2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカは世界の警察を自認していた。警察だから、国際法を守らない国家などをお仕置きする。つまり制裁するのだ。しかし、トランプが大統領になった現在、世界の警察はやめて自国第一主義で行くという。つまり、世界(少なくとも同盟先進国)の為の警察は辞めて、自国の利益のために気に入らない国にはお仕置きをするというのだろう。現在お仕置きされているのは、イランや中国などだ。アメリカのお仕置き(制裁)は、今に始まったことではない。戦前には、ABCD包囲陣で日本もお仕置きされた。しかし、それは太平洋戦争につながった。お仕置きで相手が黙らなければ、戦争につながる恐れがある。その制裁の背景の一つは、世界の基軸通貨である米ドルである。中国は、デジタル元と一帯一路でアメリカの覇権に挑戦しようとしている。
アメリカの制裁外交
2021/06/11 23:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
直接的な軍事行動を嫌うハト派と軍事行動手前の警告となるタカ派の、双方の妥協点のような形で、近年乱発されるアメリカの経済制裁。しかもその効力はアメリカ国外にも及ぶという。そのカラクリや経済制裁自体の歴史、効果、課題などについてまとめられた一冊。課題のところでは世界経済の中心にドルが存在し続けられるかと言う話にもなっていて、とても興味深い。
個人的にはフランスの銀行に課せられた1兆円近い制裁金をアメリカの連邦政府や州、ニューヨーク市が取り合いをしている箇所が衝撃的だった。
投稿元:
レビューを見る
【米国の金融制裁はこの「司直の長い腕」による執行力がポイントである】(文中より引用)
国際報道などでよく見かけるようになったアメリカによる経済・金融制裁。いったいどういった効果をもたらしているのかを具体例と共に説明しつつ、それが長期的にドルの覇権に与える影響についても考察した作品です。著者は、共同通信のワシントン特派員としても活躍した杉田弘毅。
制裁に関して「言われてみれば」という疑問点を氷解させてくれる一冊。どういった理由で近年この手の外交ツールが多用されるようになったかがスッと胸に落ちてきました。
コンパクトですが☆5つ
投稿元:
レビューを見る
昨今のウクライナ危機で、制裁について取り上げられる機会が多いため、手に取った。
近年のアメリカ外交における制裁について、分かりやすく解説してある。特に、基軸通貨ドルの強さを活かした金融制裁の威力が詳しく書いてある。事例を交えて解説しているので、ニュースと関連付けながら理解できる。ポスト冷戦期のアメリカ外交の復習にもなると思えるくらい、アメリカ外交における制裁が占めるウェイトが大きいのだと感じた(第二部)。
一国の法律、あるいは州の法律が安易に「国外適用」(米当局は国外適用であることを否定する)されることには、違和感を覚える。それは差し引いたとしても、特に後半部における、著者のアメリカに対する評価はかなり厳しいと感じた。
著者は海外特派員の経験を持つジャーナリスト。そのためか、文章自体は、新聞の論説を読んでいるようで大変読みやすい。良書。
ただし、新書という性格もあってか、本文中に注や出典がほとんど記載されていないのは少し気になる。参考文献リストや文献案内等を付されていれば、より望ましいのではないか。
投稿元:
レビューを見る
2022年のロシアによるウクライナ侵略の前にまとめられた本。
米国が経済制裁を多用するようになった経緯がまとめられている。
投稿元:
レビューを見る
この書がアメリカの制裁手段としてドル決済の停止の有効性、その影響力をわかりやすく著された良書なのは確かだ。
アメリカがドル決済の停止による金融制裁を多用し始めたのはオバマ政権以降であり、トランプ政権になると武力行使を忌避する自身の意向から無秩序に乱発された。政権ごとに一変する外交方針の一貫性のなさから制裁の効果も今一つで、中国やロシアなどドル離れを模索する国の行動が活発化している。かなり端折ったがそのような内容だ。
ただこの書の目的が制裁外交の弊害を素にトランプの批判のみに帰結するというものなら、現状を考慮すると疑問符がつく(この書は2020年初版なのでバイデン政権の政策は未知である)。
以前、日経を読んでいたが、数ある記事の中で FTの日本語訳の記事がおぼろげながら印象に残っている(どっちだ)。
バイデン大統領が中国の封じ込めを意識した新しいワシントンコンセンサスを提唱した。新しいコンセンサスは、自国産業の保護、育成を目指す保護主義色の強い内容となっている。レーガン政権が旧コンセンサスで提唱した関税の撤廃などを行い、グローバリズムの進捗を目指すというものから一変されたのだ。
結局バイデン政権もトランプが行った保護主義政策を撤廃できず中国を押さえ込んでいく方向となったわけだ。
それは冷戦崩壊後の開かれた市場、グローバリズム化という指針を示したレーガンのようにトランプは保護主義への転換という新しい方向性を結果的に示したことになり、バイデンはそれに追従した形になる、という内容だった。
結局、アメリカ国民の中国に対する嫌悪感から現政権も制裁を実行しているがこれが不確実性の上昇を招き、残りの世界も巻き込まれている形になっている。
トランプを徹底的に批判していたリベラル系メディアは同じ政策を行っている現政権に対してはやはりと言うべきか批判に及び腰になっている。また息子のハンターバイデンの疑惑に対して、例えばPBSでは論点をずらしたかのような報道がされるなど、まるでバイデン応援団のような様相だ。メディアは頼りにならない。外交活動においても現在の不確実性を解決するような動きはあまり活発では無いように思える。
米国メディアの党派性で物事の善悪を判断する報道姿勢は、結局アメリカの民主主義国家としての行き詰まりのひとつの原因なのではないかと思ってしまう。
話がかなりズレていったがこの書の後半にも著されていたようにアメリカは超大国としての責任を全うすることが困難になっている。ドルの離反を招くのを一つの契機として多極化に向かっていくのだろうか。それとも中国と一戦交えて覇権国としての地位を再び強化していくのか…