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みんなのレビュー71件

みんなの評価4.2

評価内訳

69 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

軟弱モノよ、これを読め!半世紀も前に女性はかくも強く生きた。

2010/05/25 18:28

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る

昭和32年初版・・・私が生まれる20余年も前に書かれた作品である。
戦前戦後の文章というのはどうしても硬い感じがするし話し言葉にも文語体が抜けきれず、なんとも不自然さがつきまとうもので、あの時代の文章になれていない私なんぞにはなかなか馴染めないものだ。
しかしどうだろう、この生き生きとした女性たちの生き様の描かれようは!

いまから半世紀も前の現実・・・しかも没落しつつある花柳界という、現代人にまるで縁のない世界が舞台になっているにも拘らず、なぜかするりとこの世界に馴染んでしまう。
その理由のひとつは、頻繁にみられる擬音語、擬態語の数々による面白さにある。
これは「あとがき」などにも詳しく解説されているので今更言うこともないだろう。
むしろ私が興味深く感じたのは、「しろうと」である一人の女・梨花の目を通すことによって「くろうと」の世界を描いているということだ。
梨花にとっても読者である私たちにとっても、芸者置屋の彼女たちの生活も世界も人間関係もすべてが未知の世界である。「どしろうと」である梨花が「くろうと」の世界に入りこみ、様々な体験を見聞きし、驚愕したり感心したり、時には負けじとこきおろしたりする。心のうちで。

なにより勝ち気で負けず嫌いな梨花の洞察力と吸収力は読んでいて気持ちがよい。
まず本書は梨花が芸者置屋に住み込みで女中をすることから始まる。
彼女の目や耳がそのまま私たちの目と耳になる。
しかも 花柳界の人間関係、社会、芸者たちの日常生活を、鋭い観察眼と肝の座った「しろうと」視点で感情のこもったコメントまでつけて実況中継をしてくれるのだ。
なんとも臨場感あふれる面白さである。

すこしだけ梨花のコメントを書き出そう。

「そういう美しさはさすがに花街である。しろうとの街にはないものである」
こう褒めちぎったかと思うとすぐそのあとに
「しかしこれでいくらするのだろう。安くないにきまっている。 こんなことぐらいは自分にだってできる」と値踏みし、玄人の美しさ、つまり「上等な物」を素人の平凡な物に置き換えすらしてしまう。
玄人に憧れへ平伏するでも染まるでもなく、しっかり素人生まれの立ち位置をわきまえた上であちらの世界を吸収しているのだ。なんとたくましいことか。

そして彼女は、花柳界を「豊富で狭くておもしろい」と、逆に今までの世界を「広すぎて不安」であると感じている。
逆転の発想とはこういうことを言うのだろうか。
いつの時代も180度違う観点から観ることが出来る、しかもそれを自然とやってのける人間が「ただものじゃない」と一目置かれるのかもしれない。だから、やはり梨花も女中たちからなにかにつけ目を付けられる。よい意味でも悪い意味でも。

橋の上げ下げ一つにも新しい発見をし、負けじと生き抜く力強さ。
軟弱な現代人に喝!の一冊である。

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紙の本

媚びずに、生きる女。

2003/04/04 12:52

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 舞台は東京・柳橋、斜陽がかった芸者の置屋。そこで女中として働くことになったワケありの素人の中年女性が足を踏み入れることから小説は始まる。彼女の目を通して、柳橋界隈や花柳界の暮らしぶりやしきたりなどが実に克明に綴られる。たとえば、この町は家族ではなく、単身者の寄り会い所帯ゆえに、八百屋も魚屋も惣菜屋も一個からばら売りしてくれる、お歳暮の贈答品は、「もとの店へ持って行って」「同値で何かほかのもの」と取り替える、など。

 また、主人公の素性を見抜く置屋の女主人公や道楽者で粋がる亭主、老妓、売れっ子芸妓、怠け者の女中仲間、彼女を引き抜こうとする他所の女将、出入りする客など登場人物もそれぞれにいきいきとしていて、しがらみ具合が興味深く描かれていて、瞬く間に、吸い込まれてしまった。いみじくも高橋義孝が解説が「カメラアイ」と表現しているが、その洞察力の鋭い巧みな文章には、恐れ入谷の鬼子母神だ。

