エネルギーと発生
2024/05/29 07:54
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投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
生物が食物や太陽光(光合成)からどのようにエネルギーを得ているのかを化学反応を見ることでその仕組みを明らかにしている。また生物の発生で手足や各器官に分化していく仕組みも解説されており勉強になった。
世界最高峰の生物学の教科書です!
2021/05/04 12:48
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、講談社ブルーバックスから刊行されている『カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書』シリーズの一冊です。アメリカの生物学教科書である『LIFE』から「細胞生物学」、「分子遺伝学」、「分子生物学」の三つの分野を抽出して翻訳したもので、同書は第3巻目にあたり、「分子生物学」の分野となっています。この教科書はマサチューセッツ工科大学、ハーバード大学、スタンフォード大学などアメリカの名門大学が採用する「世界基準」の教科書でもあります。同巻の内容構成は、第1巻、第2巻に引き続き、「第14章 エネルギー、酵素、代謝」、「第15章 化学エネルギーを獲得する経路」、「第16章 光合成:日光からのエネルギー」、「第17章 ゲノム」、「第18章 組換えDNAとバイオテクノロジー」、「第19章 遺伝子、発生、進化」となっています。ぜひ、生物学に興味ある方にはお勧めです!
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【はじめに】
本書は、多くのアメリカの大学で生物学教科書として採用されている『LIFE』の「細胞生物学」「分子遺伝学」「分子生物学」の三巻を邦訳したものである。『LIFE』は全58章だが、この三巻ではそのうちの19章をカバーしている。
ブルーバックスに収められた三巻の内容は以下の通り。
第一巻(細胞生物学): 生物学とは何か、生命を作る分子、細胞の基本構造、細胞内・細胞間の情報伝達
第二巻(分子遺伝学): 細胞分裂、遺伝子の構造と機能
第三巻(生化学、分子生物学): 細胞の代謝、遺伝子工学、発生と進化
簡単ではない内容だが、ふんだんに配置された丁寧なカラー図解が理解を助けてくれる。旧版では第四巻 進化生物学、第五巻 生態学が同じくブルーバックスから出版されている。
kindle版で読んだが、図表の関係で文字サイズの調節、ハイライト、検索などができず、仕方がないとはいえそこは残念。
【概要】
第三巻の内容は、第14章から第19章までの6つの章がまとめられている
第14章は、細胞が利用するエネルギーと生物内の反応を触媒する酵素について解説する。ATP (アデノシン三リン酸)を媒介してエネルギーの生成・保存・消費つまり代謝がどのように生体内で行われいてるのかの仕組みを詳しく説明している。生体内の代謝経路は非常に複雑であり、pHや温度といった環境にも多くを依存し、多くの酵素によって相互依存的に制御されている。この複雑性がある種の恒常性とレジリエンスを確保しているのかもしれない。
第15章は、細胞がどのようにして化学エネルギーを獲得するかについて解説する。生物は、食物をグルコースに変換し、グルコースから呼吸によって獲得した酸素を使った酸化プロセスによってATPにエネルギーが溜め込まれる。昔、高校生物学で勉強したクエン酸回路もここで説明されている。
第16章は、植物が日光からエネルギーを獲得する過程である光合成について解説する。光リン酸化によってATPを産生し、CO2を還元して糖質を合成するプロセス(カルビンサイクル)が説明される。なお、太陽光のうち化学エネルギーとして糖質に貯蔵されるのは全体の5%程度の効率である。
第17章は、遺伝情報であるゲノムについて解説する。ゲノム配列情報の読み取りは今世紀の初めにある程度確立された技術となり、そこから得られた情報により生物進化に関して多くの新しい知見が得られた。新型コロナ感染陽性判定に使われたことで知られることになったPCR (ポリメラーゼ連鎖反応)も、ゲノム配列決定のために開発された手法であり、その仕組みが詳しく説明されている。大腸菌、酵母、線虫(Cエレガンス)、ショウジョウバエ、シロイヌナズナなどのモデル生物で詳しいゲノム研究が行われ、多くの成果が得られている。近年では個人のゲノム配列を読み取ることで疾病予防や薬理選択などを個々人に合わせて行う医療のパーソナライズ、いわゆる精密医療、への応用が積極的に研究されている。
第18章は、DNA組換えとバイオテクノロジーについて解説する。具体的事例として、農業や畜産業に応用されている実際の遺伝子組み換え技術が詳しく説明されている。また、この分野を大きく進展させたCRISPR-Cas9を用いた最新のゲノム編集法についても紹介されている。
第19章は、個体の胚発生および進化について解説する。胚発生における決定、分化、形態形成、成長のプロセスと仕組みが説明される。特に、初期胚細胞の全能性や多能性、幹細胞の多分化性能について解説したのち、日本初の成果であるiPS細胞についても紹介される。ひとつの胚細胞からDNAに刻み込まれた情報だけをもとに多細胞生物が生まれることもここまで解明が進んだとはいえ、もしくは進んだからこそ、その不可能とも思えるほどの精妙さに驚く。
【所感】
