刺小説とでも言えば良いのか。
2018/12/03 00:08
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
何者でもなかった時期から今までを、忘れることのできない元カノとの思い出に絡めて断片化した私小説。渋谷のラブホで過ごした時間も、会話が噛み合わなくなっていく焦燥感も全部ブッ刺さるドストライクな一冊でした。
恋愛だけじゃなく、芸能業界を生き抜く主人公の泥沼を這うような働き方も、かつての戦友が自分の人生から離れていくシーンも、過度に涙を誘わない絶妙な筆致。巻末のあいみょんのエッセイも相澤いくえのマンガも全部噛み合って、なんだかよく分からない派手に心を揺さぶる物体と化している危険な本。
分かる、共感するを通り越して、ただただ刺さる。深々と。
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投稿者:みんと - この投稿者のレビュー一覧を見る
燃え殻さんより5歳ほど年配ですが、出てくる固有名詞はひたすら懐かしいものばかりでした。まだかなりアナログな時代で、SNSは一般的ではなかった頃のもどかしい若さと、不器用さ。戻れないと知っているからこその輝きと、現在の仕事に終われる日々の対比。燃え殻さんは、私たちの捨てられないかっこわるい思い出を、圧倒的に美しく描写してみせた。すごいと思う。架空の小説でありながら、全ての人に浸透してくる切なさ。もし、大人にうまくなれていたら燃え殻さんはこの小説を書かなかっただろうと思うと尚更シンパシーを感じます。大人になれなかったボクたちみんなのための物語。みんな読んで、そして自分より好きだった人のこと思い出して欲しい。
著者の趣味について行ける人には面白いかも
2021/08/11 06:20
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投稿者:makiko - この投稿者のレビュー一覧を見る
映像関係の仕事をする43歳の主人公が、過去に交際していて自分より好きだった唯一の女性との思い出を振り返りつつ今を生きていく話。ロックや芸能界に疎い私には、あまり興味を持てませんでしたが、そういうものに詳しい人が読めば面白いかもしれません。とても売れた小説らしいですが、どの辺に人気を得られるポイントがあるのかよくわからなかったです。
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どんなに小さな出来事だって、ねえねえ聞いて、と言える人がいるからこそ、小さかった出来事に、ちっぽけな自分に、輝きが増す。生きてていいんだな、と思える。
大手書店の片隅で、ヴィレッジヴァンガードの一番目立つところで、他の作品とは異なる光を放っている、そんな作品でした。まるで秋に蛍を見つけるような。
たくさんのアーティストが、自分の生を表現した作品で溢れている現代社会。もしもわたしが20代前半だったら、もっともっと刺さってきたかもしれない。同類の作品に触れてきたアラサーには、少しだけ、むず痒さと「どこかで聴いた何か」を感じてしまう作品でした。エンターテイメント作品とは異なり、頭の中で景色・情景をイメージさせる描写が多いので、岩井俊二あたりが監督をして、映画化でもしてみたら、とても美しい映像作品になるのかもしれない。
自分にも、燃え殻さんやあいみょんのような表現力があれば、わたしのなんてことない、鬱屈とした日常も、こんなに光り輝いたイメージを持たせることができるだろうか。誰かを認め、誰かを生かしてあげられるだろうか。いや、違う。きっと誰よりも自分を認め、生かしてあげたい。
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失った過去を振り返り今につなげていくみたいな湿っぽくなりがちな話はどちらかというと好きなのだが。。。最近、こういう携帯小説みたいな本が売れるし多い。
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・この20年とちょっとの間に数えきれないほどの人間が会社から去っていった。彼らを見返したいとずっとどこかで思っていた。そのうちあんなに逃げ出したいと思っていたボクの重心は、いつしかこの街に定まっていた。ささやかで頼りないけれど、いま自分が立っているこの場所に。ボクの物語の1ページ目は、東北に向かった新幹線で彼女がポツリと言ったあの言葉から始まっていたんだ。
「どこに行くかじゃなくて、誰と行くかなんだよ」
・「ある時、クスリがキマった状態で、主人公は電算写植気に向かうの。朝になって気づくと小説が一冊書きあがっていたって話」「無意識で書いた小説?」眠気を抑えながらボクは聞いた。
「彼の身体の隅々には、打ち込んできた他人の文字たちが成仏せずに残っていたのよ」
「言葉の幽霊みたいだね」天井に向かってそう言うと、彼女はボクの胸に耳をくっつけたまま話し続ける。
「キミの身体にもたくさんの成仏してない言葉がつまっているんだよ、きっと」
「俺には何もないよ」ボクのことを一番信じていなかったのは、ボクだったのかもしれない。ボクの鼓動と雨音と彼女の呼吸が重なる。「大丈夫」と彼女は言った。
「キミは大丈夫だよ、おもしろいもん」
・「あのさ、知ってる?国会図書館には日本の出版物が全部あるんだ。文芸誌から漫画にポルノ雑誌まで全部」「お前、本なんて読まねえだろ」ボクのツッコミをスルーして関口は続ける。「俺たちがあと50年生きるとして、一日に一冊ずつ読んだところで読み切れない量の出版物がすでにもう保管されてるんだ。そして一方では世界の人口は70億を超えて今日も増え続けてる。俺たちがあと50年生きるとして、人類ひとりひとりに挨拶する時間も残ってない。今日会えたことは奇跡だと思わない?」
そうだ、関口がこういう奴だったから、ボクは今日まで同じ場所に居続けることができたんだ。
「生きてろよ」
そう笑った関口がスライドドアを開け、一歩外に踏み出しながら言う。
「お前はこのままでもいいよ。でもお前が失敗したら俺の酒がもっと旨くなる。だから、挑戦しろよ」
