紙の本
政権交代も、3.11の震災というか原発事故で吹っ飛んでしまった今、2010年までの時評を集めたものって、どうしても古びてしまう。何を読んでも、で、震災はどうよ? それでも原発やりたい? って読者の意識が飛んでしまう。この次の本に期待したくなるんです。間が悪かった・・・
2011/09/13 21:12
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投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
いかにも軽装本っていうデザインですが、チープ感はありません。ちょっとレトロな雰囲気が漂うのは、デザインというよりタイトルのランタンが描かれているせいでしょう。斎藤の視点、カジュアルで飾らなくて、おさえるところはキチンとおさえる、そういう感じがよく体現されています。そんな装画・題字 後藤美月、ブックデザイン 祖父江慎+安藤智良(コズフィッシュ)。
この本で扱う期間で起きた最大の事件は、政権交代。民主党による行財政改革、となるはずでしたが、菅内閣の思いつき政治に、三月の震災と続くと、二〇〇六~一〇年の間の事件がふっ飛んでしまう。落ちつくどころか、周章狼狽ニッポン。でも、それはあくまで2011年の今だから思えること、震災がなければ、この本も十分面白かったとは思います。
章でいえば、第1章 リーダーの憂鬱、は2011年の今も同じですが、どちらかと言うと国民の憂鬱、のほうが正しいかもしれません。こんな政党選んだはずじゃなかった、でも今の混迷の原因はといえば、全て自民党のせい。第2章は世間の動向。無責任な団塊の世代が残したのは、お金を持った独身女性と、定職につけない若者たち。で、金もちと貧乏人に分かれた彼らは、交わりあうことなく、当然、子供作りをすることもなく社会の少子化だけが進んでいく。で、テレビにはドーデモいいようなタレント学者や評論家ばかりが出て、無責任な発言を繰り返す。
第3章は、もっと焦点を絞った流行を扱います。頭の良い人は、どうしても流行に距離を置きたがるんだなあ、って思いました。だから、「萌え」を理解はしても楽しむことはありません。「闘う女」が純文学をジャックした、として『1Q84』を読む。戦闘少女については、ラノベや電撃文庫から見ていかないとダメなんでしょうが、我が家は素直に楽しんでいる。むしろ、なぜAKB48に触れないのかな、なんて思ったりもする。
目次にしたがって、全篇にコメントをつけてみました。
第1章 リーダーの憂鬱
「美しい国」をめざす次期首相のハエ叩き大作戦:そんな本書いていたんだ、安倍晋・・・
ゴア参戦でヒートアップする「地球温暖化」の信用度:6m海面があがったら、我が家は水没・・・
地方の困難、知事の困惑:それでもダムは作りたいと・・・
ドタバタ安倍政権三六五日の内幕とその「実績」:要するに祖父を戦犯にしたくないためだけの政治だった・・・
多発する痴漢冤罪から見た「でっち上げ」の構造:次の国策捜査とあわせてよめば
マスメディアが報道しない検察「国策捜査」の闇:結局は誰かに操られる検察の愚・・・
サイバンインコが教えない裁判員制度の問題点:詳細が知らされないうちに法律化されることが一杯・・・
官僚悪徳論で得をするのは市民か、それとも政治家か:斎藤がどう思おうが、私は官僚が嫌いだ・・・
タカでもハトでもなかった新首相のぼんやり未来像:この本ではあまり麻生のおバカぶりには触れないか・・・
オバマへの過剰な期待にあえて水をさすならば:そうか、彼の正体は・・・
脱イデオロギーの時代の「先の戦力」の語り方:日本悪くなかった論にだけは走らないでね・・・
民主党トロイカ三人衆三者三様の「こだわり」:そのまま仲良くしてればいいのに・・・
第2章 みんな競走馬
若者を見下す大人による若者論のキレた分析:どうも最近の老人は・・・
昨日の志はどこへ団塊世代の懲りない面々:私も嫌いだね、反省無き団塊の世代・・・
デキる男を発奮させる子育ての「新領域」:男の小学生教育、いやだね、あたしゃ・・・
格差社会論の第二ラウンドは経済格差ならぬ貧困問題:日本の貧困問題、ピンと来なくて・・・
『愛ルケ』はデフレ不況下の省エネ不倫小説だった:私、官能小説、読まないからな・・・
女に説教を垂れるあの本に平成の「女大学」を見た:ま、それを買うのが女、っていうのもねえ・・・
シングル女性の老後をめぐる楽観論と悲観論:確かにいます、40過ぎの独身女性・・・
「年収別」に編集された主婦雑誌の費用対効果:ドーデモいいけど、年収別小説はいやだな・・・
脳科学とはコトバ巧みなノー科学と見つけたり:前から気になってるんです、この人って結局、単なるタレント・・・
ロスジェネが読む「蟹工船」:ロスジェネか、私はロス・マクなら読むけど・・・
