紙の本
アフターマン的な未来予想図
2023/10/16 17:24
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投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
現生人類が消えた未来の地球を想像した「アフターマン」を彷彿とさせる、スリリングかつ挑戦的な内容だった。この手の予言の書は割と無理筋というか、「まあ、書けと言われたから書くけど……」とか「ウケるから書くよ」くらいの動機で執筆される確度だと留意せねばならないと思うのだが、人類が何に関心を寄せてきたかを多角的にかつ膨大な説明をもって語りかけられると「ひょっとしたら……」と思わずにはいられない。著者が思い描いたホモデウスの在り方がやたらに魅力的に映ってしまう以上、僕らはこのチェックポイントを意識せずにはいられない生き物なのだと思い知らされる。
紙の本
神になった人類
2024/01/06 19:24
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投稿者:DB - この投稿者のレビュー一覧を見る
人類は何を目指しているのだろうか。
「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」というキリスト教の教理問答でありゴーギャンが絵画で人類に問いかけた質問でもある。
これに一つの答えを出したのが「ホモ・デウス」、不死と幸福を追求し神のごとく生きる人類となるためにどのような未来が来るのかを描いたイスラエルの歴史学者の本だ。
第一章では「人類が新たに取り組むべきこと」について語られます。
人類のこれまでの大きな問題は飢饉と疫病と戦争でありどれも人間の命にかかわるが、対処できない問題ではない。
次なる人類の目標はタイトルになっているようにホモ・サピエンスをホモ・デウスにアップロードすること、老齢や死との戦いだ。
もちろん技術が進歩すれば九十歳まで健康に生きることは可能だろう。
だがこれが百五十歳まで生きるようになると、社会はどうなるのだろうか。
そして寿命が延びた人生を幸福に生きることはできるのだろうか。
遺伝子操作の技術から民家の芝生が意味するものまで様々な話題を絡めながらホモ・デウスへの道を考察します。
第二章「人新世」では、ホモ・サピエンスが地球の他の生物に与える影響について書かれていた。
野生生物は人類の経済活動により絶滅していき、家畜は計画的に殖やされ屠殺されていく。
人間は動物より優位な立場にいると考えられているが、第三章「人間の輝き」では生命とは何かという問題を取り上げている。
進化論や魂の不滅が本当にあるのかという話から、人類が発展したのは協力し合うという能力であることも語られる。
個体としては弱いからこそ協力することで生き残り、地球を支配し、集団同士で争うのがホモ・サピエンスだ。
この協力し合う人間の集団の特徴として第四章「物語の語り手」では文字と書類というシステムについて、第五章「科学と宗教というおかしな夫婦」では人類が生み出した宗教と発展する科学について、第六章「現代の契約」では国家間から個人間に至るまで社会を作り上げる契約と経済について、そして第七章「人間至上主義革命」で人類の感情によって変化していく社会について語っていく。
人類至上主義を脅かすものとしては今ではまだ映画の世界の話だが、進歩したバイオテクノロジーとAIが生み出すかもしれないモノが第八章「研究室の時限爆弾」に出てきます。
ChatGPTが話題に新しいだけに興味深い。
この話をさらに推し進めた第九章「知能と意識の大いなる分離」では発展するテクノロジーが人類を大量の無用な人間と少数のアップグレードされたエリート層に分割し、権限が人間より知能の高いアルゴリズムに移った社会の可能性を論じる。
そんな社会を導いていくかもしれないイデオロギーが第十章「意識の大海」で、もっとも重要視されるであろうデータ至上主義について第十一章「データ教」で語られます。
神のようにあろうとした人類がテクノロジーとデータに使われる存在になってしまっている気もしたが、周りを見ればそれも真実なのかもしれないと思う本だった。
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ずっと読まなければと思っていた本書が文庫になったので早速購入。サピエンス全史はならないのかな?
