狩野雷太シリーズ2作目
2022/03/01 11:32
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
狩野雷太シリーズ2作目。社会の暗部をさりげなく引き出しながら、驚きばかりの展開が続く。親から子への虐待が連鎖することは時に報道されているが、それに関わる大人たちは、ドン・キホーテのように幻想を追いかけてりうのかもしれない。優しい嘘で救われる者もある。しかし、そのために矮小化されるものがあることも事実。虐待される、遺棄される子供に告げられる事実はつらいかもしれないけれど、優しい嘘にまといつかれては、まともに生きていけないのではないだろうか。
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
再会した弟から持ち掛けられた狂言誘拐。その数年後に起こった幼児置き去り事件から狂言事件の裏に隠されていた事実や闇が明るみになっていきます。
兄妹は本当の兄弟ではなくて、子どもの頃ロクデナシの父親のため放浪生活を強いられていました。底辺の暮らしでも、なぜか特別な思い出となっています。
弟を切り捨てられない兄、兄に罪悪感を抱かせたくない弟。この兄弟の絆が未来に希望を持てず絶望する少女、事なかれ主義の大人たちを思わぬ悲劇へ。
置き去り事件を捜査している刑事や妙にキャラ立ちしているお巡りさんとのやり取りや、アサヒと刑事のやり取り、アサヒが徐々に追い詰められていく感じとか面白かった。
さまざまな伏線もキッチリ回収されててイイ感じの爽快感もあり。
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20歳の大学生アサヒは8年前まで兄と弟として父と三人で車上生活をしていた弟のユウヒと東京で偶然の再会をします。
父を亡くして小塚家の養子となった旭と児童養護施設<ハレ>で暮らしていた正近雄飛。
ユウヒはアサヒに<ハレ>を存続させるためにお金が必要だから松葉美織という15歳の政治家の娘を狂言誘拐するのを手伝ってくれないかともちかけられアサヒは自分の分け前はいらないからと言い、誘拐当日のスパイとして松葉家の選挙事務所にボランティアとして入り込みます。
狂言誘拐は成功します。しかし、その日アサヒがユウヒのアパートを訪ねると、腹を包丁で刺され血を流して倒れているユウヒを発見します。「料理中に転んだ」と言うユウヒをアサヒは病院に連れていきます。
そして、第二部はその8年後。
二人の子どもをアパートに残し置き去りにした母親、吉岡みずき23歳が逮捕されます。兄の夕夜7歳は生き残りましたが、妹の真昼5歳は餓死による死亡。
そして、吉岡みずきは偽名であり、2011年に松岡家から誘拐された直後に失踪した松葉美織であることが警察の調べでわかります。
夕夜は児童養護施設<ホルン>に保護されます。
狂言誘拐の後、ユウヒを刺して逃げたのは美織なのか…。それならば何のために何を隠しているのか…。
警察は夕夜の証言と美織の古い知り合いから、正近雄飛という名前を探り出しますが、正近雄飛なる人物はどこにもいません。8年前怪我をした病院から逃げ出して行方不明です。
夕夜が「マサチカユウヒはヒーロー。苦しんでいる人を守って助けてくれる。おれのパパ」と言っているのが泣かせます。
優しいがゆえに犯罪を起こしたユウヒそして、兄のアサヒ。
二人がどうか罪に問われないようにと願いながら読了しました。
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初めての作者さん。本の最後の作者さんの感謝の言葉でシリーズものと知りました。
2部構成で2部は2006年だかの苫小牧の事件を彷彿とさせます。
1部2部と主軸の話が興味深かったですし家族の在り方など考えさせられる話でもあったのに、個人的に警察側の存在が雑然とするところもあって、シリーズものと知ったあとに、シリーズと主軸の折り合いの付け方がもう少しありようがあったのかな、と思いました。
ただ1部の話の2部での落としどころは個人的にとても良かったです。その後の兄弟も気になりました。
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8年の時を経て浮かび上がる罪と秘密。
