『完全にノーマークの著者/研究者で、まさかこんな衝撃的な本だとは予想もしていなかった。ありがとうございます。』
2021/04/29 14:50
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投稿者:オオハシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いや、すごい本だった。 この本は、日本のインターネットに早期から関わられてきた先輩に紹介いただいた本なのだが、ほんとにすごい本だった。 (巻末の)訳者解説(の一番初め)に以下の記載から始まる。『これはかなり壮絶な本だ。 インターネットをめぐる通俗的な常識とされるものの多くが、実証的に次々とくつがえされてしまうのだから』 さらに解説の後半にはこうある。『完全にノーマークの著者/研究者で、まさかこんな衝撃的な本だとは予想もしていなかった。ありがとうございます。』
なまじっかな素人の感想をダラダラと述べるよりも、本書のエッセンスとなるような引用を多数開示したほうが読者の興味も沸くかもしれない。 しかしながら剛毅な、ハードな本だった。 通説がデータによってくつがえされていく、生半可な気持ちでは取り組めない本だった、という印象が強い。
大学のコンピューター室でのブラウザはNCSA Mosaicブラウザだったし、研究室で使っていたメーラーはDebianのmuleのMewだったし、機械工学科から2001年に企業へ就職しICT環境において20年が経過してきた自分であるからこそ、こうした書籍がもっと多くの方に読まれるよう、微力ながらもこうしたレビューをあげていきたいと思っている。 諸先輩方が絶賛していたことがよくわかる気がした。
以下、まずは帯から抜粋するとともに、いつものように本書から抜粋引用したい。
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○帯より
インターネットは一つではなく、二つある。私たちが日々使っている現実のインターネットと、理想化され、フィクション化され、通信と経済生活を民主化していると信じられているインターネットだ。現実のインターネットへの私たちの理解は、理想化されたインターネットへの根拠なき信仰により阻害されてきた。
デジタルメディアは、多くの人の思い込みと異なり、小規模生産者に有利にはたらかない。お金、職員、データ、計算力、知的財産、固定した観衆をもつサイトが有利なのだ。
ある企業が独占と見なされるのは「著しく持続的な市場支配力をもつ」場合だ。グーグル、フェイスブック、マイクロソフト、アマゾン、アップルはすべて、認められた市場支配力の基準をはるかに上回る市場シェアをもっている。この集中は、経済、政治、ニュース、果ては国家安全保障について、どんな意味をもつだろうか? オンライン寡占は避けられないのか、それともインターネットの罠を逃れる方法はあるのだろうか? 本書が応えようとするのはこうした問題だ。
○P203
FCC議長・アジット・パイはこうした懸念を一蹴し、古いルールは「ニュースや分析を1日中、数えきれないほどの全国・地方ウェブサイトやポッドキャスト、ソーシャルメディアサイトから得ている世界を反映していない」と主張した。
でもパイはまちがっている。デジタルニュースサイトが「数えきれないほど」あるというのは、はっきりまちがっているのだ。なぜわかるかといえば、『私たちがそれを数え切ったからだ。』 インターネットは地方メディア風景にはほとんどまったく新しい声を付け加えていないし、ほとんどの既存新聞やテレビ局を弱体化させた。いまやFCC指令はそれをさらに弱体化させようとしていて、その過程で全国の小市場に地方メディア独占を作り出そうとしている。
○P284
本書を他とは一線を画するものにしているのは、その有無を言わさぬ裏付けだ。本書は理論モデルと実証データの両方を使って、なぜ各種のインターネット平等化議論がすべて幻想にすぎないのかを示してくれる。
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これはインターネット経済学の本だ(なので「デジタルエコノミー」とタイトルについているのだが)。
「関心経済」という概念をそもそも知らなかったのだけど、言われてみると確かに、ウェブのコンテンツは直接的に金銭を集める代わりに人々の関心を集め、有限な時間を奪い合っているのだな。
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正直難しいので読むのは大変だけど、インターネットにおける情報、コンテンツの変化と有り様がよく分かる。良い悪いではなく、こういう原理でこうなったという説明なのでわかりやすい。読みやすくはないけど。
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インターネットが真に自由をもたらすフリーカルチャーの源泉である、というような言説は既に幻想になって久しい。にも関わらず、幻想にしがみつきたい愚者が未だに残るのはなぜだろうか。本書はそうした愚者をマシンガンで撃ち抜くかの如く、そうした幻想を実際のインターネットトラフィックのデータや、それを元にしたモデルに基づくシミュレーションで反駁する。
本書の結論は極めてシンプルである。インターネットエコノミーは、多額のデータセンタやソフトウェアへの投資によって人間が持つ有限の時間やアテンションを独占する。それは物理的な工場を運営するのと同じような規模の経済によって成立する、というものである。
本書の後半は、そうした”関心(アテンション)の経済”において、新聞における地域紙のようなローカルメディアがどのように生き残るか、という点にフォーカスがあたっている。その現実的な処方箋は、
・とにかく移気なユーザのトラフィックを呼び込むためには、サイト表示の速度を改善すべし。改善すべし!
