フランスの小説家アレクサンドル・デュマ・フィスによる実際の体験をもとにした作品です!
2020/05/10 11:54
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、フランスの劇作家であり、小説家でもあったアレクサンドル・デュマ・フィスが1848年に実際の体験を基にして書いた長編小説です。同書における主人公のモデルはかつて著者が交際していたマリー・デュプレシという高級娼婦であるとされ、恋人アルマンのイニシャルである「AD」は著者のイニシャルと同じです。この作品は人々に愛されて幾度も舞台化、映画化され続けてきた作品で、演劇に写実主義を初めて持ち込んだ作品として有名です。内容は、パリの社交界で金持ちの貴族を相手に奔放な日々を送る美貌の高級娼婦マルグリットですが、彼女はある日、青年アルマンと出会います。初めて真実の愛に目覚めた彼女は、これまでの享楽的な生活を捨て、パリ近郊の別荘で二人は暮らし始めるますが、そこへ訪ねてきたのはアルマンの父でした。その後、この二人はどうなるのでしょうか?続きは、ぜひ、同書をお読みください。
報われてほしくなる
2020/02/17 00:47
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投稿者:ワズ - この投稿者のレビュー一覧を見る
THE身分の違う者同士の恋愛、といった感じです。女性側が本当に綺麗な心の持ち主で、その美しさに何度も胸が締め付けられました。
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本気の恋とはいえ、うまくいく見込みの少ない恋は物語だけにしたいものだ。数字が詳細に書かれていて、金のかかる恋だということがよくわかる。自分はこんな恋はしたくないな。しかし、主人公は幸せだったのだろう。すくなくとも、幸せだったときもあったのだろう。
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La Dame aux camélias.
アルマンとマルグリットの恋愛物語。
筆者がアルマンの話とマルグリットの日記を元にこの小説を書いているという設定。
二人の純愛と、高級娼婦という肩書の為にその関係が崩れてしまうという悲劇的な物語を書いている。読みやすく、いつの時代も変わらない男女の純粋な心が描かれている。マルグリットのモデルはマリ・デュプレシス。1824年にノルマンディーの貧しい家に生まれ、父にロマの一団に売られ、パリにたどり着き、高級娼婦となる。彼女は貴族に劣らない気品と教養を身に着けていた
。教養を与え、美意識を育てたのは彼女を見初めた青年貴族ギュッシュ公爵。かなりの部分が筆者アレクサンドルデュマフィスとマリ・デュプレシスの実話。本書の二人の手紙のやり取りなども、ほぼ同じ内容のものが確認されている。胸が熱くなる一冊。
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泣ける。マルグリットは悪女だ、という風に描かれることも多いけど、どちらかというと娼婦という人生を歩まないといけない女性が、その中でどうやって愛を貫くかのお話だった。
いつの時代も、相手にちゃんと話さないこと、ミスコミュニケーションにより起こる悲劇は鉄板だなと。意外と自分の人生でも起こるんだよなぁ。
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悲恋です。
主役のアルマンと高級娼婦のマルグリットが出会い、激しく燃え上がる恋愛をし、一時的に穏やかな生活を送り、家柄の関係で引き裂かれ、生きている間に二度と再会できなかったお話です。
妹の婚約者であり、結婚相手が「彼らが仲たがいしないのならば妹とは結婚しない(=親族に娼婦がいるような家の娘とは婚姻しない)」と言い出したことが彼らの関係に終止符をうつ結果を生み出したところが憎らしいです。実質手を下したのはアルマンの父親でマルグリットが真実アルマンを愛していたこと、彼女が娼婦を生業にした過去があったとしても今は、たただひとりの男を愛する善良な女でしかないことを理解しても「別れてくれ」としか言えなかった現実にやるせなさを感じました。
マルグリットはアルマンと関係を解消した後、彼からひどい仕打ちを受けますが、それでも彼を憎むこともできなければ忘れられることもできません。病に侵されベッドの上でひとり、昼夜襲いくる息もできないほどの壮絶な苦しみを味わいながら再び愛した人が来てくれることを期待し待ち続けながら…この世を旅立ちます。
物語の後半は、このマルグリットの日記を呈した文章なのですが悲しい気持ちでいっぱいになり泣きながら読みました。
あまりにも切ない男と女の話でした。
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19世紀、著者の実体験を元にした恋愛小説。金持ちを相手に享楽的な生活を送る高級娼婦が真実の愛に目覚める。
ズバリ泣ける話だ。冒頭からもう、悲劇のニオイがぷんぷん。一体何があったのかと興味を引く、聞き手を配して一人称で語らせる構造もうまい。エンタメの洪水に慣れすぎている現代人にとってはベタな展開といえるかもしれないが、この手の物語の源流のひとつなのだろう。
父親によって諭される、恋愛における現実的な視点が痛烈。若いころは先のことを考えられなくなるほど燃え上がる情熱も、何年もたてばどうなるか。娼婦であるがゆえの社会的なハンデ。さらに家族の問題を出してトドメをさしてくるが、この父親は人格者であり読者も憎めないと思う。青年アルマンによって純粋な愛に目覚めた高級娼婦マルグリットがとる決断と行動。愛憎が絡み合うすれ違い。日記という形で伝えられる本心が、涙なしには読めない。清らかな愛は往々にしてお金の問題や社会という現実に押しつぶされるものだ。美しい心根を受容できないこんな世の中こそ、非劇の温床というべきだろう……。
作中では頻繁に「マノン・レスコー」が引き合いに出される。登場人物たちにとって重要な本であり、ネタバレもされてしまうので、本作の前に読んでおいたほうが良い。
さらに本作「椿姫」の光文社古典新訳文庫版は、翻訳者の違う2バージョンが存在するので注意が必要。今回は最新の永田千奈訳を選んだ。
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軽い気持ちで読み始めたら思いの外すごくよかった。アルマン……仕方のないやつ……。
解説に載っていて覚えておきたいと思った言葉。477ページ。
『ジャンルとしての小説には固有の知恵があり、その知恵は個々の小説家よりもすこしばかり聡明である。そしてこの「小説の知恵」に耳を傾けず、みずからの小説よりも聡明たらんとする小説家がいるとすれば、その小説家は職業を変えるべきだという。』
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光文社のこの文庫は古典でもすごく読みやすい!
