タイトルが秀逸!
2021/07/13 21:54
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投稿者:ケイ - この投稿者のレビュー一覧を見る
難解な話を想像して長らく購入を迷っていた本。
時代も国も超越した不思議な設定。SFやファンタジーは苦手だけど、それとはまた違う。
日本の神話やエスキモー、原発、産業の変化、地域や世代による考え方の違い、進化や退化が入り混じって混沌としてるのに、アクがなくて楽しく読めた。
それぞれの個性が際立って魅力的。
「地球にちりばめられて」ました。
キラキラ、ドキドキ、ワクワク
2019/05/14 07:25
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投稿者:Fumiya M - この投稿者のレビュー一覧を見る
繊細な輝きを放つ作品でした。
どの登場人物たちも魅力的で、ページを捲る度に物語のなかへと惹きこまれていく。
久しく忘れていたドキドキ、ワクワクといった感情を思い出しました。
ただ、ラストの展開、描写共に若干駆け足だったかな? と感じてしまったので星ー1。
日本が海に沈んで・・・
2022/07/02 02:31
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投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
Hirukoという日本人留学生が国を失って、彼女に興味を持った言語学生のクヌート。場所がデンマーク。そこから国籍もジェンダーも使う言葉もちがいヨーロッパのあちこちを転々としながら奇妙な関係を描く小説。続編もあるらしい。
全く荒唐無稽すぎて草
2022/09/19 21:58
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投稿者:みなと - この投稿者のレビュー一覧を見る
物語の設定が意味不明。日本列島が無くなったという設定ですがなんで西洋人が「日本」という国名とぞの存在を全員忘れているの?
荒唐無稽すぎる。これってSFですか?それにしても設定が雑すぎませんか?
また小説の内容も登場人物の身の上話が多すぎて、登場人物同士の会話や動作が少ないので物語の進行を楽しめない。3分の1位読んだところでやめればよかった。
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作者の本をすごく好きな人がいる感じはよくわかる。
個人的には、震災の際の福島原発の爆発事故の影響で日本人が国を捨てざるを得なくなり、日本文化(というか寿司、出汁、日本語?)を欧州で継承する人々がつながるという発想が、いかにも欧州在住の人らしいと思えた。
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スカンジナビアで通ずる自作言語パンスカをはじめ、いろんな言語が飛び交うお話だった。
世界各地の多色な出自のひとたちが、糸を引き合って出会い、国際研究チームになる。
いろんな経歴・言語・文化のひとと会って話がしたくなった。
*****
家に帰ってからも語学の教科書に出て来る文章を必死で口に入れ、夜まで何度も噛み続けた。米をずっと噛んでいると甘くなって酒になると聞いたことがあるが、言葉も同じだ。消化不良で腹痛を起こすこともなく、オレはむしろ陶酔状態で最初の一年を過ごした。名前を訊かれると、スサノオと答えた。
Hirukoと出逢って、春のうたたね人生にも終止符が打たれることになった。終止符の後にはこれまで見たこともない文章が続くはずで、それは文章とは呼べない何かかもしれない。なぜなら、どこまで歩いても終止符が来ないのだから。終止符の存在しない言語だってあるに違いない。終わりのない旅。遠い国。形容詞に過去形があって、前置詞が後置されるような、遠い国へでかけてみたい。
「人間はある瞬間、悲しくて、次の瞬間は嬉しくて、気分がどんどん変わっていく。この町の空みたい。空が変わると、それを映している水の色も変わる。」
ある「職業」を持つ人になる、というのは幻想に過ぎず、実際のところ人間はある「場所」に置かれるのだ、と思った。
パンスカは、実験室でつくったのでもコンピューターでつくったのでもなく、何となくしゃべっているうちに何となくできてしまった通じる言葉だ。大切なのは、通じるかどうかを基準に毎日できるだけたくさんしゃべること。…まわりの人間たちの声に耳をすまして、音を拾い、音を反復し、規則性をリズムとして体感しながら声を発しているうちにそれが一つの新しい言語になっていくのだ。
*****
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描かれるのは、そんなに遠くない未来。
故国を失い、地球上で散り散りになった人たち。
独自の言語を生み出して、母語を話す人を探す旅。
国とは言語とは。
物語自体ももちろん良かった。
それ以上に、文章が素敵だった。
このリズム、空気、とても心地いい。
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故郷が消滅してしまったhirukoは、デンマークで独自に作った言語を話しながら暮らしている。故郷はどうやら日本のようなのですが、なぜ消滅したのかわかりません。ただ人々がすでに「日本」と言う国を忘れ去っているようなのです。悲壮感が漂う話のような気がしますが、巡り合わせた仲間たちと、母語を探す旅に出る事に刹那感はありません。思い出を探す旅のようです。ヒルコも日本の名前のようでそうでないような名前です。透明感のある不思議な世界にひたりました。
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読みすすめるほど凝り固まってる脳みそがゆるくほぐされて、クリアになってゆくような、気持ちの良い読書体験ができた。
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お初の多和田葉子さん。
実に心地好い文章を書く作家さんだこと。これまで読んでなくて損した気分。
近未来を舞台としたライトなSF? いやS(サイエンス=科学)ではない、L(literature=文学)かな。LF?
