読書メーター OF THE YEAR 2022
2023/01/18 08:11
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投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
「読書メーター OF THE YEAR 2022」の一冊。登場人物たちが(著者もですが)私と同じ1972年生まれという親しみと、高校の同級生×天文台というドラマ「白線流し」に通じる世界観とで、心に沁みる物語でした。「流星群」のような一瞬の輝きを感じる時間を持てるように、前向きに心豊かに歩みたいという気持ちで読み終えました。
蒼い空と青い鳥に想いを馳せる
2022/02/28 07:25
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
青春のきらめきは、幸せが何かわからず、とにかく前へ進もう、何かをしようとする力強くも脆い心を振舞わす心の姿勢にあった気がする。そして理不尽なままならない人生に疲れてしまう中年期には、青春は懐かしくありうらやましくあり、そしてかえって未来への不安を掻き立てるのかもしれない。この物語は、はるかかなた太陽系の果てに目を向けて、施設天文台を造ろうとする仲間たちの、心を幸せへと向かわせる。オオルリの青さと星空の蒼さの対比が浮かびがるようだ。行き詰った日常を乗り越える力になると思う。
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3冊目の伊与原さん。『八月の銀の雪』も『月まで三キロ』もとても良かったので、初めて読む伊与原さんの長編に期待大でした。
家業の薬屋を継いだ45歳の種村久志は高校3年生の夏、文化祭のために空き缶を集めて巨大なタペストリーを作った。その時の主要メンバーだったスイ子こと彗子が、地元に戻って来ているという噂を耳にする。久志の同級生である修と千佳と…彗子が太陽系の果てを観測するために手作りで天文台を建てるというのを手伝うことに。
4月から10月までの半年間を、久志と千佳の二人の視点から交互に描いています。45歳という屈託多き年齢…実はみんな、それぞれに何かしらか抱えているんですが、それぞれの思いや28年前の真相が、徐々に明らかになっていきます。
今作は私も結構好きな天文がテーマ。太陽系の果てにあるというエッジワース・カイパーベルトや星食、流星と電波の関係などなど、とても興味深かったです。
ままならない人生、劇的な奇跡は起きないけれど、それぞれが踏み出した小さな一歩に希望が感じられます。大切な仲間と過ごしたひと夏の大人の青春…ラストは胸がいっぱいになりました。
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再生の物語。自分はゴリゴリの文系だけど伊与原新の作品は好きだな。梅ちゃんがかけた松任谷由実のジャコビニ彗星の日を30年ぶりくらいに聴いた。
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高校時代の仲間が28年の時を経て、また天体観測所を一緒に作ることに。
それぞれ何かしらの問題を抱えているのだけど、完成する頃には気持ちの変化が生まれている。
自分の夢、希望がはっきりせずにやりたいことがわからなくても、一歩を踏み出すことで見えてくるものがあるのかも。
それが仲間と一緒ならなおさら。
伊予原さんならではの宇宙の描写も素敵!
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生きていればいくらでもリカバリできるものがあるのに若すぎてまだキャパがないから、その時には手に負えない問題にぶち当たって絶望してしまった恵介と反対に梅ちゃんみたいに引きこもりになってもまだやれることがあるっていうのが、生きろっていうメッセージとして強く伝わってきた。個人的に彼らと同じような経験をしたからなおさら。
あと電気が消えていく様子、「七月七日、晴れ」のオマージュなのかななんて思った。
文庫化されるときにはちょっとした書下ろしつけて欲しい。広瀬夫人がオオルリ見てみんなに感謝の言葉を初めて述べるとか、梅ちゃんが社会に復帰するまではまだ行かなくても天文台に来るくらいの一歩を踏み出すとか。
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高3の夏、文化祭に向けて仲間たちと作った巨大な空き缶オオルリタペストリー。あの時の6人の、28年後。
45歳になった今、自分たちはまだいまだに見えないものを見ようとしてもがいている。
あの時、起こっていたこと、思っていたこと、知らなかったこと、見えなかったこと。それは28年という時間の中でずっと心のどこかにくすぶっていて。でもそれを一人で直視することはできずにいる。そんな一人一人の心の動きが手に取るようで。お前にもあるだろう、と問われているようで。
