2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
難関私立進学校をドロップアウトして公立中学に転じた和真
父をなくし母と妹の3人で生活保護を受けながら暮らす樹希
世渡り下手の少年と将来の展望が見出せない少女はおたがいの境遇が理解できないが、出会ったカフェでそれぞれの居場所を見つけ、貧困と格差に立ち向かっていく
「小さくて弱っちくて自分勝手だけど、人間って捨てたもんじゃないかもって」
貧乏を見下し学歴しか目に入らないおとなの偏見と、知らなければ確実に損をする難解な制度に、中学3年生が真っ向から挑戦する社会派成長物語
《うん。痛快だ。》──ひこ・田中の推薦文
カバーイラストはスミ一色に黄色の題字で迫力満点
対照的な二人、自分のために生きる!
2024/08/10 21:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:りら - この投稿者のレビュー一覧を見る
金持ちの子で進学校から公立校に転入してきた和真と生保世帯でヤングケアラーの樹希。
どっちもしんどい状況にあるが、お互い分かり合えないと感じていた。
和馬は樹希の弟分のようなアベルに勉強を教えるうち、純粋に教えることに喜びを覚え、同時になぜ樹希やアベルのようなこどもたちがいるのかを考え、生活保護のことを調べ始め、社会の不条理や自分の現実を知らなさに気づく。
一方、CWが言うままに信じ、夢を諦め、一人でもがく樹希。
これに真摯に関わってくる和真を見て、本来のタフさを取り戻していく。
そうはいっても基本的に自己肯定感が低い和真はあるできごとを機に夏休みにほぼ引きこもり状態になってしまう。
そこに関わってくるのは、樹希とアベル。
そのとき、和真は自分の本当の気持ちに気づく。
全く生活環境の違う二人の成長物語。
周りの優しい大人がいて良かったと思う。
それが親じゃないところが救いでもある。
どこにでも、こどもを助けてくれる人はいる。
生活保護について
2024/05/09 15:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:さくら - この投稿者のレビュー一覧を見る
中学生のヤングケアラーが生活保護を受け入れる過程がわかりやすく描かれている作品でした。誰もがいつ、利用する可能性がある制度をわかりやすく説明できた小説でした。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぽんぽん - この投稿者のレビュー一覧を見る
おもしろかった。
生活保護家庭の樹希とお金に困ったことがない和真の物語。
知ることは武器でも盾でもあるよなあ。と言ってもなかなか知るに辿り着くのが困難なんだが。
現にここでの樹希は運良く人に教えてもらえただけで、倒れている未来もあったわけで。
どうすればいいのかなあ。やはり社会全体の問題だなあ。
投稿元:
レビューを見る
シビアな内容。でも始めから清々しさを感じたのは山之内君があの状況なのに屈折してない子だったからかな。親を選べない子どもたち。人生変えられないと思ってる子に読んでほしい。逆に大人も。
投稿元:
レビューを見る
進学校についていけず、公立中学に編入した山之内和真は、劣等感と父親の高圧的な態度に疲弊していた。佐野樹希は、父親が出て行ったあと精神を病んでしまった母親と小さな妹を一人で支えていたが、生活保護を受給していることに負い目を感じ、誰ともかかわらないようにしていた。そんな二人がひょんなことから知り合い、影響しあい、自分の力で未来を切り開こうと歩き始める。
投稿元:
レビューを見る
すごく骨太で迫力のある物語。
貧困と「生活保護」を真正面からとりあげているけど、裕福で「恵まれた」家庭の山之内くんがけっして幸せではないこともしっかり描いているのがとてもいい。
そして物語を動かすのも山之内くん。くそまじめで不器用だけど、おちこぼれのアベルにいっしょうけんめい勉強をおしえ、樹希の負い目の原因である生活保護のとてつもないわかりにくさに真正面からかじりついて、理解しようとつとめる。
そうやってカフェ「居場所」にひんぱんに出入りしていたことが、ある事件をきっかけにしてばれてしまい、山之内家の両親は激怒するんだけど、そこで一歩もひかずにいいかえす山之内くん。骨太。表面的に波風が立たないようにみんなが暮らしている家で、ドボーン!とでっかい岩を池に投げこむのって、ほんと勇気がいると思うんだけど。
樹希にしても山之内くんにしても、とにかく児童書の家庭問題は、親を選べないことと、ひとりでは生きていけないことに起因している。でもそれがまたうっすらとした希望にもなりうる。現状に負けず、タフに成長していけば、親のもとから離れられるのだから。ふたりにとって、その道筋が垣間見えたのがうれしかった。
投稿元:
レビューを見る
息子の塾の国語テキストに出ていて面白いと思い購入。問題文の部分だけ読むにはもったいないくらいいい本でした。有名私立中高一貫校に進学したものの勉強についていけず公立校に転校した山ノ内くんと、父が事故死しうつ病の母と小さい妹の3人で生活保護を受けて暮らす佐野さん、父親の身体的虐待からしゃべれなくなってしまったアベルくん、3人の物語。家庭環境に恵まれなかった子供も、将来はきっと自分の手で変えられる。
「きみは施しを受けているんじゃない。社会から、投資をされているんだよ」
それなら・・・あたしと社会は、五分五分じゃないか?
