言っていることはよくわかるが
2021/05/03 09:53
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投稿者:のりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
労働組合については、学問としてより実際に現場での活動の方がより濃密である。本書で企業別組合が本物の組合ではないというような記述があるのは納得できない。企業別組合だって組合員の役には立っているし、これまでの功績も大きい。
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
労働組合について、わかりやすく解説されていてよかったです。現代社会での存在意義など、興味を持ちました。
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
労働組合の歴史や存在価値など、分かりやすく解説されていてよかったです。今の時代に必要なものだと思いました。
第8章までの「前フリ」が難解
2021/05/15 20:30
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投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトル通り、労働組合について世界の歴史から懇切丁寧に説明した1冊です。
ですが、内容が内容なので、基本的に難解で退屈な文章になります。
第8章でようやく、現在の日本における労働環境についての説明になります。ここまで行きつくまでの文章が難解で退屈ですが、我慢して読み進めてほしいです。
さながら「役には立つけど、話のメインに行くまでが難解で退屈な大学の授業」のような1冊です。
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★★★2021年8月★★★
企業別組合から産業別組合へ。
企業別組合では、雇用や賃金について会社に対して強い態度に出られないのは明らかだ。
それを筆者は「癒着」という強い言葉で表現する。
筆者の主張にはおおむね賛成する。
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労働組合の組織の歴史を通して現在の組合活動の課題が示されている。
企業別組合はほぼ全否定されており、行き過ぎとも思うが、組合活動の関係者は必読。
個人的には系列の異なる組合がなぜ協力できないか、その理由がうっすら理解できたのが収穫だった。
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日本の労働組合の多くは「本物の」労働組合とは程遠い労働組合もどきでした。
それは経営者などの権力側に飼い慣らされた結果であり,そのような労働組合では真に労働者のための労働組合にはなりえません。
でも,そもそも「本物の」労働組合とは何でしょうか。そして,そのような労働組合を日本で創るにはどのようにしたら良いのでしょうか。
労働組合の歴史と現状分析から,その鍵を探ります。
その際のキーワードは「競争」です。
労働組合だけでなく,広く,コミュニティ構築を考える上でも参考になりました。
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労働組合の歴史から現状までわかる。産業別の労働組合は、ジョブ制や同一労働同一賃金を考える上で重要だと思う。あえてジョブ制がわかる、同一労働同一賃金のテーマにしないのは岩波書店らしいとかもしれない。
いろいろな会社があるが、年齢給や年功序列を維持できない会社の労働組合は機能しないと感じる。また、トレンドに左右される商材を扱う会社には向かないかもしれない。スキルや経験を身につけて転職しやすくなったが、トコトンブラックな会社も増えてきた。色々なことが極端になってきたと感じる。
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国際的な労働運動、労働組合の歴史、そして日本の労働組合の歴史と課題が整理できた。
大衆運動としての労働組合運動と政治・政党の関わりの課題が認識できた。
日本の労働者は長時間労働や休日労働の課題、非正規労働者の増加など、貧困と格差が進む中で、より良い労働環境を整えていく立場から労働組合運動を応援していきたい。
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労働組合というものを胡散臭く思って育った世代としては、歴史に興味があった。どうして労働組合は力がなく、組織率が低いのか。できれば関わりたくないと若い頃は思っていたが、海外の事例を見ると、労働組合が労働者にとっていかに大切かわかってきた。
