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紙の本
どれくらい好きかをきっと知らない。
2002/06/11 03:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:本箱屋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
子供の時誰かにあこがれたことがない人はいない。
「イカマル」にとっては「サンゴロウ」がそうだった。
すべるように港にはいってくる、きれいなヨットを操るひとが、
よう、と手を振ってくれたその時から、
彼と彼の船にすっかり魅せられてしまったのだ。
「サンゴロウ」を慕う「イカマル」の一人称で語られる物語。
ある時、衝動的に「マリン号」に密航して
無理やり同行させてもらうことになるが、
帰りの航路で、襲撃してくる海賊と渡り合うハメになり…。
「サンゴロウ」を「親分」と呼び「マリン号」に夢中な「イカマル」が、
どんなに「彼ら」に魅せられているかが、繰り返し語られる。
いつか自分の船を持っても、ずっと追いかけると心に決めていることを
「親分」は知らない。
紙の本
お互いの良いところを映し出す最高のコンビ
2010/02/21 15:34
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る
今回の話の中心は、サンゴロウとサンゴロウにあこがれているイカマル。
前編5巻の中では、もっとも冒険物の要素が強い。
三日月島ではサンゴ屋からあずかった細工物がいい値で売れる。
サンゴロウは、ちょっとべつの島に寄り道したあと、
三日月島に行くいつものコースを向かっていた。
最近、三日月島の近くで海賊がでるといううわさがたっていた。
黒い船で、マストがないその船は、うみねこ船ではなく、
海賊はうみねこ族ではないということだけはわかっていた。
帆に風をうけて、すべるようにはしっているマリン号。
ところが、床下から物音が聞こえて・・・。
いつもひとりで航海するサンゴロウにあこがれいたイカマルが
こっそりマリン号に忍び込んだのだった。
サンゴロウシリーズは、ずっとサンゴロウが語り手というわけではなく、
その物語の相手役が語ることもある。
本書では、サンゴロウが「おれ」で語る章と
イカマルが「ぼく」で語る章が
縄を編むように交互に紡がれていく。
サンゴロウとイカマルの関係も、
『キララの海へ』や『やまねこの島』の
サンゴロウとナギヒコに負けず劣らずおもしろい。
サンゴロウのイカマルへの接し方を見ていると、
サンゴロウは自分では気づいていないのだろうが、
結構な育て上手である。
サンゴロウ自身は、自分は教えるのは下手だと思っているところがまたおもしろい。
かえって教えるのが下手だからとか、
自分のまねをしたらいけないと思っているくらいの方が
よい指導者になれるのかもしれない。
サンゴロウは、マリン号の操舵をイカマルに任せて、
やらせたら口うるさいことは言わない。
でも、大切なことはしっかりと伝えているのだ。
サンゴロウとイカマルのやり取りの中で、
サンゴロウがどういうねこなのか、
どうやって今のサンゴロウになったのか、
さりげなく浮かび上がってくる。
これはサンゴロウが一匹で航海していたのでは、見えてこない。
陸にいるよりも船や海に話す時の方が饒舌なサンゴロウに語らせるには、
船乗りとしてはまだまだ見習いのイカマルは最高の相手役なのである。
自分が何者なのかは、結局、相手に自分を映すことでしかわからないのかもしれない。
イカマルを見て、サンゴロウは、だれかを思い出すような気がする。
だが、サンゴロウには思い出せない。(読者には、だれだか分かるのだが。)
サンゴロウの過去やルーツについてもこのように行間に見え隠れする。
イカマルがなぜマリン号を好きなのかもイカマルの内省で明らかになる。
夕やけで、波がすっかり金色になっててさ、
もうじき暗くなるっていうころに、
一そうの小さい船が、防波堤をまわって、港にはいってきた。
むかい風に、ななめにむけた白い帆が、鳥のつばさみたいで、
あとはほとんど黒いかげになって、
その船は、ゆっくり、ぼくのいるさんばしにちかづいてきた。
ぜんぜん音もたてなかった。
のっている船乗りが、夕やけをバックにして、
きれいにきりぬいたかげ絵みたいにみえた。
かっこよかった!
もう、なんていうか、ぞくっとするぐらいに。
これだ、っておもった。
磁石にすいよせられちゃうみたいに、
その船から目がはなせなくなった。
イカマルと一緒にひとめぼれを体感し、
マリン号にもサンゴロウにも惚れ直し、
さらに好きになるような気持ちになる。
ついでに、自分が何かに吸い寄せられた瞬間を、
自分の言葉で残してきたいと思っている自分の気持ちを再認識させられた。
どんなに他の感覚で記憶していても、
自分にとって大切なことは自分の言葉でそれを描写する必要があって、
そうするのはとても幸せなことなのだと、イカマルが教えてくれた。
三日月島に上陸した以降から、物語は新しい展開を見せていく。
月ねこ族が多い三日月島は、異国情緒に溢れている。
そして、黒い海賊船の出現。
この危機がやってきたときのサンゴロウとイカマルの会話がまたおもしろい。
サンゴロウは、海賊船から逃げながら、
どうやってイカマルを逃がすかしか考えていなかった。
そして、対話の中で、相手の気持ちが読める・・・。
最高のコンビである。
笑いたくなるような泣きたくなるような素敵な関係だった。
イカマルの言葉を借りるとこうなる。
ぼくは、この船がすきだ。
それから、親分のことも。
すごく自由で、すごくたのしく、すごくこわい。
イカマルは饒舌で、親分大好き節は、さらにさらに続くのだが、この辺で。
サンゴロウにますます惚れてしまう1冊である。
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