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投稿者:chocolatemilk - この投稿者のレビュー一覧を見る
グランドキャバレーとホステス、ビッグバンド、シャンソン、ストリップ。時代は昭和50年代でしょうか。懐かしさと温かさで幸せになりました。記憶に残る大切な1冊です。
おとなのファンタジー
2021/04/08 16:29
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
小説巧者の桜木紫乃さんにしては随分そっけないヘタなタイトルをつけたものだと、読む前には思ったが、読んだ後は、この作品にぴったりのタイトルだと納得した。
なので、タイトルだけでこの作品を読まないのは損だと最初に言っておく。
さらにいえば、これって天使の話じゃないか。
そう、例えばウィル・スミスが主演した「素晴らしきかな、人生」という映画(こちらもタイトルで随分損をしていたが)のような感じかな。
もっともお話は全然違うけれど。
主人公は北国のキャバレー「パラダイス」で働く二十歳の青年章介。
夢も希望もなく、その日をただ生きているような日々に、博打打だった父の遺骨が母から持ち込まれる。だが、それをどうするあてさえない。
章介の働くキャバレーにやってきた三人のタレント。
自分のことを「師匠」と呼びなさいという世界的有名マジシャン「チャーリー片西」、シャンソン界の大御所という触れ込みの「ブルーボーイ」の「ソコ・シャネル」、今世紀最大級の踊り子といいつつ実はストリッパーの「フラワーひとみ」。
彼らの世話だけでなく、章介の暮らす倉庫のような「寮」で公演期間をともに生活するようになる。
底辺に生きながらもポジティブに生きる彼らにいつしか章介も影響を受けていく。
章介が次第に変わっていく姿に読者も静かに感動している。
桜木紫乃さんのこの長編小説はそんな素敵なファンタジーだ。
一冬の出会いが人生を変える
2021/12/25 09:21
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投稿者:タラ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
博打打ちの父親とその借金に身を削られる母親に育てられた章介は、死んだ父親の遺骨とともに釧路のキャバレーで働きながら毎日を漠然と生きていた。
しかしキャバレーに営業にきた3人の個性豊かな人たちとの交流で章介の乾いた心が解きほぐされてゆく。
言葉少なだがいつも冷静に物事を見ている師匠、底抜けに明るいシャネル、言葉はきついが実はやさしいひとみ。私もそんな素敵な人たちが華を咲かせるキャバレーパラダイスに行ってみたいという気持ちになった。
人は人によって苦しめられることもあるが、救ってくれるのもまた人なのだと感じ、出会いというものの奇跡、そして人の温もりに心がほっこりした物語だった。
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P111
会いたくなった時に行ってお参りすればいいのよ。お墓も骨堂も会えないことを確認するために在るんだから。
とても良かった!
いつも桜木紫乃作品は楽しみで、読むのがもったいないのに手がするする動きあっという間に読んでしまう。
なので最初読んだら、すぐに2回目読みます。
どなたかの感想にあるように、桜木紫乃の以前の作品に出ていた人や、バッググラウンドがところどころあるのは、何となく嬉しいものです。
照明係をしている20歳の章介。
彼を中心に話が回っていく。
流れに身を任せながらも、ちゃんと生きていく、そして最後に…
章介の上司にあたる木崎。
どんな人なのか、とても興味が湧く。
好きになってしまうタイプの男性なのでしょうね。
桜木先生、次は木崎さんを真ん中に据えて、書いてください!
前読んだ作品の人が出てくると嬉しいのと同じくらい、登場人物の周りにいる人、みんなのそれぞれがあっても良さそうです。
特に今回の登場人物は半端じゃない。
この本を読むと、ブルーボーイやストリッパーに対しての見方が変わる。
どんな仕事でも、きちんとする人もそうでない人もいる、ただそれだけです。
ラストは嬉しい終わり方でした!
桜木紫乃、サイコーです!
自作も楽しみに楽しみにしてます!
