賛否両論の最後がこの問題の難しさをつきつける
2022/05/28 06:26
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投稿者:チップ - この投稿者のレビュー一覧を見る
500ページ近い重いテーマを時間を忘れて読ませてしまう作者の力量はさすがだと思う。
ネグレクトされて常に飢えと闘いながら弟と生きる少年。
ある日コンビニに廃棄する弁当をもらえないかと言ってみる。
前半の少年の生活は心が苦しくなった。
後半児童相談所に保護されてコンビニ店長が何かの縁と里親になる事を申し出る。
しかし、ネグレクトされて基本的生活習慣の身についていない少年にとっては「当たり前」の生活への道は遠かった。
「居所不明児童」というと埼玉県川口市祖父母殺害事件を思い出した。
賛否別れるラストだが、大きな悲劇にしなかったのは良かったと思う。
少年、コンビニ店長夫妻、児童相談所がどのような決断をするかが非常に気になる。
桐野夏生ワールド
2022/02/21 06:58
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投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
育児放棄の問題を深く描き出した一作。
桐野夏生だからここまで描けると、辛い内容だがじっくり読み進められる。
子供、親、児童相談所の職員、里親などそれぞれが語る物語には、理解し難いこともあるが、妙に納得させられるような心情が書かれている。
読むのが辛い物語だが桐野夏生の力量に納得させられた一冊。
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
児童虐待がテーマの長編。虐待をする側もされた側も、その後のケアは大変だと思う。それを分かっていて読んだが、まさかの結末。バッドエンド、というか少なくともハッピーエンドではない。
児童虐待の問題は、頭で分かっているつもりでも、その根は深く、現実は甘くないと言うことなのだろう。虐待する親から逃げられたら即ハッピー、とはいかないわけだ。
それにしても。どんなに長編でもどんなに重いテーマでも、文字通り寝食を忘れて読ませるのは、さすが桐野作品だと思う。
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投稿者:カレイの煮付 - この投稿者のレビュー一覧を見る
物語の終わり方が、読者にいろいろと考えさせるような展開であり、もし、この物語に続編があるならば、どのように展開していくのだろう・・・と気になる内容である。
育児放棄、児童虐待
2023/01/17 20:00
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
この2つは、今の日本には、社会の表面からは隠れているけど、あちこちで起こっている問題だと思います。それを、桐野夏生さんは、見事に書いています。読んでいて、苦しく思うシーンもありましたけど、これが、現実か……
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貧困と虐待の連鎖、、、辛すぎる。
優真が、置かれている過酷な環境からやっと抜け出せたと思ったら、過去からの呪縛で学校や友人関係は良くならず。
ずっと追い詰められているような感覚で読んでいました。
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親に捨てられ
愛情に飢えた少年が
人としての感情や
当たり前の生活を
取り戻すことはできるのか
その行き着く先が知りたくて
物語の中に
どっぷりとはまり込んだ。
自分でもどうにもならない
少年の揺れる感情の
危うさにずっと緊張感が漂う。
ただ、母親や里親、弟
同級生との事件など
いろんなことが中途半端なまま
終わってしまったのが残念…
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昔からずっとファンの桐野夏生さんの新作。
ネグレクトによって想像を超えた生活を送ってきた優真。彼を引き取り育てようとする目加田だが、彼自身も病気で寝たきりの娘がいたという設定。そんな辛い状況でも目加田と妻のお互いを思いやる優しさが描かれていて、この二人が本当に善人であることが分かる。
それでも複雑すぎる環境で育った優真との生活はうまく行かない。親からの愛情を受けず、食事や入浴、歯を磨くなどといった私たちが当たり前のようにしていて日々の習慣であることが彼には理解出来ない。
目加田が徐々に優馬に苛立ちを見せる様子など、リアリティがあった。目加田が悪いわけでもなく、ただあまりに生きてきた環境が違うせいで理解出来ないだけだろう。その辺の描き方が本当に上手だなと思った。
そして優真が女性に対して歪んだ感情を膨らませていくところも理解できるようで恐ろしい。
ラストで目加田もどうすればいいか分からないと言うシーンがあるが、一緒にどう乗り越えていくのか。
改めて、子育てとは一緒に親も成長していくものなんだなと思った。
続編も読んでみたい。
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悲惨なネグレクトから始まり、幼い2人の
