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投稿者:じゃび - この投稿者のレビュー一覧を見る
みたいなジャンルがあることを、この本を読んで初めて知った。最後まで面白く読めたものの、オチにかなり戸惑う。え、えっどういうこと…そういうこと…???
あと、表紙をめくって1ページ目がつるつるした真っ黒な紙という装丁が面白い。原書もそうなんだろうか?これを思いついた人はすごいね。自分の重複者を想像しちゃう作り。
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投稿者:ゲイリーゲイリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
哲学的で深淵なテーマを扱っている本作は、思考実験そのものと言っても過言ではない。
本作で描かれる異常事態に、もし自分自身が巻き込まれてしまったら、と誰もが考えさせられる。
そうした哲学的問題提起を核としつつ、高水準なエンタメ要素でラッピングされた本作は、テッド・チャンの作品を彷彿させる。
荒唐無稽で突拍子もないはずの出来事なのに、リアルだと感じてしまうのはなぜか。
それは見事なまでに人間の本質を浮き彫りにするからだ。
想像を遥かに凌駕する出来事に遭遇した時、私たちがそれにどう向き合うのかは千差万別であり、向き合い方次第でその人の本質が明らかになる。
自身の正当化や保身を最優先とし現実から目を逸らす者、宗教に縋り付く者、そして無力さに打ちひしがれる者。
人の数だけ解釈は存在し、何が正解で不正解なのかは誰も知り得ない。
いや、そもそも解釈に正解や不正解など存在しないのかもしれない。
それでも私たちは直面した現実に対し解釈をせずにはいられないのだ。
現実を現実としてありのまま受け入れることができればどれほど楽になれるだろう。
解釈の相違が諍いの原因となり、人を不安に陥れる。
しかし同時に、それぞれがそれぞれの解釈を持っているからこそ決断が下せるのではないか。
どれほどの暗闇であろうとも、解釈次第では一筋の光が差し込んでくるのだということを本作は提示する。
本作で描かれる数多くの登場人物たち同様、私たちもまた様々な出来事に対峙し、それぞれの解釈に身を委ね決断を下していく他ないのだ。
圧巻のエンターテイメントでした。
2023/06/07 22:42
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投稿者:クッキーパパ - この投稿者のレビュー一覧を見る
忘れる前に触れておきたいのですが、翻訳が良かったです。非常にスムーズでスピード感があって、センスの良さを感じました。そして本書のストーリーですが、本当に驚愕の内容で、殊に前半は、久し振りに夢中にページをめくった本です。この発想、このスケール、この構成、この展開、この情報量、そしてユーモアのセンスもあって、どこをどうするとこういう本が書けるのか、この感覚に触れるだけでも本書を読んだ価値があった気がします。哲学的なエッセンスもあるようですが、私にはそこは良くわかりません。後段はちょっと話のくどさを覚えましたが、やはりエンターテイメントはこうであってほしいと思いながら読了しました。最後のページまで、もう参ったな、という感じです。
つぶやき文学賞海外編
2023/09/03 01:36
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
つぶやき文学賞というのを受賞した作品だそうです。たしかに、物語は、順調に進行していますが、あちこちに伏線が張り巡らされ、後半になって、あーそうだったのか、みたいなところたくさんました。ただ好みは分かれそう
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物語と登場人物に起こる『異常』。
SFでもあり、恋愛でもあり、政治でもあり、ドキュメントでもある。
間違いなくフィクションですが、仮に自分の身にこの異常が起こったら…。
自分の大切な人の身にこの異常が起こったら…。
SFでとんでもフィクションですが、自分とは遠い物語とは思えない、感じた事の無い臨場感でした。
翻訳本はとても久しぶりでしたが、こんな読みづらい物だったかなと思いました。
自分の頭が足りていないんだとは思いますが、表現が入ってこない時があったので星4つとしました。
他にも読んで改まると思います。
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哲学、科学、宗教がからむ教養的SFスリラー。
