三千年間使われてる漢字についてユーモアを交え軽妙に語る
2020/07/03 11:10
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投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
初めて知ったのだが、鹿児島には「麑」という一字で表す漢字があるらしい。本書では例として、ザビエル記念のアーチに刻まれた文字「フランシスコザビエ聖師滞麑記念」が紹介されている。世間には漢字の書き取りの試験で「はねる・はねない」など筆画の微妙な差異にこだわって採点する先生や指導者がいるようだ。しかしそれは現在の印刷物だけしか見ていない浅薄な見解であって、その先生は手書き字形と印刷字形が別のものだということをまったく理解しておらず、仄聞するところでは「辞書に印刷されているのが漢字の正しい形だ」などと、とんでもない指導をしている先生もいるらしい。国語教師のネタも満載だし、本当におすすめです。
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投稿者:もり - この投稿者のレビュー一覧を見る
我が子に漢検の勉強をさせるために、この本をカンニングして漢字の面白さをつたえて、5級を勉強してもらえました!そして、私も高校レベルからやる気になりました。漢字を学ぶ気がおきます。とてもおも白いです。
『日本人のための漢字入門』
2020/05/13 19:46
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投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
旭川で「企鵝鳥」、北京で「餃子」など旅先で出会った漢字の来歴をたどり
「正」と「征」、「芸」「藝」など字形の違いを字源から繙く
漢字研究の第一人者が蘊蓄を傾ける“つい誰かに話したくなる漢字の秘密”
《世界最長の歴史を持つ漢字こそ、現代の情報化時代にふさわしい、もっとも新しい文字なのである》
ラジオの原稿、HPや雑誌の連載などの記事に大幅な加筆・修正をして編集
ところで、「謎」に含まれる「迷」の之繞(しんにょう)は一点? それとも二点? その謎は「おわりに」にて
まさに誰かに話したくなる逸話が満載
2021/12/31 23:52
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投稿者:docuciaA - この投稿者のレビュー一覧を見る
よく聞き知っている漢字に関する逸話に関する意外な裏話あり、その他諸々、へえ〜!と思う内容が満載ですぐ読み終えてしまいました。
軽やかに読みやすくオススメです。
ただ、連載をまとめたもののようで重複する内容がいくつかあったのが少し残念でした。
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阿辻さんが漢字について書いた本はどれも読みやすく、それでいて、各所で蒙を啓かれる。読んでいて飽きない。本書は、本来いろんなところに書いた漢字エッセイをまとめたもので、漢字入門というのは、漢字学、人名用漢字、異体字、足跡を洗わす「止」のつくる漢字や「又」などの手を構成要素とする漢字の話、旅先で出合う漢字、漢字の未来など、漢字に関する基本的な問題をあつかったことから来ているようだが、その中でもとりわけ際立つのが「令和」についてのエッセイである。だから、わたしは本書のタイトルは「令和の漢字学」としてもよかったのではないかと思っている。
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日本人のための漢字入門
著者:阿辻哲次
発行:2020年2月20日
講談社現代新書
今、一番有名で人気のある漢字学者の新刊本。漢字にまつわるエッセイの名手で、3月まで3年以上つづいた日経新聞の連載が毎週日曜日に楽しみだった。日経の「遊遊漢字学」に出てきたネタも散見できたが、とても楽しく読めた。勉強になったが、おそらくすぐに忘れてしまうだろう。
阿辻さんの「辻」のシンニョウは点が一つか二つか、という質問を嫌というほど受けるそうである。答えは、どっちでもいい。いちいち答えるのが面倒なので、今後はこのページをコピーして送ろうと思う、とぼやきながら解説。シンニョウに限らず、篆刻と筆書とではおのずと字体も変わってくる。シンニョウの点も、一つ、二つ、そしてなしで「L」みたいなものもあったらしい。しかし、これもシンニョウだけのことではないが、「科挙」の試験の際に採点の基準をつくるために楷書ができてそこで一旦「正解」が出来たようだが、その後にまた変化していった。
日本におけるシンニョウは、昔定められていた当用漢字(後に常用漢字へ)で指定された47字のみ点は一つ、その後、追加された漢字に二つのものがあり、混在しているそうだが、これはすべて印刷する場合の基準であって、手書きに関しては行政はなにも制限していないので、どっちでもいいそうである。当用漢字は、当面用いる漢字という意味だそうだ。
