オスマン帝国の歴史、政治形態、文化的アイデンティティと、現代にまで至る複雑な民族対立について詳細に語ってくれる一冊です!
2020/03/02 10:01
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、歴史的に栄華を誇りながら、あっけなく解体してしまったオスマン帝国の歴史、政治形態、アイデンティティなどに迫りながら、同時に文化的視点、さらに今日に結び付く複雑な民族構成とその対立についても言及した画期的な一冊です。同書は、「第1部 民族国家と文化世界」(一つの世界の誕生以前・民族国家への憧れ・「西洋の衝撃」としてのネイション・ステイト)、「第2部 イスラム世界」(イスラム世界の構造・イスラム世界秩序・アイデンティティ、統合、共存)、「第3部 オスマン帝国」(イスラム的世界帝国としてのオスマン帝国・「パクス・オトマニカ」の構造・「西洋の衝撃」とナショナリズム・「多宗教帝国」の試み・帝国の終焉・エスニック紛争の「入れ子構造」化)という内容構成になっており、非常に読み易く、よく分かります!
バルカン・中東の紛争の根源
2021/05/31 19:46
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投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
バルカン半島や中東で起こった民族紛争の原因をオスマン帝国崩壊の過程を追うことです探っている。イスラムの元で不平等ながらも共存していた各民族が西洋から国民国家の思想が入ることでバラバラになっていく様がわかる
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題名はオスマン帝国の勃興とその落日のようだが
主役はそこでなはなく
現代でも主要な民族紛争の舞台である
バルカンおよびパレスティナ
その原因のひとつとして地域的特性を挙げ
近代以前のオスマントルコによる統治と
近代以降の
西洋ナショナリズム(ひとつの民族ひとつの国家)による
「西洋の衝撃」を解く論考
近代西洋における国民国家思想と現実はなぜ生まれたか
その対比として近代以前のイスラム世界はどうあったか
そしてそれを継いだオスマン帝国が影響力を失っていき
トルコ共和国となっていく過程で何が起こったか
というようなことが説明される
当然ながら民族紛争はイスラム西洋間のみの衝突でなく
歴史という大局からは現実への反抗に際しての
宗教とならぶ旗印でしかないはずではあるが
民族の一体という夢が多くの人々の独立欲を駆り立て
そして帝国主義に対抗した原動力であるのもまた事実
平穏と豊かさを誰もが求める一方で
公共にそぐわなくとも個人利益と功名を求める欲こそが
世界を前に進めてきたのもまた現実
ローマもイスラムもモンゴルもアメリカヨーロッパも
現代中華も
世界国家であるところに大きな華があった一方で
停滞と退廃があり
小国家の貧しさと引き換えの盲目の幸せと
いずれが優れた世界システムであるかは難しい
寛容も合理も総論反対しようがないが
その匙加減に誰もが納得することは有り得ない
歴史は現実と向き合って
全ての歴史の構成者が
よりよく賢明であるべきを示唆するが
答えを教えてくれるわけではない
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最高に勉強になった
ただ、最初の方に、オスマン帝国の歴史をざっとまとめてあるが、それでもその部分は長く、早く本題に入ってほしいと思った。
割と薄い本だが、オスマン帝国が、その版図にあった現代の国家に与えた影響を考える上では重要。
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イスラム教を母体とするオスマン帝国について学ぼうと手に取った。
著者によると、オスマン帝国時代、いわゆるイスラム世界は、他宗教を排他的に扱うのではなく、他宗教に課税等の義務を課しながら共存する社会を構築していたという。本著ではイスラム教の融和的な側面に焦点が当てられている。
人間というのは、宗教や民族、肌の色、言語、出自地域などで括ることができる何らかのまとまりに固執し、かつ政治の多数派になることにより、生活の安定若しくは優位性を確保しようとする。そして結局は多数派と少数派の間で諍いが生ずる。これは科学がいくら進歩しようと人類の根っこの部分に残る抗えない性なんだろうか。
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オスマン帝国の歴史に触れたくて読み始めたところ、第1部が理論編で思いのほか難しく、うぅ、これは厳しいかも…と、尻込みしそうになりましたが、我慢して1部を読んだら、2部以降が俄然面白く読み切れました。
構成の妙ですね。