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投稿者:なみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
無戸籍児、児童虐待、ネグレクト、貧困、技能実習生や非正規雇用の労働環境など、重いテーマを盛り込んで、殺人事件と共に、ブルーの人生を追っていく。なんだか、圧倒された。
奥貫刑事の抱える闇や、たくさんの社会問題で暗くなりがちだが、そこまで重苦しくはなかった。ブルーに爽やかさを感じるせい? 司の、すっきりした雰囲気のおかげ? 最後に、希望が見えたからかな。
平成時代の音楽や文化、世相によって、平成時代がのしかかってくるようだった。
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葉真中顕『Blue』光文社文庫。
社会派ミステリー小説。葉真中顕の文庫化された作品は全て読んでいるが、これまでのところハズレが無いので期待が高いのだが……
そこそこ面白いのだが、ストーリーの継ぎ接ぎ感が強い。ストーリーの芯になるものが見えて来ないのだ。
平成という時代の記憶を振り返りながら、平成15年と平成31年に起きた2つの殺人事件を中心に物語は展開する。腐敗し切った平成という時代の実像と儚げな夢。
平成15年に起きた青梅一家殺害事件。最重要容疑者とされる引きこもりの次女の篠原夏希は薬物の過剰摂取により浴室で死亡していた。事件を捜査していた刑事の藤崎文吾は犯人とされる夏希が産んだブルーと呼ばれる無戸籍児の存在を知る。後一歩で事件の真相と真犯人に辿り着くというところで警察は捜査を終了させ、事件は迷宮入りする。藤崎は離婚を機に警察を退職し、独自捜査を行う。
時は流れ、平成31年4月、桜ヶ丘署に復帰したばかりの刑事の奥貫綾乃は多摩ニュータウン男女二人殺害事件の捜査に加わることになった。団地の空き部屋で発見された身元不明の男女の腐乱死体。奇しくも綾乃がコンビを組んだのは藤崎の娘の司だった……
2つの殺人事件の間にあるものは……
日本が高度経済成長を遂げ、国民が豊かな暮らしを享受した昭和。平成という時代にに入り、バブルがはじけると様々な社会問題が噴出していく。相継ぐ企業の破綻、親による子供への虐待、育児放棄、無戸籍児、引きこもり、ドラッグ、援助交際、非正規雇用の拡大による貧富の格差、安価な労働力確保のための外国人実習生の受け入れ、外国人差別、犯罪の凶悪化などなど。そして、社会問題が噴出し、疲弊した日本に追い討ちをかけるように起きた東日本大震災。
諸行無常……
令和。新型コロナウイルス感染症が猛威を奮い、我々の健康と命が危機にさらされている。恐らくはこの感染症が収まっても、以前のような平穏な日々は戻って来ないだろう。貧富の格差はさらに広がり、社会保障への我々の経済負担は増すばかりになるだろう。
本体価格920円
★★★★
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見方によってはとてつもなく醜悪で救いのない話なのに、それでも、それゆえに惹きつけられる。
何よりラストに待つ闇の中の米粒ほどの光。
それは逃避によってもたらされたものかもしれないけれど、そこに人間の本質的な部分を信じる何かがあるようで、醜悪さとのギャップでより美しくも感じました。
葉真中作品には時にハッとさせられるような美しかったり、力強く感じる部分と、社会の闇という残酷さや醜悪さが両立しているから、忘れがたい作品になるのかもしれません。
舞台となる時代は平成の31年間。時代を超えて犯された二つの犯罪が、ある一人の人間の壮絶な人生を浮かび上がらせます。
当時の世相やブーム、実際の事件を交えながら犯人だけでなく、刑事や証言者たちの生い立ちからも平成という時代が生んだ様々なひずみが描かれます。
たとえば経済格差や搾取、不景気、家族の解体、個人化、児童虐待といったものが、物語の節々で軋みを生み進んでいく前半部は、まさに今の時代の閉塞感は前時代から地続きとなって表面化してきたものだと実感させられます。
刑事の執念の捜査によって徐々に浮かび上がる、一家惨殺事件の真相。そこに立ちふさがるのも社会の闇と組織の論理。そして物語は後半部、改元間近の平成31年へと移り……
読み終えたときは平成という時代の闇やひずみが瞬く間に、自分の脳内を駆け巡っていった気がしました。
平成の裏面を親から何も与えられず、社会からも見つけてもらえず、それでも駆け抜けた“ブルー”。警察の捜査が進むごとに彼の壮絶な人生がしのばれ、自然と感情移入してしまい先へ先へと読み進めなければいけない、という感覚に陥っていました。
彼を刑事たちと追うことが、そのまま時代の裏面を駆けることとイコールだったのかもしれません。
そしてブルーだけでなく、彼を追う刑事たちも、囲う人物たちもみな時代の闇に翻弄されたり、愛すべき家族という神話にとらわれていたりと、それぞれに何かを背負っていて、その人間ドラマや葛藤も非常に読み応えがありました。
単に犯罪捜査のミステリでもなく、時代や社会を断罪するだけでもなく、こうした個人の物語にもフォーカスするからこそ、この作品はより心に残ったのだと思います。
家族とは? 罪とは? 救いとは? 正義とは? 罪を憎んで人を憎まずというならば、この事件の場合何を憎むのが正解なのか?
