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投稿者:hachiroeto - この投稿者のレビュー一覧を見る
冒頭の「生命式」がものすごい。死者を「食べて」弔う文化が定着した日本が舞台。会社の同僚の山本が急逝し、語り手の池谷は、「手伝い」のため山本家へ。業者が解体した「山本」の肉が、鍋やカシューナッツ炒め、角煮に変わっていくさまが淡々と描かれる・・・・・・
「山本の腕は巨大な手羽先という感じで、肉をそぎ落とすのに苦労した。骨だけになった山本を発泡スチロールに戻し、肉をフードプロセッサーに入れて挽肉にしていく(略)山本をボウルに入れ、片栗粉、玉葱、酒などを加え、二人で捏ねていく」
狂気の世界、だろうか。だが、この作品の最後で、著者はある若者にこんなことを言わせている。
「だって、正常は発狂の一部でしょう? この世で唯一の、許される発狂を正常と呼ぶんだって、僕は思います」
短篇集でありながら一つの物語
2019/12/22 11:24
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投稿者:Otto Rosenthal - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作の『生命式』を含め、生命や本能という最も直截な感情こそが、実は一番に疑わしいのではないか。そういった観点が通底したモチーフになっている短編集です。
生命を見つめ直す新しい切り口
2019/12/22 11:19
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投稿者:Otto Rosenthal - この投稿者のレビュー一覧を見る
死者の肉を食べながら受精相手を探す男女。二人が意気投合したら式場を抜け出して受精に励む、という奇怪な儀式が描かれるのがタイトル作品の『生命式』。
本作を始めとした不思議な短編が収められたオムニバスです。
山本さんのみぞれ鍋、カシューナッツ炒め、角煮…
2020/01/12 21:10
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投稿者:コツメカワウソ - この投稿者のレビュー一覧を見る
生と性、当たり前と非常識が、正常と狂気が、気持ち悪いぐらいに自然に同居している作品集。
村田沙耶香らしい、といえる短編集。
(カバーの不思議なオブジェも、収容作品と関連のある写真で、納得)
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投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
相手の作った食べ物を食べるのは相手を信じること。死生観、宗教観、タブー、生活習慣等に対する作者の感じたことが次々と語られていく。ただ、生命式の世界にはちょっと・・・。
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村田さんの頭の中覗きたい願望はもうデビューからずっとあるのですが、新刊発表するためその欲がむくむく起きる。何じゃこりゃと、表題作読んだときに思わず笑ったよ。前置きがなく、さらりと変なこと言うんだもん。生命式行く? 行くならランチ控えなきゃ。○○さん美味しいかな、って。何の話なのって思いきや、人肉を食す世界になっていて、セックスは道端でまるで動物が交尾するかのようにあらゆる場所で行われ、そこで受精しできた子はセンターで大事に育てられる。センターっ子って言葉まででき…
生命式でぬぉーってなってたら次の素敵な素材で、結婚指輪の主流が人間の歯や骨になっており、プラチナにすると言うとお金ないの? って言われる世界になっていること。家具も人間を使い、人毛のセーターは高級品。生命式の次がこれだからびっくりしてまた笑った。
ぶっ飛んだものから少しおかしいもの、12篇の面白い作品がギュッと詰まった短編集、読むの少し疲れるけど楽しかった!
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「生命式」★★★★
「素敵な素材」★★★★
「素晴らしい食卓」★★★
「夏の夜の口付け」★★★
「二人家族」★★★
「大きな星の時間」★★★
「ポチ」★★★
「魔法のからだ」★★★
「かぜのこいびと」★★★★
「パズル」★★★
「街を食べる」★★★
「孵化」★★★★
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初っ端の『生命式』から村田ワールド全開の短編集。自分の概念と大きく違うと「キモっ」とか「ありえない」って嫌悪感を持ってしまうが、結局、普通や常識とは何なのか?それをいつも疑える人でいたい。このコロナ禍で感慨深く読んだ。とはいえ、相変わらず世界観ぶっ飛んでますが。
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世界観すごい。
何が正しいのか、常識なのか、分からなくなってくる。
常識や正常なことにばかり目を向けずに、いろんな思考の人がいるんだなって思える。
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すごすぎるーと何回呟いたことか。
まず発想に度肝を抜かれ、だけど本質を突いた世界観に足元を根こそぎ掬われ、読み終わって自分の信じていたものがぐらつく、この連続の短編集。
