ついにIT犯罪が・・・
2022/06/15 15:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
年一作のスローペースで読んできたこのシリーズ。8作目で、ついにというか、現代社会と切り離せないIT犯罪の分野に踏み込んでゆく展開となった。
人々の心(特に若者の)や、そこから生じる異常な犯罪がもはや理解できないと嘆くヴァランダーに、さらに不可解なITを通じて広がる人間関係や犯罪が襲いかかる。慢性疲労と無力感に苛まれつつも、ひたすら捜査に邁進する姿をみて、これこそヴァランダーだとほっとする自分を感じる。
しかし、このシリーズを読んでいていつも思うのだが、ヴァンランダーに限らず、イースタ署の面々のほぼすべてが、とにかく現場を離れたい、いつ警察官をやめてもおかしくない、今日も何とかしのいで捜査している・・・というスタンスで仕事に臨んでいる。特に鑑識のニーベリは、今作その傾向がかなり顕著だが、彼の発言を聞いたヴァランダーは、どうせすぐに退屈するに決まってると、自分を棚に上げて達観したようなことを言う。
みんな徒労感と人員不足と想像力の先をいくような犯罪の発生に、常にイライラしているのだが、その底にはとにかく目の前の事件をなんとかしなければという使命感、といっては大げさかもしれないが、何らかのエンジンが絶えず稼働しているような心理状態にあるのが、何かとても安心感を与えてくれる。
今目の前にあることが、世の中のすべてに繋がっているという考えは、決して間違っていない。高所から目を配ってくれるはずの本庁の長官たちは、些細な新聞記事に神経を尖らせて内部調査を命じてくる。現場をわかっていない長官はともかくとしても、日々ヴァランダーたちの奮闘を目の当たりにしているはずの署長までもが、取り調べ中の暴行をヴァランダーの精神的な不調の表れと決めつける。
今回は、この二次的な事態がよけいヴァランダーを消耗させる。突発的に職場放棄して、すぐにも辞表をたたきつけてやる、と息巻くヴァランダーだが、ここまでシリーズを読んだ読者なら、先のニーベリと同様、決してそんなことはしないだろうとわかっている。これこそが、このシリーズの隠れた魅力かもしれない。
あと思うのは、ヴァランダーの考えでは(おそらくマンケルも)、個人の心情が表れるのはPCファイルではなく、やはり日誌やアルバムのようなものなのだというのがちょっとほっとさせられる。写真ファイルではなく、丁寧に貼られたアルバムの写真は、その瞬間にタイムスリップできる力をまだ失っていないはず、と感じるのは私だけだろうか。
続く下巻が楽しみだ。
投稿元:
レビューを見る
スウェーデンの警察小説の代表、ヘニング・マンケルが描くクルト・ヴァランダー・シリーズ第8作。
街のATMの前で、突然死した男。一方で19歳と14歳の少女がタクシー運転手を殺害。不可解な事件を追うイースタ警察署の刑事たち。
この作品は去年、映像化されたものを見ました。「混沌の引き金」という邦題だったかな。上巻はほぼ同じ展開のようです。
投稿元:
レビューを見る
未成年の二人の少女がタクシーの運転手を襲った強盗致死事件。
尋問の最中に一人の少女が警察署から逃げ出し、変電所で感電死体で見つかる。
一方、単なる病死と思われた男性の死体がモルグから盗まれてしまう。
二つの事件は関連しているのか?
ヴァランダーの周りもスウェーデンも混沌を深めております。
間違いのないマンケル節で読者をぐっと引き込んて下巻へ続く。
投稿元:
レビューを見る
スウェーデンの警察もの。
刑事クルト・ヴァランダーのシリーズ第8弾。
仕事は有能だが、数年前に離婚し、世話がかかった父をなくし、恋人バイバには去られ、糖尿病を抱える50男ヴァランダー。
かっての親友ステンも、牧場を売って遠くへ行こうとしている。
娘のリンダとはうまく行っているが、遠くに住んでいて忙しい。
付き合う相手を求めたらどうだというリンダの勧めで、迷いつつも広告を出すことに。
19歳と14歳の少女がタクシー運転手を襲って金を奪い、怪我させたのがもとで死なせてしまう事件が起こる。
罪悪感がなくふてぶてしい二人の様子にショックを受ける大人たち。
ただ金が欲しかったというのは嘘だと直感するクルトだが‥
14歳のエヴァが母親に何度も殴りかかるのをとめたクルトは、エヴァを殴ったところを写真に取られ、新聞に報道されてしまう。
母親はエヴァが殴ったことを否定。問題となったため署長に疑われ、クルトは苛立つ。
19歳のソニャは署内から脱走してしまい、後に変電所で死体となって発見される。自殺か他殺か?事件は奇怪な様相に。
中年の男性ファルクがATMの前で倒れていたという事件も起きる。
ファルクはITコンサルタントで、当初は心臓発作かと思われたが、不審な点があり、しかも遺体が盗まれる。
かわりに、変電所にかかわるものが置かれていた。
ファルクの遺したコンピュータは異常に警備が厳重で、クルトらはハッカーの若者を頼ることになる。
コンピュータ犯罪がテロリズムに悪用されるという現代的なテーマ。
国際的なスケールになっていくと、作者の独壇場ともいうべきペースに。
アフリカに住んでいたこともあるマンケル。
今回はルアンダでの出来事が事件の背景に。
原著は1998年ですが、古さは感じません。
コンピュータに詳しかったら、やや古いのかな?