ほんとに素晴らしい作家さんだと思います。
北海道チームのエースになってください。
いつか三浦綾子さんを超えると思います。
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何か大きな展開があるわけでもないけれど 引き込まれました。パラダイスに行ってみたい。シャネルの歌を聴きたい 師匠の手品を ひとみのダンスを観たくなりました。読んで なんかいいなぁ。良かったなぁと思える一冊。
是非 続編を期待します。
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時は昭和。北海道の釧路にあるキャバレーでは、期間限定のゲストを招いて、ショーを盛り上げてくれる。今回は、自称有名なマジシャンやシャンソン歌手、踊り子の三人である。店の寮に住み込みで働く章介は、その三人と同居生活を送るが、暮らしていくうちに段々と章介の心境が変わっていく。
有名な書店員が選んだ賞・新井賞を受賞した作品ですが、ジワジワと温かみや感動がくる作品でした。
四人の同居生活が、面白くもあり、ホロリとさせてくれたりと段々と見えてくるそれぞれの切ない事情が、印象的でした。
章介が抱える事情は、母親が置いていった父親の骨壷。墓がないまま、そのまま部屋に置くわけにもいかず、どう解決していくのか。三人と交えて、解決に導く過程が、クスッとさせますし、ある意味圧倒されました。
他にもマジシャンやダンサーの過去がほろ苦く、そういった事情を抱えながら仕事をし続ける姿に哀愁を感じましたが、誇らしくもありました。
登場人物はみんな普通ではない生活を送っています。それでも人は生き続けなければなりません。その中で垣間見るのは、必死さよりも楽しさが伝わってきました。
期間限定なので、別れるまでのカウントダウンがどこか寂しいのですが、同時に頑張らなければいけないなと喝を入れられた気持ちにもなりました。いつまでも楽しい日々が続くわけではありません。でも、みんなと笑っていれば・楽しんでいれば、なんとかなる。誰かが手を差し伸べてくれる雰囲気を醸し出してくれるので、終始温かい気持ちになりました。
みんな孤独に生きているのに「仲間」として生きているなという感覚がありました。
最後は章介が成長し、平成になってからの物語も少し書かれているのですが、ラストはジーンと感動してしまいました。別れゆえの出会いがあるからこそ、生きる糧にもつながるので、出会いを大切にしたいと思いました。
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夜の店で働いて、同じ下宿に帰って、また次の日出勤して働く4人の会話・ステージを中心に進んでいく。時々店外・下宿外での時間も描かれるがいずれも淡々としている。
ともすればお涙頂戴的な過去の話が明らかにされそうな雰囲気があるがそれもない。それでも読ませる文章の力がすごい。
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良かったです。第13回 新井賞受賞作。
釧路のキャバレーで下働きする20歳の「俺」、そして店に営業で現れた三人のタレント、スベリ芸マジシャンの「師匠」、ガタイの良いおかまで実力派のシャンソン歌手「ブルーボーイ」と年齢詐称の「ストリッパー」。四人は真冬のおんぼろ寮に同居することになり。。。
外酒はしないのでキャバレーなどという物に縁が無い私。思い出すのは吉田修一の幾つかの作品です。でもこの作品はちょっと違います。汚濁の世界かもしれないけど、余り頽廃的にならず、脇役も含めて登場人物一人一人が前を向いています。桜木さんの旧作『ホテルローヤル』や『星々たち』のようなドロドロした演歌/艶歌の世界とも異なり、キャバレーでの三人のタレントの年季が入った放埓な芸の面白さと、「俺」と破天荒な三人の軽妙で、しかもどこか含蓄が有りそうな温かな掛け合いが何とも素晴らしく。ノスタルジックな雰囲気の中に随所にハッとするような表現が散りばめられていて読み応えがありました。
ちなみに、この物語が書かれるきっかけは、桜木さんが大竹まことのラジオ番組に出演した事だそうです。その時に大竹さんが桜木さん出身地釧路思い出として、20歳の頃に年末に釧路のキャバレーに営業に行き、その時一緒に海を見に行ったメンバーが、“俺と師匠とブルーボーイとストリッパー”だったと言ったそうです。それがそのままタイトルになり、実際に4人でお正月の海を見に行くシーンも出てきます。
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タイトルそのまま。キャバレーの下働き・章介とブルーボーイの歌手・シャネル、ストリッパー・フラワーひとみ、そしてマジシャン・師匠ことチャーリー片西の同居生活。
過大な触れ込みとはかけ離れた場末感満載の個性豊かな3人の芸人と、若くして世捨人のような章介の優しさと笑いに溢れた一ヶ月が極寒の釧路のキャバレーを舞台に描かれる。
苦労してきたからこそ一歩引く優しさ、重いものを抱えているからこそ日常を軽やかに生きる、そんな3人の芸人たちの姿がいい。桜木さんの絶妙な文章と相俟って、心地よさになんだかずーっと読んでいたくなる。
