アメリカの社会心理学者ミルグラム氏による人は如何に非情になれるかを語った驚愕の書です!
2020/05/16 11:07
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、アメリカのイェール大学の心理学者スタンリー・ミルグラム氏によって著された心理社会学の書です。実は、著者はミリグラム(アイヒマン)実験を行い、その結果を1963年に『Journal of Abnormal and Social Psychology』に投稿しました。同書は、この実験と結果を分かり易く解説したものです。この実験は、閉鎖された環境において、権威者の指示に従う人間の心理状況を実験したもので、実験の結果は、普通の平凡な市民であっても、一定の条件下では冷酷で非人道的な行為を行うことを証明するものでした。現在では、この現象を「ミルグラム効果」と呼んでいます。如何に人間というものが非情な行動をとることができるのかを暴いた驚愕の書です。
社会の在り方を考えるうえで必要な本
2017/04/28 20:43
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投稿者:コスモス - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミルグラムが行った、閉鎖的な環境で人が権威者の指示に従ってしまう心理状況を調べる実験。彼は、状況が整いさえすれば、平凡な一般市民が冷酷で非人道的な行為を働くことを証明しました。
このことについて知ることは、権威者による暴走を招かないためにも、社会の構造がどうあるべきかを考える一助になると思います。
死ぬかもしれない電気ショックの衝撃
2015/08/23 09:31
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投稿者:gozne822 - この投稿者のレビュー一覧を見る
心理学をかじった人には
説明するまでもない超有名な本。
この本を読んでつい考えてしまうのは、
「自分も、’何の恨みもない初対面の人に’、
それとわかっていながら、
死ぬほどつらい苦痛を与えてしまう事があり得るのだろう…」
という事。
本書で紹介された実験では、
実験参加者は、
「これは、学習効果に与える罰の影響を調べる実験です」
と説明され、
「この人が質問に正しく答えられなかったら、
罰として電気ショックを与えてくれ」
と指示されます。
電気ショックの大きさは、
誤答をする度に上げていかなくてはいけません。
最終的には、それを受けた人は死んでしまうのでは…というレベルまで。
この実験結果について、
精神分析家も含めて事前に行われた予測では
「千人に一人のサディストでもない限り、
最大の電気ショックを与える者はいないだろう」
とされました。
が…実際の結果は驚くべきものであり…。
タイトル通り「’服従’の心理」についての本ですが、
本書の意義はより普遍的で、
「人間の行動は、一般に思われているよりはるかに、
状況に左右されやすく、
ある条件が整えば、
容易く道徳から逸脱していく」
事を明らかにした、という点であり、
人間観まで揺るがした本です。
また、その意義は別にして、内容がかなり刺激的。
安易に楽しんで良い内容なのかどうか微妙ですが、
とにかく知的興奮が得られること請け合いです。
言い忘れてましたが、
実験ですから電気ショックは本当に与えられる訳ではなく、
サクラがそれを受けたような演技をするだけです。
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専門でも何でもないので「3500円は高いな…」と思っていたら、文庫版が発売してて即購入。読むのが楽しみ。
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無抵抗で苦しむ生徒役(サクラ)に電撃を流し続ける先生役(被験者)で名高いアイヒマン実験。
人は無慈悲で冷酷だ、というより、命令に盲従する無感覚さほど怖いものはない、と感じた。電撃を加えることで、良心の呵責に明らかにさいなまれている人もいたが、たかが自主的に参加した心理実験でさえ、命令に逆らって自分の意志で行動することは難しいのだ。
社会生活を営む個人として読んでおきたい、非常に重要な書物だと感じた。
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大変面白い。
概要は知っていたので、実験結果に驚きはないが、被験者の生の声がすばらしい。
いわゆる善良な市民が、実験により自分が「凡庸な悪」になり得ることに気付く。葛藤と動揺を経験した彼らの多くが、実験を受けて良かったと感じていたらしい。
本書の読者もまた、人間の理解が少し深まるはず。
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内容は悪くはないと思うが、なんだかイヤな感じのする読書体験だった。
ミルグラムの心理学実験とは、こうだ。イエール大学の名前で、心理学実験への参加者を公募する。記憶・学習と懲罰に関する実験だという。
「学習者」は電気椅子のようなものに固定され、「教師」から暗記をテストするような質問を出されて答える。間違っていたら電流を流し、「罰」を与える。間違えるたびに電力は上げられる。
この「学習者」は実は雇われた役者で、電撃などはそもそも無いのだが、電気ショックを受けたふりをし、苦悶し、「もうやめてくれ」とうめく。
公募された被験者は「教師」役で、背後にいる実験者(大学の心理学者)に指示されて「学習者」に電流を流すスイッチを押す。電撃の強度が増していくと「学習者」が異様に苦しみ、実験の中止を哀願するのに、実験者(心理学者)は「身体に永続的な損傷はないはずだから」実験を続行せよと命令する。
板挟みになった「教師役」は、電撃を受ける学習者に同情し、この実験に抗議し、中断するのか、それとも、背後の権威=実験者(大学の心理学者)の冷酷な命令に従い続けるのか?