内容についての感想は下巻に記載します。
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ホモ・サピエンス全史の続刊として書かれた作品。
人類がいまだに完全にクリア出来ていないものは
飢餓、戦争、疫病の3つだか、それすらも克服出来る可能性が出てきている(読了時点では、コロナやウクライナ情勢等、やはりクリアする事が難しいことを再認識)。
ホモ・サピエンスは未来に向かってどうなっていくのか、上巻ではその答えに対する前提条件を語っている。
個人的には、ホモ・サピエンス全史に続き、やはり難しいかった!読むのに時間を要した。現状のウクライナ情勢やコロナで世界が混沌となってる中、ホモ・サピエンスはどのような未来を歩んでいくのか、考えながら下巻を読んでみようと思う。
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「サピエンス全史」の著書ハラリ氏の新刊。
サピエンス全史と同様大作で面白い反面難解でもある。
上巻はホモ・サピエンスがホモ・デウスになっていく過程が細かに記載されている。
過去では全てを決めるのは神であり自分たち人間が決められるなどとは想像もしていなかった。
ただ今では神は退き、ホモ・サピエンスである人間が人間至上主義として神のような振る舞いをしている。
私自身が読んでも、人間至上主義の内容はあまり感覚とはずれておらず、それが異常なものではないと感じているが、では人間が神のように降臨するとどのようになっていくのか…の考察は下巻で深く書かれている。
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ジャンル:リベラルアーツ トレンド
出版社:河出書房新社
定価:990円(税込)
出版日:2022年09月14日
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ユヴァル・ノア・ハラリ (Yuval Noah Harari)
1976年生まれのイスラエル人歴史学者。オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻して博士号を取得し、現在、エルサレムのヘブライ大学で歴史学を教えている。オンライン上の無料講義を行ない、多くの受講者を獲得している。著書『サピエンス全史』(河出書房新社)は世界的ベストセラーとなった。
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flier要約
https://www.flierinc.com/summary/1671
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イスラエルの歴史学者による、人類の歴史の振り返りから未来の可能性の示唆した本。人類は飢饉、疫病、戦争等の大きな問題を克服しつつあり(2018出版のため、現状は少し逸れている感もあるが)、これからは不死、至福、神性の追求にシフトしていく。農業革命、産業革命前後での人間の価値観の変化や、科学と宗教との関連性を解釈し、人間至上主義がどのように生まれ変容してきたかを説明している。人間至上主義から今後のデータ至上主義への変遷については下巻。もちろんあくまで著者視点・著者の解釈によるストーリーではあるが、史実の勉強になったり、自身の日常からはやや距離があるため理解できなかった宗教観 (一個人の中での科学と宗教の内在) というものが、なんとなく見えたような気がした。
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人類はこれからどこへ向かっていくのであろうか。私たちが生きていく時に思う人類全体としての未来。テクノロジーの発展により不死と幸福を追求することが目的となり、神聖さも獲得しかけている人類。ただし、そのために生きている意義、といった内面的なものは無くなっていってしまう。新たな観念的な考え方であるデータ至上主義により、人類の個人としての経験はたいした意味を持たず、人類としての経験が今を有するようになるといった悲しい未来になる可能性があると筆者は主張している。
示唆に富んでいるだけでなく、歴史からの学びを重視しておる歴史学者ならではの視点で語られており、とっても勉強になる一冊だった。
また、文庫版の序文では、Covid-19は、テクノロジーにより疫病は対処可能な課題になったのにも関わらず、大人としての振る舞いができない人類しかいないため、人災となってしまったというところが、とっても共感できる一説であった。
また、ロシアのプーチンによるウクライナ侵攻も、せっかく克服したと思われていた戦争と貧困と病気の時代への逆戻りになってしまうというのも、確かに頷けるものであろう。
この序文だけでもこの本を読む価値があると思う。
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サピエンスが世界を支配しているのは彼らだけが共同主観的な意味のウェブ
彼らに共通の想像の中にしか存在しない「想像上の秩序」を織りなすことができるから。
人間の幸福は客観的な境遇よりもむしろ期待にかかっている。
現実が自分の期待に沿うものであるときに満足する。
過去数十年間に人間が経験したような境遇の劇的な向上は、満足感ではなく期待の増大につながる。
人間には不滅の魂があるが、動物はただの儚い肉体に過ぎないという信念が、私たちの法律制度や政治制度や経済制度の大黒柱である。
この信念のために、人間が食物のために動物を殺したりしても差し支えない。
宗教とは社会秩序を維持して大規模な協力体制を組織するための手段である
科学は事実を研究し、宗教は価値観について語る。
聖書は記述されたとされる出来事が起こってから何世紀も後に、それぞれ異なる書き手によって書かれた。
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人類が世界の完全なる支配者に進化してきた過程を考察した前著「サピエンス全史」の続編。
