実際の見聞による貴重な記録
2022/02/21 15:31
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投稿者:いて座O型 - この投稿者のレビュー一覧を見る
久世家に生まれ、権掌侍として明治宮中で働いていた著者による記憶に基づく一冊。
なにしろ当事者として天皇陛下以下皇宮内外の人と接しているので、抜群に面白い。
細かなしきたりのようなものも、それなりに面白いのだが、やはり宮中という閉鎖空間の中なので、人間関係が面倒なことになってたりすることに、妙に現実感が強くて興味深い。
大正天皇のちょっと難しいところや、史書などでは評価の高い貞明皇后が案外狭量だったりする話なども、当事者しか知り得ないことだけに、検証のしようもないが、真実味がある。
「お次」みたいに、関西だとちょっと昔までわりと民間でも残ってた風習が宮中でも行われてたとか、細かいことを言い出すと、何もかも面白かった。
明治の皇室・宮中を知る第一級の史料です!
2020/03/02 13:27
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、明治42年に18歳という若くして明治天皇と昭憲皇太后に女官として仕えた華族であった久世家の長女、三千子の手記です。ここに書かれた内容は、宮中での天皇や皇后、さらには皇太子やその関係者の言動や振る舞いという、私たち庶民には全くうかがい知ることができない貴重な情報であり、同書は、明治宮中の様子を知る第一級の資料とされています。例えば、何十人にも上る女官の多様な職名と仕事、天皇自らが命名した源氏名とニックネームなどが明かされます。明治の皇室、宮中を知る貴重な一冊です!
皇室を垣間れる貴重な一冊
2024/09/30 10:13
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投稿者:あー - この投稿者のレビュー一覧を見る
一般人にはとにかく神秘的で思いもよらない皇室の、特に明治帝のひとコマ。写真嫌いな明治天皇のお写真(小さくモノクロで時代を感じさせますが)を一枚だけですが拝見できたのも感激でしたが、当時の宮中のしきたりというか、天皇皇后両陛下のプライベートでのお過ごしのご様子、お人柄が垣間見れて良い伝記です。
山川さんの視点、私観なので実際には齟齬があるかも知らないでしょうが、重く厚いベールに覆われていた宮中の一辺に触れられる本書。個人的に宮中言葉が興味深かったです。
こういう「解説」は困る
2016/07/25 13:53
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投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本の問題点は解説で、「しかし彼女らは『すべて宮中内のことはどんな些細な事柄も、親兄弟にさえ話してはならないのですよ』と言われていたため、情報が外に漏れることはずっとなかった」が「1960(昭和三十五)年に公刊された、このタブーを初めて破り」と仰々しく書かれているが、この人、同じ講談社から出ている「人間 昭和天皇」に紹介されている昭和20年代前半に出た「大内山」をはじめとする本の存在を知らないようだ。
この人は平成9年にぺりかん社から復刻版として出た「李王宮秘史」の著者について、「出生や学歴」といった「基本的な事実からして、いまだに不明のままである」と書いたものだが、この本の著者の権藤四郎介は5・15事件に関わったことでも知られる農本主義者の権藤成卿の弟なのは監修者が書いて同じ版元から出た「権藤成卿」に出ているでしょう?
