紙の本
定年を迎えた主人公の心の乱れを描く
2013/12/23 21:19
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
渡辺淳一が著した定年退職を迎えた主人公とその家族の物語である。昨今どこにでもある退職後の家族間のすれ違い様を記したもので、話題性もあるので手に取ってみたのである。場面場面で生じる軋轢や葛藤はリアルである。ただし、現代風を意識しているのか、誇張も多く、今時こんなやつがいるのかと思わせるシーンも少なくない。そういう点では舞台劇でも見ているような気がしてきた。
主人公は広告会社の役員であったが、関西の関連会社の社長に飛ばされそうになった。身を引く覚悟を決めて退職したのである。年齢は60歳である。その年齢で退職して毎日が日曜日でようやく仕事の束縛から逃れられたと考える。しかし、少し前であれば皆がそう考えたかもしれないが、現在そう考える人は少ない。
何もしないでいられるのは精々1ヶ月で、後は退屈な日々を如何に過ごすかを考える毎日がやって来る。また、主人公は妻との会話が成り立っていない。今時珍しい亭主関白ぶりで、熟年離婚にでも至るのかと想像していたが、そうではなかった。これもやや誇張が過ぎるようだ。今時こんな亭主は少ないであろう。これに対する妻の会話や行動も理解はできるのだが、今までの夫を支える妻の役割に関する不満が一気に爆発した感がある。
いずれにしても、相互のコミュニケーションが成り立たない状態が続くので、その先の渡辺流の展開が楽しみになり始めてきた。この辺りはさすがに読者を楽しませる術を心得ているようだ。
本書は定年を間近にしている退職予定者にとってはきわめて興味深いテーマを描いている。とはいえ、その内容は退職後の平凡たる日常である。しかし、細々としたその日常は十分想像がつくもので、意外性のあるものではない。いよいよその時期が来たのかという現実を実感させるものである。
自分自身のことは何とでもなるのであるが、意外性があるといえば周囲の自分を見る目であろう。とりわけ、今までも身の回りにいた家族の変化については予想がつかない。自分は今までと同じだと思っていても、毎日、外に働きに出ているか、四六時中家にいるか、では家族の思いは全く違うとういことである。
本書の主人公のように勤務していた時代と同じ亭主関白では家族はたまらないであろう。しかし、それはもう10年以上前の世代ではないか。今そのような生活をし、家族との接し方をするような人は多くはない。もっと気を遣っているはずである。そういう点では悪く言えば、随分手抜きで粗雑な出来であるような印象を受ける。もう少し完成度の高い小説を期待していた。その反面矛盾しているようだが、テーマとしてはタイムリーであり、読者として楽しめたことは間違いない。
電子書籍
ここまでとは。
2018/12/31 09:53
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投稿者:ライサ - この投稿者のレビュー一覧を見る
定年退職したやり手サラリーマンのその後の人生を描いた小説
いかに、仕事以外での人間関係構築を現役の時にやっておくかが肝である
仕事「しか」できない人間ほど退職後にお荷物扱いされ得るかがよくわかる
だがまだ彼らは恵まれた世代なのだ。私は30前半だが、私たち以降の世代はここで書かれているようなプチ贅沢すらもできない未来が濃厚だ
そもそも今でも現実にランチに使う金は彼らのが私たちよりも10倍近かったり土産ものにかける金も倍以上使っているのを目の当たりにしたことがある
「こんな老害たちを支えたくない」と若い世代が思っても不思議ではないのだ
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投稿者:ピート - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分も定年後こうなっていくんだな。という切実感があり、どんどん読み進められる。
また、もっと早くこの本を読んでいれば、という気持ちも起こる一冊である。
定年後の人生に興味を持っている方に読んで欲しい。
紙の本
色々考えさせられました。
2016/02/03 20:22
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投稿者:としちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
読みながら威一郎のような定年退職後の人生を送るのは本当に嫌だと思いました。現在日本人男性の平均寿命が約80歳と言われてます。定年退職後も20年、30年生きることになるでしょう。仕事ばかりに時間を費やし、家族との関係を軽視し趣味や習い事等仕事以外の生きがいを持たなかったらどうなるか。定年退職後威一郎のように悪化した夫婦関係や親子関係に苦しみ、家の外でも何をしたらいいのか分からず途方に暮れて結果的にストレスを増大させることになりかねません。しかもそれが20年、30年続くのかと考えるとあまりにも辛いです。現在30代半ばの私は独身ですが、将来結婚しても仕事に励む一方で家族サービスもしっかりやっていきたいですし、仕事以外にも趣味やいろいろなことに挑戦し定年退職後も家族と良好な関係を保ちながら自分がやりたいことをやって楽しく人生を謳歌していきたいです。定年後に限らず現役の間も仕事と家庭をどう両立させるか、仕事以外に何をするべきか色々考えさせてくれた作品だったと思います。
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今風ではないような?
