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投稿者:ツクヨミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
望月ミネタロウの漫画が面白かったので、原作を読んでみようと思った。
期待していた以上に素晴らし小説でした。
『ちいさこべ』も『花筵』も、女性が頑張る話でした。時代小説では女性は控えめな方がいい、みたいな作品が多いように思えます(たまたまそういうのばかりあたったのかもしれないですが)けれど、洪水や火事などの苦難に対し、作中の女性たちは果敢に立ち向かいます。その強さに胸を打たれます。
『ちくしょう谷』は、「許す」ということの意味を改めて考えさせられます。『へちまの木』は人の弱さを丁寧に描いています。
こんな面白い小説を今まで知らなかったのが残念です。本当に読めてよかったです。
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投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
何冊か並行して本を読んでいると、内容がシンクロすることがあります。
今回、歯磨きしながら読んでいる『江戸の災害史』という新書本には、水害・津波・地震・火災などの歴史が書かれています。
半身浴しながら読んだ山本周五郎『ちいさこべ』(新潮文庫)の「花筵」には水害のシーンがあり、表題作には江戸の大火が出てきました。
新書には被災した人が非人とされていく経緯が説明され、文庫の「ちくしょう谷」には隔離され貶められた部落が描かれます。
その部落の改善を試みる武士にかけられる言葉が印象的でした。
「肝心なことは失敗するかしないかではなく、貴方が現にそれをなさっている、ということだと思うのです。」
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表題作「ちいさこべ」は以前宝塚歌劇の舞台で見たことのある作品の原作でずっと読みたかったもの。江戸時代の火事で両親を失った大工の若棟梁と孤児達、さらには彼らの世話をするおりつの話。最初は孤児達の世話なんか出来ないと突っぱねた若棟梁だが、結局は世話をするようになる。すがすがしい物語。他に3つの中編が入っていたけれども、私的には読みにくい感じがして、読了までに時間がかかってしまった。【2007年4月13日読了】
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ドラマ化されていたので読んでみた。山本周五郎作品は久しぶりだ。中編集だったがそれぞれに読み応えがあった。
「花筵」「ちいさこべ」は特によかった。テーマとしては生き方を問う作品群なのだが、男女間の機微の描き方が上手いと思った。女性の側の気持ちが読んでいて納得・共感できる。お市の嫁ぎ先の家族の高潔さに惹きつけられた。かくありたいものだが、なかなか……。
作成日時 2006年10月29日 05:40
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表題作「ちいさこべ」は、人と人のつながりが丁寧に描かれていて、とてもやさしい気持ちで読めた。
一方、「ちくしょう谷」はひたすら耐える部分もある、静かな小説で、読後感はやさしい気持ちなどというものとはほど遠かった。哲学的な気持ちにさせられる、とでも言えばいいのだろうか。
粒ぞろいの文庫でした。
ちなみに、古本で買ったからか、表紙はこれとちがいました。念のため。
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中編を4編収録。
どれも面白いけど、特に「ちいさこべ」と「ちくしょう谷」が好き。
周五郎の作品は、人生にどう向き合うか、みたいなことが描かれていることが多いと感じ出るんだけど、
長い作品になればなるほど、人生の重み、みたいなものが濃くなります。
なかなかじっくり小説読む時間取りにくくて、長編作品に手を出しにくいんだけど、
20代のうちには読んでしまいたいなぁ。
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中編の傑作4編からなる。表題作の『ちいさこべ』は江戸の大火ですべてを失いながらも、焼け出されたみなしご達の面倒まで引き受け、再建へと奮闘していく大工の棟梁とそれを取り巻く人々らのつながり、絆に感動を覚える。
未曾有の震災から1ヶ月余り、いまだ傷跡の生々しい中にありながらも、復興・再建へと立ち向かっていく被災地の一人一人の姿と棟梁の姿が重なる、絆の中に明日へ希望を失わずに共に歩んで行きたい。微力ながら俺に出来る事の最善を尽くしたい。
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"以前BSで「ちいさこべ」の映画をやっていたのを録画していたのをやっと見た。そこで急いで本も読んだ。映画は中村金之助と江利チエミ、なるほど、この小説のイメージどおりじゃないか。小説にはない遊び人も出ていたが、原作のよさを壊すことなくいっそう面白くしていた。いい。このほか、「法師川八景」、「末っ子」、屏風はたたまれた」、「橋の下」、「ひとでなし」、「あだ子」、「チャン」、「若き日の摂津守」、「古今集巻之5」と収録されているが、どれも凛と生きる姿が読んでいてすっきりとする。さすがだ。山本周五郎が活躍していた昭和30年代頃はまだ東京の下町には江戸を感じさせるものがたくさん残っていたのだろう。今時代小説の書き手たちはどうやって江戸をイメージしているのだろう。先人の書いた小説のなかからだろうか。山本周五郎、司馬遼太郎、池波正太郎、山田風太郎、海音寺潮五郎。なぜみんな「郎」のつく名前を選んだのだろう。その頃の流行なのだろうか。2005・11・25
