺人?のユーモアがかなり好きだったりも。この解釈にはかなり笑えた。だから鳥の絵だったのか……(爆笑)。
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石岡くんのリハビリ?だけど、最後まで読んでるとなんだか切なくなってしまった。石岡くんなりに一生懸命な解決しようとするその姿に思わず、頑張れと応援しながら読んでいました。
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長かったです。
それにつきますね。
この作品は無理に真相を暴こうとしても
無駄骨になる作品なので
おとなしく読んだ方がいいですよ。
しかし、とある多人数殺人事件は
悪しき習慣の蓄積だったんですね。
確かにあの人は鬼畜だったけれども
よく読むと無関係な人には
鉄槌を落とさなかったのです。
そう、落としたのは
けなしたものだけ。
そして現代の犯人に関しては…
一番悲しい事実が出てきましたね。
そして真相部分にも悲しいものが…
皮肉にも…
御手洗なき事件でしたが
なかなかおもしろかったです。
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通常の御手洗シリーズよりも結末がわかりやすい。(いろんな意味で)石岡くんだけで大丈夫なのかな?と思ったけれど、最後まで一気に読めました。
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長かったなー
読んでる間に間延びしてしまった。
本格は長すぎると謎に対する情熱が薄れていくと感じた。
半分は、津山事件のノンフィクション。犯人の名前とか、事件の経過は事実だと途中で気付いた。
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龍臥亭事件という作品が自分のなかで大好きで、思い入れの深い作品なのは、石岡さんが、事件を解決したいと深く願い、他には誰も頼れないとなんとか自分の頭で必死に、本当に必死に考え、推理し、ボロボロになりながらも、事件の謎を解いていく姿が描かれているから。
御手洗潔という超人の活躍をその傍で振り回されながら見守るしかない石岡さんの姿はそこにはなく、必死な凡人のもがきが私の心を打ちました。
霧のなかの幻想的な舞台にて行われる犯人との格闘、そして終幕、石岡さんの手による真相披露が描かれる第12章からエピローグにかけては、御手洗シリーズ屈指の名シーン名場面の連続でした。
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大傑作。昭和初期の犯罪史に興味がある人に最適。津山事件のくだりはどこかで読んだ覚えがあったが、『津山三十人殺し』のほぼ完全な引用だった。すごく書きたかったことが明確で、トリックとか謎解きは、ただのエッセンスに感じる。
あと、この話の続編が、またさらに感動的でたまらない。途中で気付く人は気付くのだろうけど、気付かずに読めて驚きが押し寄せてきたので幸せだった。
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再読。陰で活躍していたあの人の独白と最後には頭が下がる。こういう気骨はもう過去の物なんだろうなぁ。
真犯人には作者にやられた感…術中に嵌まってた~。 動機には面食らうが、この恐怖は当事者だからこそで止められないのかもしれない。因縁という言葉が作中よく出てきたのも頷けた。