アーレント・ブームでの復刊か?
2018/11/10 22:17
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投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「不死身の特攻兵」ブームで菊池寛賞受賞者の高木俊郎の「陸軍特別攻撃隊」が復刊するように、アーレント・ブームで、あの読みづらい「エルサレムのアイヒマン」が判型が変わって出ているように、復刊したのだろうか?
ハンガリーでのアイヒマンの「仕事」の記述は簡単で、当時はまだ日本ではヴァレンベリが知名度が低いからか、彼の名前は出て来ない。メズーザーに「タルムード」の文句は入っていない。
中でも意外なのは、ソビボルに配属されたが、どんなところなのか、を知ってユダヤ人を殺さず、虐待もせずに、ユダヤ人達に生き残れるように言葉を残して転属していったシュヴァルツSS少尉という人物が出て来るところ。おそらくメンゲレのように負傷して強制収容所に配属された武装SS将校だろうが、まるでアウシュヴィッツにいた医官で、ユダヤ人の「選別」をしないで、ユダヤ人に見せかけの仕事を与えて戦犯裁判で無罪になったハンス・ミュンヒSS少尉みたいだ。著者には妹の村松英子と共訳の「おお、エルサレム!」がある。この本の著者達は「ドイツ軍最高の戦略家」と称されるも、ユダヤ人虐殺の命令を出した第11軍司令官のエーリヒ・フォン・マンシュタイン将軍麾下の第22歩兵師団の聯隊長だったディートリヒ・フォン・コルティッツ将軍を主要情報源兼主人公格にした「パリは燃えているか」を書いているが、「おお、エルサレム!」に出て来るユダヤ人の中にはフォン・コルティッツ将軍の言うところの「最悪の仕事」で身内を殺されたり、辛くも生き残れた人もいるかもしれない。南方軍集団司令官だったゲルト・フォン・ルントシュテット元帥の命令というものは初めて読んだが、シュヴァルツSS少尉は南方軍集団麾下の第6軍司令官で悪名高い「ライヒェナウ指令」を発したヴァルター・フォン・ライヒェナウ元帥の義理の姉妹のマリア・フォン・マルツァーン伯爵夫人と彼女が匿ったユダヤ人のように「零時」を迎えられたのだろうか、と思ってしまう。「失われた勝利」で一言もユダヤ人虐殺の命令を書かない、ユダヤ人の血で汚れた「偉大な戦略家」のエーリヒ・フォン・マンシュタインのような人物を「英雄視」するより大事な事だ。
大衆の中にいるアイヒマン
2022/05/07 17:42
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
絶対的な悪ではなくその凡庸さに、アイヒマンの危険性を感じました。ナチスドイツの選民思想と、日本の旧優性保護との繋がりも何とも不気味です。
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ナチスの歴史やその罪など、わかりやすく分析されていて、よかったです。組織だけでなく個人に焦点を当てて、興味深く読むことができました。
アイヒマンとは何者か
2018/11/17 17:05
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投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
アイヒマンとは平凡な人間である。そのような人間が、なぜユダヤ人虐殺に大きな役割を果たしたのだろう。アーレントが言う「凡庸な悪」なのであろう。本書は、アイヒマンの人物像を良くも悪くも明らかにしてくれる。
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投稿者:ハム - この投稿者のレビュー一覧を見る
ユダヤ人は謎ナチスドイツから迫害を受けなくてはならなかったのか。ユダヤ人とは何なのかということを、知れました。
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ユダヤ教から生まれたキリスト教のローマ征覇以来、ヨーロッパにおいてユダヤ人がどのような立場に置かれてきたのか。またそれがどのようにナチスドイツに受け継がれたのか。
はじめて、そういうことを知れた。
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【1.読む目的】
•関心のあるナチスナチズムについて理解を深める
(誤解のなきように、ナチスの所業は人類最大の愚行の一つだと思っていて、それがときに集団や組織としてまかり通ってしまうことに対して関心がある。)
•凡庸な悪、と形容されるアイヒマンの裁判記録からその人物像や危うさを知る。
【2.気付きや気になった点、面白かった点等】
