バケモノが出てくる
2022/06/19 11:42
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投稿者:ワシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
舞台は、現在の日本から少し前の東京郊外、敗戦の色が濃い昭和の中頃から、いきなり吉原が栄華を誇った頃に飛ばされ、遠い昔に隆盛を誇ったチャンパの国に飛び、得体の知れない高地の施設と実に取り留めがない。時代も地理も異なる背景を持つのに、全く違和感を覚えずに読めるし、つながりがないように見える各話が連作として成立するのはさすがベテラン作家だと思う。
それにしても三話目の出だし「風のない夕暮れ、狐たちと」では「最低の人間ばかり出てくる短編集~」のくだりにはぎょっとさせられた。
確かに結末を見れば最低の人間ではあるけれど、始まりはそれこそボタンの掛け違いくらいの誤りでしかない。そこからさらに誤りを重ねて、己を正当化してあるいは糊塗して、嘘をついて、選択を誤った瞬間とその後の気分のうつろいが恐ろしいほど細かく描かれていて、知らず知らず自分にも重ねてしまう。
「魔が差した」「ほんの出来心で」そんな言い訳も昔からある。全編を読むとケシヨウや化け物の正体に興味がつきないけれど、この“魔”こそがその正体の一部であるように思えて仕方がない。
確かに……最低限……
2025/03/19 08:40
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
空き巣を繰り返す女が、その家の猫に引っかかれて、そして、奇妙な老人が、……という…猫どろぼう猫。他に、現実に向き合えない王司が、金目的で父の死を隠したら…という窮鼠の旅。お手伝いさんとして田舎の家に住み込んだら……どれも短編で読みやすいけど、中にはイヤミス有り。
人の世に潜む「ケシヨウ」
2022/08/01 21:42
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投稿者:咲耶子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
お話の舞台は現代から始まり時代をさかのぼり、別の国へ移ったり、ちょっと異世界っぽいところに行ったり、でも何となく人間でない何かが暗躍します。
何かに憑依したり、人間に憑依したり、人間の振りしたり、いろいろ。
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ケシヨウ連作?短編7作
仕事をしているときでも電車に乗っているときでも、ハイキングしているときでも、日常に訪れる真空の一瞬
集中の糸が切れた時に、我に返って何をしていたかわからなくなるような
読書をしている自覚はあるけど、すぐ作品に意識が飛んでしまう
果たして仮の姿でなくなった時、どんな姿になるのだろう
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最後まで読み終えて初めて沸いてくる清涼感が不思議でした。表紙の繊細なタッチで描かれた猿、帯の「人間はおもしろい。だが、飼ってはならぬ。」そして始まる短編は倫理観の欠如した欲深い人間たちが死んでいく……今回の小説は人間よりも遥かに叡智な生き物が出てきて、人間の愚かな生を、ちょうど私たちが本を読む時にある神の視点から語るものなのかな〜と思いました。
恒川さんの仄暗いけど爽快な気分になる短編が好きで今まで楽しんでましたが、ラストの『音楽の子供たち』までは今まで読んだ中で1番 救いようの無い雰囲気が漂っていた気がします。読めば読むほど溢れるケシヨウに対する謎、予測不能な行動をする登場人物達に対する不信感。最後のケシヨウの語りで読み始めてから無意識に感じてた不安や恐怖は消え去っていき、なんだか爽やかで、浄化されていくような……不思議と心がすっきりしました。面白かったです!!