リーマン・ショックは予想されていた!?:予想はできても、肝心の〈いつ〉がわからないと・・・
「婚活」の背景を眺めれば:ま、一人で生きてく自身がないと・・・
追いつめられた若者たちを民主党政権は救えるか:旧社会党の人間じゃだめだろうな・・・
「勝つ」か「降りる」か カツマとカヤマのKK戦争:ま、目糞鼻糞の争いというか・・・
第3章 ブームの御利益
ヒーロー不在の隙間を突く「日本一カッコイイ男」:そんな男、いましたっけ・・・
マンガ評論を甘く見た? ある有名学芸賞のお粗末:そんな本、読まなくてよかった・・・
映像メディアの手法に見る「演出」と「やらせ」の間:映像もだけど活字世界だってイイカゲンダニョ・・・
どんちゃん騒ぎも精神論も飽きたあなたの桜ガイド:ダサイ国旗も、暗い国歌も薩長が決めたんだと・・・
おそうじに開運パワーを求める信心深き人びと:清潔な家は夢です、困った時のルンバかな・・・
文学界を震撼させた!? ケータイ小説の虚々実々:こんなに下手な文章だったとは、おそるべしケータイ小説・・・
『ミシュラン』が笑える理由:ふむ、絶対に読まないぞ、日本版『ミシュラン』・・・
あの達成感をもう一度! 検定列島ニッポンの不可思議:これでも貧困ですか、日本人は・・・
日本列島の「地図帳」は県別ランキングがお好き:これは案外面白いかも、離婚率の高い県とか・・・
「源氏物語」千年紀にあやかった、あの手この手:そうですか、瀬戸内さんのケータイ小説・・・
昭和の鉄道や工場が鑑賞の対象になったワケ:所詮はマスコミが煽ってるだけじゃね・・・
シニア世代の「純愛願望」と時代小説が結託する日:一種のないものねだり・・・
お勉強は「萌え本」とともに:ま、確かに美少女イラストのついた本は、我が家の娘たちも萌えるみたいで・・・
ベテラン作家の純文学をジャックする「闘う女」の怪:でも『1Q84』、おもしろかったよ~ん・・・
月夜にランタン、夏ヒーター あとがきにかえて:「月夜に提灯、夏火鉢」知りませんでした・・・
【初出】 脱イデオロギーの時代の「先の戦力」の語り方
民主党トロイカ三人衆三者三様の「こだわり」
「勝つ」か「降りる」か カツマとカヤマのKK戦争
お勉強は「萌え本」とともに
ベテラン作家の純文学をジャックする「闘う女」の怪
以上、「ちくま」(2010年3月号~7月号)、筑摩書房
追いつめられた若者たちを民主党政権は救えるか
「週刊現代」(2010年1月9・16日号)、講談社
上以外は、「ウフ.」(2006年8月号~2009年5月号)、マガジンハウス
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書評要素も高い時事評論。
一方的な見解に流されないように、反対し合う意見を読み比べたり、違う角度から眺めてみたりする著者の姿勢に、学ぶところが大きい。
時事問題だけあって、既に少し古いと思えるテーマもあるけど、今だからこそのコメントも加えられていて、より冷静に考えられたりもするのがよかった。
普段は興味があまりないジャンルへの関心が高まる読書となった。
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書評と感想文は違うなあと、しみじみ思います。
過去の作品と、また同時代の他の著者の作品と比べ合わせ、共通傾向と非共通項を見分け、その本のオリジナリティがどこにあるかを探っていく、斎藤美奈子の読みを追体験する面白さ。
一番好きな書評家です。
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興味深い章は半分くらいかな。
ただ、自分じゃあ先ず手を出さない「本」が
どんなものかを知るには、とても参考になりました。
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表題の意味するところは「無駄に明るい」「過剰反応」「余計なこと」。俎上に載せられた人や作品にとってはそうした一面もあろうが、読む者にとっては痛快な切り口だ。
本は世間を映す鏡と言う。少しタイムラグがあるからこそ客観視できる。
斎藤美奈子の発言は時間が経っても色あせないところが立派だ。
中に年末に読んだ『鷗外の恋人』の作者、今野勉の新書『テレビの嘘を見破る』が取りあげてあって、<「ただ一回性」というのはドキュメンタリーにおけるただの神話だ>とのフレーズが紹介されていたのが印象に残った。
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「月夜に提灯、夏火鉢」(無益、不必要なことのたとえ)の現代バージョンとして斎藤美奈子がアレンジしたのが「月夜にランタン、夏ヒーター」。