主人公は外遊している間に自分の国が消えたかもしれないHirukoという女性。独自の言語を作り出し、ヨーロッパ大陸で生き伸びている姿に興味を持った言語学研究者の青年クヌートと出会い、自分と同じ母語を話す者を探す旅に出るというお話。
キーワードは”母語”、というか”言葉”。今の世の中を先鋭化させた、誰もが難民となるよう近未来を舞台に、言語を手がかりに、人との出会いを通じ、言葉の可能性や、他言語・多言語とのハーモニーによる豊饒な文化の誕生の予感や、国や言葉や、性や時代をも越えて行きそうな豊かな試行錯誤(思考錯語?!)が実に楽しい。まだなんとも着地感のない物語ではあるが、どうやら続編も構想されているというので、ますます楽しみが膨らんでいく。
本書のタイトル『地球にちりばめられて』が、まさに端的に言い現わしているように、我々はたまたまちりばめられて、今、ここにいるだけで、どこにも属していない、何にも縛られていないという思いをずっと感じながら読んでいた。恐らく、登場人物たちの以下のような発言からも、著者もそんな思いを込めて書いているのだろうと思う。
「よくよく考えてみると地球人なのだから、地上に違法滞在するということはありえない。それなのになぜ、不法滞在する人間が毎年増えていくのだろう。このまま行くと、そのうち、人類全体が不法滞在していることになってしまう。」(Hiruko)
「ある「職業」を持つ人になる、というのは幻想に過ぎず、実際のところ人間はある「場所」に置かれるのだ、と思った。」(ノラ)
この不思議な浮遊感は、国という縛りから解き放ってくれる仕掛けを文章に仕込んでいる著者の匠の技によるところもあると思う。海外で暮し数か国語を理解するらしい著者の視点からは、「日本」という場所は見えていない。個々に、福井があり、新潟(あるいは北越)があるだけ。たまたま島国で、ほぼ共通の言語を話す人たちが暮らすが、歴史も文化も異なる。いや、むしろ異なっていることを意識せよとさえ言っているかのようだ。
大震災、原発事故、米軍基地問題、様々な問題が国の中枢から離れたところで起きていて、地方を切り離したかのような施策しか繰り出さない政府は、けっしてひとつの「日本」などと思ってはいないぞ、と作者は警告しているのかもしれない。「わたしの国」という表現は出て来るが、「日本」という単語が出てこず、地方の都市の名前だけを語る登場人物たちから、そんな穿った見方も可能ではないかと思えてくる。
あるいは、この浮遊感は、主人公Hirukoが語るパンスカという言語から来るものかもしれない。日本語の「なつかしい」を、パンスカでは、「過ぎ去った時間は美味しいから、食べたい」と表現する。
北欧4か国のどこでも通じるような簡単な単語を、単純な語順で並べて表現するHirukoが生み出した言語。ある意味、比喩のオンパレードなのだが、不思議と、モノゴトの核心を突いているようで面白いのだ。
日本語による文章だが、彼女は日本語にない単語を並べて、上記の表現を語っているというのがよく分かる。
そんな著者の巧みな言語操作も読んでいて実に楽しい。
言語研究者クヌート、消え去った国の放浪者Hirukoらの旅は、この先もしばし続くようだ。共通の母語を操る仲間を求める旅。 アイデンティティの確認なんて安易な結末ではない、何か未来に開けた、素晴らしいものになっていくことを期待したい。
「僕らはみんな、一つのボールの上で暮らしている。遠い場所なんてないさ。いつでも会える。何度でも会える。」(クヌート)
彼らとまた会える日を楽しみに・・・。
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祖国がなくなるということ,真剣に考えたことがなかったけれど,それは母国の言葉を失うと言うことだと気付かされた.神話めいた名前を持つHirukoの言葉の遍歴,あるいは巡礼は,クヌートを始めとして出会った人を巻き込んで北欧,ドイツを彷徨う.世界中で失われていく言語があると言う中で,この物語は架空でありながら現実味を帯びたものとして心にしみてきた.そして,Hirokoの作る手作り言語が興味深く,また紙芝居も楽しかった.