 本作は、作者が52歳に発表したもので、この小説により名実ともに作家と認められたエポックメーキング的作品である。

 鉄瓶、行李、林檎箱、経木、塵芥箱、オート三輪、お櫃、長火鉢…。今となっては過去の遺物が、道具として大切に使われている様(さま)は、郷愁というよりも、羨ましさや、まっとうさを感じてしまう。あと、お摘みやコロッケ、五目蕎麦など食べ物の描写がほんとに旨そうで、旨そうで。

 もう喪くなってしまった世界や未知の世界、知っているのに知らなかった世界などを垣間見せてくれるのが、小説を読む醍醐味であるとするならば、本作は、紛れもなく一級品であると言っても構わないだろう。ま、今さらながらなのだが。

 「流れる」のは「堕ちる」のではない。氏素性の知られぬ未知の土地で働く、それはいわばリセットである。夫や子どもに先立たれた彼女は、人生の折り返し地点で再スタートしようと、狭い社会の中で懸命に世渡りをしていこうと智慧を働かす。理不尽なお使いの対処や、手早くすませる掃除の仕方、如才ない会話など、その才気煥発ぶりや一本芯の通った潔さに対して、ついつい頑張れと言いたくなる。そんなことが不要なことは分かっているのだが。

 大晦日前後に風邪を引いて、当てにしていた餅代を手にしたら、意外に多くて、その金でなんとか正月の間、従妹の家に厄介になり、心身ともに休ませることできた件(くだり)は、泣かせます。なぜか、子どもの頃に読んだ『家なき娘』を思い出してしまった。

 ぼくの住まいは細い路地奥にあり、近所は高齢者が多い。昼下がり、仕事をしていると、三味線の音色が聞こえてくる。たぶん、その人だと思うのだが、足腰は若干おぼつかないが、ぼくより矍鑠(かくしゃく)としていて、立ち居振舞いがどことなく玄人風なのだ。
 若い自分はさぞかし別嬪だったと思われる艶っぽさを、目鼻立ちがはっきりとした容貌に留めている。当然、チャキチャキの東京弁を話される。本作に、素人は、玄人の世界に抵抗なく入れるが、玄人が素人の世界に入るのはなかなか大変だなどという箇所が出てくる。そうかもしれない。

 時折、明らかに、主人公に作者の意見を代弁させていると思われるところがあり、それはそれで辛口な小言幸兵衛−女性だから、幸子か−なのだが、心地良い。結末のめでたさも読む者に、カタルシスを与える。

 言葉で緻密に構築された、昭和20年代後期の東京の色街模様を、ぞんぶんに堪能することができた。この渋い小説−でも、全然古びていない−は、若い人よりも、三十代、四十代の人の方が、たぶん、しっくりくるだろう。日本文学、なめてました。

 かくなる上は、名作の誉れ高い、成瀬巳喜男監督の映画版『流れる』をなんとか見てみたいものだ。

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紙の本

年の瀬は幸田文を読みましょう。

2003/12/31 03:34

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:mikegame - この投稿者のレビュー一覧を見る

師走のぴんと張り詰めた清涼な空気、ざわついた街の足音、大掃除やおせち料理の準備やなんやかや。あれ?何か忘れていませんか? そう、幸田文です。クイーン・オブ年の瀬です。というわけで幸田文の大傑作『流れる』です。

ストーリーは、芸者置屋の家にスーパー家政婦さん、梨花さんがやってきていろいろな用事を片づけていく。芸者の間にある様々な思惑。垣間見える懐事情。ほったらかしの犬猫に、ゆすりたかりに、税金の滞納。芸者という「くろうと」の特殊な世界はすでに失われて久しいわけですが、僕はこの小説、極めて現代的なテーマだと思うんですね。身のまわりがおろそかになりがちな芸者さんの日常、というのはそのまま現代人の姿に重なるのではないかと。梨花さんの活躍で最後にはちょっとだけ明るい方向へ進むのですが、活躍、といってもトラブルを解決するわけではなくて、日々の生活の節々に「息」を通わせていく、ただそれだけのことです。メリハリ、実感、ぴんしゃんとした何か。

文体についてもちょっとだけ。「ま、きたないのなんの、これが芸者家の玄関か!」これが地の文体です。「!」ですもの、生き生きしてるでしょ? だからてっきり作者の実体験だと思うんですが、実は読んでいくと「梨花は」が主語の三人称だとわかってびっくりする。梨花さんはほとんど作者そのものと言っていいでしょうが、たまに突き放して見ている時もあって、この未分化で不安定な文体も、また魅力です。