第17章や第18章のゲノム技術は、より正確な生物進化系統樹の作成や、現生人類の出アフリカ説の確証、現生人類とネアンデルタール人の混血などとても興味深い事実が明らかになった。また、遺伝性疾患についてもとても明確な情報を得ることができた。今後、特に医療面、健康管理面でさらにますます多くの活用が期待される分野であり、しっかりとした誤りのない知識を持っておきたい分野である。
また、代謝に関しては生命の起源や生命進化の上でも大きな鍵を握るもので、ニック・レーンの『ミトコンドリアが世界を決めた』などを思い出し、きちんと理解したいと思った。
この一巻から三巻を通して、改めてこの精緻は仕組みが神のような全能の設計者なしで、進化のアルゴリズムと宇宙にある材料だけで作り上げられたことに驚くとともに、またその仕組みがその生物自身によってここまで読み取られたことにさらに大きな畏敬と感謝の念を描くのである。
もう一度今学生時代に戻って専攻分野を選んでいいと言われたら、この分野を選びたいと思った。
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『カラー図解 アメリカ版 新・大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学』(デイヴィッド・サダヴァ)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4065137438
『カラー図解 アメリカ版 新・大学生物学の教科書 第2巻 分子遺伝学』(デイヴィッド・サダヴァ)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4065137446
『ミトコンドリアが世界を決めた』(ニック・レーン)のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4622073404
『生命の跳躍――進化の10大発明』(ニック・レーン)のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/462207575X
『生命、エネルギー、進化』(ニック・レーン)のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4622085348
『ネアンデルタール人は私たちと交配した』(スヴァンテ・ピーボ)のレニュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/416390204X
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第3巻は、細胞の代謝、遺伝子工学、発生と分化について。⑭細胞が利用するエネルギーと生物内反応を触媒する酵素、⑮細胞がどのようにして化学エネルギーを獲得するか、⑯光合成、⑰染色体上の全ての遺伝情報であるゲノム、⑱組換えDNAとバイオテクノロジー、⑲多細胞生物における1個の細胞から成体が形成される迄の過程である発生及び進化の分子メカニズムからなる。
14.生物内の化学反応を代謝と呼ぶ。生物は取った食糧をエネルギーとして消費し、タンパク質を作り体の一部にしたり、体を動かす部品にしたりする。体中で化学反応がおきている。化学反応には異化反応と同化反応がある。エネルギーの視点では発エルゴン反応と吸エルゴン反応だ。大きく複雑な分子が低分子へと分解するときに、化学結合中に蓄えられていたエネルギーが放出される。それを生物は利用する。その化学反応を促進するのに触媒としてタンパク質からなる酵素を使う。酵素を制御することで代謝の速度を管理する。
15.生物はアデノシン三リン酸(ATP)をエネルギー通貨として使う。グルコースを分解してATPを得る。原核生物は1分子のグルコースから2ATPを得るが、ミトコンドリアを使うとなんと32ATPを得る。
16.光合成は光エネルギーを吸収して化学エネルギーに変換し、そのエネルギーを使い糖を作る。そのときカルビンサイクルではミトコンドリアのクエン酸回路と同じくプロトン勾配を利用したATPシンターゼを使う。
17.現在の技術では数百万塩基対もの長さのDNA分子の配列を端から端まで決定することは不可能だ。百塩基対程の断片に切断したDNA分子を読み取り、重なり合う断片の集合体を作って決定している。
18.今日ではCRISPR技術を利用して特定遺伝子の改変や不活性ができる。⑲昆虫はムカデのような節足動物のUbx遺伝子変異で生まれた。
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「エッセンシャル植物育種学 農学系のための基礎 (國武久登他著)」を読んで「アメリカ版 新・大学生物学の教科書 細胞生物学 (ブルーバックス、D・サダヴァ著)」シリーズで生物学の基礎を勉強することに、第1巻、第2巻に続き図書館で借りて読んだ。
第1巻は遺伝学による育種について、第2巻は分子生物学、遺伝子レベルの仕組みについて。
本著は生き物のエネルギー生成と酵素、他にゲノムやバイオテクノロジーの解説だ。
なんと乳酸発酵とアルコール醗酵、そして細胞呼吸の生化学的な解説をここで勉強できるなんて得した気分だ。ゲノムなどの最新の知見からすると古典的だが身近で大切なところなのでぜひこの機会に押さえておきたい。
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https://paz-library.opac.jp/opac/Holding_list/hlist?rgtn=00057992