本にまとめる元となった連載は「毎月三冊の本を選んで読む」というコンセプトで続けてきたもので、「本を通じて世の中の動きを見る」ことを意識した結果、ジャーナリスティックな印象が強くなった、と巻末で斎藤自身が書いている。ラインナップとしては、『読者は踊る』→『趣味は読書。』→『誤読日記』に連なるものだというが、私には、『たまじじ』→『ふたじじ』のラインに思えた。
▼世の中、いったいどうなってるんだ、と思うとき、あなたはどこに情報を求めるでしょう。新聞、雑誌、テレビ、インターネット。いろいろありますが、私は書店に出かけて、なるべく書籍を買い求めます。なにかと規制が多いテレビや新聞に比べ、書籍にはまだ、はるかに自由な言論の場が確保されているからです。大手メディアが報じない事実が、小部数の書籍の世界では当たり前に論じられている場合も少なくありません。
本は世間を映す鏡。世間の裏も映す鏡。世の中ががたがた落ち着き無く動いている時代、何を信用すべきか迷ったときには、ニュースと少しタイムラグのある書籍に中にこそ、価値のある情報が隠れている可能性が高いのです。(p.297)
ニュースと少しタイムラグのある書籍の話を、数年経ってぺらぺらと読んでみると、古新聞を読むのともまた違った味わいがある。私は古新聞を読むのが結構スキで、そのおかげで、なんだかバタバタと気忙しい日々がつづくと古新聞がすぐ山になる。年明けに、かなり山を小さくしたはずが、3月以降はまた古新聞が積みあがるばかり。
2000年代後半に書かれたこの本、前回の統一地方選(2007年4月)のこともチラと出てくる。近ごろ地方自治がおもしろい、ように見えると滋賀県の例。
▼嘉田新党ともいうべき「対話でつなごう滋賀の会(対話の会)」が結成され、県内15の選挙区で19人中じつに12人が当選、他方、与党自民党は大敗し、27から16に議席を減らした。結果、嘉田支持の民主候補も合わせると17人が嘉田派となり、5月13日、ついに自民党県連は嘉田支持を表明、[新幹線]新駅の凍結は決定的になったのだった。(p.25)
今回の統一地方選ではどうか。
定員27の滋賀県議選で、「対話の会」の公認・推薦・支持候補18人(公認8、推薦9、支持1)のうち、当選したのは9人(公認4、推薦4、支持1)で伸び悩み、自民が推薦5人を含む25人の当選で議会の過半数を奪還、民主が5減の12議席、共産党がすべての議席を失ってゼロ、公明が2議席維持、との報道。
いつものように、どんな本も、キッチリしっかり読む斎藤の、さくさくとした批評は読んでいておもしろい。そうそうと膝を打ち、なるほどと得心するところが多いけど、ときどき、いやー、こんなにコンパクトに紹介されてしまうと、それはどうかなあと思うところもあって、自分でも同じ本にあたってみようかと思ったりする。
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私の心の師と仰ぐ(#^.^#)斎藤美奈子さんだけど、今回はちょっと乗れなかったかなぁ・・。私はリアルタイムを過ぎてからの時事ネタというのが結構好きなのだけれど(渦中にあるよりも、事過ぎてからのほうが冷静にアレは何だったのか、と把握できるような気がするから)安倍晋三から始まる歴代の総理たちをキルのに、それぞれの著書を中心に据えたところがね・・・。だって、政治家の文章なんて「下手+独りよがりな勘違い」の二重苦に決まってるし、そんな噴飯ものを次々に俎上にあげられても、バカだとは思ってたけど実はもっとバカだった、という苦しさしか感じられない。斎藤さんもあまりのトンでもなさに、弱い者苛めの感があったのか、いつもの小気味いい舌鋒鋭さをゆるめている気がしたし。また後半に挙げられている「話題になった本」も、ほとんどが、何これ〜〜!というものが多くて。まぁ、ベストセラーなんてそんなものだ、と言ってしまえばそれまでなんだけど、そのアホらしさが笑い飛ばせないほど、薄っぺらいというか、貧乏くさい、というか。これまでにも斎藤さんの持ち味として同じような企画の本があり、その痛快なぶった切り方が好きだったんだけどなぁ。どうしてだろ。どこが違うんだろ。「敵」としてはあまりに小者が多かったってことなのかも、なんて。ただ・・・。『1Q84』への「闘う女論」は、うん・・・・それは・・・あるよね・・・と読まされてしまった。私は村上春樹大好き!の読者だけど、そして、『1Q84』もとても面白く読んだのだけど、実はもやもやとしっくりこない部分があって、そこのところを切り取って目の前に投げ出されると、そこは確かに好きじゃなかった・・と改めて気付いてしまう、という。斎藤さんは、村上春樹のものは何でもけなしてやろう、と思っている人ではないはずなので、だからこそ、その指摘には頷けてしまったんだよね・・・。