で、実験結果は大半が「権威」に服従し、過酷な電撃ボタンを押し続け、被害者がもはや無言で反応しなくなってさえもなお、最大級の電流を送るという。
実際は「電流はない」のだから、あくまでも虚構なのだが、しかし教師役の被験者は事実としてこのシーンを体験するのであり、私は読んでいて、とてもイヤになってきたのだ。
ミルグラムは科学者らしく、様々に条件を変えながら沢山のデータを取っている。
しかし、この本で言われている「権威」とは、結局なんだろう? その真の意味とは何か? これは心理学ではなく、哲学的な思考でないと見つからない解かもしれない。
ミルグラムは何故かサイバネティックスを持ち出して、この「権威への服従の心理」の解説を試みているが、何となく不十分な気がした。
心理学の本を読むといつも思うのだが、心理学者という人びとは出発点となるべき概念がじゅうぶんに解明されないままにあれこれと理論を進めようとするため、結局は深い考察まで到達できていないのである。
そもそも、「自己」なるものを、個体=個人という生物学的形象に押しとどめているところに疑問を感じる。しかし「自己」とは、個体にとどまらず、周囲の誰かとの「あいだ」に形成される関係性そのものであって、だから、権威がどうこう、服従がどうこうというより、その「場所」において拡張し変形した「自己」がどんな統一性に傾くか、ということなのではないだろうか。
「権威」なるものが存在していないはずの、暴徒化のような事例、すなわち集団心理として拡大・一体化した「自己」なるものの異様な行動も、そう考えた方が理解できる。
そもそも、個体としての「自己」なるものは、本当に存在するのだろうか?
読みながら解消し得ない問題につきまとわれた。
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俗に言うアイヒマン実験をまとめた本。実験の全体像をちゃんと読んだのは(恥ずかしながら)初めてであり、豊富なアイディアとシステマティックな実験計画、そして揺るぎなき実行力に圧倒されました。ミルグラムすごい。批判者への回答、参加者からの手紙を載せた補遺も必読(心理学者にとっては、むしろココこそが読まねばならないところかも)。
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有名な「アイヒマン実験」。聞きかじった程度だと人間の内に潜む残虐性をえぐり出す心理実験だと思ってしまいがちだけど、じっさいは「権威への服従」の意味を再考させる示唆に富んだ実験であり、たいへん読みごたえがあった。
また、ふむふむと本編を読み終えて思わずミルグラムに服従してしまいかけても、訳者が「蛇足」でニュートラルに引き戻してくれるという心憎いアフターケアもあり。
たとえば(当事者としてではなく外部から見た)いじめ問題を語る上でも有用な教養が得られる書物だと思った。
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人がいかに権威に服従しやすいか、そして権威に服従した個人は、その本人の善良さに無関係に、権威に支持されるがままに、驚くほど残酷な行動をとれる、ということを心理学実験により示しています。
別名「アイヒマン実験」と呼ばれるこの実験は、非人道的な行動を取るのは、異常なごく一部の人間だけでなく、ごく普通の人間(つまり我々自身)でも、十分にありうることだということを示唆しています。むしろ、容易に権威に服従し、いとも簡単にそういう行動を起こしてしまうとすら読み取れます。
この本の著者スタンレーミルグラムは、この権威への服従に関する実験のみならず、ソーシャルネットワーク関連でよく言われる6次の隔たり(どんなにつながりがなさそうな2人の間でも、6人の知人を介せば繋がりが見いだせる、という仮説)の提唱者である、というのも興味深いです。
おそらく、相当に嗅覚の効く研究者だったのでしょうね。
また、本書の末尾の、本当の末尾に翻訳者の山形浩生氏が書いている「蛇足」がとても興味深い批判を提示しています。
本書をもとに読書会をやるのであれば、この批判をスタート地点にするのもよいかと思います。
ロバート・チャルディーニの「影響力の武器」とともに、現代人必読の書だと思いました。日頃気づかない、自分の内面をレビューするきっかけにできます。
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本編を読んで、補遺を読んで、訳者あとがきを蛇足まで読んで
そして自分なり歴史的事件の背景や、心や社会との関係に考える。
ここまでがセットメニューの本。
実験の概略と結論を聞いたことがあっても実際に何が行われて
どうしてその結論に至ったかを知るによい。
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「道徳的に正しい行動を選んだとはいえ、被験者は自分が引き起こした社会的秩序の破壊に困惑したままであり、自分が支援を約束した目的を放棄したという感覚を捨て去ることはできない。」
人がいかに権威に服従するのかについて、実験をもとに考察された本。その実験は、参加者が学習者に電撃を流すように依頼されるものである。”強い電撃を流す事は非人道的であり、そのような電流を流すのはナチスやサディストしかいない”という考えを覆し、”普通の人”が抗議する学習者に電撃を流した。特に、11章以降の実験の解説からがさらに面白い。