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多和田さん2作品目。
やっぱり多和田さんの文章好きだな、としみじみ思い、夢中になって読み進める。
多和田さんの言葉遊びに何度もクスッとなる。
ヨーロッパ留学中に故郷の島国(日本)が消滅してしまった女性Hirukoの物語。
永遠にあるはずの祖国が無くなるなんて…考えたこともなかった設定にただただ驚く。
地球規模で見た「日本」を改めて見ると、なんと不思議でちっぽけな島国だったのか、と複雑な心境になった。
(そんな風貌の人達が暮らしていたことを歴史地理の授業で習った…のインド人の発言にはショック)
自分の祖国も母語も無くなったHirukoは大陸で生き抜くために新しい独自の言語を作る。
その逞しさと自由さが清々しい。
そして世界の何処かにいるはずの同郷人を探す旅に出る。
移民として大陸を渡り歩き、自分の求めるものを探し続けるHirukoの強さに感動した。
旅の途中で出逢った、国も言語も異なる仲間達との交流もまた素晴らしい。
仲間の一人のセリフ「僕らはみんな、一つのボールの上で暮らしている。遠い場所なんてないさ。いつでも会える。何度でも会える」がとても印象的。
これからも何処へでも並んでボールの上を歩く仲間のいることが羨ましい。
他の多和田作品も読みたくなる一冊だった。
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元々全く別の人生を送っていた登場人物たちがいつのまにかひとつの同じ旅路に誘われて、点と点が線で結ばれていく感じが面白い。
相変わらず多和田さんの言語感覚、言葉遊びは、日本のみに住んでいるひとにはない感覚で楽しい。
多和田さんの作品は総じて好みながら、センスのない私には難しく冗長に感じることもあるが、今回の作品はテンポも良いし、一章ごとに語り手が変わったり、SF的な設定も面白く、飽きない。
多和田さんがインタビューで語っているように、「越えていく」ことの面白さが爽快な作品。わたしも柔軟性を持って、言語や世代をときには超えることを恐れずに楽しみたい。
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カタカナの名前が続出するので,メモを取りながら読んだが,未来小説なのか,異次元の世界を現したのか,言葉自体が国に縛られない自由な世界を描いていると感じた.自作の言語パンスカをしゃべるHirukoはメルヘン・センターに勤めているが,自分の国(日本?)が消滅したと聞いている.ひょんなことからテレビ出演し,デンマーク大学の言語学科の院生クヌートと知り合う.その後,アカッシュ,ノラ,ナヌークらが登場し,話が混乱してくる.Hirukoは自国人との会話をしたい願望があり,Susanooがその可能性があると踏んで,探し回る.最後の鮨屋で全員が集まる場面は楽しめた.ドイツ語,スウェーデン語,デンマーク語,それにパンスカ...著者の言語的な多様さが示された作品だと感じた.