あの時見上げていた星。それを目指して歩いていた時間。ふと気づくとその光は見えなくなってしまっていた。無くなってしまったのか、消えてしまったのか。
「星食」という言葉を初めて知った。見えないからってそこにないわけじゃない。今、ほんの少し今だけ他の星の影に隠れているのかもしれない。その見えない光を見るために、あの時、見失った光を探すために、45歳の青春がはじける。思い出を共有することはできない。それでもその思い出が始まったところからもう一度今を見つめることはできる。ラストシーン、見えない光が見えた。目を閉じて聞く光が見えた。
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神奈川県秦野市。祖父から受け継がれている薬局で働く久志は、ある時友人から、高校の同級生・彗子が秦野の不動産を訪ねてきたという目撃情報を聴く。彗子とは高校の文化祭で、彗子を含め六人で大きな作品を作った縁がある。彗子は、その後東京の大学へ進学し、それ以降は音信不通だった。
45歳になった今、なぜ彗子は戻ってきたのか?久しぶりに会って聞いてみると、小さな天文台を建てたいということだった。資金がそんなにないため、久志を含め、昔の同級生が結集し、天文台を建てようと奔走する。そこで昔の知らなかった記憶がわかってくる。
伊与原さんは地球惑星科学を専攻していたこともあり、空や星といった知識を散りばめながら、幻想的な小説を手がけている印象がありますが、今回は星です。星や惑星に関する知識が多く紹介されていて、その描写は幻想的で、ついつい目で見たくなるなと思わせてくれます。
ちなみに題名の「オオルリ」は鳥の名前ですが、重要なキーワードとなっています。
高校の同級生達が結集して、天文台を作っていく姿に、年齢が変わろうとも青春だなと感じさせてくれました。
時折、童心に帰る若者を見ているかのようなハツラツさや無邪気な姿にいつの時代も変わらないなと思わせてくれました。
物語の舞台は神奈川県秦野市。都心から約1時間ながらも、自然に囲まれた場所です。
28年という長い期間は、色んな変化をもたらしています。文化祭に携わった六人は現在、弁護士を目指したり、引きこもりになったり、亡くなったりと様々です。
天文台を建てることがメインの話ですが、その他に要となるのが、高校生の知られざる過去です。
六人で作ろうとした作品ですが、突如一人脱退しています。なぜ携われなくなったのか?その事実もわからないまま、その人は亡くなります。その重要な鍵を握るのが彗子です。
彗子がどのような人生を歩んできたのか?なぜ天文台を建てるのか?明らかになっていくのですが、切ないの一言に尽きました。
謎の方は切ないのですが、天文台の方は青春を感じさせてくれます。久志と彗子が、天文台を建てるために土地や部品を探すために奔走です。
偶然すぎるでしょうとツッコミたくなるくらい、あらゆる偶然が重なって、完成していきますが、頑張っている姿に勇気をくれました。
なかなか45歳というと、大きな目標を立てなくてもいいかなと思ってしまうかもしれませんが、年齢なんて関係ないと思わせるような大きなプロジェクトに励む姿は羨ましもありました。特に引きこもりだった人が、プロジェクトに携わっていく姿は、ジーンときてしまいました。
仲間って良いなとしみじみ思いました。
明確な目標があれば、実現できるかもしれない。日常生活では、色々な不満は多くありますが、いつまでも挑戦し続ける姿に頑張ってみようと思いました。
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こちら清々しくて、切なくて、感動しました。
「28年ぶりに元同級生が集まって山の上に天文台を作る」
もうその設定だけでワクワクが止まらない。
大人になってからの「青春」をもう一度体験出来る1冊。
45歳になった同級生たちと再会し今の自分を見つめ、高校時代のひと夏に思いを馳せるーー。
『みんな、同じだ。こんなはずではなかった。なんでこうなってしまったのか。ときにそんなため息をつきながら、四十五歳を懸命に生きている。十八歳のときに思い描いていた人生とは、まるで違う日々を』
私も高校生の頃は、今の自分なんて想像すらできなかった。登場人物たちと自分とを重ねながら読んで、こんなふうに集まれる彗子たちが羨ましくなった。
再会後、そこからまた1つの目的に向かってみんなで力を合わせられるのが本当にすごい。
思い出がつなぐ絆は時間を飛び越える。
天文台開きの夜は感動で胸がいっぱいになりました♪
行き詰まった日常から一歩を踏み出す大人たち。
温かな希望を感じられる素敵な作品でした。
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星3.5~4くらいを付けたい。
主要登場人物はみんな大人。
その大人達が、学生の頃のやり残した思いを形にしていく。後悔だったり、素敵な思い出だったり、を思い出しながら、それぞれの今の現実とも向き合いながら、みんなで1つのことに取り組んでいく。
