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紙の本
裏面史というほどのことはないと思うが
2019/11/24 14:54
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投稿者:つばめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在の日本では考えられないが、1989(平成元)年、株式の世界時価総額ベストテンに日本企業が7社もランクインしていたバブル景気のピークにあった。元新聞記者であった著者が、20数年の総会屋取材を通じて、総会屋の視点からバブル期の日本経済の裏面史を描くことを目的とした著作である。当時のバブル期を経験していない読者が、バブル期を知る目的とするならば、本書はその期待に応えてくれるであろう。ただし、バブル期を知っている読者にとっては、記述の大半は当時の新聞をにぎわした内容であるように思われる。総会屋の以下のような肉声は、当時の新聞記事にもなかったように思えるが、これが経済の裏面史といえるか、少々疑問である。■対等合併というと聞こえはよいが、実はそれぞれ出身会社の派閥が温存され、派閥争いが絶えない。派閥があると社内の不祥事などの情報が漏れてくるから総会屋にとっては良い会社といえる。■〇〇グループは国内最大の財閥系総本山という自意識があり、ほかの企業グループとは、違い、自分たちは別格だとプライドが高い。だから、総会屋やヤクザのような連中と付き合いがあることを世間に知られるなんて許せないのだろう。ましてや、自分たちの不祥事やスキャンダルなどを株主総会の場で、総会屋から突き付けられるような失態は、決してあってはならないわけだ。だからこそ、我々にとって重要なスポンサーたりうる。■3億円のCB(転換社債)を購入する、たちまち6億円で売れた。儲かるとは予測していたが、これほど儲かるとは思わなかった。とにかく札束が重たかった。なぜ10万円札がないのかと思った。
1993年から1994年にかけて相次いで企業テロ(阪和銀行副頭取刺殺、富士フィルム専務刺殺、住友銀行支店長射殺)が発生、この内阪和、住友の2件は未解決のままで時効を迎えた。この事件が未解決になった背景には、企業が事件捜査に非協力的であることが一因と当時の新聞でも報道されていたが、こうした企業テロの真相を深く追求してこそ裏面史の面目躍如と思われるが、こうした記述は一切なく、物足りなさを感じた。ただし、最終章の総会屋の要求を拒み続け、総会屋の質問にはすべて対応した大手食品会社の取組みは、一服の清涼剤であった。
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