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緋の天空(集英社文庫)
2018/01/13 21:13
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投稿者:雨読 - この投稿者のレビュー一覧を見る
蘇我入鹿を討った藤原鎌足の次男、不比等は天武天皇没後、娘の宮子を文武天皇に入内させ、権勢の増大を図っていた。
奈良時代、平城京において不比等と県犬養橘三千代の女子、光明子は、藤原四兄弟と長屋王との対立、陰謀等のなか、貧窮者の救済、仏教の広布、大仏の建立と夫・聖武天皇を支え、自らは生身の十一面観音菩薩のごとく国の礎を築いていきました。
その生涯を取り上げた作品に感銘しました。
著者、葉室麟氏の逝去を悼み、心から追悼の意を表明いたします。
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奈良時代の歴史を光明皇后を通じて振り返る
2017/07/18 21:26
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投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
葉室麟の歴史小説である。歴史小説にも色々あるが、本書は一人の人物に焦点を当てた作品である。奈良時代という古代における皇后の姿を描いている。皇后とは聖武天皇の代の光明皇后である。光明皇后については史上数々の事績が遺されている。たとえば、平城京における法華寺(尼寺)は、光明皇后が父である不比等の屋敷を提供して国分尼寺としたもので、それが法華寺となっている。また、隣接して海竜王寺があるが、遣唐使として海を渡った玄ぼうが寄宿した寺として名高い。
葉室は、これらの人物を役者として舞台に登場させた。光明皇后が病に倒れた者、貧しい者を救済するために、悲田院、施薬院など様々な慈善施設を建設したことは有名である。法華寺にはその救済活動で使用したと言われている浴室などが遺されている。
奈良時代と言えば、今から1,300年以上も前の時代である。これらの事績も伝説なのかも知れないが、寺の設備としてハードウェアが遺されているのは奇跡に近いであろう。この時代の小説と言えば黒岩重吾であろうか。
黒岩は朝廷の頂点に立つ天皇を中心に後継者争いや、宗教上の出来事を描いてきた。葉室はそれに比較して、光明皇后の描き方が争いではなく、むしろ皇后の心の信じるところを描き、周囲を納得させていくという土台から成り立っているようだ。ただし、聖武天皇と光明皇后の皇子である阿閉皇女を立太子させ、道鏡を登場させる点は、本書後の混乱をすでに読者に予感させる。光明皇后の時代はあくまで穏やかな時代であったことを強調しているかのようである。
光明皇后にとって最も衝撃的な出来事は、長屋王の変であったろう。本書では長屋王は藤原氏に対抗する勢力であるためか、敵役として描かれている。長屋王は悲劇の皇子として一目置かれる立場で描かれることが多い。しかし、本書では藤原氏の娘である光明皇后が主役なので、長屋王は敵役となったと考えられる。
そういえば、この時代は飛鳥、白鳳から女帝が続いている。推古、持統、元明、元正、孝謙と女帝が連なる。葉室がそこをテーマとしたことは考えられないが、平成のこの時代は本書の舞台である奈良時代よりも考慮すべきことが多いのであることは明白である。象徴である天皇が退位して皇太子に譲位するだけでもこれだけの大騒動になる。
奈良時代の政治、皇室のあり方などの研究成果が知りたいと率直に思うのである。女系や女性天皇の存在がどうとらえられていたのか、それがいつから男性に限られるようになったのかは興味深いところである。
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なんかショック
2017/09/02 23:00
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投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
長屋王が悪者っぽい感じで描かれる。
なぜすがるのが仏教なのかわからない。
基本的に現存する資料をつなぎ合わせてできた
小説っぽくて、
目線が藤原。
小説なんだから、行間をもっと書いてほしかった。
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女性を主人公にした歴史物って、力強くも繊細で勇気づけてくれる。大河の篤姫しかり、綾瀬はるか演じる八重しかり。
・・・とそんな気持ちで読み始めたら、、早速の挫折。
あの、奈良時代の人間関係の複雑さ。血筋だけでも混乱するのに名前が難しい。登場人物の関係性がちんぷんかんぷんになり、話の展開がよくわからない。
そんなんで、とうとう、読みながら家系図を作成。
・・・それが功を奏したのか、その後展開もわかりやすく、話が読める!(このやる気が学生時代にあれば・・・)
藤原家と蘇我家の対立から、国を安定させたいと願う光明子の父、藤原不比等の政。
光明子が生きた60年の間に天皇が4人も存在し、うち二人は夫と娘。そして、この時代の女帝の多さにびっくり。
光明子は天皇ではなく皇后、、、その生涯が、まさに大河を見ているようでドラマチックだった。
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ちょっと竜頭蛇尾かな。幻と現実の折り合いをつきかねている感じが、うんまあ読みやすかったです。藤原氏側からの視点ですので人物評価はそれに沿う…