「闘う皇族」の解説では大正後期に乃木希典が生きていると書いている。
ある意味、どうすればこういう「基本的な事実」を抑えていない解説を連発する事が出来るのか、に感心する。
もっとも乃木大将については、それ以前と思うけれど。
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治天皇、皇后両陛下にお仕えした著者が戦後になって語る生々しい逸話の数々が大変興味深かったです。宮中といえどもやはり色々な人が集まって仕事をするので感情の行き違いなどある点、「世間広し」という缶にお菓子が入っていて皆で頂く、夏は冷やした西瓜を大量に食べる、など非常に具体的な描写でした。とくに大正天皇の著者へのお振舞と貞明皇后の著者へのお言葉などこんなことまで発表して大丈夫だったのかと思いました。
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明治時代に宮中に仕えた華族の令嬢・三千子の手記。
この著者は、令嬢なのに「何とかして自活の道はないものかと考えておりました」という進歩的な考えの持ち主。
宮中の様子が詳しく描かれている。
平安時代の宮中の様子みたい……と思いながら読んでいた。
大正天皇が著者にご執心だったというお話は、例えそうであったとしても、こういうところに書くのはどうかと思った。けれども、明治天皇や皇后のご臨終の様子など、身近な人しかわからないことも書かれていて、大変興味深く読んだ。
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昭憲皇太后に仕えた元女官の回想録。原著は1960年刊行。著者の山川三千子は子爵久世通章の娘で、宮中退官後は植物学者の山川黙(会津藩家老の山川家出身)の妻となった人だが、本書の本文では明示されていない。また、文体が口語調であることから口述筆記が元になっている可能性を疑うが、編集や刊行の経緯等の説明はない。原著刊行当時は皇太子明仁親王(今上天皇)成婚に際して、さまざまな宮中「暴露もの」の記事がメディアで出ており、それらの「虚偽」に対する批判と修正を意図していたことだけは伺える。
史料としては二次史料で、しかも彼女の在官期間は1909年から1914年、明治天皇と昭憲皇太后の最晩年に限定されており(しかも天皇在世中は「御雇」扱いで権掌侍の正式任官は天皇死後)、伝聞情報も多く、信憑性という点で注意が必要だが、同じ宮中の「奥」仕えでも、男性の侍従には日記や回想が少なからずあるのに、女官のものは本書以外には皆無と言ってよく、原則男子禁制の「御内儀」の様子を覗える貴重な史料であることは確かである。明治天皇と昭憲皇太后に対しては絶賛・称賛一辺倒である一方、大正天皇と貞明皇后に対しては相当な悪感情を示しているが(柳原愛子に対しても「世話親」だったにもかかわらず冷淡である)、当時の宮中の人間関係全体の中で著者がどういう立ち位置であったのか、バイアスを慎重に吟味する必要があろう。
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明治天皇・皇后に仕えた女官が振り返る宮中のくらし。
宮中のしきたりや生活様式、天皇・皇后の日常など、中の人だけが知ることができることが書かれていて、興味深い。
(図や写真、解説などがもう少し入るとわかりやすいと思ったが。)
明治天皇と大正天皇の対比もそれとなく書かれていたりして、初版当時(1960年)としてはある意味衝撃的というか、波紋の大きかった本だったのではないか。
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明治天皇と皇太后に5年間仕えた、華族出身山川三千子が、その晩年、昭和35年に宮中での体験を綴った手記。
一般人は垣間見ることもできない、その雅な生活を惜しみなく暴露している。
入浴は上半身(清)を洗う人と下半身(次ぎ)を洗う人は区別され、足を拭いたもので手や肩をふくことはない、とか、11月3日の新嘗祭には、両陛下が日常使うお召、夜具、化粧道具から火鉢に至るまで全て神事用に取り換え、取り換えることのできない大きな家具などは何度も拭き清めて切火をするなど、宮中内の行事や習わしを紹介。その神秘的な世界にため息が出る。
明治と言えば、日清日露戦争で日本全体が疲弊し、決して裕福ではなかったのに、宮中は平和そのもの、おさがりの着物や献上のお菓子などふんだんにあったようです。
いまさらのように知って驚いたのが、天皇には権典侍(ごんてんじ)というお妾職がおり、子供に恵まれなかった皇太后に代わって男の子を生み、それが後の大正天皇になっているということ。徳川家の大奥に通じるものがある。
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明治四十二年に出仕し、昭憲皇太后の崩御までを宮中で過ごした人の回顧録だ。
昔読んだ林真理子さんの『ミカドの淑女』でも、本書が参考文献に挙がっていたような記憶がある。
当時は図書館にでも行かないと読めない状態だっただろう。
私にとっては林さんの小説が先で、こちらが後となったわけだが、もう二十年近く前に読んだ小説の内容が髣髴としてくる瞬間が何度もあった。
「天下広し」の紙を貼った缶。
筆者に仕えた老女の名がフキ。
あれ? どこかでもそんな名前の老女が出てきた気が。
まさか老女のことを宮中ではフキというのではないだろうかと思ってしまった。
質実剛健な明治宮廷の雰囲気。
豪胆にして磊落な明治天皇、思慮深く大勢の気性も異なる女官を円満にまとめあげる美子皇后。
こうした理想的な主人に懸命に仕え、若さゆえの失敗も楽し気に語る筆者。
もちろん、そこには懐旧の情からくる美化もあったと思われるが、やはり面白い。
いちいちそれをここに書くわけにはいかないが、一つだけ。
書物など重いものを運ぶのに「橇」という道具が使われていた。
こう書いて「ずり」と読むそうだ。
引きずって運ぶから「ずり」なんだろうか。
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明治天皇と皇后に仕えた女官の手記。
ひと言、とてもおもしろい!