「謎」という漢字のシンニョウは、点が一つのものと二つのものが混在しているが、リーマンショック前後の時はまだガラケーもスマホもほとんどが点一つだった。理由は、ガラケーが点一つだったので、同じキャリアが出すスマホもそれに統一する必要があったため。ところが、2008年に日本デビューしたiPhoneはそんなのお構えなし。点二つの漢字を使ったため、それ以降のスマホも二つになったらしい。
これも含め、辞書を見ながら漢字の採点をしている教師はとんでもないと筆者は指摘している。
現在、JIS漢字水準は第四水準まであるらしい。80年代前半からワープロを使っている身としては、JIS第一水準のワープロはだめ、高価でも第二水準のワープロを買う必要があった。
「正」はもともと他社に対して戦争をしかけることをいう文字であったが、勝てば官軍ということで勝者が常に正義を獲得して「ただしい」という意味を表すようになって元来の意味が薄れてしまった。そこで、「道路・行進」を示すマークであるぎょうにんべんをつけた「征」という字が作られた。せいろがんは、露国(ロシア)を征伐する兵隊のために作られた薬で、「征露丸」と命名されたが、ロシアが戦勝国となったために戦後は「正露丸」となった。
中国語の簡体字は、中国の革命後に作られたと思われているがそれは大間違い。本書では8世紀に作られている事例を紹介している。
イギリスの言語学者ムーアハウスの著書「文字の歴史」は、人類の文字はすべて絵文字から始まり、最終的にはアルファベットへと進化する道筋を明らかにしようとしている。つまり、表意文字の漢字はまだ進化の途中だということになる。しかし、それは疑問。なぜなら今、ピクトグラムが世界中で注目されているが、漢字は文字そのものから意味を読み取れるいわばピクトグラムともいえるから。進駐軍が自分たちの理解できない漢字を日本の文字から廃止するように求めたが、とんでもない話である。
********(メモ)*********
「親」という漢字は、「木」迂遠に立って、子供を「見」ている人のことである。卒業できなのもご両親がずっと君たちを見守ってくださったおかげである。そんな卒業式での校長の話は嘘っぱちである。
山から切り出した「木」を神聖なものにするために「辛(針)」を打ち込み、神聖化された木から作った位牌を毎日「見」て、亡き親を祀ることを意味する漢字であった。
クイズでは画数の多い漢字など出題されるが、冷僻字(れいへきじ:めったに使われない字)がたくさんある。
「ら行」で始まる単語は、羅列、瑠璃、蓮華、露骨などの漢語か、ラッパ、ラジオなどの外来語しかない。「令和」はラ行から始まるので日本の元号としてふさわしくないのではないかという議論がある。
漢音は唐代の長安で使われていた漢字音を遣唐使が持ち帰った発音、呉音は南北朝時代の南朝で南京に都を置いた諸王朝と交流の譜か架かった百済で使われていた漢字音で、渡来人によって日本に持ち渡らされた。
文化庁の常用漢字表のサイトには、漢字の「デザイン差」に関する表示がある。「令」の最後の棒が斜めか真っ直ぐ下かもこれにある。
企画の企はつま先で立って遠くを眺める。画は土地を区切る。企画はじっと立ち止まり、背伸びをして遠くを眺め、未来を見通して正確に区切りをつけていく、という意味だった。
ある音符(発音を示す要素)で字音を表される一群の形成文字には、時としてそこに共通の意味を想定できる場合があり、それを「右文説(ゆうぶんせつ)」という。代表例は、錢、賤、箋などに着いている「戔(さん)」小さいという意味。
仮借(かしゃ)とは漢字の当て字のこと。ある概念を表さす音声言語が、別の概念をあらわすものとして既に存在している場合、同じ発音だからという理由だけで借りてきて使ってしまうこと。2つの概念にはまったく関連性がない。例えば、我はもともとノコギリを表す言葉だったが、発音が「私」を意味する言葉の同じだったので、「我」を「私」を意味する漢字として使っているうち、ノコギリの意味が忘れ去られた。
門構えに「牛」と書くと「まら」。門構えに「也」と書くと「つび」。牛は角からイメージしているかもしれないが、よく分からない。也は中国の説文解字(せつもんかいじ)で「女陰」と解釈していたから。
中国の科挙のうち、最も重要視されたのは小論文試験である「対策」。紙がなかった時代に文字を書いた竹や木の札を「策」といったことから、この試験科目を「対策」といった。
エジプトもメソポタミアも、古代の文字は死文字となった。世界で一日も途切れずに使われ続けているのは漢字だけ。
共は両手で何かを捧げ持つことを示す文字で、下の部分は両手をしたから上に上げた形。しかし、後にこの文字が「ともに・一緒に」という意味に使われることが多くなったので、改めてにんべんをつけた「供」が作られた。
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●「当用漢字」というものがあって、そもそも戦後に漢字が廃止されるかもしれなかったことなんて、知りもしなかった。
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「外国人のための漢字入門」ではなく、「日本人のための漢字入門」というタイトル。日本人である我々は、日常的に漢字を読み書きしている。そんな我々の入門書?いったい漢字の何に入門するのだろう?