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以前読んだ「天平の女帝 孝謙称徳」に登場した女帝の母、光明子が主人公。
東大寺大仏の建立者聖武天皇の皇后として、民に慈悲の心をもって接した人という程度の知識しかなかったのが、玉岡かおるさんの上記小説で、かの時代に深く入り込んでみて、初めて知ることがたくさんあったので、本屋でこの本を見つけて即購入。
葉室麟さんも何冊か読んでいたので迷いなく読み始めたところ、登場する人物名と続き柄が全くつかめず、混乱してなかなか読み進めなかった。
ネットで、天皇系図を何種類か検索、プリントアウトして人物名を確認しながらの読書になった。が、ある程度分かってくると、後半は感情移入しながら無事読了。
偉大な両親の後ろ盾を得てのびのび成長しつつも、自分のなすべきことを心に定めてからは、全くぶれずに、困難な場面もまっすぐ前を向いて突き進む強さに、心から感動した。
この強さの何分の一かでも自分にあれば、今の生活が何か変わるのではないかと、少しの勇気ももらえた。
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光明子が「善人」すぎて引いてしまった。
完全に頭は満智子先生の女帝シリーズや、杉本先生・永井先生の作品の「藤原氏」のイメージに支配されている・・・・・・
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歴史小説に多くみられることだけど、特にこの時代は書き手や視点となる人物によって善人にも悪人にもなるところが面白い。
ここで描かれる光明子はえらくいい人に描かれている。
反面、長屋王がやたら悪く描かれているのが非常に新鮮だった。
自分の持っている知識と突き合わせて読んでしまうと思うところも多く出てくるけれど、それも含めて様々な作者のものを読んでいくのは楽しいと思う。
葉室麟さんの本は初めてだったけれど、とても興味を持った。
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聖武天皇の皇后、光明子の話。長屋王の変を中心に大仏建立までの奈良時代を、藤原不比等の娘がどうやって生き抜いたか。ひとりの女性の成長譚。葉室麟のなかでは異質な話だったが面白かった。
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時代小説を古代から明治までのカテゴリって無理あるなあ
さて、光明皇后主人公です
この人はなんぼ美しく描いても許される気がする
葉室先生が古代小説書くと思ってなかったが、作品のテーマは少し深秘の力を持つ光明皇后(役には立たない)が、十一面観音菩薩の慈愛みちた性格で、生きて居た時の主だった事件に微妙にかかわる内容ですが、メインはやな奴に描かれた長屋王とその息子故の光明子と運命から逃れられない悲劇ですか・・・少し陳腐ですが読みやすかった!
タイトルに関してネタバレすると、ラスト2ページに現れた仲麻呂が死ぬ寸前に観た緋色の朝焼けの空・・・納得いかない(笑)
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主人公は光明子かな。
藤原不比等の次女で、母親は県犬養三千代。首皇子こと聖武天皇の妻となり、孝謙天皇を産んだ女性。彼女の一生を追う体裁を取っている。
文武天皇が早世し、首皇子(聖武天皇)が成人するまでの中継ぎとされている元明・元正天皇母娘ですが、平城京を作り、『古事記』『日本書紀』を編纂させ…と、大きな功績を残してるんですね。海の向こうで女王様が亡くなったばかりですが、女帝、良いかも。
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奈良時代の光明皇后を主人公に、長屋王の変をメインに据えた時の政争とひとびとの生きざまを描く。
葉室作品らしいまっすぐさを、殆どの人物が備えて描かれています。貫きたいものがそれぞれにあり、その為に手を汚すこともある……というような。
その中で光明皇后がつねに光たらんと生きる姿は、まさに葉室作品の女性像という感じです。
妖術使いがいたり、ややエンタメに寄っている印象を受けましたが、それは中世以降の時代物には出てくる殺陣のシーン等が描けない時代で、どう盛り上げるかのバランスだったのでしょうか。
それぞれの人物像の解釈の違い等で、もしかしたら好みは分かれるかもと思われますが、この作品において個人的には元正天皇(氷高皇女)の描かれ方が好きです。
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人は、己の欲のために争いを好むようだ。その事は誰にも押さえられないのかもしれない
律と令の定めだけでは、人の心の憎しみや妬み、猜疑の心をなくすことはできない。仏法の慈悲の心を国の心としてこそ、人々は己の生涯を全うできるのだ
誰しもが悪しきことをしようと思って、この世に生を受けるわけではない。良きことをなさんと思いつつ、運命に翻弄されて、互いに憎み合い、戦うことにもなるのだ
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なんだろう、史実と幻想が混ざっていて途中ファンタジーかな?と感じたり。光明子は〜と思った。など、客観的視点からの箇条書きが多く感じられて、うまく頭に入ってこなかった…
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光明皇后のお話。
イキナリが奈良の大仏さんの開眼なんで、あれ?結構晩年からやん、と思いきや、すぐに娘時代にバックツーザフューチャー
お話感より、淡々と歴史が進んでいく感じがイマイチ入りにくい。
超有名人だから仕方ないとはいえ、起きる事件も有名どころだしね。