親が子に何か命令するとき、それは二つの観点から正当性の根拠が発生する。1つは、道徳。もう1つは、親だから。道徳が何か普遍的な基準がない以上、学校教育や社会の中で正しいとされるのは、それを言う人物が権威を持っているからほかならない。
自分が同じ実験に参加していたら、多くの参加者と同じように、少しの抗議を唱えながら電撃の最大まで行っていただろう。組織に対抗するのは、組織しかないとい訳者の提言は参考になる。
補遣2も、自身の実験を正当化するための権威付けの一つだと思われる。
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世紀の実験論稿。社会性生物である人間のシステムは、権威への服従と同調を基礎に持つ。実験は、服従への抵抗を確かめるため、道義に反する、他者への電撃行為を、仕事だということで従わせるもの。抵抗し、電撃を与えなくなるまでが服従とする。様々な手法を取り、完璧な実験を仕上げる。成果は、上々だ。
だが、抜けがある。この実験は、予め、身体に影響が無いと通知されたものだ。被験者は、やや懐疑的になりながらも、自分の仕事をしたに過ぎない。自らの意思を超越し、権威に服従したのではない。この結果が本著が提起するような、アイヒマンのユダヤホロコーストやベトナム戦争での虐殺の免罪符には決してならない。考えても見てほしい。身体に影響の無い仕事への服従と、必ず相手が死ぬ仕事への服従。同義では扱えないだろう。それでも、人は服従するというのか。
試験項目を変えてみれば良い。一時的に死刑執行人となり、それを遂行する仕事に。何人が服従することか。勿論、権威が試験機関ではなく国に代われば、服従度合いは変わるかもしれない。つまり、権威の形の問題だ。誰も平気な顔で核のボタンやガス室のボタンは押せない。ナチス党を当選させた民衆のユダヤ殲滅運動には、社会的正義が成り立つし、戦争も自国の理論での正義だ。本著がいうような権威への盲従ではない。時代の空気、プロパガンダ、正義の仕事の遂行に過ぎない。自らの意思を超越した権威に、嫌々服従したわけではないのだ。
では、罪はどうなるか。戦争自体の罪は、戦争行為に加担していないものに対する加虐、残虐行為を裁けば良い。その対象からは、ただ命令に従っただけだから許されるという事を無くせば良いのだ。戦勝国の無秩序な違法行為が、許認される事は許されない。その意味で、時代が正義だろうが、命令だろうが、アイヒマンは罪人。北九州の通電殺人を命令された女性も罪人である。勿論、抵抗できる状態にあったかという定量評価や自己防衛の度合いの査定は要るだろうが。
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アイヒマン実験という有名な心理学実験についての本。
テレビで紹介されたこともあるので、知ってる人は多いと思う。
■どんな実験?
一般の人に「学習と罰の関係を調べる実験です」と言って協力してもらう。
一人は先生役、一人は生徒役に。
生徒が回答を間違えたら、先生は罰として電撃のスイッチを押さないといけない。
しかも、実験者から「間違えるたびに電撃をどんどん強くしてください」と言われる。
生徒は実は協力者で、電撃が強くなると悲鳴をあげたり、痛がっている演技をする。
さて、先生はどこまで電撃を強くするだろうか?
どの時点で実験者(権威)に逆らって、実験をやめるのだろう?
(※先生が罰をためらったり助言を求めた場合は、
実験者が「続けて下さい」とうながし、
それを4回言っても「やめたい」と言う場合、実験中止)
■結果
「人が痛がってたら、無理してまでやらないだろう」という予想が多かったが、
結果は40人中25人(62.5%)が最大の電撃を与えた。p54
時に人々は嫌悪感を示し、強く緊張しながらも実験を続けた。
なぜ実験者に反抗できなかったのか、一体何が人々を縛っているのか。
つづき:
http://haiiro-canvas.blogspot.jp/2014/05/blog-post.html
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ミルグラム実験についての詳細な報告。長らく読み継がれてきた報告ですが、新訳&文庫落ちにより手に取りやすくなりました。
ミルグラム実験は非常に著名な実験でありご存じの方も多いと思いますが、そのうえでなお本書は必読。実験デザイン、結果、解釈という繰り返しにもかかわらず、一気に読み進めてしまう力を持ちます。
権威の中に位置づけられた人間がいかに容易く非人道的行為を為し得るか、そしてそのような行為を為したことをいかにして弁護するか。この二点には衝撃を受けることになるでしょう。
個人的には、かつてハンナ・アーレントが述べた「悪の陳腐さ」を想起しました(順番としてはアーレントが先なのですが)。
なお、訳者による「服従実験批判」もまた必読。ミルグラム実験の価値を認めた上で、全く異なる解釈を提示しています。その解釈の妥当性をどう判断するかは読者に委ねられていますが、「同じ結果から違う解釈を引き出す」実例としても参考になるものと思われます。
やはり歴史的な一冊です。是非。