重なるはずのなかった三本の線。兄弟と兄妹。いくつも走る亀裂。絡まり合い、そして途切れた糸。それをほぐしてつないだ一人の刑事。
外から見るとそれは不幸しかない人生。「かわいそう」しか見えないけれど、そこに幸せのカケラはなかったのか。見つけたいと思いながら読む。どこかに光よあれ、と祈るように読む。
狂言誘拐、ネグレクト。流れた血が隠そうとしたもの。許したのは誰。許されたかったのは誰。そして、許せなかったのは、誰。
予想もしなかった罪と秘密。なぜ、という言葉がうつろに響く。
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Amazonの紹介より
別々の人生を歩み、10年ぶりに再会したアサヒとユウヒの兄弟。ふたりはある目的のため、狂言誘拐を実行に移す。その犯罪は成功したかに見えたが、思いもよらない結末を迎えることになった。
それから8年後、神倉駅前交番の警察官・狩野雷太は、マンションの一室で衰弱した男児を保護する。男児の傍らには、餓死した妹の亡骸があった。神奈川県警捜査一課の烏丸靖子は兄妹の母親を取り調べるが、彼女がかつて誘拐事件に巻き込まれていたことがわかり、状況は一変する。悲劇的な事件の裏に横たわる、さらなる衝撃とは――。
第71回日本推理作家協会賞短編部門で受賞された「偽りの春」の続編ですが、主人公の狩野は、この作品ではサブ的なポジションなので、一つの作品として楽しめました。
第一部と第二部に分かれていて、第一部ではアサヒとユウヒの兄弟が、ある目的のために狂言誘拐をする描写を中心に描かれています。カタカナ表記の兄弟なので、後々何かあるんじゃないかと頭の片隅におきながら、読んでいました。
犯人側のみの視点なので、どう誘拐が行われていくのか、リアルタイム風に進行していくので、緊張感がありました。
そして、誘拐の先に発生する結末が、衝撃的でそこで第一部は終了するので、訳がわかりませんでした。
第二部では、その8年後の世界で、ある事件から始まります。
第一部での兄弟がどうなったのか?
事件はどうなったのか?
わからないままだったのですが、8年後の事件と色んなところで絡んでいきます。
繋がった時の衝撃といったら、なんとも悲劇的な気持ちになりました。どこから間違ってしまったのか。狂言誘拐や育児放棄などを絡ませながら、読み進むたびに予想もつかない展開でした。
8年後の兄弟や関係者が成長し、どう事件に絡んでいくのか。第一部ではカタカナ表記でしたが、第二部では、漢字表記になっています。なぜそうなったのか?そういった面白さも第二部で明らかになっていきます。全てが明らかになった時には、ミステリーとしては面白かったですが、同時に兄弟のことを思うと、心情としては、やるせない気持ちになりました。
ぜひ、兄弟には幸せになってほしいなと思いました。
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かつて狂言誘拐に手を染めた兄弟、我が子を餓死させた元少女、生き残った男児。
暴かれた真相の先に待ち受ける悲しい秘密といくつもの嘘。
泣きたくなるようなストーリー展開。
狩野に落として欲しい、だけどどうにか逃げ切って欲しい。
2つの考えが最後までせめぎ合う倒叙ミステリー。
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神倉駅前交番狩野雷太シリーズの第二弾。
シリーズ前作の連作短編がすこぶる面白かったので期待したんだけど、これ、狩野雷太シリーズにする必要ある?って言うのが正直な感想。
警察側の主役は神奈川県警の烏丸というイケ好かない女刑事で、期待した狩野と月岡(みっちゃん)も最後に辻褄合わせのように出てきただけ、葉桜刑事もほとんど出てこないし。
狩野の鋭い洞察力は今回も生きているんだけど、文鳥のエピソードからあの結論を導き出すのはいくらなんでもって言う気がするし、何より狩野とみっちゃんののんびりした雰囲気と今回の深刻な事件が全くマッチしていない。
ここは別の作品にした方が良かったのではと狩野ファンとしては残念でならない。
