紙の本
オリンピックに見る戦争の影
2021/11/13 18:48
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投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和39年の東京
オリンピックが終わり国民が熱狂した熱がまだ残っている。
亡き父は開会式は見もしなかったのに、選手たちが自由に入場する閉会式を嬉しそうに最後まで見続けていた。
次男良彦を妹の美津子が訪ねてきて亡き父の思い出を語り、見つけた父の日記を渡し三世代の物語が始まる。
戊辰戦争を戦い、仙台藩に振り回されやけになった曽祖父 洪庵。
たった一人で家を守った祖母 多嘉子。
隣家の罵声に「控えろ、下郎つ!」はあっぱれ。
祖母多嘉子を捨てて駆け落ちした祖父 園生。
祖母にこき使われながらも、祖母の優しさを感じ懸命に働く母 寿子。
そして東京に単身赴任していた英語教師だった父 良一。
戦時中は非国民と噂され、息子からも蔑まされて、部屋に籠り仕事にもいけない。
そんな三世代のそれぞれの思い、暮らしぶりは語られる。
何が本当なのか真実なのか誰にも分からないのかもしれない。
しかし、人は生きるしかない。
父親がオリンピックの閉会式を嬉しそうに最後まで見ていた訳もラストに分かる。
紙の本
戦争と戦後を考えさせられる一冊
2021/11/03 07:11
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投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
「マカン・マラン」シリーズの古内一絵さんの作品。ご自身の家族の戦争体験がベースとなった、地に足の着いたノンフィクション的な物語で、その分良一や良彦のそれぞれの「苦悩」が自然に沁み込んできました(毎日新聞「戦後76年の表現者たち」210823)。
紙の本
Netflixのドラマのよう
2021/09/20 13:59
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投稿者:チェリまほっこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
英国やスペインのドラマのような展開と情景描写で想像力が膨らんだ。
反戦を高らかに掲げているわけではないけど、強いメッセージを感じた。
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作品の一番最後の一文が、この物語の全てを物語っていて、その一文とそれが表現している光景が、強く印象に残った。
***ネタばれ***
宮城県の田舎の夜空に、無数の星が明るく輝く光景が浮かび、その光景は、人生に例えられている。
『闇が深ければ深いほど、強くさやかに輝く』
なんて心強い言葉なんだろう。
でも、私も人生を振り返ってみると、そうかもしれない。闇が深いほど、晴れたときは凄くクリアで明るい。
古内さんの小説は、勇気づけられる事が多いです。
また、主人公の良彦は、戦時中、神経症を患い、近所から「非国民」と呼ばれていた父親を恥じていたが、父親の死後、遺品である日記がでてきた。なぜ父は心を病み、非国民と呼ばれたのかが明らかになるのだけれど、その日記は、幻覚に苦しみながらも、教師として、親として、懸命に道を探ろうとしていた一人の男性が誠実に生きてきた証だった。
情けなくなんかなかった。死を望みながらも死なずに戻ってきて、真面目に生きて寿命を全うしたお父さん。なんて深いんだろう。
人が人生を全うするのに大事なことが、たくさん詰まっている作品だった。
また読み返して、心に刻みたい。
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戦中から戦後、そして東京オリンピックまでの、一つの家族の物語。
これは、昭和の記憶であり記録であり、私たちがずっとずっと手渡し続けなければいけない物語だ。
嫁に厳しく当たり続ける傲岸不遜で傍若無人な姑のその本当の姿に、嫁だけに話していた秘密の話に、「なぁんだ、多嘉子ばあちゃん、かっこいい女性だったんじゃん」とニヤリ。。
宮城県の小さな村の、古いしきたりの中で生きた旧家の歴史。
家族を、家を守るために鬼になった姑。非国民と呼ばれながらも国の欺瞞を許せず職を追われた長男。姑にこき使われながらも夫を信じ子どもを育て上げた嫁。そしてそんな家族の本当の姿を知った孫。
ファミリーヒストリーと呼ぶにはあまりにも大きく普遍的なこの物語。
何が真で何が虚か。目に見えることが本当とは限らない。目に見えないけどそこにあるもの、それを知ることのできる人。その大切さ。