2012年翻訳発行。
あと2作で完結だそうです。
その前にシリーズ外作品が発行されるとか。
それも楽しみ。
投稿元:
レビューを見る
ヴァランダー・シリーズ中、最高傑作!
序盤からそんなことを感じさせる。
このところ海外のシリーズものをよく読む。
アメリカのものには凝りに凝ったプロットと、驚きのツイストで楽しませてくれる作品が多い。
しかし、このヴァランダー・シリーズは事件よりもむしろ主人公の生き様に面白みをみている。
スウェーデンというお国柄もあるのか、ジトッとして暗い雰囲気が特徴のストーリーでもある。
ヴァランダーの疲労感が伝わってきて、読者自身も疲れてしまいそうな滅入る物語でもある。
それなのに面白い。
投稿元:
レビューを見る
ヴァランダー刑事、第八弾。十代の女性二人がタクシー運転手を強盗。まったく反省せず母親を殴った少女の態度に、思わずヴァランダーが平手打ちをした場面が新聞に掲載される。上司や同僚からも疑われ、孤独感を募らせるヴァランダー。
投稿元:
レビューを見る
ヴァランダー警部は、本当に優秀な警部なんだろうか。
部下に言われている通りリーダーシップもないし、
女にだまされてるし、
情報を共有しないでひとりで突っ走っちゃうし、
なぜかまた犯人に狙われてるのは彼のせいではないにしても、
本当にいいところがない。
(下巻に続く)
投稿元:
レビューを見る
ヴァランダーシリーズ初。
前作は未読でもヴァランダーの魅力は伝わってきた。
焦る気持ちを抑え下巻へ。
投稿元:
レビューを見る
かのマルチン・ベックシリーズを場所をスウェーデン南部の地方都市に移して、その続編を書いてみたふうの警察小説。英米でも高く評価されているだけのことは充分に理由のあることで、国産の出来の良いミステリの三倍くらいの仕掛を盛り込んだ、おもしろさてんこ盛りの作品。タイトルに繋がるキーパーソンが登場するのは、上巻のほとんど終わりあたり。
投稿元:
レビューを見る
クルト・ヴァランダーシリーズ。
またしても理解できないプロローグからのスタート。
次々に起こる事件、そしてつながってゆく細い糸。
タクシー運転手の刺殺事件と大停電の接点なんてだれがかんがえられるのか・・・
ヴランダーの情けない私生活と冴えわたる操作能力とでまたゆるぎない進行。
なのに、読んでる最中気がついた。
このシリーズ、翻訳されている分はこれで一応おしまいになってしまう。もちろん本国では続きあるのでしょう!