物語のミッドポイントとなる出来事に対し、あらゆる境遇を描く群像劇スタイルは、多面的な見方や切り口があって、そのどれもが知己に富んでいて面白い。
特にシミュレーション仮説としての「デカルト2.0」というワードがすごく好きで、哲学という時代によらず普遍的な概念に対して、現代の「なんでも2.0付けよう」みたいなノリを利かせているところがたまらない。
さらにメタのネスト構造も無視できない要素の一つだ。本作『異常』の登場人物であるミゼルの『異常』。そもそも作中でのシミュレーション仮説とは、本作『異常』の思考実験によって生まれたものを指すのだが、ミゼルはそのシミュレーションをする本作の作者に干渉することはできない。そのことを最後に語るのは、結局私たちも同じで、私たちがどこかの誰かが描いた思考実験のシミュレーションなのかもしれないが、私たちも上位概念(あるいは神)には干渉できないことを示唆している。というは本作『異常』の中の出来事として。
読後のモヤモヤ感の正体こそが、私たちの思考の限界であることを示しているような気がして、そのモヤモヤを説明するのが、哲学だったり科学だったりしてきたんだろうなあも思うと、これまた感慨深い気がしてくるのである。
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信じられないくらい、面白かった。
今年に入って2か月そこそこだが、もう今年の小説ランキング第1位かもしれない。
殺し屋ブレイクの話から始まる、この物語。「アノマリー」は彼のことか、と思いきや、違う。
物語は11人の断片的な物語をやがて一つの物語へと結びつけていく。
彼ら、彼女らの共通点は、「エールフランス006便に乗ったこと」
フライトは最悪だったー。低気圧に飲み込まれ、墜落するのではないのかという不安が全員を襲った。だが、最悪以上のことはなく、全員無事でその後の生活になんら支障を起こすことはなかった。
タイトルの「アノマリー」とは何か。それに気づいたときには、すでに物語の1/3を過ぎていた。
アノマリーについて話してしまうと、大きなネタバレになってしまうので、ここでは伏せることにするが、ここから物語は重厚性を帯びてくる。
登場人物が多いので、しばしば誰の話なのか混乱してしまうが、一体どうなるのか、という、先が気になる気持ちは、留まることはなかった。
ラスト1ページまで必ず読むことをオススメします。
そしてこの意味は、読んだ人であれば理解できると思います。
改めて、小説の面白さを知ることができました。読書の愉しみ方と、無限の発想力。あまりのリアルさに、小説の中の話で良かったとすら思えました。
また、日本語訳も非常に読みやすく、これほどの登場人物がいるのにも関わらず、混乱することなく読み進めることができたのは、素晴らしい翻訳のおかげでもあると思います。
翻訳してくださった、加藤かおり氏には感謝しかない。
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ゴンクール賞受賞作品。
ベスト・スリラー2021。
めっぽう面白くて、とてつもなく知的。『異常』(アノマリー)は私たちの確信を弄び、言葉と文学の限界を追求する。刺激的な文学の思考実験。
ーソフィー・ジェベール<リュマニラ>紙
スリラーや社会派SFドラマのように人々を惹きつける。文学界の未確認飛行物体(UFO)
ーアレクサンドル・フィヨン、<レ・ゼュー・ウィークエンド>紙
この小説は、殺し屋のエピソードから始まり、売れない作家、シングルマザーの映像編集者、カエルを飼う少女、黒人弁護士、ナイジェリアのポップスターなどが次々に現れます。
これらの人物、計242名がパリからニューヨークへ向かう飛行機に同乗し、乱気流に見舞われ、驚きの異常事態が起きていたことが明らかにされます。
『異常』というのは登場人物である作家ヴィクトル・ミゼルの作中作です。
この飛行機で起きることはまさに『異常』です。
第一部は人物の紹介。
第二部は異常事態が起きたときの対応。
第三部は人物のその後の人生が描かれています。
この作品は本国での売り上げが2021年12月現在で110万部を突破しているそうです。
私は期待値が高すぎて、今ひとつ物語に入り込めませんでした。
SFですが、文芸色が強いように感じられました。
文芸作品がお好きな方に向いているかもしれません。
エンタメ度はあまり高くないように思いました。
ゴングール賞受賞作品ですが、星は私はあえて4つにします。
