情報交換の方法の重要さ
2019/02/12 17:14
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投稿者:K2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
情報や情報交換について、社会心理学的に考察する。情報交換の方法や、その違いによる情報内容の変化に注目。人と人との関係性は、情報交換の方法と無関係ではあり得ない。「選択的人間関係」という考え方は、現代社会の一面を言い当てていると思う。同世代の著者なので、取り上げられた話題に懐かしいものが多く、楽しめた。
パーソナルな関係性を通じて広まる情報
2024/08/04 09:31
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投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
「うわさ」について、古典を紐解き、ネット社会到来による変容等を考察し、その正体に迫るとともに、付き合い方にも言及した本。「うわさ」とは、「パーソナルな関係性を通じて広まる情報」。結果的に事実でないものが「うわさ」で、事実であるものは「口コミ情報」となる。情報を鵜呑みにしないで、自分なりにチェックできるかが肝要。なお、うわさの一類型として、「都市伝説」に第3章と第4章の2章を割き、ネタとして楽しむために語られ、現代のフォークロアとしての地位が築き上げられた過程等に納得。とても面白かったです。
古くて新しいメディア~うわさ
2014/05/12 19:56
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投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
「うわさ」について社会心理学の観点から考察してみましたという、ややお堅い本です。軽い気持ちで読むと、結構疲れますので要注意。
本書では、うわさを「人から人へとパーソナルな関係性を通じて広まる情報(16ページ)」と定義付けています。そして、デマ・流言・ゴシップ・風評・都市伝説等についても広く「うわさ」と捉え、こうしたうわさは、どのように発生し、どのように広まるのか、うわさを拡散するメディアとの関連性は、近年のネット社会におけるうわさの特質は、といったことを、様々な事例を紹介しながら丁寧に分析しています。
ところで、本書を読んでいる際に、タイムリーに「美味しんぼ」問題が発生しました。明確な科学的根拠がないにもかかわらず、「福島に行ったら鼻血が出る」という噂を世の中に拡散させようとする漫画家の意図は良くわかりません。
ただ、政府の公式発表に信頼感がない場合に、この漫画のような風評が発生するようです(237ページ)。そして、こうした悪質な風評被害に立ち向かうためには、『「気の毒な風評被害」ではなく、「わがこととしての風評被害」と捉え、一人ひとりが行う推測や解釈、判断が、風評被害対策として一番効果的(243ページ)』であり、それには、「普段からさまざまな情報に継続的に接触していく必要性がある(242ページ)」ようです。
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≪目次≫
第1章 うわさの影響力
第2章 うわさを考えるー「古典」を繙く
第3章 都市伝説の一世風靡ー1980~90年代
第4章 人と人をつなぐうわさ・おしゃべり
第5章 メディアとの関係ーネットとケータイの普及の なかで
第6章 ネット社会のうわさー2010年代の光景
≪内容≫
「古典」的な研究から現代のネット社会までを見通した「うわさ」の概説書。非常に教科書的でわかりやすい。
通常の「うわさ」に対する悪い印象(関東大震災時の朝鮮人暴動ネタなど)だけでなく、東日本大震災時のボランティアの話など、が斬新だったし、「うわさ」とコミュニケーションとの関係(対人関係の潤滑油的要素)なども気がつかなかった話だった。
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思っていたよりもライトな本だった。 個人的には、 『教養主義の没落』のようなヘビーさを勝手に想定していたので、 こんなもんか、 という気分だ。 しかし、 うわさとSNSとの関連が論じられている本はおそらく(存在したとしても)数少ないだろう。 一読する価値はあったと思う。
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トイレットペーパーの買い占めなんて、噂を超えて社会問題。最大の社会問題は関東大震災は朝鮮人の仕業というもの。
