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紙の本
アイデンティティとは?
2011/03/06 22:39
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
自閉症が治療可能になった未来。ただし、その治療法は幼児期に施さないと意味がない。
主人公は、その治療方法が開発される前に成人した、自閉症者の最後の世代。
そういう人達を雇用すると、その割合に応じて優遇税率が適用される、という法律があるという事と、他人とのコミュニケーションがある程度まで普通にできるような治療法が確立されている事と、なにより主人公本人が様々な現象の中からパターンを見出すことに特異な才能を持っている事から、それを利用したいと思う企業で働いていた。
自分の仕事に誇りを持ち、趣味のフェンシングを楽しむ日々だったが、ある日、上司から成人した自閉症患者を治療する画期的方法の実験台になることを迫られる・・・
裏表紙には "21世紀版「アルジャーノンに花束を」"と書いてあるが、治療による変化は話の中心ではなく、大半は、主人公が日常の出来事を語っている。
(ちなみに解説によると著者の長男が自閉症であるが、別に彼がモデルという訳ではないらしい)
印象的なのは、治療を受けるか悩む場面だ。
医者は、安心させるために「何も変わらない」と言うが、「自閉症でない自分」になる以上、「何も変わらない」事はありえない。
同じ症状の仲間は自閉症は、自分の一部であり、それが
なくなってしまうことは、自分のアイデンティティの一部が無くなることだ、と悩む。
ちょうど少し前に読んだ神経学者のオリバー・サックスの「妻を帽子と間違えた男」や「火星の人類学者」、マイケル・J・フォックスの「ラッキーマン」や「いつも上を向いて」で「病気は自分のアイデンティティの一部」といった意味のことを言っていたのが重なる。
そして、もう一つ印象的な事。
話の中の設定で、主人公は、一般社会でも他の人と(ある程度まで)一緒に暮らせるように、治療を受けている、という設定になっているが、考える事とか似ている部分があった。
ふと誰がどのようにして、正常とそうでない事に境界線をひいているのだろう、と思ってしまった。
紙の本
まず、タイトルが美しい
2019/07/02 03:00
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
あぁ、SFのタイトルはどうしてこうセンスがいいのか!
原題は、『The Speed Of Darkness』。これに「どれくらい」とつけるなんて素晴らしいよね!
近未来、自閉症は新生児診断で治療できる世の中になっている。
しかしある年代以上の人たちにはその治療は間に合わず、ルウは自閉症最後の世代。だが彼は数学的能力・パターン認識に優れ、製薬関係会社の自閉症者だけのセクションで職についている。ルウは規律正しく定めた通りの毎日を送っていたが、ある日、横暴な上司・クレインショウが経費の無駄だからとこのセクションを閉鎖しようと試みる。自閉症を治療する治験に参加しなければ解雇すると言い出したのだ。実験が成功し、もし自閉症者ではなくなったら、僕は僕のままなのだろうか、とルウは危惧する・・・という話。
「21世紀の『アルジャーノンに花束を』」というコピーにつられました。
序盤は自閉症であるルウの視点で描かれる内容が飲み込みづらく、「う、時間かかる!」と覚悟したですが、しばらくすると慣れた。秩序が乱されると耐えがたいほどの苦痛に感じるような彼らの気持ちがわかったけれども、他人への共感が難しくとも自閉症ではない人とも会話が成立するルウは、かなり生きやすい方であろうし、先日の『相棒』に出てきた「きいちゃん」に比べても、周囲の人にほとんど負担をかけていないように見える。だからこそ、「実験を受けて変わるべきなのか」という悩みにリアリティがあるのだろう。
そして、なんという切ないラスト!
さらりと短くまとめられているけれども、行間から乾いた悲しみが。
何をもって自分は自分なのか、そしてその自分も時間とともに変化する。過去の自分、現在の自分、未来の自分。共有する記憶があるというだけで、それぞれは別人といえるのかもしれない。なんだかひどく、せつないですねぇ。
なるほど、アルジャーノンに比較されるのも頷ける、そういう話。泣いちゃった。
(2009年3月読了)
紙の本
誰でもこのぐらいの「意思疎通の齟齬」は感じるのでは。
2019/08/06 16:33
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず、邦訳のタイトルが良い。原題に加えて施された工夫が購読心をそそる光り方をしている。こういう翻訳書は読む前から内容も期待してしまう。本書はその期待を超えていた。
自閉症の治療が可能になってきている時代。主人公はその治療を受け、独りぐらしをしながら特異な能力を使う会社の部署で働いている。生活の中での人間関係の戸惑いや新しい治療への対応などを通し、変わっていく主人公を描いている。脳の「障害」の治療による変貌を扱った、ということで「アルジャーノンに花束を」を意識した書評も見かける。しかし「少し違う」人を描くことで「普通って何」という普遍的な問題を一番感じた作品だった。
主人公の立場からの「わかってもらえない」気持ち、普通の人たち同士でも「わかってもらえない」ことだってあること。誰でもこのぐらいの「意思疎通の齟齬」は感じるのではないか。そう考えさせる書き方がすごい。もちろん著者は「いわゆる普通の人」なのだろうから、描かれている主人公の心の動きが「自閉症の治療を受けて社会生活を送っている人」そのものかどうかはわからない。それでも「他の人とどう付き合うのか」という誰にでもある社会生活で克服しなくてはいけない問題はつながっている。それを深く考えさせられた。
紙の本
読み終わると悲しい
2024/02/17 01:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:恵恵恵 - この投稿者のレビュー一覧を見る
フェンシング仲間の人たちはロスになってると思うとかわいそう。とくにlost love。。。になってると思うとかわいそう。
ハッピーエンドっぽいとも感じるけど残された方の気持ちを考えるとなんか悲しい。
変化は悲しい。。。
成長は悲しい。。。
好きなようにしたらいいけどなんか悲しい
なんか文章が難しくて進むのが大変だった。
電子書籍
近未来
2023/05/03 22:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
未来では、自閉症の治療が可能になっています。しかし…、子供時代にその治療が行われないと、自閉症のまま大人になってしまいます。その大人が……という展開ですが……。近未来小説としては、上位だと。