•ふつうならできることではないし、してはならないことだ。しかし、われわれは嫌悪にうちかたなければならない。少なくともここで起こったことを人びとに告げるために、だれかが生き残らなければならない。
【3.感想】
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ユダヤ人(など)の大量殺人、ホロコーストにおける、主に殺害対象者の絶滅収容所等への鉄道輸送を一手に担ったアドルフ・アイヒマンの経歴と裁判記録。生き残りの被害者の生々しい虐待の経験の証言が第一部に置かれその後アイヒマンの経歴とナチ・ドイツによるユダヤ人迫害の経過が折り混ざったような文章が続く。 全体として、アイヒマン裁判の記録の面もあるがアイヒマンの個性とナチ・ドイツのホロコーストの概説書の側面が強いか。
本書にもあるように、文学を超えた出来事であるのでこのような本の方がいわゆるホロコースト文学を読むより今日的教訓になると思われる。例を上げれば、やはりホロコースト研究所を読む方が「夜と霧」や「アンネの日記」を読むより、ヨーロッパ近現代史におけるホロコーストの位置づけやその台頭の理由が視野広く見通せるようになるし、これらの蛮行の背景的思想である反ユダヤ主義(他民族差別)や、本書には殆ど触れられないが今日では欠かすわけにはいかぬ安楽死作戦における優生思想に対抗する視座を獲得しやすくなる。日本人によるヨーロッパ文明の根幹をなすキリスト教やその起源であるユダヤ教などへの文明批評的側面も持つ書籍である。良書認定。
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アイヒマンの昇進は決して早い方ではなかった。ナチは過去の体制の破壊をとなえ、中産下層の不満分子を大量に吸収することに成功したが、ナチがつくりあげたのは實は学歴社会だった。親衛隊でも、大学を出ていなければ偉くなれないのである。第二次大戦がはじまって親衛隊も戦場に出るようになってからは、戦場での勲功で将官になる道が開かれた。そういう場合を別とすれば、大学を出ていないとせいぜい中佐どまりだった。アイヒマンは1939年まで7年かかって、やっと大尉、のちに中佐である。同じ期間に同郷のカルテンブルナーは下士官から将軍へと階段を駆け上がって、後に対象になった。ハイリヒはアイヒマンと年齢は2つくらいしか違わないのに、元海軍中尉の肩書がものをいって、国家保安本部の長官におさまっている。オットー・オーレンドルフは経済学と法律学をおさめた学者で、年齢はアイヒマンより下だが国家保安本部の局長をつとめ、のちに1941年には少将に任官した。例外は、掲示上がりのゲシュタポ・ミュラーくらいだろう。それを思うとアイヒマンは不満だった。この学歴社会で地位を獲得するみちは、ユダヤ人問題の「専門家」というその特権を生かす以外にない。幸いナチの上層部は、ユダヤ人問題の「解決」を最優先政策の1つとしていた。
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1961年イスラエルでナチスの戦犯アイヒマンの裁判が行われた。直接傍聴した著者によるユダヤ人虐殺の実態。
余りの内容に気が重くなった。シンドラーのリスト(映画)のシーンと重なる所が多々ある。
何故ユダヤ人はあんなにも殺されなければならなかったのか(600万人くらい)。ナチスは本気でヨーロッパのユダヤ人を絶滅させようと思っていたらしい。
なぜ彼らは長年にわたり迫害されているのか。
そして現代イスラエルのパレスチナに対するフレンドリーとは言えない態度の謎。
ユダヤ人に関してはよくわからない事が多い。
迫害される理由を考えてみるに、一つには、ユダヤ教の選民主義が思い当たる。
自分達だけが救われると考えている宗教は外部からは好かれない。
それではいけないよね、と登場した宗教改革者のイエス・キリストも彼らは殺してしまった。(厳密に言うと命令したのはローマ人だけど)
異教徒のサマリヤ人を褒めたり、右のほおを殴られたら左を差し出せと言ったり、カエサルのものはカエサルに返せと言うような救世主なんか要らなかったのだろう。
もう一つは、経済的、社会的に成功しているユダヤ人への妬みだろうか。
彼らは富を蓄積する事は善であると考える。そこはキリスト教とは大きく違う所かもしれない。
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ホロコーストを生き延びた人々の証言が生々しい。
戦争が終わった後に敗戦国を裁くということの矛盾。日本人なら東京裁判に思うところがあるが、ナチスとイスラエルでも同じ構図がある。考えさせられる。
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裁判記録を元にしたノンフィクションとなっており、強制連行されたユダヤ人の生き残りの証言は非常にシビアで重い。映画や教科書では語られない、ホロコーストの現実を知ることができる一冊。