「控えろ、下郎!」「この悪ガキ(おだづもつこ)がぁっ!」という多嘉子の声が聞こえる。
手を広げ、鬼の形相で立つその姿がただただカッコいい。
昭和39年の東京オリンピック。その開会式と閉会式の違い。それは目に見えない大切なことを私たちに教えていたのだ。
眼に見えない不確かなものにおびえ苦しむ日々。そこを生き抜くための真の光を私たちはこの一冊から得るだろう。
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良彦、父の良一、母の寿子の視点で戦前から東京オリンピック頃までの物語。
タイトル通り静かな物語だけど、戦争や震災の描写は生々しいところもある。
今年東京2021を終えた今のタイミングだったことがエモい。
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【「マカン・マラン」著者が描く感動のファミリーヒストリー】非国民の父と軍国少年の息子。父が残した日記から浮かび上がる真実とは。宮城県古川を舞台に描く戦中戦後を懸命に生きた家族の物語。
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素晴らしい作品に出会えた。主人公の良彦と小生とは多分一才違いの同世代のはず、小説に出て来る出来事も同じ様な出来事を体験している。歌も歌手名にも、東京オリンピックの事も、そして父親の体験である関東大震災、そして敗戦、人はこれを終戦と言うが、著書に余す事なく語られている。良い作品に出会えて良かった!
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泣きながら読了。心に染み入る話だった。女性の強さ、真の強さ、歯を食いしばる強さ、守っていく強さ、幸せを感じられる強さ、私だけが知っていることを信じるその強さに、何度も何度も頷きました。良い夫婦だ。どちらも。良い女性達でした。本当の事は死んでからしか分からなかったけれど、どんな状況であれ、きちんと背中を見せてきた父の弱さと優しさ、それを支えた嫁の思いが温かすぎて、幸せな読後でした。渦中は大変だっただろうな。私もこんな嫁になりたい。(5歳)
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父、良一が何故引きこもっていたのか。残された日記で全てが明らかになる。信念を曲げず家族に愛情を注いできた良一と影で支え続けた母、寿子。東北弁の温もりと、ささやかな幸せが伝わった。
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物議を醸し出している東京五輪直前に、前回、幻の前々回の五輪を含む家族3代の激動の物語。味のある東北弁で心に刺さるセリフの数々。「闇に眼を凝らして真実を見ようとするのは、恐ろしいことなのではないだろうか」「戦争なんて、昔も今も一つも面白ぐね。〜の為と言うけんど、わだすは、そっだらごと信じね。つまんねー面子とか、私利私欲の為にやっだごとだ」「学問を無力化させるのは、全体主義だけではない。恐怖心もまた、培ってきた教養や知識を呆気なく麻痺させる」「そこにあるはずの星々は、昼間は見えない。夜に現れる輝きもまた、光年の彼方の光。実際には存在していないかもしれない星の影。真実もまた、それと同じなのかもしれない。けれどすべてが幻の訳ではない。眼に映るのが影であっても、実体がなければ光はしない」
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戦争の時代のお話で、考えさせられる話だった。
当時戦争に反対すると非国民とされたが、それでも自分の意志を貫き通した姿は勇気をくれた。
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昭和初期くらいまでは、江戸時代の戊辰戦争?とかの因縁が息づいている家もあったということが勉強になった。
家族の歴史の話。面白いけどなんかとても清く正しくて、ドロドロしてるかと思いきやそんなことは全然ないので、そこが物足りなかった。というより、求めてたんと違う、ってとこかしら。
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静かで、骨太で、丁寧に紡がれて物語でした。「闇が深ければ深いほど、強くさやかに輝く。」この言葉に凝縮された物語でした。
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昭和19年から20年にわたる家族の物語。実際には3世代だが、はるか幕末からの祖先のエピソードもサラリと描いてあり、それが登場人物の言動に深みを与えている。淡々と進む家族の日常が痛い程伝わる。