中国の太宗による言行が記された、治世の要諦が語られた貴重な書の現代語訳版です!
2021/02/05 11:11
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、中国唐代に呉兢によって編纂されたと言われている太宗の言行録の現代語訳版です。内容は、唐の太宗の政治に関する言行を記録した書で、古来から帝王学の教科書とされてきました。太宗とそれを補佐した臣下たち(魏徴・房玄齢・杜如晦・王珪ら重臣45名)との政治問答を通して、貞観の治という非常に平和でよく治まった時代をもたらした治世の要諦が語られています。太宗が傑出していたのは、自身が臣下を戒め、指導する英明な君主であったばかりでなく、臣下の直言を喜んで受け入れ、常に最善の君主であらねばならないと努力したところにあるとされています。中国には秦以来、皇帝に忠告し、政治の得失について意見を述べる諫官(かんかん)という職務があり、唐代の諫官は毎月200枚の用紙を支給され、それを用いて諫言したと言われています。歴代の王朝に諫官が置かれましたが、太宗のように諌官の忠告を真面目に聞き入れていた皇帝は極めて稀で、皇帝の怒りに触れて左遷されたり、殺される諌官も多かったといいます。その太宗の言行は、今でも学ぶことの大いものです。
宣命どおり諌言を受容し得る太宗の度量の巨さ(懐の深さ)に感激!
2021/11/22 16:19
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:永遠のチャレンジャー - この投稿者のレビュー一覧を見る
抄訳での紹介が多い『貞観政要』だが、その全訳版文庫本が今年出版された事実を、私は少しも知らずにいた。「壮にして学べば、老いて衰えず。」 佐藤一斎の三学の教えを座右に仰ぐ癖に、余りに迂闊。すぐに急ぎ取り寄せて、読んでみた。
「はじめに」が、読者に基礎知識(『貞観政要』編纂の経緯、歴史背景、唐の官制など)を判り易く教えてくれる。奥付を見ると、訳注者は唐代政治史や国際関係史の専門家(大学院教授)とあり、簡潔で要を得た解説ぶりに納得した。
刊行半年で第6刷と版を重ねていて、『貞観政要』全文訳を望んだ一般読者(私もその一人)の期待値が看て取れた。あとは中味だが、実に素晴らしい。
広く普及したテキスト本の構成に倣い、巻頭に「解説」を置き、本編引用句の出典を明示し、語句の説明をまとめて注記する。本編各章毎に訳注者による現代語訳を載せ、「学術」文庫らしく原文は白文のまま(訓読文なしで)章末に置かれる。
だから、一般読者には極めてすっきりした仕上りだ。余力がある人はいつでも原文に挑戦して漢文読解力の実力が試せる。難語には振り仮名が振られ、登場人物の官職名が括弧書きで示されるので、理解し易い。一々頁を繰って注記にあたる面倒がなく、有難い。そして何より、読み物として抜群に面白い。
『貞観政要』で感心するのは、太宗李世民が「諌言」を臣下に奨励して止まぬ姿勢だ。心地よく響く「甘言」ならいざ知らず、耳の痛い内容(己の欠点、判断の誤り、無理解)を指摘する「諌言」を悦び、歓迎する君主は世に稀だろう。
隋の悪政を反面教師に、帝位奪取での骨肉の争い(玄武門の変)をトラウマとして、臣下の「諌言」を自省の「鑑」(鏡)と捉えた太宗は、大層人格が練られた寛仁大度と、自己の至らなさと悪評を危惧し慎重かつ賢明に対処法を探求する小心さとが、一身に同居する人物だったと私には思われる。
太宗が喜怒哀楽を顕わにする君臣問答(巻二納諌篇、直諌附篇)が特に面白い。抵抗し粘るも最後は降参し諌言を容れて己の非を反省し、諫めた臣下の真価(忠義)を褒め称える若き為政者の度量の巨さ(懐の深さ)、故事や逸話で君主を正道に導く魏徴ら良臣のたゆまぬ奮迅努力に感激した。
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およそ760ページというボリュームということもあり、とりあえず読み終えるまでにも時間を要した。読むのは大変だったけど、太宗が本当に優れた名君であったというよりも、魏徴を始めとする臣下に恵まれていて、貞観のはじめの頃は進言に対して、素直に認めて改めていたことによるものだったのがよく分かった。そして、徐々に謙虚さがなくなり、怒りやすくなり、傲慢で贅沢になり、直言を嫌がるようになっていった様子もわかる。訳は現代語として非常にわかりやすく、親切です。長期的に繰り返し読むつもり。
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ビジネスリーダーが読むべき本として紹介されることも多い『貞観政要』、本書は全10巻40篇の全訳本で、訳及び原文で770頁を超える大冊ではあるが、手に取りやすい文庫本の形で刊行されたことは、とてもありがたい。
巻一君道篇第三章の「創業と守成、いずれが難きや」は漢文の教材でも良く取り上げられる有名な一節であるが、これをはじめ、太宗の言行、臣下とのやり取り、臣下の太宗に対する上奏、諫言等が記録されている。
全体を通読し、特に、次のような点が印象に残った。
・隋の滅亡を経て唐による統一という大変動期の当事者であった太宗にとって、国家運営上、隋、特に煬帝の失政の轍を踏まないことが重要であったこと。
・大規模事業や君主の奢侈に伴う労役負担や戦役に駆り出すことなど、民に多大な負担を課すことが民の不満を招き、ひいては国家の安定を害すること。それを端的に表す言葉として、"君は船なり、人は水なり。水は能く船を載せ、亦能く船を覆す"という古語が紹介されている。
・君主の明君たるべきには、広く臣下の進言に耳を傾けるべきこと、臣下も覚悟をもって進言すべきことが、繰り返し取り上げられる。
・太宗も治世初期には、臣下の言を良く聞き、身を慎んでいたが、唐の治世が安定してきたからか、我儘になってきたこと。(全訳だからこそ、そのような変化が良く見えてくる。)