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デカルトの「我思うゆえに我あり」という言葉に戻るまでもなく、自分がただ一人の自分であることは、自分にとっての世界の根源です。「わたし」が「あなた」であり、「あなた」が「わたし」である状態は世界を狂わせる「異常」な状態です。たまたまエールフランス006便ニューヨーク行きに乗り合わせた、さまざまな「わたし」が遭遇する「異常」を淡々と描いていく「異常」な小説です。もちろん「異常」が派生した後も「異常」なのですが、「異常」が起こる前も、ひとりひとりの「わたし」の「普通」も実はそれぞれに「異常」でそれがなんの問題もなく交差しているのが現代なのである、とも読めてしまいました。そしてさらに、「異常」が起こる前と「異常」が起こった後が、正常に接続していく「異常」なリアリティにも揺さぶられてしまいました。すごい小説だと思います。この感覚は微かなデジャビュ感があり、考えてみたのですが、子供の頃、鉄腕アトムが最初にデビューした手塚治虫の作品「アトム大使」に思い至りました。これってネタバレにならないよね?たぶんSFってジャンルになるのかもしれない作品ですが、そんなジャンル分けしたくなくなる小説でした。
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面白かった。異常事態に直面し、それにどの様に対処するのか、また、周囲はどう反応するのか、いくつかのパターンを描いていく。
面白かったんだけど、一気読みとは行かず、休み休みで読破。なぜだろう…
ラストは文中でも語られる理論が実行されたってことですかね?
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SF小説でありながら奥深い心理的な要素を含んでいて、なおかつとてもエキサイティングだった。
第一部には、年齢、性別、職業、階級、社会・文化的背景などを異にする多様な、けれどもある意味代表的な人物が登場し、それぞれの生活の様子を紡ぐ。
第二部では、飛行機で起こる異常が明らかになり、それに対応する政府の狂騒。
第三部では、異常に巻き込まれた一人一人の選択。
自分が、その一人になった時どうするのか?
重複者〈ダブル〉を目の前にした時、何が言えるのか?
考えてみただけでも恐怖だ。
この中に、「パンドラの箱のなかにとどまった悪は、希望だ。」とあった。
もっとも始末の悪いもの。
希望が、わたしたちに行動を起こすことを禁じ、希望が、人間の不幸をも長引かせる。
なんとかなるさ=あらざるべきこと、起こり得ずの論法に頼るかもしれないと思った。
そして、その状況にあらがうことなく折り合いをつけていくのかもしれない。
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登場人物が多いので本についているリストが役に立った.とはいえ登場人物はそれぞれが,際立った背景で描かれているので,リストさえあれば困らない.話は急展開してゆくので,推理小説として一気によむと良い本だと思う.ベストセラーであることが納得できる,面白さ.
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この世界では何が正常で何が異常なのか
すでに異常事態は日常に氾濫している
異常と理解しつつ異常事態はいつしか日常に紛れていく
それこそ「異常」
わたしが正しいと思えば正しいのか
そうだな
たとえ間違っていても「わたし」が正しいと思っているなら正しいのだろう
だってわたしは「わたし」に異を唱えない
なのに
とんでもない作品だ
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2020年に刊行され、ゴンクール賞(フランスの文学賞)を受賞した作品の日本語版。
三部構成で、第一部ではパリからニューヨークへ向かうエールフランス006便に搭乗していたことを除き、まったく共通項のない人達の姿が描かれる。第二部では、アメリカ政府がこの“異常”事態の収拾にあたり、第三部ではその後が描かれる。
とにかく驚愕のアイデア、構成で、こんな本はこれまで読んだことがない。多数の登場人物の日常に付き合わされる第一部に辟易するかもしれないが、続く第二部、第三部で収斂するので報われるはずだ。大興奮の1冊。
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極上のエンタメ小説でもあり、ブラックユーモアもありシニカルで哲学的なテーマも含んでいるし、サブカル要素も盛られている。もっとドタバタっぽく偽悪的な感じになれば筒井康隆の作品のようでもある風刺の効いたSF作品。フランスだからこういうのをエスプリというんでしょうね。これには、実はケース「0」が既にあって、ラストでまさかの…というアイデアが非凡。