噂は既存の人間関係の中で広がっていく。
ハーバード図書館の噂
・今居眠りをすれば、あなたは夢を見る。今学習すれば、あなたの夢がかなう。
・あなたが無駄にした今日はどれだけの人が願っても叶わなかった未来である。
・勉強に励む苦しさは今だけであり、勉強しなかった苦しさは一生続く。
これって、ただの噂。
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フランスの社会学者ジャン-ノエル・カプフェレはうわさを「もっとも古いメディア」と呼んだ。ネットというツールの生まれた今、人々を惑わすうわさは、新たに何をもたらすのか。
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松田美佐『うわさとは何か』中公新書、読了。「根も葉もない」とも「火のないところに煙は立たぬ」と両義性をもって扱われるのがうわさ。対極の受容ながらどこか今ひとつわかりにくい。本書は古典的研究を踏まえた上で「ネットで変容する『最も古いメディア』」(副題)の特質を明らかにする。
石油ショック下でのトイレットペーパー騒動や口裂け女といった都市伝説、東日本大震災下におけるチェーンメールやSNSでの不確か情報拡散など、具体的事象を本書は精緻に検証する。事実性を超えた物語は以外にも人々のつながり(関係性)を取り結ぶことには驚く。
「もっとも古いメディアであるうわさは、太古の昔から現在も、そしてこれからも、情報を伝えるだけでなく、人と人との“つながり”=関係性を結ぶ。さまざまな新しいメディアによってうわさも人と人との“つながり”=関係性も変容する」。
うわさと聞けば、強烈な反発と「もしかして」という二者択一で議論されがちだが、冷静にその本質を腑分けする本書の議論は、その本質を把握したうえで、どのように「付き合っていけばよいのか」読み手に示唆する。現代を理解する上での非常に秀逸な一冊。
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情報とうわさの決定的な違いが分かった。情報は伝達することで授受することが目的だが、うわさは伝達そのものが目的。良くも悪くも伝達という行為で人はつながっていたい。だからそこにうわさというものが存在する。
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うわさの発生や影響力など。事例やデータが多め。2014初版
合理的な行動が引き起こす予期せぬ結果、興味深い。
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ツィッターをするようになってから、人気ランキング?をよく見るようになった。
みんなにシェアされていても、デマも沢山ある。、東大の卒業式での学部長が言った通り、一次情報に当たることや少し考えてみることは簡単なのだから、自分一人で留めるにしても広げるにしても、面倒くさがらずにやっていきたい。
まず真偽のわからぬまま、うわさとして広がり、偽なら事後にデマになるということが興味深かったが、全体として色々手を広げてしまっているように感じ、読みにくい本だった。
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本書を読んで興味深かった点をいくつか下に記す。
①「朝鮮人来襲説」
関東大震災後、日本にて流布したうわさ。最初は「朝鮮人が放火している」という話からはじまったそうだが、つぎには「井戸に毒を投げこんでいる」という内容に飛躍、さらに「朝鮮人が襲ってくる」というふうに変化した。このうわさに日本各地で自警団が組織され、最終的には「自衛」と称して朝鮮人やそれらしき人が虐殺されるに至った。とくに、朝鮮人が「井戸に毒を投げこんでいる」といううわさは、中世にユダヤ人が迫害され虐殺された際に蔓延したものとまったく同じ文句である。
②うわさの公式
ゴードン・W・オルポートとレオ・ポストマンの共著『デマの心理学』によれば、うわさの強さ(流布量)=当事者に対する問題の重要さ×そのうわさについての証拠のあいまいさ、という公式が成り立つという。著者は、この公式が掛け算となっていること、すなわちどちらがかけてもうわさは成長しないことに注目する。
うわさを科学してみるというべきか、たかがうわさなれど、冷静に分析するとじつにおもしろい社会現象である。いつの時代にもうわさはあり、歴史には明記されず仕舞いがほとんどだが、事件の背後にはかならずうわさがある。目にはみえないが大きな影響力をもつこの媒介物に視点をおくことで、いままで表面的にしかみえなかったものがより立体的に理解できるようになるかもしれないという期待感をもった。