その中でも「素晴らしい食卓」は一番身近な世界かなと思う。人は自分が信じるものを食べる。この作品で食卓に並ぶものは極端だけど、自分が当たり前に食べているものが世界中の人に好まれるとは限らない。まさに多様性の本質を衝撃的に読者に突きつけるインパクト大な作品ばかりだった。
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この著者の本は全くの予備情報無しで読むべきだろう。自分が良く知っているような日常から、えっ、こんな世界なの?と驚かされる瞬間が好きなのだ。表題作はじめ、人間として当たり前と考えていた倫理観・価値観など、時代の進みが加速している現代では、数十年で変わってしまうかも知れないと思わせる短編集。
一風変わった人を描いた作品も良いが、やはり世の中ごと(今の世から見れば)おかしなことになってしまっている話の方が面白い。だから、そんな世界の長編をまた読んでみたい。二番煎じにならずにそんな話を書くのは大変だろうが。
どれだけその世界をきちんと細部にわたり構築できて、読者が納得できるか試されてい見たい気がするのである。
でも最期の「孵化」も良かった。誰もが人格を演じているのかも…
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目を覆いたくなるような、軽蔑したくなるような光景が、どのページを開いても広がっている。
けれど、例えば30年後の私達が、どんな「正しさ」を信仰していて、何を軽蔑するようになっているのだろうか、と、ふと思わされる。
例えばこの国でも、ある時代には、ある価値観の下に積極的に自死することが正しいことであったりもしたわけで、
またある時代のある国では、ある種族の人間を徹底的に排除することが正当化されたりもした。
それは今では、理解し難く、軽蔑され得ることでもある。
今だって、例えば罰ゲームとして無理矢理に現地の「ゲテモノ」食材を食べさせるようなバラエティ番組の一企画があったりするのだけれど、
正直、自分はそういった企画への違和感を禁じ得ない。
それは現地の食文化へのリスペクトに欠ける行為であると思うし、
いっそ文化の違いをきっぱり伝えて、
「私はこれを食べません」と言い切る方がよほど誠実だと思う。
良くも知らないうちに、相手の宗教に対してみだりに理解や関心を示すべきではないのと同じように。
それは相手の文化を聖別する行為であり、同時に自身の文化を守るための行為でもあるのだと思う。
ある価値観は同時に、他者にとっての違和感である。
「価値観」の対義語は「違和感」であると、この本に教えられた。
また、「正しい軽蔑の仕方」も教えられた。
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発狂しそうになりながら読了。
最後の[孵化]で少し正常に戻った...
ほんとに、良い意味で発狂させてくれる作家さんです。
村田沙耶香さんと同世代だからだろうか...恥ずかしくて恥ずかしくて仕方なくなる。
「もうやめて、勘弁して!」って叫びそうになりながら...
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村田沙耶香の作品には一貫して「正しさ」について描かれている。社会の中で生きる人間は常にその時の、その環境に満ちている「正しさ」を教え込まれ、正しくあることを強要される。どんな人間も程度の差はあれ、社会の「正しさ」のものさしと、自分の中のものさしとのズレに苦悩している。
この短編集『生命式』に登場する主人公たちも例外ではない。それぞれの短編の世界や主人公の持っているものさしは私達読者のいる社会や、読者自身のものとはほんの少しだけズレている。それらのものさしはその環境においては論理的であり、矛盾のない整合性の取れた「正しさ」である。読者はそれぞれの短編を読んで、様々なものさしに触れるにつれ、私達や、私達の住む社会の持つ「正しさ」のものさしに疑問を抱く。
これらの作品は単に社会の価値観へ疑問を抱くように啓蒙する事を目的としていない。各作品の登場人物たちは社会と自分の持っている「正しさ」の違いを認め、他の「正しさ」を喜んで受け入れたり、「正しさ」が交わり融け合うことから他の「正しさ」の違いを認めた上で尊重するなどそれぞれの結末へと向かっていく。それぞれの物語が全く異なる「正しさ」へと到達するこの短編集自体が、本当に正しい「正しさ」など存在しないという一つの証明になっている。
昨今のあまりにも速すぎる社会の変遷の中で多くの人々が酸欠になり、人生を味わう味覚を失ってきつつあると感じる。大きく、速い、時代の流れの中で少し足を止め、周りを見渡す。それだけで周りには多種多様な「正しさ」で溢れていることに気がつく。自分の「正しさ」の味わいを大切にしつつも、他の「正しさ」の味に触れ新たな味覚を得る。そんな人生の味わい方を思い出させてくれた一冊。
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みんなの感想を読んで凄い内容なんだろうなと構えて読み始めたが、本当に凄かった。
ごく普通の日常のように、奇天烈な物語が進む。
人間を食べて、生命を残す。
死んだ人は「素材」になる。
食文化は各々の価値観だ(?)。
舌の感触に似たわらび餅を噛み切る老女。
ここまで読んでリタイア。
積読すらしたくない。
想像しちゃって気持ち悪くなった。