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今回は政治のネタが多かったので私にはちと難しかった。けど、斎藤美奈子が言うように、テレビや新聞でなく本を読むことで世界がわかる、いろいろなものの見方があることを知ることができる、というのはなるほど!です。本当に知りたいことって、テレビとか新聞じゃ、ホントわからないもんなあ。
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前読んだ「時事ネタ」が期待ほど面白くなかったので、これにもすぐには飛びつけなかったのだが、やっぱり良かったです。政治がらみであれ何であれ、本にまつわる話題が多かったせいだろうな。ついつい読まずにけなしたくなるアノ本やこの本を、まめに読んでズバッと斬るスタイルが好きだ。
斎藤さんや穂村弘さん(並べるのも変だけど)の書かれるものは、感覚的にかなりぴったりした感じがする。最近これにばっかりこだわっているようで何だかすっきりしないが、やはり同年代だからだろうか。
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[図書館]
読了:2012/1/7
ところどころ面白かったのだけど、テーマが広すぎてあんまり印象に残らなかった。
しかし全体の装丁がおしゃれだ。
■気になった本・気になった内容
『スピンドル式鍛えない脳』
『テレビ標本箱』
・原始的回避行動「空気が揺れたら逃げる」が最強の防御システム。
・『1Q84』に対するツッコミはしごく最も。
「女性の感じ方や考え方をより突っ込んで書いてみた」ら、これ(強〇小説+妊娠小説)かよ。
相変わらず、「やっちゃいかんでしょ」という相手とやっちまう。が、それは女の側が主導するため、男側の責任が問われることは一切ない。
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あー、おもしろかった!!
一つのお題に関していろんな本を読み比べてみる、というのは、研究で論文にあたるのと同じことなんだけれども、ブックレビューではあまり見ないスタイル。
楽しく読ませていただきました!!
ぜひ続きも読みたい!!
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なにかと波長の合う斎藤美奈子氏の書評本。しかしそこは斎藤氏、単なる本の羅列とはちがう。本を材料に世の中を縦に斜めにバッサバサ斬る。
2006年7月~2009年5月に、マガジンハウスの小冊子「ウフ」に連載されたものが主となり、2010年3月~「ちくま」に連載の物が核になっている。なので取り上げた本はその間に話題になった本をよみつつ、さらにその旬な本のバックボーンになっている本も取り上げている。
2012の今からだと6年前。最初の本が安部元首相の「国家の品格」。この時点でまだ次期首相候補なんです。いまや歴史の彼方ですよ。
斎藤氏と私は同学年。したがって団塊世代への非共感も同じ。2006年6月の「昨日の志はどこへ?団塊世代の懲りない面々」で2006年時点の定年まじかの彼らを、もーあと少したったら定年モノで脚光をあびるんだろうか?と危惧してるが、サイトーさん、2012、それはバッチリ現実になりましたねえ。ポスト団塊の我々についぞ光は当たらないのである。
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書評という形式を取りつつ流行(本)に対してテーマ毎にひたすらケチをつけるってのは要は大衆批判をしているのであって、ちょっとヒネクレタ人なら書きやすいと言えば書きやすいんだろうな。ここまであらゆる本を貶してるのを見てると、この人が褒める本はなんなの?ってのが知りたくなるが。
それにしてもケータイ小説ブームってのは何だったんだろ?ひとつのジャンルとして確立していくのかな?と思ったが、ずいぶん短命だったなあと。アレって韓流とかハーレクインと同じで、定番中の定番なんじゃないの?
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時事ネタ?を痛切に皮肉ってる・・・っていうか、過激だけど面白い見方をしているので、何気に読んでしもた。
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うっかりつまらないベストセラー本を読んでしまって苦い思いをしている人におすすめ。一緒にベストセラーにツッコミを入れてくれる心地よいエッセイです。逆に、そのベストセラー面白かった!と言う人は、読んでて自分が恥ずかしくなる本です。