まあ、ミステリとしてはしっかり練られて伏線も回収され良くできてるんだけどね。
敗因は烏丸のキャラかな〜。最後まで好きになれなかった。
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前作?の狩野雷太シリーズを読んでいたので、狩野の推察を真似しながら読みました。笑
なので珍しく、犯人が先に分かってガッツポーズしました。
ストーリはとても悲しく児童虐待と過去の誘拐事件でしたが、狩野が出てきた瞬間に、オチは救いようのないものではないと、少し安心しました。
「彼女はもどらない」を読んでから作者にハマり色々読み漁っています。
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虐待する親に翻弄される幾つもの家族。頭のいい子達なのに…。隠そうとしたことが明かされたことより、隠されたわけでもなかった事実が明らかになったシーンが衝撃。狩野っていい人に見えて残酷。
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04月-05。3.5点。
超貧困の兄弟、父親の死後別れ別れになる。久しぶりに再会した二人は、ある犯罪を企み。。
後半の謎解きが、怒濤の展開。次々新事実が明らかになるが物語に破綻無く、作者の筆力が高いことを痛感した。
哀しい物語。
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第一部は、離れていた兄弟との出会いとそれまでの境遇。
単純に思われた狂言誘拐は…
それからこの兄弟は…
もやもや感が残ったまま、第ニ部へと
繋がりが感じられないまま、引き込まれてしまう展開に圧倒された。
真実を見抜く交番巡査である狩野に脱帽。
悲劇と衝撃の連続で、驚かされた。
家族の在り方を考えさせられる奥深い内容だった。
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p.84
"おかしなそぶりが少しでも見られれば、娘の命はない"
誘拐にあるあるのセリフだと思うんだけど、この「おかしなそぶり」ってどんなそぶりの事なんだろう?色々あるとしても、これを言ってる時の犯人はどういうそぶりを想像してるんだろう?
結局真昼の父親は誰なの?
雄飛の動機が浅い。結局何も得てないし。
旭もなんであの程度の脅しで雄飛に従ったのかイマイチ納得いかない。
結局隠し通せてないし。
最大の見せ場のはずの狂言誘拐が一瞬で終わって、この後一体何の話するの?って思ってたけど思ってた以上に話が混み合ってきて良かった。
だからこそなんか色々気になる。
千夏の存在もよく分からない。なんで千夏だけ引き取って貰えなかったのか、お姉ちゃんの名前や父親の名前、忘れっぽい父親との今後。
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近頃、ネグレクト、幼児虐待を扱った小説が非常に多くて読んでいて憂鬱な気持ちになります。世の中そういう人が増えたというより、昔は表面に現れていなかった問題が表面に出てきていると思っています。
これもネグレクトが二つ出てくるのですが、それが過去、現在で繋がっています。しかし連鎖では無いんですよね。絡み合っているという感じでしょうか。
血のつながらない兄弟が一人のクズ男と一緒に賽銭泥棒や万引きなどで糊口をしのいで
いるのですが、これも一般的にはネグレクトなんだけれど、三人が三人を気遣って生きているのがひしひしと感じられて胸が痛いです。
世間的にクズなのに子供への愛情は間違いなくある男、世間的には名士で金もあるのに愛情より世間体を取る親。色々な事を考えさせられますが、一番可哀そうなのは放置された子供。どう転んでも許されないからな。と新米おじいちゃんは憤りながら読みました。
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図書館で借りた本。
アサヒとユウヒの兄弟は共に父親と3人で車中生活をして育ったが、父親の死を境に別々の人生になった。大人になってから偶然再開してアサヒは懐かしがるが、ユウヒは仕事を手伝って欲しいと言ってきた。その仕事とは狂言誘拐だった。