紙の本
混迷極まる現在の政治状況において我々の理解の一助となる(かもしれない)
2018/05/31 17:02
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投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
約380頁にわたって、官僚制についての濃密な記述。遊びはない。本格的。自由と平和的共存を求める「個人」を起点に、自治から行政を論じるその矢印の向きが、現状打破の希望になる。壮大にして緻密な金井行政学の体系が示される序章を読んで「ちょっと難しいかな」と思ったが、本論に入ると話が具体的で、痛快で面白く、グイグイ読めてしまう。「米国と行政」の節がすごい。ポツダム宣言受諾は「米日併合」、GHQは「日本総督府」、サンフランシスコ条約も米日関係は「本国」と「自治領土」のまま、他の国々と日本との関係とは違う「一国二制度」…20ページで既存の日米関係論を吹き飛ばす勢い。被治者(民主制、自治制においては統治者でもある)必携。
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投稿者:弥生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新書としてはかなり分量は多い部類に入りますが、行政の役割や構造などはこれを読めば知識が増え、ニュースなどでも理解できる部分が増えると思います。
紙の本
矛盾している。
2018/09/19 20:53
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投稿者:express455 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一文一文は、一見、しっかりと記載されているように読めるが、前後の文脈と矛盾している記載が見られる。著者の意見を正当化するレトリックだと感じた。政治と行政の関係を読むだけで内容が矛盾しているのがわかる。
また、国の政治は民主主義による自治に変わったので、地方自治が阻害要因になるという考えが成り立ちうるが、両者は親和するとの命題を立てておきながら、国の地方自治に対する官治と説明したり、きちんと結論を出していない。
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20180414〜0503 「行政学」にちょっと興味があって入門書のつもりで読んでみた(^_-)-☆のだが、いわゆる入門書かと思ったら違った。著者の語り口となかなかアグレッシブな主張と皮肉に巻き込まれてしまう。以下、本文より引用。
・政治家が戦争指導をするのではなく、戦争遂行によって政治家が生まれるーー
・大蔵省解体(財金分離)は、むしろ主計局内閣移管を阻止した
・国家は手段であるにすぎないならば、それは真の意味の何をやってもよいという、有害かつ危険な内容を持つ、絶対的な最高権力という主権ではない。
本書を読んで、逆に行政学の入門書を読みたくなった。私は”行政側”の人間じゃないけどね('◇')ゞ
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多少ボリュームはあるが、日本の行政に関する概観を述べており、読みやすい。
特に印象に残った点を述べるとするなら
・民主主義における行政の役割:民衆→政府→行政→民衆…というループがあるということ。そして、身内からの支配によって民衆が納得するのだから、行政が時折反発を受けるのは、このループがうまくいっていないということ。
・省庁共同体によって行政の内部が動いているということ。
の2点である。
またこの本の中で筆者は度々「主権」という言葉に疑問を呈している。それに関しては詳しくは述べられていないが、この本の中で読み取れる範囲では、支配・被支配という強い関係性が現れてしまうからという理由で筆者が「主権」という言葉に反発していると考える。
民主主義と主権という言葉は不可分かと思っていたが、そうではないのかもしれない。
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直截的というか、身も蓋もない表現で「行政」という複雑怪奇な存在の本質に迫ろうとする好著。以下は特になるほどと思った箇所(引用ではなく要約)
・与党政治家も野党政治家も、党派的選好を持った「一部の奉仕者」にすぎない。政権党に忖度する日本の官僚は著しく政治的中立性を欠いているが、万年与党の価値判断以外が政権・与党政治家によって示されることはないため、そのことが自覚されることはない。 pp.41-42
・国会と内閣が立法した内容を自治体が執行することで、国政では形骸化している立法権と行政権の分立が国・自治体をまたいで成立する。 p.59
・日本国憲法の世界観は、平和的生存権・自由権>民主主義>国民主権>憲法>法律 p.95
情報公開法は「情報自由権」を国民主権と民主的行政の手段として、それらより下に位置付けられており、憲法の世界観とフィットしていない。 p.97
外国人参政権を認めないことは、国民主権という下位価値が民主主義の原理(統治者と被治者の一致)という上位価値を毀損することになる。 pp.150-151
・ポツダム宣言により「国家の主権」は消滅しており、実質的には日本は「本国」である米国の「植民地」または「自治領土」となった。 p.163
・日本の対外主権は二面相的。合衆国が外国としてのアメリカと「本国」としての米国という二つの顔を持っているから。 pp.165-166
・通常「民主的」とは公選職政治家による行政職員の指揮監督の強化として理解されるが、戦後改革では、特権官僚による身分制を打破することを意味した。 p.209
・文民統制の補完メカニズム(防衛参事官制度など)は1990年度から弱体化し、現在では「本国」=米国の文民統制(誰が大統領になるか)だけが日本の文民統制を補完するメカニズムとして機能している。 p.290
・転職の口があって免職を恐れない職員は組織の統制が効かないので、行政職員が民間でも通用する専門職資格を持っているのは避けるべき、となる。 pp.297-298
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http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480071286/
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日本の行政を支配、外界、身内、権力の4つの視点から概観。理論的、学術的に語っている部分もあれば、明治以降の行政の歴史、高級官僚の生態、日米関係などリアルなパワーバランスに迫った項目もあり、ボリュームの割に飽きさせない。
特に面白かったのは、①日本の戦後行政をアメリカ『本国』による代行支配として捉えていること。政府には異論もあろうが、ある意味スッキリした理解。②地方公共団体や警察に関する中央と地方の明治以来の関係と歴史。地方は地方自治が基本かと思ったら、明治には町村に限られ県や市には官選知事や市長がおり、郡も国による支配の名残だった。③官僚制の戦前と戦後の異同、特に継続性(軍だけが異なる)、④大蔵省の支配は国全体を見るという視点から政権と結びやすく制度の必然であったこと。
読み物としても、辞書としてもまあまあ面白い。