いろいろ、皇居内のことについては外から妄想が膨らむところではありますが、中で働いた人の視点で当時の様子が感じられるのは貴重なことですね。
宮中文化にはもちろん興味がありましたが、読み物としても十分おもしろかったです。
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明治四十二年、子女の自由が無視され、本当に女はつまらないものだと思っていた作者が自活の道を探っていたときにもたらされた、宮中奉仕の話。と冒頭から引き込まれる。
無責任な噂話を否定するために書かれたという出仕当時の話は、貴重な資料だろう。
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堂上公家・久世家の姫様は、明治天皇の后・美子皇后付の女官として
18歳で宮中に上がった。
「宮中で見聞きしたことは他言ならぬ」。
その禁を破って、著者が自身の体験を綴ったのは退官から約40年後
の昭和35年だから、明治天皇も美子皇后もお許し下さるだろう。
江戸時代の大奥ほどではないにしろ、奥向きの仕事を担う女性ばかり
の生活はきつかっただろうなと感じた。オブラートに包んだ書き方を
しているが、妬み・嫉みが渦巻いていたのだろう。勿論、著者を気に
かけてくれた方もいたが。
他にも直に接した明治天皇と美子皇后のお人柄がしのばれるエピソード、
両陛下の日常のご生活の様子、宮中の年中行事についてなどが、宮中
言葉を交えながら描かれている。
特に印象に残ったのは大正天皇に関する記述だ。元々病弱であったのに、
元勲たちから明治天皇と同等の資質を求められ、心のバランスを崩して
しまった不運な天皇。得意であった和歌や漢詩の才能や、明治天皇とは
違うのだと言うことを周囲が認めていれば、大正時代はもう少し長った
のではないかとの印象を持っていた。
だが、本書では歴史書では知りえない大正天皇の一面が記されている。
皇太子時代の大正天皇は宮中へ上がった際に著者に目をつけていた。
そのご執心は明治天皇崩御後、新帝として即位してからも変わらない。
新たな両陛下にお仕えする話を断り、皇太后になられた美子皇后付の
まま青山御所へ移っても、何かと理由を設け青山御所へ赴き、必ず
著者を名指ししてお召しになっている。
大正天皇のご執心に薄々気がついていた皇太后は、名指しでのお召しが
あれば病欠という手を使い、御前に出ないよう気を浸かって下さる。
実母ではないが、母として息子である大正天皇のこのお振舞いを、
苦々しくお思いだったのかもしれない。
著者は皇太后崩御後に退官し、数年後に結婚するのだが、大正天皇は
この結構ん披露宴の日時までご存じだった。不敬を承知で言う。ここ
まで来るとストーカーだ。
ただ、美子皇后を実の母であると信じて疑わなかった大正天皇が、
実母は側室であることを知った時の衝撃は大きかったのだろうな
とは感じる。
巻末には宮中の言葉の一覧、今は失われてしまった明治宮殿の見取図
が掲載されている。明治の終わりから大正の始めにかけての宮中を
知るのに貴重な資料でもある。
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明治天皇の治世末期に女官として仕えた著者の回想録。宮中の様々な出来事、習慣などは中々世の中に出て来ないので、貴重な記録といえる。著者も、本書を著したのが戦後という事情もあろうが、かなり思い切った出版だったのではなかろうか。ほんの数年の経験ではあるが、宮中のしきたりや出来事がリアルに描かれている。
この文庫本のために書かれた原武史の解説が面白い。本書で引っかかったところ、気になったところが見事に解説されている。
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明治時代の宮中の様子を、まだ少女といえる年齢で女官として上がった華族の女性の目を通して詳細に記した本。内容はどこを取っても驚き。
文章は感受性豊かな自然体で色や匂い音が容易に脳内で再生される。全体的に「上品な意地悪」という塩味が効いてるのか最後まで全く飽きない。
大好きな本。