・サイトの更新頻度を加速せよ。一つのコンテンツの文章量を短くして、それなりの質のコンテンツを量産すべし。量産すべし!
というものである。
その点で、本書は死に体にある日本の新聞業界の人間にこそ読んで欲しいと思う。
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いや、すごい本だった。 この本は、日本のインターネットに早期から関わられてきた先輩に紹介いただいた本なのだが、ほんとにすごい本だった。 (巻末の)訳者解説(の一番初め)に以下の記載から始まる。『これはかなり壮絶な本だ。 インターネットをめぐる通俗的な常識とされるものの多くが、実証的に次々とくつがえされてしまうのだから』 さらに解説の後半にはこうある。『完全にノーマークの著者/研究者で、まさかこんな衝撃的な本だとは予想もしていなかった。ありがとうございます。』
なまじっかな素人の感想をダラダラと述べるよりも、本書のエッセンスとなるような引用を多数開示したほうが読者の興味も沸くかもしれない。 しかしながら剛毅な、ハードな本だった。 通説がデータによってくつがえされていく、生半可な気持ちでは取り組めない本だった、という印象が強い。
大学のコンピューター室でのブラウザはNCSA Mosaicブラウザだったし、研究室で使っていたメーラーはDebianのmuleのMewだったし、機械工学科から2001年に企業へ就職しICT環境において20年が経過してきた自分であるからこそ、こうした書籍がもっと多くの方に読まれるよう、微力ながらもこうしたレビューをあげていきたいと思っている。 諸先輩方が絶賛していたことがよくわかる気がした。(ただし小職のような傍流な人間には、なかなか歯ごたえがあって難解ではあったが)
以下、まずは帯から抜粋するとともに、いつものように本書から抜粋引用したい。
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○帯より
インターネットは一つではなく、二つある。私たちが日々使っている現実のインターネットと、理想化され、フィクション化され、通信と経済生活を民主化していると信じられているインターネットだ。現実のインターネットへの私たちの理解は、理想化されたインターネットへの根拠なき信仰により阻害されてきた。
デジタルメディアは、多くの人の思い込みと異なり、小規模生産者に有利にはたらかない。お金、職員、データ、計算力、知的財産、固定した観衆をもつサイトが有利なのだ。
ある企業が独占と見なされるのは「著しく持続的な市場支配力をもつ」場合だ。グーグル、フェイスブック、マイクロソフト、アマゾン、アップルはすべて、認められた市場支配力の基準をはるかに上回る市場シェアをもっている。この集中は、経済、政治、ニュース、果ては国家安全保障について、どんな意味をもつだろうか? オンライン寡占は避けられないのか、それともインターネットの罠を逃れる方法はあるのだろうか? 本書が応えようとするのはこうした問題だ。
○P64
台頭するオンラインニッチの初期段階はきわめてダイナミックだが、かつてはオープンだったデジタルニッチは、次々にロックインされる。粘着性のちょっとした差が、複利計算式で積み上がり、急激に拡大するのだ。
ロックインは、ウェブが絶えず変わっているにも『かかわらず』起きるのではない。まさにそれがダイナミックに変わる『からこそ』生じる。ウェブトラフィックの進化的な、絶えず複合化する性質こそ、デジタルニッチがこれほど急激にロックインされる理由��なる。
○P65
本質的にオープンで、果てしなく競争的なインターネットという発想が、いまだにアメリカ通信政策の背後にある中心的な前提となっている。そして大量の学術研究もこれを基盤としている。だがこうした主張はますます現実と相容れない。『ほとんどのトラフィックが公共のバックボーンにまったく触れない』インターネットは、もはやピア・ツー・ピアのネットワークではないし、(FCC議長ホイラーが示唆したような)「活動をエッジに押しやる」ネットワークでもない。
○P160
『大規模』サイトに比べて『小規模』サイトの粘着性を高める施策は、オンラインの集中を減らし、べき乗則の傾きをゆるくする。「イノベーション」だの「起業家精神」だの「実験性」だのの訴えは繰り返し行われたが、成功のはっきりした指標を生み出せずにいる。これに対して、ウェブトラフィックの動学と、サイトの相対的な粘着性に注目するほうが、先に進む方向性として有望そうだ。
○P203
FCC議長・アジット・パイはこうした懸念を一蹴し、古いルールは「ニュースや分析を1日中、数えきれないほどの全国・地方ウェブサイトやポッドキャスト、ソーシャルメディアサイトから得ている世界を反映していない」と主張した。
でもパイはまちがっている。デジタルニュースサイトが「数えきれないほど」あるというのは、はっきりまちがっているのだ。なぜわかるかといえば、『私たちがそれを数え切ったからだ。』 インターネットは地方メディア風景にはほとんどまったく新しい声を付け加えていないし、ほとんどの既存新聞やテレビ局を弱体化させた。いまやFCC指令はそれをさらに弱体化させようとしていて、その過程で全国の小市場に地方メディア独占を作り出そうとしている。
