家族とは。 人生とは。 生命とは。 今を大切に生き抜きたいと思わせてくれた渾身の一書。
2020/12/23 15:42
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投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
友人の読書レビュー投を稿見て読みたくなり、手に取った。
平成最後の未成年死刑囚が脱獄。
鏑木慶一(かぶらぎ・けいいち)。
逮捕当時18歳の少年だった。
彼は無実を訴えていた。
だが誰もそれを信じる人はいなかった。彼の弁護士でさえ。
極悪非道な死刑囚が野に放たれたままだと、世間は騒ぎ続ける。
名前を変え、顔を変え、彼の逃亡は続く。
東京オリンピック会場の工事現場。
ニュース配信サイトのフリーライター。
冬の長野の旅館の住み込みアルバイト。
山形県のパン工場。
彼の情報にかけられた懸賞金はつり上がっていく。
時間だけがただただ、過ぎていく。
読み進めていく毎に、ひとつの疑問が胸にわき上がってくる。
彼は本当に人殺しなのか?
彼の事を知らずに、彼と深い関係になっていった人たちとその感情は共有されていく。
彼の事を知ってしまった時、まずは恐怖におののく。
そしてその違和感とのギャップに苦しむ。
「嘘は疲れます。できればつかないでいたいものです」
高齢者福祉施設で、認知症の入居者への対応をしながら同僚につぶやいたこの言葉が重く響く。
犯罪者が目の前に表れた恐怖。
死が現実のものになる恐怖。
そして極限を超えた時の人間の絆。
目の前の人に誠実に尽くし抜くこと。
正直に生き抜いていくこと。
家族とは。
人生とは。
生命とは。
多くのこと考えさせられた。
そして、今を大切に生き抜きたいと思わせてくれた渾身の一書。
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
殺人事件で死刑判決を受けた主人公が脱獄し、その後の顛末をスリリングに、そして正義を信じて生きる姿に、心打たれる。人生は不可解で理不尽なものである。それが運命という言葉で片付けられてしまうのであるのなら、あまりにも残酷である。主人公は、偽りの姿をさらしながら、その誠実さを周囲の人に示し、彼を支えてくれえる人々を増やしていったのである。ハッピーエンドのようで、主人公の存在義は何であったのか、と問わなくてはいけない。
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埼玉一家惨殺事件の未成年死刑囚が脱獄する。24時間フル稼働する東京オリンピック施設の工事現場、介護者の人手不足に喘ぐ千葉のグループホーム……。その場所に突然あらわれ逃亡そして潜伏を繰り返す彼の目的とは? 少年死刑囚の脱獄488日を追う!
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一家3人を惨殺し、平成最後の少年死刑囚となった男が拘置所から脱走した。警察の必死の捜索にも関わらず、男は逃亡を続ける。488日に及ぶ脱獄後の様子を、警察でも脱獄犯でもなく、彼に関わった人達の視点から描いた作品。読み進むうちに違和感を覚える。違和感はざわざわとした不安へと変わっていく。この男、一体……。事件の真相がおぼろげに明らかになる中、物語は急展開し、エピローグは涙なくして読めなかった。すごい作品だった。
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染井さんの作品は2作品目。
面白かったードキドキした。
あんなにうまくタイミング良く逃げ切れるわけないんだけど、(福田和子てそうだったっけ?)
途中から、うまく逃げて!と応援してる自分がいる。
また薬丸さんの友罪のように、もし自分の近くに(確か同僚だった)犯罪者がいたら…的な視点も私ならどうするかと考えたり、ドキドキもあるけど、考えさせられる作品でもありました。
途中から、冤罪の展開は見えてはきますが、ページをめくる手は止まらず。
ただ最後まで生きて展開を見届けて欲しかったですが、最後の判決のシーンはホロっときましたね。
また染井さんの作品読も。
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「悪い夏」の著者の作品とは思えない、年に数冊出会えるかどうかの大傑作、と大々的に賞賛したい。少年死刑囚が脱獄してからの逃亡の日々を、都度都度偶然出会ってしまった老若男女の視点から少年を丹念に描いている。正直冤罪がどうこうなんてことは本筋ではなく、人間同士がふれあい、信頼を寄せあうということを、非常に丁寧に描いている。500頁弱の大作ながら一気に読破せざるをえないほどの筆力に圧倒された。今、読書の幸福感に浸っている。ひとつだけ難点を言うと、作品内容と装丁が全くミスマッチだということぐらい。
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染井為人さんの新作は、少年死刑囚の脱獄488日を追ったクライムサスペンス。埼玉一家惨殺事件の未成年死刑囚が脱獄、各地を転々とし出没・逃亡を繰り返して行き着く先は果たして、そしてその地を目指す理由は? 様々な人と交流しつつ逃亡する展開なので連作短編のような形で楽しめる長編小説となっている、少年は逃亡の中で格差問題・介護問題・SNS炎上問題といった現代社会のさまざまな問題と接することになるので、一冊の社会小説としても読むことができる。ラストはいろいろ切ないので読後感はそれほどよくないが、それが狙いか?