恋愛ものはあまり読まないけれど、これはとても引き込まれた...アルマンしっかりして!マルグリットを信じて!って心から最後の辺りは思ってた笑
知らず知らずのうちにマルグリットの人柄に惹きつけられていった。
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他作品に引用され登場したのを懐かしく思い、新訳にて再読。
読みやすく、分かりやすい訳にとにかく驚いた。
訳本にありがちな妙な言い回しがひとつもなく、美しく流れるような表現のおかげで、作品の純愛度が増したように思う。学生の頃は悲恋に憧れ、作品に没入した印象だったけれど、今回は違う選択をした場合、に興味がわいた。
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◆情熱の都パリ、そこで生まれた愛◆
19世紀中ごろのパリ。高級娼婦マルグリット・ゴーティエは、常に胸元に椿をつけていたことから「椿姫」と呼ばれ、贅沢三昧の日々を送り、心身が摩耗していた。そんな時、アルマン・デュヴァルという青年が彼女に恋をし、アルマンの誠実な愛にマルグリットも次第に惹かれ始める。しかし、その幸せはマルグリットの死によって別たれ、物語は彼女が残した最後の手記にて紐解かれる。パリ社交界を舞台とした人気オペラをご堪能あれ。
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1848年発刊。映画はもちろん、オペラや演劇、バレエやミュージカル、はてはマンガにとさまざまなメディア化がされている本作。フィクションでありながら、著者自身が二十歳の頃に、高級娼婦マリ・デュプレシスに惚れ込んで散財した経験がもとになっており、彼女の最後を知るにいたり、いったいどこまでが事実なのだろうと、読後は考えさせられました。ちなみに、著者は『モンテクリスト伯』で有名な、アレクサンドル・デュマの非嫡出子。この小説は23歳のときの処女作ゆえ、マリとの恋愛にかかる金銭は、父に助けてもらったのかもしれないですね。
話しは、作者(私)が街の通りでポスターを見かけたことから始まります。そこには高級娼婦が亡くなり、彼女が抱えた借金の返済のため、遺品が競売に出されるとのこと。彼女の名前はマルグリット・ゴーティエと言い、作者(私)は小説『マノン・レスコー』を競り落としました。その本を開くとアルマン・デュバルなる人物が、マルグリットに本を送った献辞が書かれていました。競売が終わり、家も貸家となって数日後、そのアルマンが落札者名簿を見て訪ねてきて、彼女との思い出のため譲って欲しいとのこと。作者(私)は落札額も顧みずに譲り渡しました。後日、アルマンのもとを訪ねた作者(私)は、アルマンがかつてマルグリットと恋仲であり、その純愛と悲劇の恋物語の顛末を聞かされたのでした……。
『マノン・レスコー』に影響されつつも、こちらはヒロインのマルグリットの容姿が書かれていたり、心の内も垣間見ることができ、マノンのような不思議ちゃんのまま終わっていないのがいいですね。また、ここに書かれいるのは、普遍的な純愛ですが、相手が高級娼婦ゆえに、時代背景を考えたときに幸せな結末が見えない男女の心の葛藤が、よく描かれている傑作だと思いました。ただし、終盤に近づくに従い、まるでアルマンがフォースの暗黒面に落ちてしまったかのような、胸が悪くなるクズっぷりに萎えましたけど……。マルグリットが高級娼婦という職業のため、恋が成就してもなお疑念を持ち、まるで子供のような振る舞いでマルグリットを傷つけて追い詰めて行くのは、読んでいてつらいものがありましたね。
正誤(初版)
P196の14行目:
間違いではないですが、”溶接”という言葉が出てきます。1848年に、現代で一般的に思い浮かぶような溶接技術は確立されていませんし、”溶接”という言葉もありませんでした。ちなみに手元に岩波文庫があるのですが、こちらは”蝋(ろう)づけ”です(94刷 P140の18行目)。ちょっと違和感を感じたので書いてみましたが、”蝋(ろう)づけ”で訳して注釈に「溶接のようなもの」とでも書いてあればいいのにと思いました。
追記:
古典の海外文学は、出版社違いや翻訳者違いが存在します。『椿姫』も複数社から出版されていますが、手元に岩波文庫があるので、マルグリットのセリフを掲載しておきますので、違いを感じていただけたらと思います。
岩波文庫 :
1934年8月15日 第1刷発行
1971年1月16日 第42刷改版発行
2014年4月4日 第94刷発行
P112の3行目から