12月は、いつになく生活の端々を意識する月です。だからこそ、幸田文をおすすめします。旬の小説を旬の時期にどうぞ。もちろん、次の師走に備えていまのうちに用意しておくのも、手かも知れませんよ。

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紙の本

ただただ読み進む

2001/03/02 09:48

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ミオメロディ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 著者の分身のように感ぜられる主人公、梨花の感ずるままに綴られたような風で、その文体のユニークさをよく評されている作品だが、決して愉快な作品でもスリリングな作品でもないのに、ただただ読み進んでしまう。で、どんどんその世界にはまっていくのだ。本当に不思議な味わいのある作品だと思う。

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紙の本

幸田文氏はお嬢さんではなくて

2023/02/02 10:35

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

幸田氏の文体には繊細な感性と観察眼、そして歯切れの良さがある、その素晴らしさが芸者置屋に住み込み女中として働く女、梨花を主人公としたこの作品に惜しみもなく表現されている、江戸前芸者の気風の良さをなぜ幸田露伴の娘である作者がさらりと表現できるのかが不思議だったので調べてみると、1950年に断筆宣言して翌年柳橋の芸者置屋に住み込み女中として2か月ほど働いていたいう事実に驚かされる。詳しい事情はよくわからないがそういう経歴があったのか。戦前の芸者を題材にした作品は多数あるが、芸者という職業が成り立つのが難しくなってきた戦後の芸者置屋を舞台にしているという珍しさ、その稼業を「しろうと」の目を通して見事に見せてれたことに感謝

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紙の本

「流れる」ように自発的に人生を「生きる」ことの難しさ

2021/12/03 08:51

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:永遠のチャレンジャー - この投稿者のレビュー一覧を見る

花街置屋の浮き沈みある人間模様を描いた本書から、作者が紆余曲折あって子連れで親許に帰り、自活の為に置屋で実際に女中奉公を体験した文豪幸田露伴の娘だと知り、二度ビックリした。

醒めた眼を観察に向ける梨花と同じ体験が幸田 文という作家の出発点で、飼い犬の「飯碗と排泄物」にまみれた置屋玄関の三和土(たたき)の余りに汚い描写に、女中勤めに励む梨花と作者自身の「訳あり人生」が見出せるのも驚きだった。

ちなみに、女中梨花を田中絹代、左前の置屋主人を山田五十鈴、その一人娘を高峰秀子、芸妓たちを杉村春子、岡田茉莉子、先輩の料亭女将を松竹蒲田往年の大看板女優栗島すみ子が競演(共演)した成瀬己喜男監督の映像化作品も良かった。

小説冒頭から昭和の生活臭が紛紛と漂う。梨花が気に掛けた犬は病気で死に、「(前略)ひきずる鎖の音が忘れられない。死ぬまで何のために繋がれていたいのちなのだろう」と自問する。今日なら飼い主は動物虐待で指弾されようが、六十余年も前の昔は愛護法も飼育マナーも発展途上の彼方にあった。

臭いの記憶は、幼少時に昭和三十年代の末を知る私にも鮮明に残っている。例えば、汲み取りを終えたバキュームカー、天井からぶら下る蠅取り紙、木箱に溢れる町内ごみ、元傷痍軍人が発する膏薬、衣服に染みたナフタリンなど、物心ついた頃の昭和は悪臭と貧しさの中だ。

やがて冷蔵庫、カラーTV、クーラーの登場と五輪や万博の開催で、時代の移り変わりと豊かさが実感できるようになる。本書は、貧しさを引き摺りつつも最早戦後ではない時代に、芸者衆が身を寄せる「くろうと」世界を「しろうと」目線で覗き見し、花柳界の住人の実態を暴く。

姪失踪の因縁話を持ち出し置屋主人をゆする石工との二度目の対決で本題に触れず世間話でとぼける女主人の対応に「妓の最高技術を尽くして」「はっきりと座敷を勤めている」と感心するも、「親爺の貧乏」の年季が勝る結果に妙に得心がゆく梨花。

「流される」生き方や、敢えて「流れに掉さす」生き方もある。流れに身を任す術しか知らぬ芸妓たちの、なんと太々しく逞しいことか。高きから低きへと自然の摂理で「流れる」川の水の如く、人間は自発的に人生を「流れる」ように「生きる」ことができれば、それに越したことはないのだが…実に至難の道だ。

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2006/07/21 11:57

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2007/10/09 01:01

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2008/03/24 21:04

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2009/07/08 20:27

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2010/01/14 10:57

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