一人で淡々と日々を過ごすことに慣れていた章介が、3人と関わることで少しずつ変わっていく。
そして別れの時。新たな生き方へと一歩踏み出す章介。
最後のシーン、師匠、師匠、の呼びかけに胸が熱くなりました。その後のそれぞれの物語が読みたい。続編出ないかな〜
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名倉章介は釧路のキャバレーで下働きしている。他に住む者のいない寮はボロボロ。ナンバーワンホステスと照明係が駆け落ちしたため、代わりに照明を担当することになった。そしてやって来たのは旅回りの、マジシャン(師匠)ゲイの歌手(ブルーボーイ)、ストリッパー。彼らとしばらく仕事も住まいも一緒にすることになった。
奇妙なのになぜかリアル。成長物語でもあり人情物語でもある。大変面白かった。
タイトルは著者がラジオ番組に出たとき、大竹まことから「20歳のときに釧路のキャバレーに営業で行った。一緒に海を見に行ったのが、俺と師匠とブルーボーイとストリッパーだった」という話を聞いて、その場で書かせて下さいとお願いしたのだそう。
タイトルから物語を作れるというのも稀有な才能なのだろう。
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北海道の場末のキャバレーで下働きをする、20歳の青年が主人公。マジシャン(師匠)、シャンソン歌手(ブルーボーイ)、ストリッパーと寝起きを共にするうちに、自らの生き方を見つめ直していく。
地方のどさ回りで期間限定でショーに出演する三人は、年は重ねているものの一流とはほど遠く、それぞれに過去を抱えて生きている。世間一般の規格からは外れていても、人間として大事なことは外さず、心は温かい。彼らの持ち味はじつに魅力的で、とくにお墓を作る場面が印象的。
作者はこういう人たちを描くのがうまいなと、改めて感じる。青年の成長の物語として、読後感のいい作品だった。
ところで、この作品が受賞した新井賞、三省堂本店の書店員である新井さんという人が個人的に設けた賞だそうで、今回初めて知った。
神保町のあのお店にいらっしゃるのだろうか。
まったくの余談だが、つい先日、久し振りに神保町を歩いた。見たかったギャラリーを覗き、古書店を冷やかし、ついでにボンディのカレーを食べて、ささやかな幸せを堪能。
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3.5
釧路の老舗のキャバレーで、その日暮らしの下働きをする20歳の章介。そこへ営業でやって来た、どん底のマジシャン、シャンソン歌手、踊り子というクセの強い3人。ショーの間の1ヶ月、4人の同居生活が始まる。
本を読んでるのに、まるで映画を観ている様な感覚だった✨昭和レトロな釧路の夜の風景がそこにある感じ。←行った事ないけど笑
みんな風変わりだけど、とても温かい。みんなでストーブを取り囲んで、がやがや食べるご飯。家庭の愛にあまり縁のなかった章介には、この1ヶ月は生涯忘れられない大切な時間だっただろうな✨
素敵な話でした!これほんとに映像化されたらいいのに〜☺️
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不定期に、桜木紫乃読みたい症候群の波がやってくる。
今がまたその時で、そして桜木さんは絶対に裏切らない。
そうそう、わたしはいまこれが欲しかったの!!
欲しかった場所に欲しかったものがピンポイントで届く。ある意味オーガズムに近いこの感覚。
何度でも言いたくなる。桜木紫乃は絶対に裏切らない。
孤独と虚しさを抱える人間を書かせたら右に出るものはいなくて、そして彼らにはいつもこの極東の土地が似合っている。
今回はそれだけでなくてそれを持ち寄った、家族よりも家族らしいものが出来上がっている。
それは冷た過ぎたり、熱し過ぎたり、しょっぱかったり甘かったり全然『適量』にならないのだけど、でも間違いなくこれはたったひとつの居場所になってしまう。
ラストの師匠の背中に涙を流してしまうのはなにも彼だけではない。わたしたちもまたあの背中を想って泣くのだ。
わたしもシャネルの唄を聴いて、こんな年末を過ごしたかった時があったなぁ。
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じじじじーん。胸に柔らかく沁みる情緒。心に赤提灯が灯るよう。ぼんやりした明るさとほの暗さをあわせ持つ物語。極寒の釧路のキャバレーで働く20歳の章介。期間限定でショータレントとしてやってきた癒し系のマジシャンの師匠、陽気なオネエ歌手のシャネル、キップのいいストリッパーのひとみ。約1ヶ月の間、章介はオンボロ寮でタレントたちと同居する。桜木さん比でシビアな要素は少な目で、優しめの読み心地だった。愉快なタレントたちと暮らすうちに、どこか投げやりだった章介にも心の変化が。一期一会だからこその刹那の交流が心に響く。
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俺と
師匠と
ブルーボーイと
ストリッパー
桜木紫乃さん。
良かった。
とても良かった。
本当に良かった。