2023/09/08 01:07
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
渡辺淳一さんにしては、やや設定が変わっています。仕事人間で亭主関白の男性が定年退職後、いかに生きるかというお話です。しかし、今どき、こんな自分勝手で、亭主関白な60才いたら、即刻、妻から離婚言い渡されるだろうな。なんか、古い感じ。
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私もあと少しで60歳になるけど、こんな定年後を迎えたくないですね。
会社と関係の無い付き合いや趣味も持たないといけないな!
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定年退職後、いかに生きるべきか?! というオビにそそられて、この歳になって初めて「渡辺淳一」本を購入しました。
こうはなりたくないという反面小説でしたね。
主人公のアホさ加減にムカムカさせながら、スラスラと読めてしまうところはさすが人気作家ということなんでしょうね。
自分の退職後の人生はもう少しはマシだなと思わせてくれるところも少なからずあったんですが、大手広告代理店の上席常務執行役員まで務めたという経歴まであるのなら、社内外でそれなりの教育なり様々な情報に接する機会が多くあったはずで、こんな見識の人間が役員になれるはずもないんだが・・・とか、デートクラブの話にしても、こういうリアル感のないお話と比べたところでどうしようもないか。
(2013/10/17)
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この著者の作品といえば男女のどろどろとした愛憎を描いた作品が思い浮かぶ。いくら制したくても制しきれない情念が生み出す悲劇が得意だ。しかし本作の主人公は哀れな退職者だ。会社という特殊な社会に特化したために、一般社会に適合できず、家族にも見放される哀れな老人なのである。それは孤独でもあり、滑稽でもある。私自身かならずしも客観的に読めない年齢になって、必ずしも笑い飛ばせない哀愁が感じられるのだ。
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定年退職で、第二の人生は、今まで、我慢していた事やら、したいと思っていたのに、時間がなかったので、出来なかった事などなど、全て、出来るようになると、思っていたのに、、、
定年後、待ち受けていたのは、夫婦関係、親子関係の、ちぐはぐな関係が、起こって、スワッ、別居生活か?に、、、、
エリート企業戦士が、会社から離れたら、時間の余裕は出ても、金銭の余裕が、がっちり、配偶者に、掴まれているので、何も出来ない。
上司の立場であったため指示をするのが、当たり前で、細かい用事など、自分でした事のないし、やらなかったのが、退職後、いちいち、家族から、指示が出るのが、余計に気に食わない。
犬の散歩まで、やらされるのか?と、腹を立てるが、1日を過ごすのに、どうしたらよいか?主人公の威一郎は、時間の過ごし方が解らない。
暇がストレスになっている!と、医師から言われたり、また、主人が、1日中、3食必要となり、家に居られるのにも、妻は、不定期愁訴に、陥ってしまい、お互いにイライラしてしまう。
娘が、旅行にでも、行ったらいいのに、、、と、言われても、妻の方は、今までの旅行経験から、行きたくないとの自己表示をする。それを聞いて、夫も、余計にへそを曲げてしまう。
人生バリバリと、働けているのが、幸せなのかもしれないと、つくづく思う。
子供達も、巣立ってしまって、親を必要としなくなったら、好きなことできると、思っても、頼りにされている時は、もう、忙しいのにと思いつつも、、誰からも、頼りにされなくなったら、何もする気力が、起きない。
人間とは、人のために、何か出来る時が、一番幸せなのだと思う。
妻が、家を出てから、威一郎が、デートクラブの小西さんと、アバンチュールへとのはなしの展開になって来るが、彼女が、結婚してまで、お付き合いを約束する所で、話は終わるが、、、、
やはり、渡辺淳一氏で、恋愛物を入れないといけないと、思っているのだろうが、最後までデートクラブの彼女の話で、終わるのはいかがなものなのだろうか、、、と思った。