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・私はテンゾの言うことを信じなかったわけではない。ただ、動揺している自分自身に動揺しているのだった。私は一人で暮らすことに慣れていたのに、しばらくテンゾと一緒に暮らしただけで家の中に別の身体があることにすっかり慣れてしまっていた。「慣れる」というのはゆるい言葉だけれど、慣れから引き離されそうになった時に、人は自分の中にいつの間にか感情の大木が育ってしまっていることに気づく。
・ローマ帝国を舞台にした歴史恋愛小説で、中にこんな一節があった。「異民族の娘がユリウスの心をとらえ、恋がどこまでも膨張していくのと同様、ローマ帝国も国境知らずで、休みなく膨張していった。この国の領土はグレイゾーンに囲まれていて、誰がローマに従属していて、誰が外部者なのかは曖昧である。曖昧なままグレイゾーンが広がっていく。遠い土地の出身者でもいつの間にかローマの中心に入って、最上階まで出世上昇していくこともあった。」
・俺がテーブルに何気なくのせた片手にノラが自分の手を重ねると、テーブルが身ごもって、内側から輝き始め、倒れたコップからモーゼル川が流れ出した。川の水の中では無数の光の子どもたちが踊っている。みんな俺たちの家族だ。
快楽の川にどっぷり浸かりながらも同時に、俺は自分がノラの動かす小さなローマ帝国の一部になってしまうことに不安を感じ始めた。何をしていてもそれが自分の意志なのか、ノラの計画したことなのか、区別できなくなってきた。俺が俺であることを保っていられる唯一の領域は、コペンハーゲンに来るまでの記憶だった。
・「人間はある瞬間、悲しくて、次の瞬間は嬉しくて、気分がどんどん変わっていく。この町の空みたい。空が変わると、それを映している水の色も変わる。」
・昨日はそんな気はしなかった。新しい単語を学んで一晩寝て翌朝目が醒めると、記憶が二つに割れていて、ずっと前にすでにその単語と出会ったことがあるような気がしてくることがある。
・「どうしてこういうロボットを造らんの?」「こういうロボット?」「本物の人間みたいなロボットや。」
「ロボットはロボットらしいのが一番。人間と見分けのつかないようなロボットを開発するのは時代遅れだ。それに危険だ。おぼこい子たちには、ロボットの言うことを鵜呑みにしてほしくない。」「どういうこと?」「ロボットのしゃべる言葉は言葉ではない。数式だ。」
・「君の顔、どこかで見たことがある。なつかしい。」
自分で言っておきながら「なつかしい」という言葉は霧でできているようで、その霧の中をわたしはおぼつかない足取りでふらふらと彷徨っているのだった。自家製の言語パンスカを話している時の方がずっと足元が確かだ。パンスカならば、「なつかしい」と言う代わりに、「過ぎ去った時間は美味しいから、食べたい」という風に表現したかもしれない。そう言った方がずっとピンとくる。
・「これもナヌークに聞いた話ですけれど、あなたは福井の出身だそうですね。いいですね、福井。わたしの故郷は新潟なんです。でも誰も新潟なんて言わないで、北越と呼んでいました。県名は嘘つきだって言うんです。県なんて国��部品に過ぎない、部品は壊れたら捨てられるだけだ、だから県人であることはやめて、真にローカルな人間になるっていうことでしょうかね。あなたの故郷はどうですか。まだ福井って言っているんですか?もっとも幸福の福という字が付いている県名は捨ててしまったら、福にも見捨てられそうで不安ですよね。福という漢字のへんは、神々に捧げる生け贄の置き台の形なんだそうですよ。つくりの方は、酒樽です。昔、お酒を神々に捧げる風習がありましたよね。みきって言葉、覚えてますか。キミの反対のミキです。神々に捧げるお酒。ところでこのお店、お鮨屋さんですよね。お酒出すんですか。」
・「やりたいことっていう言い方、なつかしくないですか?独特の言い方ですよね。これをヨーロッパの言葉に文字通り翻訳するのは簡単だけれど、でも、それとは違うなって気がするんです。ヤリタイコトって自我って意味で使われてませんでしたか。自分は何者なのか、ということにしないと問いに答えるのは難しいけれど、自分のやりたいことが見つかれば、人生の答えが出たみたいな気になる。やりたいことが分からない人間は、とんでもない道に迷い込んでしまうんじゃないかって周りも心配したりして。親とか友達とかに若い頃、おまえのやりたいことは何なんだ、とか訊かれたこと、あるんじゃないですか?」
・ナヌークは少し照れるようにうつむいて、
「まだ下手です」
と言った。わたしは目を細めて、「下手」という言葉を楽しんだ。イチゴには「へた」がある。「わたしには下手があります」と言ってみたい。イチゴみたいにへたが頭についているので上手にはなれない人たちは下手なのだ。下手は楽しい。
・「彼女は僕の恋人なんだ。」
おふくろの顔の動きがとまった。Hirukoがまたくすっと笑って、
「恋人は古いコンセプト。わたしたちは並んで歩く人たち」