「だけどあなた、いったいだれを相手にしていらっしゃるおつもりなの? あたしは処女(きむすめ)でもなければ公爵の奥様でもありませんわ。あなたとはきょう初めておちかづきになったばかしだし、なにもあなたからあたしのすることをかれこれ言われるって法はないわ。仮りにもし、あたしがいつかあなたの言うことをきくようになったところで、あなたのほかにまだまだ好きな男が何人もあったんですからそのことは必ず承知していてくださいよ。今からもうやいているんじゃ、この先どうなるんでしょう。あなたのような方あたし見たことはないわ。」
光文社古典新訳文庫
2018年2月20日 初版第1刷発行
P158の8行目から
「私を誰だと思っているの? 私は純情無垢な少女でも、公爵夫人でもないのよ。今日知り合ったばかりのあなたに、私の行動についてとやかく言われる筋合いはないわ。たとえ、いつか、私があなたの愛人になる日が来るとしても、あなた以外の男性と関係を持ちつづけることだけは覚悟しておいていただかなくてはね。こんなふうに初対面のうちから嫉妬(しっと)なさるようでは、先が思いやられるわ。まあ、この先もおつきあいが続けばの話ですけれど。あなたみたいな人、初めて見ました」
岩波文庫の方が高級娼婦ぽい語り口調です。雰囲気も良くでてると思います。ただ、平仮名が多すぎて読みにくいですね。あと、戦前の翻訳本で戦後に改版はされていますが 」 の前に句点(。)があるなど古さを感じます。
一方、光文社古典新訳文庫は、若々しいお嬢様のようです。これはこれでアリかな。新訳というだけあって読みやすかったですよ。
ご参考に。
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アレクサンドル・デュマの『椿姫』です
と言っても『三銃士』や『モンテ・クリスト伯』で有名なアレクサンドル・デュマじゃなくて息子の方です
光文社では作者名はデュマ・フィスとなっていますね
フィスはフランス語で息子という意味だそうですが、自分には「大デュマ」「小デュマ」って言い方のほうが馴染みがあります
昔はそう言ってたよね
デュマ・フィスなんて小洒落た言い方はしてなかったな〜
はい、まぁ中身ね
まぁ、あまりに有名なので今さらなんですが、悲しい!あまりに悲しい!
それにしても19世紀のフランスが舞台なのに、もう主人公たちの気持ちが分かる!痛いほど分かる
だからもうつらい!苦しい!
しっかり哲学的な話込め込めのTheフランス文学!なので苦手な人も多いかもしれないけど、やっぱめちゃくちゃに読みやすいので、フランス文学に興味がある人はここから始めてみてもいいかも
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フレーズの一つ一つが心に染み渡ってくる。オペラで知っている(オチを知っている)状態でこれほど心を揺さぶってくる作品はなかなか巡り会えない。
恋と哀れみが入り混じって、ある女性のことをずっと考えてしまい、自分の手で守りたいと思う純粋な優しさと、自分のものにしたいという独占欲が爆発している状態。マルグリットのような女性に出会ったことも、これに似た大恋愛をしたこともないのだが、アルマンの気持ちが痛いほどわかる。
一方で、マルグリットが嘘をついていると疑い、彼女が困るようなこともしてしまうアルマンの未熟さに苛立ちもした。大量の男を相手する娼婦が、胸の中で本当は何を考えているのかは男性には完全に理解しきれないのだろうが、マルグリットに関しては、一貫して素直に思った事を口にしていたことに気づけたはずだ。
馴れ初めは嫌な感じの印象だったが、再開した時には素直に謝ったし、まだアルマンを愛していない時期には、自分の気持ちはまだわからないことを正直に伝えていた。公爵に嫉妬したアルマンに対しては、嘘はつかず、なぜ公爵との関係を切れないか素直に全て話していた。
唯一アルマンに嘘をついていたのは、アルマンを愛するようになり、アルマンを思いやる時だけだった。借金返済のために、自分の馬や宝石を売ったことを黙っていた時。そして、父親の懇願でアルマンに別れを切り出した時。
アルマンが復讐のためにマルグリットに新しい彼女を見せつけるような仕打ちをしたにもかかわらず、マルグリットにはその魂胆がわかっていて、むしろ今でも自分を愛してくれている証拠だと思って喜んでいたことも、泣けてくる。
読者としては、元凶となったアルマンの父親への怒りが込み上げてきそうなものだが、最終的にお互いに敬意を払っていたことが伝わってくるので、怒ろうにも怒れない。ただただ悲しさだけが込み上げてくる。