息子にもぜひ読んでもらいたいです。
投稿元:
レビューを見る
もがくようなエネルギーに溢れた、まっすぐで力強い作品。
自分とは違う、相容れない、そんな風に思い込んでいた"むこう岸"の存在が互いに作用し合い、それぞれを取り巻く世界に小さいようでいて、とてつもなく大きな風穴を開けていく。
終盤の樹希の言葉によって山之内くんの心がはっと目覚める瞬間、彼のこの先の未来が一気にひらけた瞬間がほんとうに素晴らしくて、胸を打たれた。
投稿元:
レビューを見る
最近は所謂「子どもの貧困」(って言葉にいまひとつ納得していない。親の貧困でしょ。子どもは稼げないんだから。)を描いたYA向け小説がいくつか出てきているが、(『マルの背中』『十五歳、ぬけがら』など)その中でもかなりいいものだと思う。
理由としては、
1.貧困家庭の子どもがどうやったら抜け出せるかが、具体的に書いてあること。
2.「生活保護」とはどんなものか知らずに攻撃してくる人間が多い中で(特にネットの中で罵詈雑言を浴びせる輩の多いこと。それにネット好きな若者が影響されなわけがない。)、生活保護がどのようなものであるか。メリット、デメリット、制度の問題点などがわかりやすく書かれていること。
3.それとは反対の立場である、裕福な家庭の少年(私立中学の勉強についていけず公立中に転校した)との交流も描くことで、「格差」はあっても理解も(同情や憐れみではなく)友情の成立も可能だということを示したこと。
4.そして、これが一番大事なことなのだが、小説としてよくできていること。面白いこと。
貧困家庭の母親がメンタルを病んで、生活の向上は見込めそうにない様子はとことんリアル。
「私がこんなだから、迷惑ばっかりかけて。」と言いながら「お母さん、叫びだしたくなるけど我慢してる。『死にたい』なんて、あなたたちには、聞かせちゃいけない言葉だものね。病気だけど、迷惑かけてるけど、こうやって耐えていることはほめてほしい。」という母親に、
はぁ?と、あたしは思う。聞かせてんじゃん。死にたいって今、言ったじゃん。そんでもってほめろと?バカか。あんた、バカなのか?
叫びだしたくなるのを、奥歯をかみしめてこらえる。前におなじこと言われて、こっちがキレたらさらにウツになり睡眠薬をいっぺんに飲んで三日くらいフラフラになって、厄介なことになったのを思いだしたからだ。
(p76)
公立に転校した少年が、進学校の同級生と偶然再会した時の様子も、ほんと、あるある。
両親ともエリートで、帰国子女で英語はペラペラ、勉強もできて音楽やスポーツも得意、いつもまっすぐで堂々としているって子どもが、私立のトップ進学校にはホントにいます。(こういう子どもは一生「貧困」の人と直接かかわることはない。政治家や官僚や会社のトップになる。)
先日読んだ『彼女は頭が悪いから』に出てくる東大生がまさにこんな感じだったな。自意識ツルツル。
また、無理に中学受験させた少年の父親が名門高卒の医師で、母親は元トリマーの専業主婦、母親は引け目を感じつつバカにされないよう必死で子育てしてるが、子どもは思うように育たないってとこもリアル。これもあるある。
しかし、少年はこの母に救われてもいる。そんな共感してもらえる母でも、生活保護の家庭の子どもと関わっているのは許容範囲を超えているというのもね、ホント、よくある。
でも、こんなあるあるをちゃんと書いていながら、希望の持てる終わり方ができているのも素晴らしい。
中学生になれば一般書も読めるし、ラノベなんか漫画並みに面白いと感じるだろうけど、この本はそういう子ども達にも十分訴える力のある作品だと思う。
投稿元:
レビューを見る
秀才の少年と、生活保護を受けている少女の出会い。その隔たりに圧倒されつつも、立ち向かう方法を探していく。
投稿元:
レビューを見る
親の言いなりに勉強し、進学校へと入学した主人公。しかし、授業についていくことができずに公立中学へドロップアウトすることになります。一家の恥であると責められながら、高校受験での巻き返しを父親から命じられ、居心地の悪い思いをしながらも塾通いを続ける主人公。
