紙の本
生産性から サプライ・サイド 経済学へ
2023/12/06 22:53
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投稿者:清高 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1.内容
本書は2018年発行なのでアベノミクスが俎上の上っている。アベノミクスは、当初は金融政策を重視していたが(cf)軽部謙介.アフター・アベノミクス:異形の経済政策はいかに変質したのか.岩波書店,2022,(岩波新書).ただし、軽部の見解では、財政政策にウエイトが置かれたとされている)、生産性を重視するようになった。本書は、経済学における生産性を説明し、企業や政府が何をすべきか、また、今後の経済をどう運営するかを記している。
2.評価
筆者に限った話と信じたいが、生産性の概念がよく分かっていなかった。本書を熟読して概念を理解しようと思える本だった(定義がなされていて、式も豊富)。外国との比較も豊富で、日本経済の歴史や状況もわかる。全体としては、いわゆる「サプライ・サイド経済学」になっている印象で(コトバンクにあるが、筆者はコトバンクほど厳密な意味に用いてはいない)それにも、また、市場原理に任せる部分を多くすることに一理あると思わせる本なので、5点とする。
紙の本
誤解されがちな「生産性」ということを経済学の視点から解説した書です!
2018/11/18 20:19
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、「生産性」ということについて経済学の視点から丁寧に解説した書です。生産性という言葉は、多くの人が知っていますが、意外にその意味を正確に理解している人は少ないようです。しかし、この生産性は日本が現在の不況から立ち直り、経済をよくしていくためには不可欠なもので、非常に重要なものなのです。今一度、この生産性ということについて、学習し直してみるよい機会かもしれません。
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なかなかわかりにくい概念、「生産性」を真正面から論じた新書にしては硬派な本。正直難解な部分もあるが、アベノミクスの実態を論じた最終章はわかりやすかった。安倍首相に読んでほしい。
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はじめに
序章 生産性はなぜ注目されつようになったか
第1章 生産性の概念と日本経済
第2章 経済学における「生産性」
第3章 生産性を向上させる要因は何か
第4章 企業レベルの生産性向上
第5章 政府は生産性向上のために何ができるか
第6章 日本経済が長期停滞を脱するには
あとがき
参考文献
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国民生活を豊かにするための1つの見方として、1人あたりの実質GDPの成長があるが、そのためには生産性の向上が必要であると言われている。その生産性について正確な定義を確認した上で、生産性向上のメカニズムをわかりやすく説明している。ただ、少子高齢化、人口減少に直面している日本にとって、困難な課題であることも浮き彫りにしている。
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経済学の見地から生産性について書かれた一冊。
生産性の公式を定義し、その考え方を順序立てて説明してくれています。
私は、本書を読んで始めてTFP(TOTAL FACTOR PRODUCTIVITY)なるものを知りました。
公式にはざっとこんなものがありました。
生産性=産出物
労働生産性=生産量(付加価値量)/労働投入量
全要素生産性(TFP)=生産量/各投入要素の集計量
TFP変化率=付加価値量の変化率-労働分配率×労働投入量の変化率-資本分配率×資本投入量の変化率
生産性向上の要因を探る
TFP変化率=知識資産の収益率×研究開発投資集約度(=研究開発投資額/付加価値額)
残念ながら実務における生産性向上のヒントはあまり見当たらなかったです。
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p.36 労働生産性=生産量(付加価値量)/労働投入量
p.38 全要素生産性(TPF)=生産性(付加価値量)/各投入要素の集計量
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2023年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版(以下、実行計画)」は、長期に渡る日本経済の低迷の主要な原因を、日本の雇用システムに求めている。
これまで我が国では、「企業は人に十分な投資を行わず、個人は十分な自己啓発を行わない状況が継続してきた」とし、そういったことが理由で「我が国の賃金水準は、長期にわたり低迷してきた」としている。そして、「問題の背景には、年功賃金などの戦後に形成された雇用システムがある」とし、いわゆる「日本型雇用システム」の改革を、訴えている。具体的には、①リスキリングによる能力向上支援②個々の企業の実態に応じた職務給の導入③成長分野への労働移動の円滑化、といういわゆる「三位一体の労働市場改革」の実行を政策の柱とすることを提言している。これは、「成長と分配の好循環を目指す政府の複数年度に渡る計画」と位置付けられている。
これに対しては多くの議論がある。例えば以下のようなもの。
■日本では少子高齢化が進み、生産年齢人口が減りつつあるが、つい最近まで実は就業者人口は増えていた。これは、女性と高齢者が新たに就業者に数多く参入してきたためである。ただ、女性と高齢者は短時間勤務などの非正規雇用者の割合が大きく、賃金が低い。このことによって、雇用者全体の平均的な賃金は低迷してきた。
■また、賃上げの理想的な展開は「人的資本投資→人的資本ストックの増加→生産性向上→付加価値向上→賃上げ」である。まずは、生産性の向上が必要であり、そのためには人的資本への投資(教育訓練など)が必要となる。人的資本への投資は、全ての働く人を対象にすべきであり、非正規労働者等もその対象に含まれるべきである
■これまで日本では、人的資本への投資は諸外国に比べてかなり低かった(OJTを費用にカウントしないケース。OJTを含めると諸外国並みという試算もある)と言われており、生産性を向上させるために、人的資本投資を増やすことから始める必要がある
すなわち、政府の実行計画には「生産性」という概念が抜け落ちている。「日本的雇用システム」が問題の根源であると言うならば、「日本的雇用システム」が生産性を上げる作用を持たなかった、付加価値をあげる作用を持たなかったということを、メカニズムを含めて説明しないと納得性が低い。
「生産性」というのは、経済学の概念であるが、本書は、「生産性」の概念を丁寧に説明すると同時に、日本の生産性は特に国際比較においてどのような状況にあるのか、それに対してどのように対処すべきか、等をこれまでの研究や、関連データ等を用いて論じたものである。
分かりやすく、話も面白かった。