兄弟の明日の見えない状況。
その中で、子供ながら大人の顔色を伺って
生きる日々。そこで出会ったコンビニの情深い
店長との数奇な縁、兄の優真と弟の篤の運命が動く。
兄は養護施設から、コンビニ店長の家の里子
になるが虐待を受けた過去から、社会との
距離感が掴めず孤立して行き暗い闇に囚われ
犯罪行為を犯してしまう。
弟は母親と逃亡し、隣に住んでいたロリコン男
の餌食となっていた。
いくら里親が親身になっても、実の親ではないし
歪な心のまま転落して行く子供をどうにかする
のは難しく、最後に微かな希望は見えたが
里親の店長夫婦、優真、篤がこれからどうなって行くのかは全く分からない。
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2021/10/13リクエスト 11
貧困、虐待の連鎖。
よく聞く話で典型的なその状況が描かれている。
とても重く辞典のようなサイズ感の本だったが、1日で読み終えた。
虐待の詳細は読んでいて辛い。
それが連鎖していることも。優真は、父親違いの弟に愛情を持てないことを責められ、母親を庇っているように周りから思われ。どれも違うのに、理解してもらえない苦しさ。
優真が母親を捨てた、これが一番正しい気持ちなのだ。
冷静で自分が生き延びるために、近くのコンビニに廃棄弁当をくださいと言う。ネグレストであることを半分くらい見せつけるようにしながら、保護されることを望む。
そこから自分の求める環境を貪欲に求める。結果的に、先のコンビニ店主夫妻に引き取られる。
そこでも、自分の育てられた、とも言えない環境から、一般的な常識を知らなすぎることを、知る。
それは賢い少年には辛いことだったのだろう。
馬鹿にされているように感じたことだろう。
年越しそばを食べること、お年玉という習慣。
それ以前の、入浴や歯磨き、基本的な生活習慣も持たないまま成長してしまった少年が不憫でならない。
彼の母親も、相当信じられない人物として描かれているが、きっとわたしが知らないだけでたくさんいるのだろう。
だんだん認知の歪みから、誤った方向に考えがいくようになり、ラスト数ページはたしかに驚いた。
わたしは、このような終わり方もあってもいいと思う。
育ての母親、洋子の気持ちが、せつない。男性は育ての父親のように、育てようと理想に燃えるかもしれない。
けど、亡くなってしまった娘の代わりに育てたい、という最初は、これまた信じられない動機だった洋子が一番真剣にこの少年に愛情を注ぎ、育てるなどではなく、一緒に暮らし社会性を養う、その役目を担っていたのだと感じた。
優真の周りの人物は、社会の底辺をさまよう人が多いように見受けられる。
私自身、色々な事情で底辺にいる人間で生活だと思っていたが、底辺とは、金銭的なことより、一般的なことを知らない分からないことが、一番底辺である原因だと感じた。そこだけでも、教えてもらって学校生活を送れたことに感謝する気持ちになった。
読む価値のある本です。
これを読んでどう感じるか、も含めて。
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※
ネグレクト、貧困、児童虐待の中で育った
主人公(優真)は母親を捨て児相に保護された。
児童養護施設を経て里親に引き取られ
死ぬほどの空腹や寝床の心配は不要になるが、
自分でも解らない飢餓感と孤独に苛まれる。
家庭による生活レベルの差や常識の違いは
人の数だけあるだろうけど、主人公が幼少期に
辿った生育環境による意識が一般でいうところの
常識からこれ程までにかけ離れてしまうのかと
読んでいて驚かされました。
想像を超える壮絶な生育期を過ごすことは、
精神面の成長にどれだけの暗い影を落とし、
影響を及ぼすのか胸にズンと重くのしかかる
物語でした。
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貧困、暴力、虐待、その連鎖を断ち切ることはできるのか。
8歳年下の父親違いの弟と一緒に母親の帰りを待ち続ける優真。空腹に耐えかねてコンビニに廃棄される弁当をもらいに行ったところから物語は始まる。
まともに働かず男に寄生して生きようとする母親。母の男から受ける暴力。
学校にも通わず、基本的な生活習慣もないまま育つ兄弟。
男の暴力がきっかけで公的支援の手が差し伸べられ、里親に引き取られる優真。初めて知る「家庭」の暮らし。初めて味わう「普通」の日々。
けれど、桐野夏生は少年の現実を優しく温かく包み込みはしない。
母親もその母親によるネグレクト被害者であった。どこから始まったのか、この連鎖。どうしたら断ち切れるのか。1から始めることは可能だ。けれど0は何をかけても0でしかない。
母親への憎しみが、与えられなかったものへの飢餓が、女たちへの暴力的衝動へと変わる。
味わったことのない「普通」の「家庭」の生活。当たり前のことを当たり前として与えられないまま成長した子どもたちの、未来は暗い。
「それでもなんとかしよう」「なんとかしてあげたい」そういう善意に基づいた気持ちの上にしか彼らの未来に光は差さないのか。
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最後のページを読み終わって、あれ?上下巻なんだ?と表紙確かめましたよね。続きはいつ出るんだろう?気になりますね!
