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過酷な勤務で精神を失調し妻に暴力をふるうようになる民雄も、父と同じ谷中で駐在所勤務になる。
再び訪れる地元の人々との交流の日々。警官を志した時の思いが呼び起こされ、父・清二の死と清二が調べていた二つの事件の真相に辿り着いたと思しき中で、謎は謎のまま、時代は和也に引き継がれる。
祖父、父と同じ道を選んだ和也もその血ゆえに初配置から特殊な任務に就き、そして、三代に亘った謎解きと警察組織の在り方に同時に決着をつける。
全ての罪は相対的なものだと知り、町のお巡りさんの気分を忘れずに吹く和也のホイッスルの響き。
清二の実直さとも民雄の繊細さとも異なり最も警官になりそうになかった和也が最もしたたかに生き抜く様に、親子三代続いた警官の血の濃さを知る。
戦後の昭和史であって、且つそこに生きた親子の物語。
同じような時代を生きてきて、私は父を反面教師にして違う世界を選んだつもりだけれど、ここまで来てしまうと、世界は違えど父のように生きてしまったなあとしみじみ思う。良かったのか悪かったのか…。
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3代の警察官。
それぞれに交番勤務。潜入捜査。内偵調査。といったぐわいに描かれていて。
それぞれの章で楽しめたし。歴史を見ているようだった。
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親,子,孫の3代にわたる警官もの。読者を最後まで読ませる力があるのは,さすが佐々木譲です。最後まで一気に読み切れました。また,2代目のところで,きちんと北海道を舞台とする場面があるのも道民としては嬉しいですね。さすが道産子作家です。3代目の話では,途中で,道警稲葉事件のシリーズと同じような話になり,ちょっとマンネリ感は否めませんでした(道警に限らず,このような4課にはこのような警察官はいるんでしょうけど)。最後は,なんとかうまくまとめましたという感じです。それなりに面白かったけど,期待したほどではなかったというのが正直なところです。早瀬の一連の行動の動機が今ひとつ理解できないというところが,ひっかかっているのかもしれません。3代目が警務部以外で活躍するといった場面がもっとあれば,早瀬息子に対する切り札が活きてきて,もっと面白くなったのではないでしょうか。
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渋いオジサン向けの小説だと思っていたら、深まる謎が早く知りたくて、あっという間に読み終わってしまいました。
黒幕(?)の正体にびっくり。
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3代続いていく警官の話。その時代ごとに、社会の中での警察の存在意義や対峙する犯罪の種類が変わっていくのが面白い。3代続いていく要因ともなる祖父の死の真相自体は非常にありきたりなのだが、正しいこと、正しくないこと、の基準を考えされることになった。まっすぐ生きることが、必ずしもいい結果をもたらすわけではない。でも結果がどうであれ、自分自身にとって悔いのない人生を送っていきたいと思う。そのためには、他人にとって正しいかどうかはわからないが、少なくとも自分が正しいと思うことをすれば良いのだと思った。もやもやが少し晴れた気がした。
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あらすじは上巻に記載済みなので、省略します。
この下巻では3代目・和也が主人公となる現代のパートが多いので、上巻で感じたような重々しい雰囲気のようなものが緩和されています。
しかし、祖父の清二が清廉潔白な警官像であったのに対し、孫の和也はどこか現代の混沌とした社会に囚われてすれてしまったような印象を受けます。
簡単に言ってしまうと、清二(戦後復興の時代の正義感溢れる警官)→民雄(学生運動の煽りを受けて精神を倦んだ警官)→和也(警察社会の裏面を覗いてやさぐれつつ達観もした警官)といった感じでしょうか。勿論もっと的確な表現はあるんでしょうけども。こうして見ると、3人の主人公がそれぞれその時の世相を反映しているように感じられます。だから時代の流れを意識しやすいのでしょうね。
同じ血が流れていて同じ職を志したのに、こうも違う人物像が出来上がるということが興味深いです。
この作品、どうやら続編が出ているようなので、そちらも読んでみたいな。
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[BOOKデータベースより]
安城民雄は、駐在として谷中へと還ってきた。心の傷は未だ癒えてはいない。だが清二が愛した町で力を尽くした。ある日、立てこもり事件が発生し、民雄はたったひとりで現場に乗り込んだのだが―。そして、安城和也もまた、祖父、父と同じ道を選んだ。警視庁捜査四課の一員として組織暴力と対峙する彼は、密命を帯びていた。ミステリ史にその名を刻む警察小説、堂々たる完結篇。