○P284
本書を他とは一線を画するものにしているのは、その有無を言わさぬ裏付けだ。本書は理論モデルと実証データの両方を使って、なぜ各種のインターネット平等化議論がすべて幻想にすぎないのかを示してくれる。
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図書館で。
関心経済 アテンションエコノミーの本。
関心をいかにお金に変えるか。
傾いた土俵。インターネットが平等。どんな会社にもチャンスがあるというのは大ウソ。規模の経済がとても働きやすい。ネットワーク効果、アーキテクチャの優位性、デザインの優位性、広告とブランディング、利用者の学習、経路依存とロックイン。
パーソナル化。探す費用と手間。ネットフリックスとコンテンツ推薦 エコーチェンバー、フィルターバブルはそんなにない。多様性も大事。グーグルニュース。内容に基づく推薦・協働フィルタリングの推薦。ヤフーと行動ターゲティング。推薦システムと政治ターゲティング。ケンブリッジアナリティカ。推薦技術は一部の組織を圧倒的に有利にする。
推薦システム デジタル観衆を激増 大きなコンテンツ持つとこ有利 HWリソースと人材 データ持つとこ有利 パーソナル化はロックインを促進 観衆の集中。スコープの経済
サイバー空間の経済地理学。
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直近の仕事的には星5。インターネットは誰もが平等に勝負できると思っているが、オフライン以上に規模の経済が働く世界だった、という話。
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関心経済について興味を持ち、本書を手に取った。
昨今、スマホに時間と関心を奪われていると改めて感じている。GAFAMをはじめとする仕掛ける側がどのように関心を集めているかを知ることを目的とした。
残念ながら、読むのがつらく途中で読書を断念。
洋書にありがちな、主語が不明確な文で理解が追い付かなかったり、同じことを表現を変えて繰り返す分に辟易した。テーマ(≒今何について議論がなされているか)が本当によく分からなくなった。
私には、
・多くの人はワールド・ワイド・ウェブの利用が進むほど、広く平等になると思い込んでいる。しかし実態は、寡占が生み出され硬直した市場になっている。
・ネットフリックスプライズの例から、推薦システムは直感的な感覚とは異なるアプローチで作製されていること。また、異なる手法を新たに導入したときのみ改善がもたらされたこと。
上記二点が印象的だった。
多くのデータが示されているので、理解できる人は学びの多い一冊なのかもしれない。
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メディア(放送、新聞)分野において、いかにデジタル化(オンライン化)が強者へのさらなる権力集中をもたらしているのかを定量的、実証的に示した本になります。インターネットの黎明期には、多くの有識者が「これでメディアの民主化が進む、つまり誰もが情報発信の機会を得られて、ローカルニュース、ハイパーローカルニュースでネットは繁栄していくだろう」というような主張をしていたわけですが、著者は、その主張が誤りであるということを実際のデータで示したわけです。本書のキーワードは「べき関数」でしょう。べき関数の特徴と言えば、少数の強者(ヘッド)とそれ以外の長い参加者(ロングテール)が組み合わさった形なわけですが、確かにこれまでの風潮では、ネットが生み出すロングテールに議論が集中していたわけです。しかしふたを開けてみれば、ロングテールも確かにあるけれど、それ以上にヘッド部分がさらに強くなるメカニズムをネットは持っているのだということです。
このように本書はどちらかと言えばネットに対する悲観的なトーンが8割くらいを占めてはいますが、完全に打つ手がないわけではありません。どうすればロングテールが強くなれるのかについてのヒントも本書の中に書かれています。その一つが、我々ユーザーのこだわりが強くなることです。私はこの点に関して日本には光明がある、つまり日本であればロングテールのサイトにも勝機はあると感じました。逆説的ではありますが、同一民族の塊である日本人のなかにはサブカルチャーがかなり広範囲かつ深く存在していて、多民族国家である米国以上の広さと深さがあると思っています。サブカルが深く広い日本では、グーグルやフェイスブックが提供する当たり障りのない情報には感銘を受けません。トラフィック数は少ないかもしれませんが、コアなユーザーを集める超ロングテールだが長寿命というサイトが日本にはかなりあるのではないかと思い、そのあたり誰かが日米比較の実証研究などしてくれたら面白いのにと思いました。「オタク文化」が栄えている国ほどネットの民主化が進む、なんていう結論になると面白いのですが。本書は多くの気づきが得られる良書でした。