1日に、10万近くを、デートクラブで、使う事なら、今まで、つつましく、倹約してきた妻に、それだけの事をしてあげるという、夢のある話が、欲しかった。
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定年退職後、仕事に打ち込んでいた主人公は
思いもよらなかった事にことごとく直面していく。
妻と旅行したり買い物に行ったりのんびりしたり…。
そんな夢を思い描いていたにもかかわらず
現実はまったく違うもの。
それに理不尽に起こる主人公。
ものすごく亭主関白、といえばまだ大丈夫そうですが
単なる自己中心的夫。
核家族になった今、これは無理です。
最初から最後まで、女性相手には
駄目だしをくらうだろう生活態度。
男性にしてみれば、当然の生活態度。
どうしても上に立つと、その癖がぬけません。
それが生活の一部、ですし。
どうして、相手の立場にたって、ができなくなるのか。
プライドが高いのは面倒です。
とはいえ、そのまま放置して楽をしてきた妻にも
問題があるといえばあります。
しかしこの夫相手だと、少しずつ改善、よりは
崖から落とした方が早いのも確か。
驚くほど典型的な、定年退職後。
ある意味、世の中の男性に『退職後は気をつけろ』と
警告できる本です。
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きっかけから、普段ない読み方でもあったので、このストーリーは、どこへ向かうのかと、ちょっとハラハラというのは言いすぎでも、先がわからず読み進む感じでしたが、文章自体は読みやすく、ただ連載小説なりの、章ごとの重複もあって、と、叙述がやっぱり間延びする感じというのを覚えつつ読みました。
最後、おおとりとなって、むしろ、スッキリした気がしました。渡辺淳一さん、お若い頃の名エッセイ『公園通りの午後』と、あの話題作『失楽園』を読んだ記憶はあるのですが、その他の作品は読んで来なかったので。
この威一郎の物語を、現代の象徴として書かれたのであれば、それは、当を得ているのだろうと、最後はそう思えました。
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評価は3.
内容(BOOKデーターベース)
大手広告代理店の上席常務執行役員まで務めた大谷威一郎。関連会社の社長ポストを蹴って定年退職した。バラ色の第二の人生を思い描いていたが、待ち受けていたのは夫婦関係と親子関係の危機。そして大きな孤独だった。犬のコタロウが側にいるだけのさみしい日々がつづく。人生最大の転機を迎え、威一郎の孤軍奮闘が始まる。定年退職後、いかに生きるかという一大社会問題に肉迫した異色の傑作長編。
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定年後の自分はどうなるんだろうか?と自分と重ねながら読み進めた。多分プライドとか過去の役職とか、そんなものを身にまといチュージィなじじいになってしまうのだろうか?車に乗っていて目にするのは結構な渋滞の時、年配の特におじさんの中には意地でも割り込みさせないという人が時々いる。あそこまで必死な態度は一体何だろうと思う。話がそれたかもしれないが、あんな人にはなりたくない。おおらかなじじいになりたい。
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余生をどう過ごすか、参考になるかと読んでみたが・・共感する部分、ほとんどなし。元役員の退職者がプライドを捨てきれずに自分勝手な愚痴と言い訳の連続。かなりピントがずれてる感じ。リタイアしてからの悲哀や新たな生きがいとか材料はあると思うが、この作品には何もない。理屈をつけても、嫁さんも勝手だし(笑)
まぁ、読んだ時間の無駄でした。
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定年を主題にした小説。定年後、自宅にいる時間が多くなる古老男性。自宅での妻の仕草やかまってくれないことへの不満と苛立ち。子供たちはすでに自立。かまってくれるのは、犬ばかり。定年を迎える前の男性に薦めたい1冊。