紙の本
昭和初期が舞台の探偵小説
2021/03/19 10:31
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BHUTAN - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸時代の捕り物帖とか、人情噺など様々な書籍が出ているが、昭和初期が舞台ってあんまりない気がする。藤田宜永のものを以前読んだことがあるくらいだ。
現代と近いが、戦争の足音がしたり、世相が荒れて来る時期なので特異な状況でもある。
この本では名古屋の博覧会が舞台だが、時刻表トリックのようでもあり、最新科学の展示があったり、盛沢山。
でも、纏足の夫人が出て来たりと中国(満州)ではまだまだ前近代的なイメージもある。
興味がつきない本だったが、ちょっと暗いのは時代背景によるのかも。
紙の本
戦前の雰囲気を味わう
2021/08/06 21:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とりこま - この投稿者のレビュー一覧を見る
日中戦争開戦直前の世相、時代の動き、国際関係などの雰囲気を十二分に味わいつつ、謎解きを楽しめるが、舞台となる館の描写がスッと入ってこなかったのが残念。
投稿元:
レビューを見る
「たかが殺人じゃないか」の前日譚、ということで手に取った。時代的な背景や人物関係、建物の構造など、少々複雑。また、ワトソン役の女性の話し方が鼻について読み進め辛かった…
投稿元:
レビューを見る
「たかが殺人じゃないか」を読む前に、その前日弾であるこちらをまず読んでみた。
昭和初期の風俗が活き活きと描かれているし、まだ日本が大陸進出を目指していた猥雑でありながらも活力がある時代が虚実様々な登場人物とともに興味深く描かれている。
と、好意的に書けばそうなるが、実際は話の本筋と全く関係ない世相描写が長いし、キャラも中途半端に物語に絡んでくるだけ。肝心の事件が起きるまでが長く過ぎてウンザリ。
そして事件の真相も強引だがさほど驚くほどでもない。
主人公も含めてキャラが全く魅力のないのも致命的。
続編を読むかどうかは微妙。
投稿元:
レビューを見る
パズラーとして丁寧な造りだけれど、ミステリ色はあまり強くない。事件そのものも半ば近くまで起きないし、メイントリックもこの長さの長編を支えるには、少し弱い気がする。だから昭和初期を舞台にした風俗小説を読むきでないと当てが外れるかも知れない。個人的には大佛次郎を連想した。時代を先どっていた伯爵の、乾いた絶望の淡々とした描写が胸に刺さる。
投稿元:
レビューを見る
この前読んだ「たかが殺人じゃないか (昭和24年の推理小説)」の前日譚になる。今作は那珂一兵が探偵役を務める<昭和ミステリー>シリーズの第1作にあたり、彼以外にも主要人物が重複して登場する。昭和12年、彼はまだ似顔絵書きの少年である。しかし以前から活躍しており、知る人ぞ知る名探偵である。
東京と名古屋を結ぶ殺人事件を追うわけだが、当時の風景風俗が描かれており、何やら妖しい江戸川乱歩テイスト。と思っていたら、ラストのほうは、ちょっと哀しい横溝正史テイストに。
この日中戦争から太平洋戦争に向かう時代は、作者の辻さん自身の少年時代なのだ。事件の背景が時代に密接に関わっている。今作のダークさ(エログロというか)は、エピローグ(昭和22年)の青空で少しは払われたように感じた。「たかが…」より上の評価としたい。
投稿元:
レビューを見る
著者の集大成的な作品となる<昭和ミステリ>三部作の第一弾ということで、拘りが随所に感じられる。戦前の昭和という時代を立体化する為に当時の情景描写、世相、風俗、蘊蓄の数々が散りばめられており興味をそそられるが、肝心な物語の本筋は駆け足で、著しく奥行きに欠けている。著者の経歴とこの猟奇的で大仕掛けな舞台設定ならば、キャラクターの魅力とストーリーテリングの妙、その両方を如何様にも発揮出来そうなだけに何とも物足りない仕上がり。しかし、刊行当時86歳という御年齢でこの作風を執筆出来るパワフルさには感服するしかない。
投稿元:
レビューを見る
「たかが殺人じゃないか」の前日譚と思ったが、同じ探偵役の本は沢山あり、そういうわけでもないらしい。
高齢の作者が描くせんぜんの名古屋は現実感が強く、当時の世相は確かにこうだったのだろうと思わせる。
トリックや人物相関などは、空想の羽根を広げた作者らしくケレン味に溢れたもの。
リアリティを追ってはいけない。
投稿元:
レビューを見る
単行本。「たかが殺人じゃないか」を先に読んだ。筆者の哲学は共通しているのだが、単純に小説としての完成度が極端に落ちる。かなり読み難い。
投稿元:
レビューを見る
「たかが殺人じゃないか」読んだばかりなのに、後半になってやっと登場人物の繋がりがわかったという間抜けな私。
ということで、続けて読まなくても十分楽しめます(笑)
空間認知が弱い私には、この推理はピンとこなかったものの、時代の面白さと現代にも通用するトリックが、帰って新鮮で面白い。おどろおどろしいところも。
昔の推理小説を紐解いてみよう、読み返してみようと思ったのだ。
投稿元:
