紙の本
じっくり
2020/05/24 11:14
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投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史人物について洞察力と人間味に溢れる解説を聞きながら、京都の街を訪れたような情緒を味わえる。一気に読み通すには大変だし、勿体ないので、少しずつ読むと余韻も深まる。このような文章を読めるのも、作家の筆力と1200年の歴史がつながる古都のことだからかもしれない。
紙の本
古都再見
2020/05/20 19:04
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投稿者:雨読 - この投稿者のレビュー一覧を見る
葉室麟氏は2015年2月から京都にも仕事場を設けて暮らしていたとのことで、2017年12月に亡くなられる直前の作品です。
この「古都再見」は終活的な行動として京都を再見し思うままに書き残されたのではないかと感じました。
葉室麟氏は大器晩成で晩年には驚異的なスピードで作品を世に出されましたが、その基礎や見識の高さを、この作品からも窺い知ることが出来ました。
改めて敬愛する次第です。
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ベストセラー作家である葉室氏の遺した師玉の随筆集。京都に仕事場、住まいを構えた作者の深い思いが此処に。
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故郷の九州から京都に移り住んだ著者が、死去の前年まで週刊誌に書き綴った随筆68篇。
読み通すと、自らの死期を間近に見通したかのような筆致が随所に見られると思うのは、思い込みだろうか。
例えば『中原中也の京』で。
『ひとは輝かしい光に満ちた夢のごとき何かに駆り立てながら生き急ぐ。それが「青春」かもしれないが、近頃、同じものが「老い」の中にもあるのではないかと思わぬでもない。死を予感した心のざわめきが似ているからだ』とあるが・・・
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最後に住んでいた京都をそぞろ歩いて発見したことや、京都に関するさまざまな歴史上の人物についての滋味溢れる文章である。さすがに歴史小説家だけあって、興味深い話が満載で、非常に面白かった。ついこないだ亡くなられてしまったが、残念なことだ。芹沢鴨を始め幕末の人物がたくさん出てくるが、生きるということの深さ、悲しさを感じてしまう。江戸時代の詩人・学者の頼山陽を慕っていた弟子の江馬細香の「夏夜」という漢詩には感じ入った。
雨晴れて庭上竹風多し
新月眉の如く繊影斜なり
深夜涼を貪て窓おおはず
暗香枕に和す合歓花
ふふ、なかなか艶っぽいでしょ。
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一定の文量の、長くないエッセイが多数―後で数えると68篇だった…―収められている体裁で「雑誌連載?」と思ったのだが、末尾の方に2015年8月から2016年12月の期間で週刊誌に掲載されたのが本作の初出で在ると説明されていた。週刊誌の中で、1頁か2頁かで寄せられた文章を掲載する連載はよく見受けられる。そして多数在る各篇だが、各々に「密度が高い」というような感で、興味深い内容が詰まっている。
そういう出自の文章なので、本書の中で、例えば「今月の」とか「先月の」というような文については「(XXXX年YY月)」と出版社の編集者が補っている部分が在る。(逆に言えば、そういう箇所に気付いて「雑誌連載?」と思ったのだった。)そういうことは、本当に「些事…」である。例示したような文の箇所だが、その内容は発表時期にだけ意味が在るというようなことではなく、筆者の見聞の一部を偶々為しているので、偶々初めての発表時にそう綴られたというだけのことである。
時代モノの小説の綴り手でもある筆者は、思い立って京都に「仕事場の住まい」を借りて住むことにして、京都での見聞や想い等を本作で綴っている。残念ながら、本書の下敷きとなった雑誌連載エッセイの最後の篇が登場した1年程後、筆者は他界されている。結果的に、「最晩年に観たかった文物を観易い場所に在った時の想い」を綴ったかのような形にはなってしまった。しかし、全般にそういう「遺す」というような調子は感じ悪い。色々な経験を積んだ御本人の人生、作家活動で得たモノ、様々な知識を駆使しながら、「京都での日々」に出くわした事柄や想い起した事柄を綴った各篇は、何れも一言で言えば「瑞々しい」感じなのだ。
各篇を読むと、「60歳代の時代モノの小説で少し知られる作家」が綴ったということを然程意識しない。「幅広い知識を有しながら、尚も新しい発見をしてみようとする青年」が、率直に、淡々と綴った言葉のようである。眼の前に筆者が在って、内容を活き活きと話して下さっているというような感で、ドンドンと読み進めた。
序盤の方では、何度も訪ねてはいるものの、然程縁が深いのでもない京都という新しい土地に住み始めた「構えた感じ」のようなものが感じられないでもない。次第に「街に在る作家」として、自然な感じで有名な催事等を観ながらの様々な想いを綴るような調子になって行っているように思う。そういう辺りも面白い。
「一定の文量の、長くないエッセイが多数」という体裁の文庫本なので、持ち歩いて「一寸した隙間」に1篇ずつ読むというようなことも出来るであろう。なかなかに御薦めだ。
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司馬遼太郎の「街道をゆく」は、私の愛読書のひとつなのだが、残念なことに、京都の洛中に関しての街道(テーマ)が入っていない。
「街道をゆく」に取り上げられた京都付近の街道は、「洛北諸道」「叡山の諸道」「「嵯峨散歩」「大徳寺散歩」等があるが、いずれも「洛外」で、「洛中」に関して書かれたものがない。理由はわからない。(ご存じの方が居れば教えて下さい)
その空白を埋めてくれたのが本書である。
ただ冒頭から「人生の幕が下りる。近頃そんなことをよく思う。(中略)今年(2015年)二月から京都で暮らしている。これまで生きてきて、見るべきものを見ただろうか、という思いに駆られたからだ。(中略)幕が下りるその前に見ておくべきものは、やはり見たいのだ」と、自分の余命を知っているかの如き悲愴な覚悟をもった書き出しである。
全編を通じて、京都とその歴史を語りながら、いわゆるガイドブックのようなものは一切ない。
日々の苦悩に悶々としながら生きた歴史上の人物を、身近な人間として静かにじっくりと語ってくれている。著者の優しさだろう。
著者は本作の連載(当初は週刊新潮に連載)を終えたちょうど1年後に他界した。この続きを読めないのが残念でたまらない。
葉室麟の愛読者としては、是非読んでおきたい1冊である。
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「あるべきようは」あるがままにあらしめよ
高い物語性を有する能楽
「キリスト教を社会の軸とする欧米で発達した近代文学には、宗教的な原罪意識が精神の底にある」
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好きな京都について好きな葉室麟のエッセイを初めて読んだ。歴史小説家なのだから当たり前だが、とても歴史に造詣が深く、単なる京都本よりも歴史について思想を飛躍させている印象。何度か京都を訪れた人も、読むと新たな発見があるかも知れない。
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葉室さんの溢れる知識の波に圧倒された
私自身の少ない知識の壺から持っているモノと照らし合わせて「その話聞いたことある」「その説は知らなかった」「初耳だ」と揉まれながら読んだ
彼と共に市内各所を巡りながらそこに纏わる色んなお話を聞いているようで面白かった
何回でも読みたい
歴史に関する知識はもちろんのこと、社会に対する目と考えが深く鋭くて尊敬する
京都での第二の青春を心ゆくまで楽しめていたならいい