そんな時に、ちょうど出会った本。なぜ日本の労組は組織率が低いのか、どうすれば労働者は守られるのか、ヒントになる。労働組合はやはり労働者を守るものとしてしっかりと機能させなくてはならない。そのためにはみんながその意識を共有する必要がある。
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労働組合とは何か 木下武男
ヨーロッパ中世から日本の労働組合史までを概観し、日本におけるユニオニズムの発展を希求する本。
労働組合における前史は中世におけるギルドであり、ギルドの相互扶助機能は現代の労働組合におけるそれの源流となる。さらに、ギルド内で親方の数を制限していることも、今でいえば既得権益でこそあるが、ある種の働きすぎない、需給により収入が落ちないための仕組みであった。産業化後のイギリスでは、このようなギルドをベースとした自発的・約縁的結社が友愛団体として労働者の相互扶助機能を取り持つことになる。これは、近代化による身分や社団の破壊への対応策として、新たに都市の中で、約束により結びついた人々のセーフティネットである。パブリック・ハウスに集まるこうした友愛団体はそれぞれの収入から基金を設立し、寡婦や失業者の生活を保障した。さらにこのような生活保障を労働組合という視点で見ると、極めて重要なことは自分の労働力を安売りしないために、団体内で生活保障を行うことが、資本主義への強力なアンチテーゼとなる。仕事や生活面での不安は、労働力の安売りに繋がる。労働力の安売りを始めるとジリ貧となるため、あらかじめ一定以下の生活水準を作らないという団体の意志が重要になる。西洋における約縁の概念は、『日本人の法意識』でも強く感じたのだが、絶対的である。なぜなら、地縁や血縁が破壊された後に、人々が生き延びるために集まったものが約縁団体であり、彼らをつなぐ唯一のものが約束だからである。そして、こうした約束を守らせるために、生活不安への対抗策を団体内で所有することが非常に有用であると感じた。
こうしたオルタナティブプランは、キング牧師のバスボイコットの際に、今でいうUberのようなP2Pの黒人用タクシーを流通させていた部分でも見ることができるが、不条理と闘うために、運動を継続させることにしっかりと施策を打つというポイントが、日本の社会運動には抜けているようにも思える。
さらに、こうした友愛団体はクラフト・ユニオンの母体となる。クラフト・ユニオンの特筆すべき点は、職業紹介窓口をもっていることである。このような職業紹介窓口を持つことにより、労働者の地域的な流動性を担保することは、常に賃金を下げることを考えている資本家への対抗策として有効である。
このような前史において、労働組合の特徴や意義の輪郭が見えてくる。労働組合の根本は競争規制である。そして、その競争規制の方法として、生活保障、集合取引、最低賃金などの労働関連法案の制定がある。生活保障は、労働力の安売りを防止し、集合取引は労働者が団結することで最低限の賃金を交渉による資本家から獲得する。さらに、政治に積極的に関与することで、競争を規制するというものである。
マルクスの資本論では、剰余価値の源泉として労働力を挙げている。だからこそ、資本家は資本を最大化するために、労働力の操作を目標とする。より安く、生産性高く労働をさせることで、剰余価値は増えるからである。資本家は労働によって生み出される価値と労働力の価値の差分によって生き永らえ、その差分たる剰余価値を最大化することを目標とする。こうした場合、労働力の価値≒労働者が生き永らえ、次の日も会社に来るために必要なコストを最小化することを資本家は目論む。だからこそ、団結して労働力の価値の低下圧力に対して対抗しなければならない。イギリスの職業別労働組合のモットーである「働きすぎない、怠けない」という文言は、剰余価値の観点からみると、資本主義の核心を突いている。
現在、Uberなど、ギグエコノミーが盛んになっている。しかし、ギグエコノミーは、弱い個人を対象に、資本家が搾取を試みるには最適な環境である。だからこそ、生活を守るためにユニオニズムを学ばなければならないのである。なお、ここまで資本家、資本家と書いてきたが、これは具体的な人間を指しているのではない。私も会社員である限り、価値を最大化するというシステムを理解し、そして株の取引等で価値を最大化することのゲーム的な愉しさも知っている。だからこそ、人間は資本家という立場になることにより、価値の最大化をゲーム的に(自分の意図とは関係なく、システマティックに)望むようになる。こうしたシステム内での役割を担うものを、資本家と呼んでいる。