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幻想的な恒川ワールド全七篇。
まず表紙がとても良い。ハードカバーで手に取って良かったと思える綺麗な装丁。
恒川さんは他の作品との根本的な繋がりをとても強く感じるのですが、既視感にはならず飽きる事なく読める稀有な作家さん。
読み終わるのが勿体ないと思う気持ちと共に切ない最後の「音楽の子供たち」で幕を閉じる。
今回もとても素敵でした。
ホラー色は弱め。
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人間はおもしろい。だが、飼ってはならぬ。檻の中の醜悪な動物たち。その歪んだ欲望を、実力派作家・恒川光太郎が描く。
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ふ〜んって感じで読み始めたのに
一話ごとどんどん物語が深まり
いつしか
国も時代も空間も越えて
化物たちとともに旅をしていた。
楽しかった。
まだ見たことのない世界に誘われ
その想像力のたくましさと
独創性の高さに驚く。
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面白かった。満足。
「猫どろぼう猫」
そうはならんやろの展開が面白かった。空き巣と頭のおかしい老人と恋人に捨てられた女と空き巣の同級生と猫のケシヨウ。
「窮鼠の旅」
ネズミの嫁入りと、バッドエンドで嫌な青い鳥だなっていう印象。
外に出ても帰るところはここしかない、というのがなんとも辛い。ネズミ、もしくは猫(ケシヨウ)の存在以外にも、この主人公の境遇に恐怖を覚えた。
「十字路の蛇」
主人公の報いは、過去の子供時代から続くものではなく、今現在の過ちのせいでは?と思う。天知る地知る我知る人知るってやつ。
「風のない夕暮れ、狐たちと」
時代設定がなんかおかしいなと思ったら、戦後の話だった。
クタカ、が出てくる。ケシヨウも。
手に入れたはずの幸せには罪悪感がつきまとい、幸福にはなれないのが悲しい。
「胡乱の山犬」
サイコパスではあるが、苦しみを抱えているのが面白い。食えば許される、というのはよくわかる。
「日陰の鳥」
ダウォンがケシヨウ。異国の話はそれだけで面白い。というか、流れ流れてというだけなのに、面白い。
「音楽の子供たち」
SFめいてて面白く、最後は切なくて悲しみを覚えた。
恐ろしいと思っていたケシヨウが人間臭い。
終着として良いな。レクイエムだ。
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タイトルに
猫、鼠、蛇、狐、犬、鳥、最後に子供たち
生き物自体摩訶不思議なものだ
恒川さんのちょっとダークで奇妙な世界を十分堪能できる短編集
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「人間の愚かさと闇を描いたダークファンタジー」
全7作の短編集です。
「人間は面白い。だが決して飼ってはならぬ」
この言葉に興味をそそられて読むことにした一冊。
そして『化物園』というタイトル、怖いんじゃないのかなぁ〜と思っていたが、モヤモヤする部分はあったけど怖さよりも物悲しさを感じました。
人ってなんだろう?どうあるべきなんだろう?
恒川作品は今回初めて読みましたが、この独特の雰囲気と美しさは他の作品も読んでみたくなりました。
でも、ホラーは苦手なんだよなぁ…
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7つの連作短編集。
7つとも良かった!
ケシヨウハンターと空き巣。
そして不倫の少し狂った彼女(猫どろぼう)。
空き巣の羽矢子と不倫の美佳が会話したあたりから、面白い!
恒川光太郎は、何か不思議なものが出てきてファンタジー的な要素もたくさんあり、そういった部分も大好きだけれど、
怖いのは人間の負の面。
ドロドロした気持ちが不幸をよぶ。そういう部分が恐ろしい。
マジョリティ⇄マイノリティ
絶対に相手に伝わらないと思った悪口が巡り巡って相手に伝わる。恐ろしい。
「胡乱の山犬」は、『東京喰種トーキョーグール』みたいなことになって恐ろしいが、
考え方は理解できる。
「日陰の鳥」は、リュクが老婆から渡された杖にサンスクリット語。ん?インドの話?
三つ目!?
頭が2つ!
鱗肌。
「音楽の子供たち」の風媧は、一ノ瀬ユウナみたいに浮いている?
術理は何?術理を解きなさい。
術理→柔道?合気道?用語?心理とか心持ちみたいな意味?
ここでは魔法の原理。扉を開ける解錠条件を教えてくれるもの。
妖精国の話はすごかった。本物のファンタジー。
いいケシヨウもいるんだね。
約束のネバーランドみたいな場所を想像する。
近未来の話なのかも。
最後は幻想的で美しい世界。
キラキラした読後感で良かった。
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変わらず読後感が大好きです。
短編ということで、区切りよく読みやすいですし、前編を通し繋がりを感じてわくわくします。
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ならではの恒川ワールドに、今回もどっぷり。短編集なんだけど、ケシヨウという異形(もしくはそれに類するもの)が通底する。表題作がタイトルの掌編は無いけど、最後のそれが一番それぽい感じ。そして個人的にも、同作が一番のお気に入りだった。”スタープレイヤー”が思い浮かんだけど、要はそういう系が好きってことですわな。
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7つからなる短編集。
これは、いつの時代?
ゾワゾワするのは「胡乱の山犬」
〈残虐〉に支配されてしまう男が哀しい。
ケシヨウという妖怪変化の本当の姿は。
一番怖いのは人間。
暗闇から化物に「おいで、おいで」と手招きされ
甘い声で誘われる。
それは、人の姿をした狐?山犬?猫?
不思議な世界観に浸る心地よさ。