③うわさはときとして真実を語る
清水幾太郎は『流言蛮語』にて、言論統制下のために顕在化が禁じられた世論が流言蛮語として流出するとする。対して、体制化にとって不都合な情報が「うわさ」とされることもあることを指摘する。こうなると、うわさはときとして真実の叫びにもなる。
④うわさは人と人との関係を結ぶ
著者は、共通の話題として、関わり合いの薄い人とでもうわさ話なら話がつづくという。気持ちの共有への欲求が、うわさ拡散の原動力となる。本書によれば、戦時下や災害時にうわさが流れやすいようだが、極対極となる際にうわさがはたす役割は大きいように思う。うわさは人をまとめる力があるが、そのうわさには仮想敵が存在する場合が多い。ユダヤ人しかり、朝鮮人しかり、だれかが自分たちの不幸を招いているというようなうわさがそれだ。うわさはよくもわるくも、社会の鏡となって人の心を映すようである。
⑤「連絡可能な知り合い」
若者を中心として、連絡先に登録されている件数が実際の友人数より圧倒的に多いことについて、著者は「連絡可能な知り合い」の増加ととらえ、「ケータイが電話以上に手軽で維持したい”つながり”=関係性を維持するために用いられていた」とする。著者の見解をあやまっているとは考えないが、はたして実際につながる連絡先はいくつあるだろうか。実際に連絡をしたことがある人はそのうちの何人なのだろうか。わたしも若者のひとりとして体感していることなのだが、連絡先の件数、SNSの友人数ほどあやしいものはない。ここで考察すべきなのは、なぜそうまでしてたくさんの連絡先を登録���、それを維持しようとするのかということではないか。著者は、うわさの肯定的な要素として、人と人とのつながりを生むことを説くが、そのつながりこそが若者をある種の強迫観念に晒す凶器になりうる場合もあるだろう。
以上、著者によって紹介された例や古典の名著などはどれも興味深く、より深く知りたいと思った。
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噂というと悪いイメージが強かったけど、本書は噂の良い側面と悪い側面の両方を取り上げていて面白かった。人の悪口や自己顕示欲を満たしたいがためのホラ話など、悪意のある噂が拡散する反面、役に立つ情報を他人にも教えてあげたいという善意からくる噂もあり、そうした噂が人々の関係性を新しく生んだり、既存の関係性をより強固なものにしたりと、プラスの働きをすることもあるというお話に納得。噂の本質を見極める判断力を持ちつつ、人間関係を円滑にするための良い噂を上手に利用して、これから過ごしていけたらいいと思う。
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うわさといっても、芸能ネタから風評、都市伝説等色々とある。そんな中、そもそもうわさとは何処から始まり、どうやって広まっていくのかを具体的な事例を挙げながら説明している。
現在は昔と違い、インターネットやメールといったものがあるため、風評被害含めてあっという間に広がり、あっという間に収束する特徴がある。また、なるほどと思ったのが、この広がりはパニックが原因ではなく、念のため知らせるや念のためやっておくといったどちらかといえば善意から発生している。しかし、その内容は各個人の考えが入ることで歪曲したものとなっている。
だから話がどんどんデカくなっていくのだろう。
こういったうわさの見極め方については、正直、冷静に耐性を持って対応するしかないとのこと。なぜなら、うわさは人間同士のつながりを持たせ、関係性を構築する重要な用件の一つだから。
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著者はケータイなどのコミュニケーションについて、学識に優れているひとらしく、インターネット以後のコミュニケーションについての解説が、わかりやすく深かったです。たとえば、メールの非同期性と記録性といった面から、メールの情報を伝えるメディアとしての性質、そして、メールでのコミュニケーションの性質をあかるみに出し、そういった面から、うわさの発生の仕方、伝達の仕方などを解いていく。インターネットの場合でも、その記録性や、増殖性、などを見ていって、うわさの伝達、発生、終息までを解いていきます。そういうところは一番おもしろかったです。ただ、本書の大半は、インターネット以前のうわさについてのものでもあり、そこらあたりに物足りなさを感じる人もいるかもしれない。しかし、うわさというのは、ただ情報を伝えるばかりではなく、ひととのコミュニケーションのネタとして役立つ面があったり、「おわりに」で書かれているように、<情報であると同時に、事実性を超えた「物語」である。>ということでもあるようです。