最後になるが、アメリカの労働組合史を読み解くと面白い部分が、アメリカはレッド・パージ然り、極めて労働運動へのバッシングが強い。そして労働組合へのバッシングが強い上に、労働者を長く働かせる機能を、内部に構築している。それが福利厚生である。企業が福利厚生を提供する形で、労働者を懐柔することで、ストライキや労働者の転職を未然に防いでいる。
私自身、労働運動はダイナミズムでなければならないと思っている。労働運動の根本概念である競争規制はややもすれば、人間を官僚的にし、既得権益を作り出す。日本の大企業で解雇されないことを良いことに官僚的で既得権益に胡坐をかいている人を多く見てきた。競争が人間を高めることはスポーツをやってきた個人的実感である。しかし、その競争が金銭的に搾取されることは許されることではない。だから、労働運動は常にアンチテーゼとしてダイナミズムでなければならない。競争規制だけが自立することは、良い状態ではない。しかし、私たちは人間性の向上に有用な「競争」が搾取され、劇薬になるという力には対抗しなければならない。そうした場合にのみ、ダイナミズムとしての競争規制は認められるべきである。
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この本を読むまで、労働組合について、労働者のための組織という漠然とした知識しかなく、特に日本の労働組合については、政党との癒着など負のイメージを抱いていた。
労働者を取り巻く環境によって、様々な労働組合の形態があり、それらは労働者自らが築き上げてきたものであった。
分析編では、個別の事例から労働組合と労働環境の関係を読み解き、労働組合の成立に必要な要素を確認した。
特筆すべき点は、近年大きく変動してきた労働環境を踏まえ、今後労働組合がどのようになるべきか述べられていることである。日本におけるユニオニズムの不在を解消するため、労働者同士の連帯の仕方は非常に興味深い指摘だった。
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本書は「歴史編」と「分析編」から構成されている。
「歴史編」で欧米の労働組合の成立過程と日本のそれを概観し、差異を明らかにしている。「歴史編」については読み物として面白く読ませて頂いた。
「分析編」で日本に欧米型の労働組合を作る方法を議論しているが。この箇所については、少し分析が物足りない。
「分析編」での著者の主張は概ね下記の点にまとめられると思われる。
1.欧米の産別労組と一般労組を中心とする労働組合が「本当の労働組合」である。
2.日本の労働環境がひどいのは「本当の労働組合」が無いから。
3.日本でも関生(関西生コン支部)など産別の成功例はあり、派遣労働者などを一般労組に組織化することで、「本当の労働組合」を根付かせることができる。
1.、2.の産別労組を日本にも導入すべきという議論はこれまでも出ているもので、特に新規性は無い。この議論を見る際に、日本と欧米以外の国が対象にならないのが不思議に思っている。私も詳細に調査したことはないが、WikipediaによるとITUC(国際労働組合総連合)の加盟団体は161カ国にのぼるそうなので、大雑把にでも良いので誰かまとめて欲しい。
3.について1つ、著書の中で関生の事例を産別の成功例として取り上げているが、この仕組みが広がらなかった理由について分析を深めるべきではないかと思われる。関生の組織ができて半世紀近くが経つが、同様の事例が出てこないことについて分析を加えた方が、有意義な分析になると思われる。
3.についてもう1つ、「日本の下層労働者もユニオンのもとに連帯して社会を変える力になるだろう」との記載についても、既にバブル崩壊から30年を経て未だに組織化にも遠く及んでいない状況について考察すべきではないかと思われる。2000年代であれば上記の記載のような希望的な見方で十分であったかもしれないが、2021年に出版された本で、未だに組織化に失敗し続けているともいえる状況についての分析が無いのは暢気過ぎると思われる。
本書の記載で一番面白かったのは日本型の会社制度として1920年代に社内教育制度を整備し、後に賃金制度と結びつくのであるが、この社内教育制度を整備したきっかけは労働組合を潰そうとしていたのではなく、単に熟練工を育てる仕組みがどこにも(労働組合側にも)なかったので作っただけということ。会社としては単に必要に迫られて作っただけだったのかもしれないが、後々に個別企業の労組に分断する契機になっていた。
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書名の通り「労働組合とは何か」について、歴史の丁寧な記述と分析を交えて説明し、現代日本への提言で締める本である。
歴史の記述は、前近代の西洋の労働者の生活の解説から始まる。正直なところ最初は冗長に感じたが、本書を読み終えた後に振り返れば、労働者の組織運動の発展のあり方を解説し、前時代的な日本の労働環境を批判する上で必要な記述であったことがわかる。