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この小説を読んでいる間は、過去の日常で出会った人、別れた人、時間を共にした人たちのことが浮かび、否応なく過去に引きずり込まれる。燃え殻さんの文章は諦念を漂わせながらも力強さ、しぶとさがあって、色気も感じさせる。新しい感覚だった。
テレビドラマのワンシーンを見るよりも、最後の言葉が「今度、CD持ってくるね」だったり、空っぽのマンションの一室を外から眺めている方がより現実に近く、より揺さぶられる。
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短く区切られてて読みやすかった。
ただ時代設定とか風景描写とか、感情がいまいち入ってきづらかった。インスタ映えしそうな小説やなあて感じがした。
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心に呼びかける文章がいくつかあった。
「女優になれるかな?」の問いに対する「ナポリタンを作るようなもの」の回答が秀逸。「行程を踏めば辿り着くけど、その後に誰と食べるかが大切だったりする。」なるほど、最近よく考える、「何をするかよりも誰とするか」が大切なんだと思った。
「国会図書館には日本で発売された書籍が全部並んでて、1日1冊読んでも人生で読み終えることは出来ない。」人との出会いも同じように、全国民と知り合える訳では無いから、今までとこれからの出会いを大切にしようと思った。出会いは奇跡だから。
2時間程度で読めたけど何となく想像しにくい世界観だったように思う。
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忘れられない大切な人。
人生で1番愛した人。
詩のような美しい文章に込められた想いがひしひしと伝わってきて苦しくなる。
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「ボクたちはみんな大人になれなかった」
ゴロウデラックスで知った。
それは人生でたった一人、ボクが自分より好きになったひとの名前だ。気が付けば親指は友達リクエストを送信していて、90年代の渋谷でふたりぼっち、世界の終わりへのカウントダウンを聴いた日々が甦る。
オトナ泣き続出、連載中からアクセス殺到の異色ラブストーリーとの評であったが、どの点が異色なのだろう。それは良く分からず仕舞い(過度な評は小説につきもの)。オトナ泣きに関しては、過去に止まったままだったボクが、オトナになりSNSで彼女と繋がったことをきっかけに過去から前に進んでいこうとする所は、オトナの涙を誘う要素だと思う。
物語は43歳のボクがいる現在と彼女と出会った90年代の過去が交錯する形式で進んでいき、この交錯が多くの読者が昔の自分を重ねたり、ここまで本当に好きな人を見つける恋をしたかった等の理想的恋心が灯ったりを誘発し、オトナ泣きに繋がるのだろう。
特にオトナ(メンズ)泣きは何となく理解できる。誰だって、メンズは特に、誰にも認められずにいた時、初めて本当に好きになった彼女ができ、その彼女は突然いなくなる。そんな彼女と数十年後SNSで不意に繋がってしまったら、自分としてはスッパリ終わった恋だと理解していたつもりが、実はそうではなく色んな思い出が蘇ってくるだろう。そして、ああ、まだ完全に吹っ切ってはなかったんだなと思ってしまう。
この小説のボクはスッパリ終わった恋とは考えていなかった様だから上記に完璧に当てはまらないが、現在に過去が蘇り、ボクは過去との本当の決別をしなければならないと思い、吹っ切ろう(プラスの意味で)とする。ここはオトナ(メンズ)泣きを誘発する。
しかし、現在のボクと彼女はあくまでSNS上のひどいね!といいね!であって、実際に会ってはいない。彼女は突然の別れで止まっていた訳でも、43歳のボクみたく1人でいる訳でもなく、結婚している。だから会う訳にはいかないのは分かる。
だが、そんな彼女を見てボクは本当の意味で彼女との思い出に御礼を言い、気持ちよく決別することが出来るのだろうか。SNSで繋がる糸は細く、ボクから彼女への一方通行にも見え、彼女が去った意味はボクが推測せざるを得ない。これは、苦しいと思う。
終わりは良いものになったかに思える。ボクにとっては難儀なことだったろうなとも思える。自分達に置き換えればその難儀さも少しは理解でき、ノスタルジックさも漂う中で、私はボクを応援しようと思える。
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かつて自分より好きだった"最愛のブス"の現在を偶然ネットで知ったとき
言えなかったまま今も片隅に転がる言葉が明滅しては置き去りにされた自分を思い知らせる。
他人の物語を読みながら、磨りガラス越し、みたいにボンヤリ浮かぶ彼女の顔は知ってる人の顔だった。
読み始めて中休みも挟みつつ5時間くらいで読み終われる物語。
でもそこに読む人自身の人生も乗っかってくるかも知れない。
そういう体験を過剰に持ち上げたくないけども、美化もしないけども、自分だけのっていうものが自分にもある。
90年代後半もなかなかにすごい時代だったのな。
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どこか懐かしいような、自分の過去の恋と重ねてしまうような本で私は好きでした。「自分より好きになってしまった」人との思い出に色々な人との物語が交差して繋がっていく感じで構成も好きです!
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夫から勧められた一冊。
サクッと読めて、面白かったー。
描写が秀逸。
小説なのに、映画を見ているような感覚になった。
そして最大のテーマである
人生における恋愛とは、
虚しくも美しくもある。
そんな感想。
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実はあいみょんのエッセイかと思い、
間違えて購入したのが読み始めたきっかけ(笑)
思ってたものと違ったけど、
面白くてスルスル読めてしまった。
自分の燻っていた時期と重なる部分もあり、
苦々しくも、過去のことを肯定してくれるような清々しさのある作品でした。
良き♡