読んで見て、日常的に使っている漢字のことについて、何でも知っていると思っているのは大間違いで、ほとんど何も知らないで使っているのだということが分かった。従って「入門書」というタイトルは間違いではない。
漢字にもっと関心をもつことで、地名や人名など、旅行や出会いなどで新たな発見があるかもしれない。本書の中にも、「旅先で出会う漢字」などの章が設けられている。
読後、最大の「へ~」は、次の3つの熟語の表記について。
「邁進」
「進退」
「邂逅」
いずれも「シンニョウ」の文字ばかりの熟語だ。
本書を読むまでは、老眼の私には死ぬまで気づかなかったかもしれないが、「邁進」は二点シンニョウと一点シンニョウの組み合わせ、「進退」はいずれも一点シンニョウ、「邂逅」はいずれも二点シンニョウだという。
思わずスマホで変換してみたが、確かに間違いない。
確かに、二点シンニョウにはこれまでも遭遇したことがある。本書の著者の名前にも含まれている。しかし、どうして二種類のシンニョウが存在するのかまでは突っ込んで考えたことはなかった。
そのからくりは、敗戦後のGHQの施策に起因していることを初めて知ったが、そもそも日本の漢字に、GHQの統制が影響していたなどということも初めて知って驚いた。いかに、自国語に無関心だったかということだ。
「当用漢字」「常用漢字」という言葉は、何度と見聞きした覚えがあるが、その意味の確認をずっと素通りしてきた。
日本人は敗戦後「漢字を使わないように」規制されたが、その時に急では混乱を招くからという理由で、「当面用いてもよい漢字」としてたった1850種類の漢字だけが許された。「当面用いてよい漢字」=「当用漢字」である。
その後、昭和56年に「当用漢字」(制限)がやっと廃止され、「当用漢字」として定められていたものも含めて、「法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安を示すもの」としての「常用漢字」1945種類が定められた。
このとき、「当用漢字」に含まれていた「二点シンニョウ」の文字は、すべて「一点シンニョウ」に表記が統一されたらしい。従って、「当用漢字」に含まれなかった「二点シンニョウ」文字は、二点のまま残っているという。
その後、世にワープロが出て、漢字は手書き文化から入力文化へと変化してきたが、その漢字フォントは、「常用漢字」とそれ以外と、忠実に表記が再現されている。
そんなことも知らないで、正確に手書きができなくとも、PCやスマホが勝手に漢字変換してくれることに甘えた生活を送っていると、シンニョウが一点なのか二点なのかなんかには気が付かないはずである。
漢字は「表意文字」であるという特徴の説明を、象形文字や甲骨文字との関連から説��してくれるページもとても興味深い。
例えば、先の「旅先で出会う漢字」の章では「旅」という文字が、「旗を持って旅に出る人=すなわち戦地へ行く人」を表現するためにできた文字であるという。それを知ると、軍隊の単位を「旅団」と呼ぶことともリンクしてくる。
こんな風に、漢字のからくりを知ることで、日常生活の中で新たな発見をしたり、歴史を知ったりするきっかけとなるということが分かった。
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漢字の形や語源を知ることで、
視点が変わると感じました。
『習』ひな鳥が羽を動かして飛ぶ練習をする
深い解説もあり読むのに苦心した部分もあったのですが、漢字の形に向き合える良書と感じました