もったいなくて下巻はやけにゆっくり読んでいる。
投稿元:
レビューを見る
ヴァランダー警部シリーズ。ITを使った大規模なサイバーテロとスウェーデンの田舎町の刑事さんとの闘い。
ヴァランダーさんのキャラクターがとっても良い。
投稿元:
レビューを見る
なかなかタフな読み物で物語の進行が実際の捜査の様に遅々として進まない。だが着実に進んでいる。面白いぞ。
投稿元:
レビューを見る
2019.10.15.読了
まず初めに、おもしろくはない
ヴァランダーは色ボケした(笑)
あらゆる事が解決せず答えの出ないままである。
犯人が何をしたかったのか?作者も分かっていないのではないか?かなり怪しい。
ということに耐えられるサスペンス好きの方にオススメ
投稿元:
レビューを見る
これでヴァランダー刑事との付き合いは4作目になる。題名を見て、ITに疎い所はどうするのかと思った。同僚の刑事達が何とかするのだろう。まぁ読んでみよう。
そして見事に外れた。
ヴァランダーは理解できない世界に迷い込んでしまう。
こんなことが起きるなんて、分からない。どうなっているのだ。
それぞれにどんな繋がりがあるのだ。ITの宇宙とはなんだ。
少女が変電所の高圧線の上に放り投げられて焼死した残虐な事件、少女たちはタクシー運転手を惨殺していた。
その後ATMの前で男が突然死した。ITのプロらしいこの男は二箇所に仕事場を持っていたが、手がかりは残されたパソコンだけだった。
突然死で彼はデータを隠す暇が無かったらしい(唯一の手ががり)でもヴァランダーはパソコンは苦手でスタートさせることもできない。
運転手殺しの首犯は焼け死に、残った相棒の少女は関係ないとばかりに全く協力的でない。
同僚の多少できるマーティンソンがパソコンを開けて見るが全く歯が立たない。そこでペンタゴンのシステムに入った前科のあるハッカーの少年を呼んでくる。
彼はシステムを解読しながら進んでいくが、強力な厚いファイアーウォールの前で、現れては消えるプログラムを呆然と眺めるだけだった。
ただ20という言葉が頻発するという。彼は自己のプライドをかけて不眠不休でキーボードと格闘する。
20とは確かな情報なのか、何か意味があるのか。モニターの前でヴァランダーの思考は前に進まない。
一方、ウガンダでは、世界規模の破壊工作が進んでいた、彼はITのエキスパートだった。彼のプログラムを実行するだけで世界経済を破壊するシステムを構築していた。
彼の趣旨に賛同して集まった数名の中で、リーダーになっていった。
一方何も分からないと頭を抱えるヴァランダーも、地道に頭と脚で捜査する以外に無いと思いながら、少女たちや突然死した男の背後を調べだす。
しかし、繋がりのわから無い事件はやはりあのパソコンでなくては解けないのか。
そして、少女ガ以前交際していたという少年が行方不明になり、フェリーのスクリューに巻き込まれて死んだ。
ちらちらと見え隠れする東洋人、ヴァランダーは二度狙撃されて命拾いをする。
ハッカー少年も狙われる。
ヴァランダーが優れているのは、その鋭い観察力と総合判断の正確さと些細な出来事の細部のねじれや不具合を感じ取る能力だが、理解不能なIT社会の中では機能することができない。疎外感と無力感にさいなまれる。
読んでいても、なぜこんなテーマで困らせるのか、作者の意図が、現代社会に対する警鐘だとしても、物語の主人公が彼では解決は遠回りでじれったいではないか。
いつファイアーウォールにひびが入るのか、警察のエキスパートでも歯がたたないところでハッカー少年の執念は実るのか。
その間、ヴァランダーの捜査が続くが、これが隔靴掻痒というのか、もうじりじりした。
頼りはひらめきなのかと思っていたところに��20日のITテロの実行を前に、東洋人がヴァランダーに殺され、ATMの前で死んでいた男(ファルク)が経済コンサルタントであったことが分かり、ついにハッカー少年が壁の裏から入り込みそうになっている。
業を煮やした犯人はついに姿を現す。
というような話だったが。20日が近づくにつれて緊張感が増すはずが、乗り切れなかった。
少女の事件も特に重要な手がかりにならずくたびれもうけのようだし、無残にフェリーで死んだ少年もただ捜査を賑わしただけのようだった。多少関係は有るが。
ああ、これはまずいのじゃないか。ヴァランダーとパソコンではいけないなぁという感想で、上下巻を読み通したのは、今まで面白い話を読ませてくれたマンケルさんと、婚活に踏み切ったがうまく行かなくて、捜査では同僚と齟齬が生じ、あらぬ誤解で世間から非難される、横顔がステキなヴァランダー刑事にエールを送るつもりだけでがんばって(?)読み切ったのだった。
投稿元:
レビューを見る
長さの割には読み易いのがこのシリーズ。会話が多いからかな。
ケネス・ブラナーのドラマは全作観たが、読んでいてもブラナーの顔は思い浮かばない。
フロッピーディスク?と思ったら、この本が1998年の作品だったのか。
少女の犯行に接して、スウェーデンの現状に不安を抱くヴァランダー。マンケルに限らず、北欧ミステリでは自国への不満を述べられている作品が多い。住み易い国のランキング上位が多い北欧だが、決して理想郷ではないのか。