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「ちいさこべ」は舞台を見ていたので読みやすかった。「花筵」と「ちくしょう谷」はどちらも興味深い。「へちまの木」は面白くなかったなー。
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4つの物語から成る短編集である。どの物語も歴史を設定に置いた時代小説とよばれるものである。
一つ目の物語”花筵”は、藩の政治における不正やそれをめぐる武家同士の対立を、何も知らずに武家へ嫁いだ主人公•お市の視点から描いている。起承転結がはっきりしており、ラストへと向かう展開もまさに時代小説の王道として描ききっていると思う。
二つの目の物語”ちいさこべ”は、火事により両親を失い、若棟梁となった大工の茂次が、お店の再建、火事により孤児となった子供たちの世話などに奔走する物語である。主人公は茂次なのだが、茂次の心の底にある本音の部分が始めは描かれない。それ故、茂次の頑固さに周囲の人々と同様に苛立ってしまうだろう。しかし、物語が進み、茂次の心情が明らかになると、底にあった誠実さに胸を打たれる。そういった物語の展開に沿った心情の描き方などの上手さに唸ってしまう。
三つ目の物語”ちくしょう谷”は、はたしあいによって兄を亡くした朝田隼人が、志願し木戸という部落の番頭を勤めることとなる。しかし、木戸は兄とはたしあいを行った西沢半四郎が勤める所でもあったのだ。このような流れがありながらも、物語の中心となるのは復讐ではない。木戸の流人村、通称ちくしょう谷に存在する退廃、諦め、人の卑しさとの戦いである。村の現状を知り、改善していこうと孤軍奮闘する朝田隼人であるが、長年わたり疎外されてきた村に漂う暗澹とした雰囲気に迷い、誘惑に負けそうになる。そこに西沢半四郎が絡み、話は進む。まるで修行僧のごとくひたすら苦難に耐えていく朝田。この物語ではそれら全てが解決はしない。それら苦難と対峙しながら、朝田がある決心を固めるところまでなのだ。しかし、この記述に清々しい気持ちになるだろう。ちくしょう谷が象徴している負の部分、貧困と無教育、何の娯楽もなく性を貪る状態。それらは現代でも世界中に見受けられる光景だ。そういった現代との共通点にも考えさせられるものがある。
四つ目の物語”へちまの木”は、千二百石の旗本の三男•房二郎は養子に出されるのを拒み、家出をする。居酒屋で知り合いとなった木内桜谷の勤め先、出版社•文華堂に自分も働かせてもらえることとなる。しかし、そこで目にしたのは市井の人々の暮らしぶり、虚実関係なく売れるネタなら何でも良いといった文華堂の姿勢に辟易し、自分の考えの甘さや将来の見えない暮らしの不安と対峙させられる。この”へちまの木”も”ちくしょう谷”で見られた市井の人々の暮らしの中にある醜さやずる賢さ、漂う悲しみを描いている。時代小説を読む時、その華やかさや人情に目を惹かれがちであるが、そういった時代にも貧困や嘲笑が町にあふれていたことを忘れるべきではないだろう。そういったことを改めて思い出させてくれる作品でもある。
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「ちいさこべ」大火の後、孤児を養いながら再起に奮闘する姿を描く。爽やかな読後感が得られる。「ちくしょう谷」とことん人を赦すことが可能か、少し宗教的な作品。12.8.22
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表題作「ちいさこべ」がとても良かった。
読後の爽快感が素晴らしい、
星4つなのは最後の作品が。。。
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ちいさこべ、いい話だ!強情だけど、人情味溢れる茂次が素敵。最初は茂次のわからずやっぷりにやきもきするが、一本筋が通った人はやはり格好よく見えるものだと感じた。
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図書館より
中編四編収録の作品集。
一番印象的だったのは『ちくしょう谷』。一人の武士が世間から隔絶された村落の人々に教育を施しつつ、兄の死の真相を知った彼がどう行動するのか、という点も描かれます。
「ちくしょう谷」の人々に対し、しっかりと自分の責務を感じつつ彼らと向かい合う主人公の姿がよかったです。また彼が徐々に人間的に成長していく様子がしっかりと描かれ、それが見事に最後の決断につながっていることが分かります。なので、非常に後味の爽やかだったと思います。
表題作の『ちいさこべ』は火事で親や家を失った大工の若棟梁銀次が、みなしごたちの世話をしつつ新たな生活を始めていく話。
男気が感じられる主人公で親心も感じさせるところも場面もあってその描写もいいのですが、いきなり亡くなった親に対しての想いを感じさせる弱さの部分もあって、そういう点も非常に魅力的でした。みなしごたちの世話を一緒にすることになるおりつもいい味を出していました。
自然描写の荒々しさ、美しさが印象的な短編もあって、そういう描写でも、山本周五郎の文章力を感じました。
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表題作は望月ミネタロウの漫画「ちいさこべえ」の原作。大火で両親を失った大工の若棟梁の了見・心意気がすがすがしい。この短編集ではいずれも厳しい試練に見舞われた個人が主人公であり、自我と理想への目覚めが救いとなっている。