ミステリらしい仕掛けも用意し、一方でこうした問いが読後心に沈殿する。いい意味で尾を引く社会派ミステリ。
平成という時代の軋み。それは今なお残り、なお一層不気味に音を立て続けている気がします。その音にかき消された人々の叫びを大小問わずすくい上げ、小説に昇華した迫力満点の力作です。
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時代とその時の社会問題が合っていたので読みやすかった。
その社会問題の中生きる者の話なので途中で何度か切なくなった。
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平成という時代を一気に駆け抜けた感じで、まさに平成史。平成を象徴する出来事や固有名詞がたくさん出てきて、ドンピシャ世代にはたまらない懐かしさ。
そしてこの時代によく耳にするようになった、児童虐待や貧困、無国籍児など様々な社会問題をテーマとした社会派ミステリー。
葉真中氏の書く社会派ミステリーは大好きなので、かなり期待して自分でハードルを上げすぎてしまった。もちろん飽きることなくすらすら読み進めることができてとても面白かった。しかし「ロストケア」や「絶叫」を読了した時のような満足感は、今回は得られなかった。あの2作品が個人的にはあまりにも面白くてツボだったので、まあ仕方ないのかもしれない。
それでも葉真中氏の書く社会派ミステリーは大好き。
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初めてこの作者の本を読んだが、社会的な課題がテーマで面白い!
子供時代に、当たり前に与えられるべき愛情、環境、そもそも存在しているという証明、それが無い人がいる問題。
最近、児童養護施設卒業後のフォローが強化されているニュースを見たが、もっと幼い頃に、人の暖かさを感じながら育つことを支援する必要があるのだろうと感じた。
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平成史30年と共に今作の主人公・ブルーの歩んだ足跡を辿る社会派ミステリー作品。過去作の「コクーン」同様、社会問題を随所に盛り込んだ群像劇というフォーマットの弊害なのか、全体的を通じて奥行きに欠けており、他者視点を介したブルーの人物像も立体的とは言い難い。女性警察官ペアによる最後の一幕も些か唐突感が拭えなかったのが正直なところ。ロスジェネ世代の著者による問題提起もリーダビリティの高さも魅力的だが、デビュー二作品のインパクトが強過ぎた所為か、このシリーズにおいては作品を追う毎に作風が小粒になっている気がする。
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★4.5
絶叫に続き葉真中さんの著書2冊目です。
おもしろかった。
ただ、何日かかけて読んでいたため「これは誰だっけ?」「どう繋がってたんだっけ?」と自分の記憶力の乏しさに悲しくなりました(;_;)
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平成の社会問題振り返り小説
当時を振り返る際に時事ネタや音楽が入りすぎてた嫌いがあるものの、長い割にはサクッと読めました。
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Blueの生い立ち、人生の経緯を通して「平成」という時代を描き出した超力作。素晴らしい。貧困、虐待、格差、外国人技能実習生、などのテーマを様々に交差させ、きれいごとだけではない日本の陰に生きる人々に寄り添った作品。陰惨で悲惨なエピソードが続いて気が滅入るけれど、時折に彼らを繋ぐ静謐な湖のイメージがそれを中和する。
糾弾というよりは提起の物語。
憎しみというよりは悲しみの物語。
語り部が明らかになった時の納得感が少し足りないように感じてしまったことだけが残念でした。
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文庫本になったので再読。平成の30年間を振り返りつつ、様々な社会問題を取り上げる。殺人の罪は決して許されるものではないが、悲しい小説だった。
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平成が始まる日に生まれ、平成が終わる日に死んだ男の子の話。戸籍もなく、親に愛されず、人を殺し、人を救う。そして、自分を殺すことで、自分を救う。
ブルーは主人公の名前でもあり、ヴェトナムにある湖を指している。
壮絶に面白い。
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購入済み。
2023.03.21.読了。WBC決勝進出!
葉真中さんは、文章が上手いなぁ。すごく惹きつけるし飽きさせない。これからも読み続けたい作家のひとりだ。
子供は誰も悪いことなんかしやしない。
世の中に叩かれるべき子供なんて1人もいないのだ。大人が親が、躾という言い訳をつけて子供に暴力(言葉の暴力も)を振るっているだけ。
子供が何か悪いことをしたのなら、それは周りの大人たちの責任だ。叩かれるべきは大人。子供ではない。いつも。
虐待されても暴言を吐かれても、叩かれても叩かれても、ただただ、大人たちの愛情を求める子供達。切ない。
もっと切ないのは、虐待をうけた子供達が親になった時、また同じ間違いを犯してしまうことだ。負の連鎖。なんとか食い止めなければ。
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ロストケアが原作も映画も嗚咽が止まらなかったので、葉真中先生の最新作を手に取らせて頂きました。
私たちが『平成』という30年間を、何を知らずに生きてきたのか、またもやガツンッとたたき起こされ、嗚咽の繰り返しでした。
こちらもいずれ、令和時が進み、『平成』ってどんな時代だっけ?という時に、菅田将暉さんか、窪田正孝さん、あたりにBlueを演じて頂き、映画化してほしいですね。
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半年前くらいに読み終わってめっちゃ好きな作品なのになんで感想書いてなかったんだろう笑
貧困、虐待、無戸籍児、外国人の労働力搾取など個人的にすごく興味のある問題が扱われている。
葉真中さんの作品は重くて読んでいて辛くなるけど、すごく心に残る!
平成に生きた少年の話なので、その頃起きた事件や流行っていたエンタメが出てきて、まるでノンフィクションのような感じ。
この小説自体はフィクションだけど、こういうことって今もどこかで起きているんだろうなぁ