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(図書館本)お勧め度:☆6個(満点10個)未成年で死刑の判決を受けた少年の脱走劇を綴った小説で、冤罪事件をテーマにした社会派小説とでも言うべきかと思う。ただ、テーマが重厚なだけにややもすると、現実味に欠ける気もする。身近にそういう場面に出くわさない限りだけれど・・・。ストーリー展開は面白い。脱走後の少年が「正体」を隠して人と関わり、生活していく様は、うまく描かれていると思うし、とても犯人とは思えない。結局、不幸な終わり方だけど後味は悪くない。最後の判決は「無罪」とは書かれてないけど、誰でもそう思うだろ。
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ある殺人事件で死刑を求刑された少年が脱走。1年半以上潜伏していたが、なぜ?何のために脱走したのか?色んなエピソードを交えながら、事件の真相が明らかになっていきます。
死刑囚の視点というのはほとんどなく、各エピソードでは彼に関わった人の視点で、物語は進行します。
怪しい人が毎回登場するのですが、性格や雰囲気が異なっていて、本当に同じ人?と思わせてくれます。
もし、目の前の人が脱獄された人だったらと考えると、自分だったらどうなんだろうと思ってしまいます。
そういった作品でふと思ったのが、吉田修一さんの「怒り」です。あの作品は、同じ時系列で異なった3人の誰かでしたが、こちらは異なった時系列で5人の怪しい人物を疑います。
染井さんの作品は、これが初読なのですが、スピード感があり、読みやすかったです。特に今までの普通の生活を送っていたのに、この人もしかして?と疑心暗鬼になった瞬間から徐々に張り詰めた空気になっていくのがグイグイと引き込まれました。
各エピソードで描く対象の人は、死刑囚とは思えない良い人ばかりで、その人物に関わった人たちの気持ちが理解できます。通報しようかしまいか究極の選択に自分だったらと思うと複雑です。
死刑囚の脱獄劇がメインですが、他にも背景として様々な社会問題が描かれています。格差や介護、SNSの拡散など上手く調和していて、よりリアル感が増していました。
なぜ、5つのエピソードが描かれているのかは、最終章で明らかになります。殺人事件の真相、なぜ逃げ続けていたのか。後半になると、方向性が異なっていくので、最後まで目が離せませんでした。
最後は多分〇〇だろうという仄かし方で終わるのですが、良かった反面、無念の残る終わり方でしばらく複雑な気持ちになってしまいました。
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内容紹介 (Amazonより)
埼玉一家惨殺事件の未成年死刑囚が脱獄する。24時間フル稼働する東京オリンピック施設の工事現場、介護者の人手不足に喘ぐ千葉のグループホーム……。その場所に突然あらわれ逃亡そして潜伏を繰り返す彼の目的とは? 少年死刑囚の脱獄488日を追う!
ラストの判決の場面ではほろりと涙が出ました。
なんだかやるせない思いでいっぱいです。
途中からこの人は犯人じゃないんじゃないかと思い始めていました。
不条理すぎて...人が人を裁くことの難しさを痛感する作品です。
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どうなるのか、先が気になり一気読みした。脱獄した死刑囚は果たして無実なのか?リアルな描き方に、今の日本の警察の暗部も垣間見えた。絶対に彼は違うと私も署名したくなった。
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逃げきれないとわかっていても読む手が止まらない
冤罪を作りだす空気感は
他人への正義の押しつけ
同調圧力の強化だなーと
不穏な空気を馬鹿なフリして
壊さなきゃなー
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一家惨殺事件の犯人であり、平成最後の少年死刑囚とされた鏑木慶一。不敵にも脱獄に成功した彼は、名や姿を変え、様々な場所に溶け込み日常生活を送ることに。警察の執拗な追跡を躱しつつ逃亡を続ける彼は何を企んでいるのか。息詰まるようなサスペンス。
悪逆非道としか思えないような凶悪犯のはずなのに、なぜかそうは思えない彼のキャラクターが不穏でありながらも魅力的に感じられます。そしてそんな彼の姿を見続けるうちに、疑念が湧いてくるのも確か。なぜ彼はそんな恐ろしい事件を起こしてしまったのか。彼に何があったのか。いやそれとも、善人のように見える彼の行動に意味があり、それすらも彼の企みなのか。彼の正体が一向につかめないまま、物語にぐいぐい引き込まれました。
そしてようやく明らかになった彼の「正体」。なんというか……あまりのことに怖気を感じました。いくらなんでもこれは酷い、と思うのですが。ありえない話でもないのでしょうか。何を信じればいいのか。真実はいったいどこにあるのか。エピローグではやや救いがあるものの、つらく厳しく恐ろしい物語でした。
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埼玉県の民家で2歳の子供を含む一家3人を惨殺し、「平成最後の少年死刑囚」と呼ばれる18歳の少年・鏑木慶一が、拘置所から脱獄した。
この物語は、脱獄囚の鏑木が名前を偽り、変装し、逃走し続ける488日間の日々を、彼が関わった者たちとの交流を軸に描いていく。
そこには一家惨殺、脱獄囚とは思えないほどの優しさと、人への思いやりに溢れた男の姿があった。彼は何故、脱獄したのか?そもそも彼は何者なのか?
500日足らずの日々を辿るうち、知らない間に彼を応援していることに気がつく。早く!早く逃げて!と‥‥。
後半はもう、ページをめくる手を止められない。
そして、すべてが明らかになるラスト。歯痒さと、やるせなさと、感動に胸が熱くなって、泣けた。
重たいものを訴えかける作品ではあるけれど、一級逃亡劇でもあった。面白かった!
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殺人を犯し死刑囚となった鏑木慶一は脱獄し、顔と名前を変えて逃走。本当に彼は人を殺したのか?逃げた先々でいろんな人に会いそこでの様々な人間模様を描く。出会う人たちがみんないい人過ぎて切ない。もっとこの生活が続いて欲しいが逃げてもほしい。ライターのさやかと元弁護士の渡辺が良かった。結末は自分的にはもっと欲が出てしまった。