レビューを見る
昭和10年代の名古屋を舞台にしたミステリーで、岐阜出身、名古屋で働いていたことがある私にとっては、聞き慣れた固有名詞も出てきて、そこが面白かったです。
怪人二十面相シリーズを彷彿とさせる作風でした。
投稿元:
レビューを見る
読書好きの友人から貰った探偵小説。面白く読めました。ありがとうございました。
著者は名古屋生まれの脚本家、辻真先さん。昨年、「たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説」で年末ミステリーランキング3冠を達成。昭和7年のお生まれなので88歳というご高齢。本作は「たかが殺人じゃないか」の前日譚という位置付けになります。
昭和12年に実際に行われた「名古屋汎太平洋平和博覧会」の最中に銀座と名古屋にまたがって発生した不可解な殺人事件。本書は正統ミステリーで、犯人探しの材料は(たぶん)全て読者に提供され、最後は探偵が関係者全員の前で推理を披露するという構成になっています。ミステリーの種類はいわゆる「不可能犯罪」もので、「こいつらがここにいるのに、こんなところで犯罪が行われるわけがない」という設定。個人的には、超大掛かりなトリックや動機がちょっと大味な気がしました。
それでも、この本は面白いです。本書の最大の読みどころは昭和12年当時の銀座、名古屋の風俗描写と思います。アドバルーンなんて存在を忘れていたし、燐寸売りの少女の存在については知りませんでした。そして、名古屋の旧遊郭地帯で行われる怪しい余興、名古屋博覧会での悪趣味な展示物も戦前のエログロの雰囲気を生々しく表現しています。
また、本書はボーイミーツガールの物語の要素もあります。その顛末にもひとつの謎が提供されています。その解答は最後に用意されていますので、本として非常に座りが良くなり、気持ちの良い読後感を得ることができました。
謎解きは大味と書きましたが、戦前の探偵小説はその「大味さ」が魅力だったのかもしれません。それを考えると、本書はやはり魅力的なエンタメ本です。この本を読んだら、戦前の鬼畜系エログロ系探偵小説を読みたくなり、大昔に読んだ江戸川乱歩の「孤島の鬼」を買ってきました。こちらも面白いです。
投稿元:
レビューを見る
昭和12年。太平洋戦争前夜だね。不穏な気配を感じつつ、まだまだ銀座や名古屋は賑わう。そう、名古屋なんだよ、メインな場所は。
那珂一兵は似顔絵かきだが、探偵もする。新聞記者のモガ瑠璃子。満州大富豪と纏足の妻。ケシ畑のおかげで大金持ち。愛人は日本人。その妹が銀座のマッチガール澪。一兵片思い中。満州大富豪と友人の日本人伯爵。
伯爵がお金をかけた館と猟奇殺人。パノラマ島奇談ぽいエログロ昭和。
澪は恋人と王道楽土満州へ渡るつもりでいたが、恋人が負傷したため、やめる。それは伯爵の策略。世界をまわった伯爵は王道楽土ではないことを知っていたから。
あらすじをつらつら書いたが、昭和初期の雰囲気が良い。
投稿元:
レビューを見る
『たかが殺人じゃないか』を読むために読んだ。
ミステリー小説ながら、時代小説として充分読み応えがあって面白かった。当時の空気感が濃くて、逆に現代の常識が通じないところに気持ち悪さを感じた。すごい。
実際の事件が起きるまでが、予想よりも待たされ、特に早く知りたいというモチベはなかなか湧かなかった。これは好みの問題だな。面白いんだがなかなか読み進められない。
トリックについては、これはあとで使うからね!ばりに散りばめられてるし、建物の仕掛けもでしょうな感。あるある。
犯人も、これ良いのかな。まあフェアだが、本格小説というにはバレバレでは。あまりにも容疑者が少ないしやってのけられる能力の人も少ないし、余所に目線をやろうにもこの閉じられたメンバー間での話ばかりなので、わかってしまう。
全体的に、反戦なんだなとわかる。これはメタだが、結末を知ってる作者だからこそ、先を見据えたキャラを出せて、それを通してほらねと言ってるわけなので、はあ、そうですよねっていう気持ち。無邪気にすごいと楽しめなかった。つまらない人間になってしまった。
人間ドラマもあんまり楽しめなかったな。2時間ドラマで、映像の演出があったら深みにハマれるかもしれないが、そこまで。
でもまあその時代の空気を存分に感じられたし、館も面白かったしっていう感想。ミステリーとしてはまあまあかな。
本命のほうに期待する。これを越えてて欲しい。
史実とフィクションのあんばいは良かった。良いさじ加減。史実の人出してて大丈夫か?って思ったけど、まあいいや。ちょっと勇気が出た。
うっすら横溝っぽいなと思ってたら同じような感想を見かけて、ですよね!っていう気持ち。
投稿元:
レビューを見る
ゲームをするか本を読むかはどちらかしか行うことができず、7月8月はずっとゲームをやっていたため1冊も読むことができなかったけど、ようやく読むことができた。もう読めないかと思いました。
この間も積ん読は増え続け、どれを読もうか決められなくなったのでクジを作った結果、この本を読むことに。読了したいま、歴史を否定する者が大きな顔をする現在の世の中にあってこの本が真っ先に引かれたことは、偶然でしかないけれども偶然ではないような気もする。あと、言葉の勉強になりました。