魏徴の長文の諫言、それを聞く太宗の姿勢にも打たれるものがあったが、何よりもここまで記録として残していくという営み自体、素晴らしいとの思いを新たにした。
訳文は平明で読みやすく、各篇始めの注記は、問答の歴史的背景を知るために大変役に立つ。一読をお勧めしたい。
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唐王朝の皇帝・太宗と臣下との議論・諫言の様を後世の手本として編纂した書の解説付き全訳。記された治世後期の太宗の姿からは、権力者が謙虚さを保ち続けることの困難さが伝わり興味深い。原文併記や典拠・史実の解説がありがたい。
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中国唐代に呉兢が編纂したとされる太宗の言行録です。古来から「帝王学の教科書」とされてきた書物とのことですが、なにぶん文庫本でも800ページ近い大著なので、まずは一通り「訳文」に目を通すことを目標に手に取ってみました。
理想の治を求める太宗とそれを諫言をもって支えた臣下とのやり取りは、同じようなメッセージの繰り返しでもありますが、太宗の在位期間による変化もあり、とても興味深いものでした。
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故事にちなんだ政治の教訓集。なにかの書評で褒めてあったので、読んでみたが、陳腐。しかもやたらと分厚い。同じようなことの繰り返し。
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全国の独裁者にオススメの一冊。
部下の進言を聞き入れ、ブレない人をほめることを目指すための教訓集。
他のひとの感想にもあるように、とにかく同じことを何回も何回も繰り返されている。
尊敬する出口氏によると、ビジネス書100冊に勝る名著とのこと。特に三鏡の下り。
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古より以来、兵を窮め、武を極めて、いまだ亡ばない者はいない。
(愚かな)帝王は機嫌が良いときに功績をあげてない人間に褒美を与え、機嫌が悪いときに罪のない人間を処刑する。
*じょうがんせいよう。貞観の治。唐。2太宗李世民。
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17
開始:2023/5/20
終了:2023/6/3
感想
どれだけ謙虚でいようとも。やがては自らの才能と功績に溺れる。それでも実直な臣下がいれば。奢りを捨て常に中庸を保ち意見に耳を傾ける。
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第75回アワヒニビブリオバトル「おうち時間DEビブリオバトル」4時間目 外国語活動で紹介された本です。オンライン開催。
2021.05.02
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唐の2代目皇帝の太宗と臣下とのやりとりに関する記録が綴られた書物。そこには古人の書物や古代の皇帝の中でも長く続いた聖君とすぐに滅びてしまった暴君の政治の事例が書かれており、それらを通じて主君としてどうあるべきか、また、臣下としても主君とどう向き合うべきかについて学び考えさせられる。現代のリーダーシップを学ぶ本であるということがよく理解できその通りだと思う良書である。何度も読み返したい。
常に臣下や人民に対して哀れみの心を持ち、人民のことを第一に考えること、自分に謙虚の気持ちを持つことの大切さを何度も認識させられる。また、初めの頃はそれが実行できていても、だんだんと慣れてきて怠慢になったり、功績が大きくなるにつれて傲慢になったりもする、それは全て主君としてのリーダーの心持ちと行動にかかっている。継続することが難しい、感情を抑制することは難しい。だからこそ、こういった歴史の書物をたくさん読み続けていくことで徳を積んでいけるようになるのではないかと考える。
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初志貫徹。
これが一番難しい。
一番伝えたかったのは、『巻十 慎終』魏徴の上奏だったんじゃないか。
世界史の教科書にも出てくるほどメジャーな「貞観の治」を実現した太宗も、その晩年には翳りが見える。有終の美を飾れないのも人間くささが出てて趣深い。
人の営み、浮き沈みは今現代に始まったことじゃない、それを抽出して自分に置き換える。歴史を学ぶ醍醐味だと思う。
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「貞観の治」と呼ばれる理想的な治世を行った唐の太宗李世民と臣下の問答を集め、古来より読み継がれてきた「貞観政要」40篇の全訳註。各章毎に古典の出典や時代背景を解説、本編も読みやすい文章で訳されており、800頁近くのボリュームのある古典ながら、途中で飽きる事なく面白く読むことができた。著者は「貞観政要」を手放しに礼賛せず、虚飾性や正当化された箇所に対して指摘しており、流石は歴史学者による訳註だと感じた。治世当初の10年は人民の動向を恐れ臣下の諫言に素直であったが、その後は傲慢で直言を嫌がる様子も見られ、最終篇では魏徴によって「有終の美を飾れない十ヶ条の理由」を上奏されるまでになっている。「貞観政要」の抜粋ではこのような側面を読む事はできなかっただろう。あとがきでも述べられているが、「全て読む」事の大切さを実感した。以前から「貞観政要」を読みたいと思っていたが、数ある中で本書を選んで大満足。古典や古事の由来の解説はあるものの、春秋・戦国時代や漢、魏晋南北朝時代の基礎知識がある方が面白く読めると思う。再度通読するのではなく、時間があるときにランダムに章ごとに読みたい。