一方、彼が新しい中学で出会った少女は、生活保護を受けていました。事故で父親を失い、うつ病の母通さない妹を抱え、将来に希望を持てずに過ごす彼女から見ると、「苦労した」と主人公が訴えること自体が不愉快で、ついつい突っかかってしまいます。
自分たちは何者なのか、自分たちの居場所とはどこなのか、また何のために勉強するのか、といった点について、考えるきっかけにもなりますし、主人公たちの成長は応援したくなります。
彼等の前途は必ずしも「幸せ」で、バラ色の将来が約束されているわけではありませんが、投げやりになることなく、乗り越え、生き延びてほしいと心から思います。
課題図書にもピッタリだと思いました。
投稿元:
レビューを見る
『むこう岸』安田夏菜/講談社
・
エリート中学に入ったものの、ドロップアウトして挫折を味わった男の子と、精神疾患を抱える親と妹の面倒を見ている生活保護世帯の女の子と。中学生2人の視点を切り替えながら、物語が進んでいく。
・
小学校高学年ぐらいから読める。施策を作る側、こどもの支援をする人、ケースワーカーなどにぜひ読んでほしい。
・
経験と想いのあるケースワーカーから、若く未熟な担当者に変わって使える制度を知らされない経緯があるが、制度が複雑なのと現場の人手不足もあって現実にありそうな話だった。
・
樹希というこの少女のように、タフなこどもはほとんどいない。途中、悪い大人にナンパされ、3万円を差し出される場面がある。たまたま樹希は踏みとどまれたが、流されても仕方ないと思える生活描写が続く。
・
特に、メンタルが不安定でこどもにすがりつく母親の描写は、私たちが本当に理解しようとしてしきれていない「家の中」とヤングケアラーの心理を少しのぞかせてくれる。
・
もう一人の主人公、裕福な家の和真は、進学校から公立中に移り、親の期待に答えられなかった劣等感から「居場所のなさ」を感じている。これは、元進学塾講師としてよくわかる。ブランドバックのように有名校だけを受験させたがる親がいた。中学受験は向いている子と、いない子がいる。適性がないのに親が受験にハマると、こどもはしんどい。
・
彼らは少年野球のコーチだったマスターが経営する「カフェ・居場所」(ストレート過ぎるネーミングだが)を拠り所にする。和真は家でのプレッシャーや転校先になじめない所在なさから逃れ、そこにやってくる外国籍の少年の勉強を見ることで「持ち場」を得る。
・
樹希にとって「カフェ・居場所」は「あたしが子どもでいていい場所」と意味づけられている。
・
予防的支援としての居場所と相談拠点を提示したら「効果について数値的な根拠が示せない」と言われた。民間の力でこども食堂や学習支援は増え続けているが、行政として戦略的にどのエリアにもできるように誘導することも、公設置することもできないままなので、空白がたくさんある。
・
「生活保護を受けているから」と、これ以上の支援を受けることを遠慮しようとする樹希に、応援する立場の大人がかける言葉を、国や自治体の金庫番にも大きな声で伝えたい。
・
「きみは施しを受けているんじゃない、社会から投資をされているんだよ」
・
イギリスでは社会的養護の児童生徒への進学・就労支援が手厚い。その理由は「タックスペイヤー(納税者)にするための投資」。目先の数字ばかり見ていては、こどもの貧困の連鎖は断ち切れない。
・
みんなで投資しようぜ!そして居場所を作ったり関わったりしようぜ!と大きな声で言いたくなる本。もちろん、言うだけでなくやります。
※この感想はインスタに掲載したものの転載です。
投稿元:
レビューを見る
先日読んだ「八月のひかり」と同じく、
児童文学の棚だけに置いていると大人に届きにくくないかと心配。
子どもに、大人に対して気を使わせたりしていいのか
なにより辛い思いをさせていいのかと
自問しなくちゃ。
投稿元:
レビューを見る
いろいろと、細かいところはあるけれど、読み通させる力がある。和真くんと樹希の形が類型的ではあるがしっかりしているから。アベルくんがもうちょっと良く見えるといいのだが。