紙の本
建築の奥深さ、その意義
2020/06/01 11:51
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:魚太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
建築は時代を哲学する。その時代を象徴し、次の時代を導く。1964年の代々木競技場は高度成長時代のシンボルであり、1970年の万博会場は資本主義経済の虚飾の始まりだった。2020年の新・国立競技場は森への再帰を唱える。『新しい「国立」、新しい「国家」は、(中略)無数の小さく多様なものの集合でなければならない。』『「その小ささ」の先にこそ、新しい日本の経済、政治が無ければならない。』と述べる。
これは哲学的な文明論である。『21世紀とは、人々が庇でつながれる時代である。』という言葉が心に残る。
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好きな建築家は?と聞かれたら間違いなくあげる一人。
新国立競技場でさらに有名になった隈研吾さんの建築家人生を振り返りながら、原点を知ることのできる一冊です。
なんであんなに「木」にこだわるのか?という最大の謎も「なるほど!」という確かな納得感を得ることができました。笑
ちなみに環八沿いにある「東京メモリードホール(M2)」については一切触れていなかったなあ。。。(Googleで「隈研吾 環八」と検索したら、隈研吾建築事務所のホームページには実績としては掲載されていました。)
どこかのインタビューか本に、あの物件は自分の実績として抹消したいと言っていたような記憶がしていたので、あえて触れるかなあ?と期待しましたがやっぱりなかった。。。笑
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隈研吾の 生い立ちから、建築家を目指し、
そして、建築家とは何かを 問いながら、建築家として行動する。
自分の中にある、真摯な心の叫びを 自分なりに受け止めながら現在の在りようを、真摯に認めて、どうあるべきかを問う。
自分の中にある建築家としての自己矛盾。
実に 思い切って、赤裸々に語る。その姿勢が尊いと思う。
高度経済成長は、自動車産業や家電製品の急速な発展だけでなく、自分の家を持つという住宅産業とそれを後押しする政府の政策に成り立っていた。
あまりそのように考えていなかったが、言われてみればそうだ。
近代化、高度経済成長は、鉄とコンクリートによって、大きさと高さを目指した。
しかし、それにも限界がある。その限界を突き破るためには、アフリカのサハラ砂漠の集落を見ることで、住処とは何かが理解できたのだが、それを現実に作るためには、バブルが弾ける。
アメリカの メトロポリタンアーキテクチャーを知ることで、反オブジェクトを目指すが、それにたどり着くには 都市ではなく田舎の木の手触りと木を扱う大工たちの技術によって、初めて再生する。
木造原理主義ではなく、木をどう生かすかの中で苦闘する。
ある意味では、これまでの鉄とコンクリートに折り合いをつけながら地元の木を使って組み立て直すという曖昧な方法でしか 対応できない状況にあった。
木造によって高さを競うというのも、過去の延長戦にあるかもしれない。
隈研吾が求めている 隈研吾の建築家として、建築とは何か?
が、言葉だけでなく、建造物でどうやってできるのか?
それが、私にとっても、大きな楽しみであることははっきりしている。
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ふたつのオリンピック。
20世紀から、人は家を持てるようになった。
チャーチル「建築信仰」 吉田茂へ
オリンピック、新幹線、首都高速、代々木体育館
万博
スイス館 木のような入れないパビリオン
武士道
海外参入障壁、ミリ単位の精度の国産コンクリート建築
抽象性、安藤忠雄
ザハ
オブジェクト指向
コルビュジエ
コンクリートと鉄とガラス 世界のどこでも手に入る
新国立競技場
世界の大御所しか応募できない
大成建設 長岡市役所「土間」でコラボ
木でスタジアムをつくる、木の明治神宮外苑に
低い47.4m、地面を掘る
新しい「国立」「国家」無数の小さく多様な物の集合
人が庇でつながる時代
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前に読んだ2冊は対談の書き下ろしで、著書は初めて。ひとことで言うと面白い本だった(陳腐ですみません)。
隈さんという人は、先人にすごく憧れたかと思ったら割と簡単に失望したりする。はっきりしてて良い。歴史的建築家の先輩方に毒を吐きながら、それは悪口を言ってるのではなく、自分の価値観をしっかり確かめながら生きてきたということだ。
建築家や、建築が社会に与えた影響や、世界の建築行政などの歴史が、新書らしくきっちり書かれていて興味深かった。
国立競技場で、ザハが却下されて隈さんに変わった時、国の御用学者だから選ばれたのかと思っていた。予算オーバーの物件を上手くスケールダウンする技能を買われたのかと。この時の経緯もよく分かり誤解が解けた。その節は、失礼なこと考えてすみませんでした(汗)
国立競技場に行ってみたいけど、コロナが落ち着いたらまずは近場の建築を訪ねたい。確か岩国の獺祭の設計をしてたはず。本に書いてあったことを思い出しながら、美味い日本酒を買いに行ってみよう。
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2時間くらいで読み終わってしまった。筆者の体験談が面白い。そして、建築の側から資本主義を眺める視点が、他の著者には無くて、面白かった。建築系に進みたい人は一度読んでみたらいいんじゃないだろうか。
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近現代の社会と建築との関係を、著者自身の経験から語る一冊。
建築の知識が全くなくても、大変面白く、興味深く読むことができた。
建築がこんなにも社会に影響を与えてきたものだったのか、政治的な面をもったものだったのかと思った。
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新国立競技場のコンセプトを創造する過程を、幼年期からの様々な経験をベースに記載したユニークな著書だ.コンクリートと金属での建築から、日本の感性をふんだんに取り入れた木材を中心とする構成を押し通す、強固な意思を感じる著述が多数見られて、非常に楽しめた.10種類の日本人が住む10酒類の住宅という切り口で書かれた『10宅論』で次の10派を列記している.ワンルームマンション派、清里ペンション派、カフェバー派、ハビタ派、アーキテクト派、住宅展示場派、建売住宅派、クラブ派、料亭派、歴史的家屋派だ.巧みで奥の深い指摘だと感じた.
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建築のことはよくわからないけれど、建築物を見るのが好きな私にとって、めちゃくちゃ面白かった。
隈研吾さんの建築に対する考え方、大きなプロジェクトを成功に導く極意、建築史を垣間見ることができた気がします。
ナラティブな語り口なので知識のない私にも読みやすかったです。
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建築士というと、斬新で奇抜なデザインとお洒落の極みの印象があった。
本書によれば、実際そのように思考する物もいて経済システムの一部としての割り切りでいることも確かなようだ。
それはどこか窮屈さを感じることもある。
そのような中でビジネスとは違い、その時、その場所に最も適した建築を思考してきた著者のスタイルにすごく共感した。
その源泉は幼き日の原風景であったり、地域の大工との語らいであったりと肌で感じた経験に基づいている。
日本は歴史ある古い国であり、多くの自然災害から学んだ建築技術がある。その極みは余す所なく使い倒す木造技術だ。
残念ながら、文明開花によって古くさいものとして扱われた。
迎えた大量生産、大量消費の工業化の中でコアとなったのは「家」でありいわゆる三種の神器は従属品に過ぎないとする着想は新鮮に響いた。
日本の里山や日本家屋に見られる縁側など自然との距離感の曖昧さや一体感が実は豊さなのではないかと感じた。
新国立競技場のコンセプトが自然ありきであることは、日本人のDNAに刻まれた我々は自然の中の存在に過ぎないことを再認識させてくれそう。
そのような視点で新国立競技場を訪れてみたくなった。