まず、本編が著されてから6年後に書かれた冒頭の「文庫版への序文」で新型コロナ拡大とロシアの侵略戦争への危惧と克服を期して始まる。そして第1章で「この予測は予言というよりも現在の選択肢を考察する方便という色合いが濃い。この考察によって私たちの選択が変わりその結果予測が外れたなら考察した甲斐があったというものだ。予測を立ててもそれで何一つ変えられないとしたらどんな意味があるというのか。...歴史を学ぶ目的は私たちを押さえつける過去の手から逃れることにある。...歴史を学んでも何を選ぶべきか分からないだろうが少なくとも選択肢は増える」と言っているが、著者のこの大変に誠実な姿勢に読む者の信頼と期待はいやが上にも増す。
人類を世界の霊長たらしめた最たる能力は、認知革命により宗教や国家のような共同主観的な虚構の物語を作りえたことだと解く。そのことで他の動物が持ち得ない団結や規律、隷属関係さえも可能なったと。しかし、そのことが最大多数にとって幸福だったとは決して言えない。
序盤の明るく楽観的な論調はどんどん消え去り下巻へ続く。
心理学的レベルでは、幸福は客観的な境遇よりもむしろ期待にかかっている。私たちは平和で裕福な生活からは満足感が得られない。それよりも、現実が自分の期待に添うものであるときに満足する。あいにく境遇が改善するつれ期待も膨らむ。...この先何か手を打たない限りこの先どれほどの成果を上げてもやはり私たちの不満は少しも解消されないかもしれない。
ミル「幸福とは快楽と、苦痛からの解放とにほかならず、快楽と苦痛以外には善悪は皆無である」
これはすべて進化のせいだ。私たちの生化学系は無数の世代を経ながら幸福ではなく生存と繁殖の機会を増やすように順応してきた。生化学系は生存と繁殖を促す行動には快感で報いる。だがその快感は束の間しか続かない。
この予測は予言というよりも現在の選択肢を考察する方便という色合いが濃い。この考察によって私たちの選択が変わりその結果予測が外れたなら考察した甲斐があったというものだ。予測を立ててもそれで何一つ変えられないとしたらどんな意味があるというのか。
歴史を学ぶ目的は私たちを押さえつける過去の手から逃れることにある。...歴史を学んでも何を選ぶべきか分からないだろうが少なくとも選択肢は増える。
私たちの知る限りでは無数の見知らぬ相手と非常に柔軟な形で協力できるのは サピエンスだけだ。私たちが地球という惑星を支配しているという事実は不滅の魂や何か独特の意識ではなく この具体的な能力で説明できる。
それでも何十年何百年を経つうちに意味の Web がほどけそれに代わって 新たな Web が貼られる。歴史を学ぶというのはそうしたWebが張られたり 解けたりする様子を眺め ある時代の人々にとって人生で最も重要に思える事柄が子孫には全く無意味になるのを理解することだ。
だが、物語は道具にすぎない。だから物語を目標や基準にするべきではない。私たちは 物語がただの虚構であることを忘れたら現実を見失ってしまう。
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メモ→ https://twitter.com/nobushiromasaki/status/1635181647615385603?s=46&t=z75bb9jRqQkzTbvnO6hSdw
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人類はどう生きてきて、どこへ向かっていくのか。ざっくりそんな話。上巻なので、どう生きてきたかの部分を詳しく語っている。ところどころ難しいが、納得の行く解説も多々あり、歴史や人類の成り立ちについて新たな視点で考えることができる。
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オーディブルで拝聴。歴史を学び、歴史から自由になる。
人間はどんな生き物で、何を克服してきて、どうなっていくのか。
人類は発展しすぎて、民主制も機能しづらくなってきているんだろうな、というのは実感もあったり。この辺をAIで解決していくのかな。
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人類がどこに向かうのか歴史から考察している本。考えさせられることが多く読みごたえがある。
以下、印象的な一文。
人間はつねにより良いもの、大きいもの、美味しいものを探し求める。人類が新たに途方もない力を手に入れ、飢饉と疫病と戦争の脅威がついに取り除かれたとき、私たちはいったいどうしたらいいのか?
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一貫して読みやすく言いたいこともかなりクリアーになっていたと思います。つまり人類はようやく最近になって(大規模な)飢饉、疾病、戦争をなくすことに成功した。さて次は何を求めるのか、ということで著者があげているのが不死、幸福、神性の3つです。この3つのキーワードは多少誇張されているとは言え、方向性としては同意できました。つまり寿命をいかに伸ばすか、幸福度をいかに高めるか、そしてその2つを達成できればできるほど人類は神に近づく、という論調ですが、これが全世界に当てはまるかといわれるとNOという印象は持ちました。つまりここで書かれていることの多くは一神教の宗教が浸透している地域の未来予想図であり(キリスト教、ユダヤ教、イスラム教等)、日本のようにいまだにやおよろずの神の影響が少なからず残っている国においては、正直あてはまらないでしょう。ハラリ氏は、アニミズムは原始的な部族の間にしか残っていないと思っているのかもしれませんが、日本のような先進国でもその痕跡は色濃く残っている事を学ぶべきでしょう。
しかしそれは除いたとしても、書かれていることや著者の問題意識は非常に鋭いと思いましたし、学ぶことも多かったとは思います。世の中には主観と客観の2つだけではなく、第3の領域として「共同主観」がある、という記述は興味深かったです。貨幣を例にとっていますが、皆が「その貨幣は有効である」と信じているから実際にその貨幣が機能する、しかしその幻想が崩壊した瞬間に貨幣は機能しなくなる、ということで岩井克人さんの貨幣論を思い出しました。岩井さんは言語や法律も同じカテゴリーに属すると述べていますが、ハラリ氏も同様の見解を示していました。下巻も楽しみです。
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企業は神であり宗教である。企業に限らず全ての組織はそうであり、だから、彼らの視線は内向きとなり、保身に走る。