イメージは大人の部活かな。
学生の頃から長年経ってから、同じ思い出を共有した人達が集まれるって素敵な事だと思う。
ノンフィクションぽいリアルさがある。
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'72年生まれで理系な伊予原さんが描く世界は、懐かしい感じのキーワードが多くあって、世代的に刺さる。本作の中でも活躍するミニFMとかエアチェックとかもそう。また、'70~80年代のJ-POPがこれまた刺さりまくり。ター坊の「都会」とか、フツー出てこないので、これはもしかしたら伊予原さんはファンなのか、、、。
そして、最後に出てきたユーミンの「ジャコビニ彗星の日」。これは知らなかったなあ~。思わず、Youtubeで聴いてしまいました。
梅ちゃんがどういう風に関与するのか最後までワクワクさせるいいお話でした。
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"天文学"という言葉を久しぶりに目にしました。
最近は"宇宙"物理学のような名称を使用することが多く、調べてみたところ"天文学科"があるのは東大だけみたいです。
つまり、東大の天文学科でやっていることが天文学ということになるんですね。
夜空を眺める話題の中にしばしば出てくる"天の川"という存在。
子供の頃は東京(中野区)でも"天の川"は見えたし、星座の本を見ながら星座も見つけられました。
北斗七星を探してから、北極星をみつけていた頃が懐かしく思い出されます。
今は都心では1等星がやっと見えるくらいの感じなので星を眺めることも少なくなりました。
星に魅せられて"天文学者"になりたい!と思う子供は随分減っているのでしょうね。
本書は、太陽系の起源の解明につながる冥王星のような純惑星と呼ばれる小天体を見つけるための個人の観測所を作る物語です。
「エッジワース・カイパーベルト」と呼ばれる小天体や塵の集団の観測が進んでいることは知りませんでした。
伊与原新さんの作品は、このような話題を提供してくれるので好きです。
冥王星は1930年に見つかって、2006年に惑星から外されました。
ホルストの"惑星"が作曲されたのは1916年だから冥王星はなくて当然なのですね。
天体と関係ない話題で魚の解剖を行うシーンが出てきました。
「胃の内容物を、生物とプラスチックごみに分けて並べてみましょう」
実際にこんな授業をしている学校はないと思いますが、
魚の生息域にどんなごみが漂っているかが分かる、という環境教育に使っているんだと思いました。
他の科学の話題では、オオルリの巣作り、アマチュア無線に触れられていました。
物語としては45歳になった高校時代の同級生が地元で再会して、皆で天体観測所を作る話なのですが、45歳というのが絶妙な年齢だと感じます。
45歳までの人生と、45歳以降の人生というような一つの分岐点になるような年齢だと言えます。
このまま50歳、60歳と今の仕事を続けていけるのかという不安と、新しいことにチャレンジするには失敗の許されない年齢でもあるし、何より現状維持で精一杯だったりする。
現代の働き方について考えさせられるような話でもありました。
ユーミンの「ジャコビニ彗星の日」を聞き直しましたが、まさに本書のテーマソングとしてふさわしい曲ですね♪
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「ここで始めたかったんだよ。もう一度(P69)」
神奈川県の秦野市が舞台で、秦野に戻ってきたスイ子は、高校時代の同級生が28年ぶりに再会し、かつての仲間と共に手作りの天文台を作ることに。主要登場人物が全員45歳ということで、夢破れて地元に帰ってきたものもいれば、地元に残って事業を続けているものもおり、それぞれが悩みを抱えているが、仲間で協力して天文台を作っていくことでそれぞれが人生の大切なコトに気付いていく… 45歳が読み進めて行くと全員18歳に見えてくる不思議、30年前くらいのヒット曲もいろいろ出てくるので、45歳前後(ロストゼネレーション世代)の人には絶対刺さると思う。
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人物も天体も生物もみんな魅力的な一冊。
それぞれの事情があり、それぞれの向き合い方がある。
特別じゃなくてそれが当たり前。
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伊与原さんの新作は、夢をあきらめない中年男女を描いた群像劇だった。
高校3年の文化祭で、オオルリの“空き缶タペストリー”を共に作り上げた仲間たちが再会し、丹沢の山頂に私設天文台を作ることになる。45歳となった彼らは、それぞれの置かれた環境に不満や物足りなさを感じていて、27年振りの共同作業に嬉々として汗を流す……。
いやあ、いいなあ。もう大満足の1冊。45歳定年制もなるほどと思えたし、カイパーベルトの話もエキサイティングだった。笑って泣けて熱くなれた。