しかしそんな情報は今のところ無いので、まさか、これが結末とでも?完成度低いと云わせて頂こう。
ラスト2ページ以外は迫真で、夢中で読んだ。今思い起こせば後ろ3分の1は苦しかったのかもな…情動に欠陥のある主人公、そしてその母親、祖母、という描写の繰り返し、養父は覚悟足らずの浅い人で無責任にも思えてきたし、相談所の女性担当者たちはあんな育ちをしたからだ、かわいそう~見守りましょうよ~と云うだけで解決の姿勢は無いように見えたし、養母もいまいち完璧ではないけどリアルかな、ここが突破口になったり、もし破滅ラストとしても救いのようなアクセントになるのでは…と予想しながら読んでいたけれどまあ。確かに養母がポイントかもしれないけどあれほど盛り上がった展開のラストに持ってくるには小粒な場面だった。
この続きは書かれないのだろうけど、ちょうどこの単行本が発売されてすぐ、ニュースになった少年による凶悪な放火殺人事件があったのが、オカルト的に空想すれば次元を超えて続きは、小説では次女とのLINEをめぐる話だったのが、少しゆがんで長女に変換されながら、リアルに飛び出していったのかもしれない。(死傷者の出た事件に対して不謹慎で申し訳ないが)
桐野氏のこの育ちに問題があり人格に欠陥のある人物が起こす事件ものであれば、過去作「アイムソーリーママ」が思い起こされるが、あの作品にあったコンパクトにまとめられてグッと飲み込まされる毒のカプセルみたいな緊張感は、もう期待できないのかな…とちょっと思った。
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育った環境が与える影響力とある程度成長してから価値観を変えていく難しさを痛いほど感じた。
1番驚いたのは、あんなに過酷な餓死寸前の環境だったのに、あれこれ言われるより楽だし戻りたいかもしれないと優真が感じていたこと。
普通は絶対戻りたくないでしょ!!!!!!て思った自分は、優真の気持ち全然理解できてないなと思った(笑)
育った環境が違うのは当たり前だから、もっと人のことを思いやれるようにしたいなと反省。。
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500ページ近くに及ぶ、分厚い本なのだが、読み始めると面白くて土日で一気に読み終えた。
母親からネグレクトを受け、その彼氏からはひどい暴力を受けていた優真。とことんグズで酷い母親には読んでいて嫌な気分にしかならない。
お腹を空かせてコンビニで廃棄の弁当を貰ったことをきっかけに知り合った店主。まさかその店主と養子縁組を組むことになるとは。
テーマは『貧困と虐待の連鎖』なのかな。
所々で、母親も母親なら、とか幼い頃から躾がされていないから、とか。優真が荒れたり、いわゆる常識的なことができないのは彼のせいではないのに…
優真の母親も親から愛情を受けなかったもしくは教えてもらうべきことを教えてもらえず大人になったから子供二人にあんな酷いことができたのだと思う。
ラストはこれからどうなるのか、とても気になる終わり方。これから優真が目加田夫妻と様々なことを経験し、学び、今までの生きてきた彼とは違う大人になっていくことを期待する。