そして舞台は近現代に移る。欧州のユニオニズムの発展と、弾圧を目的に生まれた会社組合を経て育った米国のユニオニズムの形態について解説される。
最後に、本書の半分近いボリュームを以って、日本の労働環境とユニオニズムの歴史の解説と分析、今後への提言が示される。
日本の労働環境の特徴は、概して言えば、前世紀の年功制と、今世紀の非正規労働の拡大である。
徒弟制技能養成が不十分だったため、企業内技能養成制度が生まれた結果、企業は養成した労働者の離脱を防ぐため、年功制を生みだした。年功賃金は、企業ごとに属人的で、年齢や勤続が重視され、また企業の介入の余地が大きい。欧米の同一労働同一賃金の仕組みとかけ離れたこの制度が、労働者の貧困とユニオニズムの不在を招いた。また、左派労働運動が自らの政治主義により自壊し、産業別労働組合を創る機会が失われてしまった。日本の労働組合は衰退し、労使協調を是とする総評、そして連合が支配的地位に立つに至った。
そして今世紀に入り、経済が悪化し年功性が継続できなくなると、企業は非正規雇用を拡大させ、深刻な貧困が広がった。これはまさに、同一労働同一賃金の原則もユニオニズムもない現状により悪化しているものである。日本の労働組合は、各産業の上層のみに存在し、下層労働者である非年功型のためのゼネラル・ユニオンが発達していない。
筆者は、ここにこそ、急務であるユニオニズムの創造の機会があると説く。関西生コン支部を中心とする、国内のいくつかの労働組合の成功例を紹介し、労働者一人一人の主体性を以って、産業別団体交渉・政策制度闘争による産業構造改革を行う労働運動を提唱する。
以上が本書の要旨である。現代の日本の過酷な労働問題 (年功制、非正規雇用) については多くの人が知るところだと思うが、労働組合とは何か、どのような歴史を持ち、どのような役割を担うべきなのかは、てんでわからないのが実情ではないだろうか。
日本において労働組合があまり知られておらず、あるいは単なる左派運動と解されているなかで、著者もあとがきで述べている通り、こうした解説を得る手段はほとんどない。
少しわかりにくい文章構成があったり、文献不足と感じた部分があったりはしたものの、素人でも読める、歴史と現況を俯瞰する丁寧な解説と分析がある点で本書は有用であり、労働問題に関心のある人にお薦めできる。
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労働組合の起源は、中世欧州のギルトにあるという。そこでは子弟制度があり、職人は遍歴をへて親方になるが、それにはギルトの認可が必要になる。その定数は地域により決められている(親方の株を受け継ぐ)ので、親方が増えることで起こる過当競争を防ぐのを重視することとなる。
その歴史ゆえ、日本では重視されていない産業別組合が中心となり、下部組織として企業別が成立し、そして労働者、と組織づけられている。ヨーロッパにおける個人主義が、共同体を前提としており、その中で、これ以上分割できない単位としての「個」人の尊重が重視されるようになったように。
ギルトは「自律的な結束」によって、守られ維持され、そして、さまざまなギルトが「自律的な結束」自治都市が成り立ち、そこでの内政への領主の不干渉へとつながる。領民の負担は地代として税があった。そこには、個からはじまる、より高次の共同体への自律的な参加、という原理があったといえよう。領民と領主の間に様々な(中間)共同体があり、直結することはないので、各レベルでの自治が担保されることが可能になるのだろう。
企業横断的な団体交渉の眼目は「企業外在的」決定方式によって労働条件を企業同士の競争条件の外に置くこと。つまり職業別で行うのだから、労働条件の企業格差はありえず、業種内での不当な価格競争は必要でなくなる(これは、組合が通用するローカルの次元のことで、グローバルでは競争原理が働く)。対して今の日本は「企業内在的」労働条件決定方式(組合が企業別に独自で交渉する)である(つまり、ローカルであってもグローバルの競争原理に従っている)、と指摘する。
希望として、関西生コン業者によるユニオニズム(本当の労働組合とそれを形成するエネルギー)とブラック企業という命名がある。前者は大手コンクリートメーカーに対して、中小である生コン業者が組合として組織を立ち上げ、組合をとおして受注、という体制をとることで、弱い立場を無効にしてしまう。後者は、ノルマをこなせないのも、賃金が下げられるのも、解雇されるのも「お前が悪いからだ」という経営者、それにより、弱者は無力感と諦念《ていねん》観によりとらわれることになる。そのような体質を「ブラック企業」と命名することで、「悪いのは企業で、あなたではない」と意識を逆転させ、可能性へと開かれるきざしとなる。