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終戦後すぐに警察官になった父から子、またその子もと、3代続く警察官の話。
謎が謎を読んで、関連性もわからずこんがらがったまま下巻に突入する。
文章はおもしろいけど、最後があまりにも呆気なかったので「長い話だったなあ」という印象だけが残った。
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事件の真相そのものは、そんなものか、という感じだった。
ただ、三代目にあたる和也の“血”が評価されるくだりや、
最終的にたくましさを身につけてゆく過程はとても感慨深い。
初代、二代目を知っているだけに・・・
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和也の章からがすごかった。たたみかけるようにエンディングにもっていく。祖父や父とは違うタイプの警官になったが、二人の血が濃く受け継がれた結果がこうなったのもまた面白いものだ。
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父子3代にわたる警察官の大河小説。おもしろかったし、3人それぞれのドラマがあって、読みごたえはあった。けど、2代目、3代目のドラマがどっちも現実離れし過ぎていておなかいっぱい。肝心の謎の部分がいまいち浅く、謎解きもあっさりな感でちょい肩すかし。「警官の血」というのは父子の絆であると同時に、おまわりさんから官僚、正義の味方から汚職警官まで「警官の性」とも読めるかな?と思った。
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終戦後から三代にわたって警官になった家族の話。ミステリーというよりド歴史小説。時代背景や世間を騒がせた事件を織り込みながら、警察という一つの組織のなかで働く人間を骨太な文体で書く。
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電子書籍で読了。
親子三代にわたる警官の姿を、戦後の昭和史と絡めながら描いた長編警察小説。
終戦直後の警察の成り立ち等がわかる祖父の章はそれなりに面白かったが、大長編の割には全体的にあっさりし過ぎている感があり、少し期待はずれ。
「このミス」で一位となる程の評価の高さの理由が、今ひとつ理解できなかった。
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親子三代にわたる警官の話。とても硬派の、濃いヒューマンドラマで素晴らしかった。戦後の混乱期から現代までの時代の移り変わりも面白い。改めてまた読んでみたいと思える作品。
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上下巻をまとめた感想にすると、昭和から平成までの時代時代につむがれてきた事件とその時代をいきた人間たちの思いや行動に含まれる心の動きをうまく織り交ぜながら、警察官という職についた3人の男達の生き様をうまく描き出した良書だと感じました。上巻よりも下巻をテンポよく読めました。
後に日本赤軍の分子となる男達の一派を自らのスパイ行為での摘発に成功した民雄は、しかしながら警察官となって最初の任務を通じて人間不信となり、それが家族にも暴力という形で波及したことで清二が築いたような家庭とは違うものが身近にあることに苦しみ続けます。ようやく手にした緊張感がありながらも安寧とした任務の中でも過去の極左活動への潜伏捜査は最終的に彼を死に至らしめるに十分なきっかけを生みました。
ここまで読むと一見何もつながりがないように見える清二と民雄の死を、三代目の和也によってすべて明らかにされることになります。和也が明らかにした民雄の死の遠因と、祖父・清二の死が直接的原因は昔から安城家に近かったある一人の人物によって成されていたことが明らかにされます。
その理由は、三世代が紡いできた物語の点と点を線でつなぐには、物語で直接語られない部分であったのが意外でしたが、そのことが分かる文章を読んだ時のビリビリとした衝撃は忘れられません。帯に書かれていた「三代目・和也ががつむぐ新しい物語」という部分が、本を購入した時から気になっていたのですが、こういう次の世代に向けた終わり方というのも良かったと思います。
ちょうど1年前にテレビ朝日でドラマ化された本作(http://www.tv-asahi.co.jp/keikan/)ですが、わずか4時間で終わってしまうよりかは文章を頭の中で消化し、いろいろと勘繰りながら読み進めていくこのハラハラ感を数日に渡って体験できた方が良いと思いました。要はテレビで見なくてよかったということになる訳ですが…。
社会の秩序を保ち正義の範たるべき警察官自身が、その任務を果たし、安全と安心を守るために、その使命を曲げなくてはいけない矛盾に直面し、苦悩することがあること。三世代に渡って安城家がその血をもって体験した苦悩そのものが、警察という職務そのものに、書籍の題名通り血のようにベットリ張りついて落とせない者なのかもしれない。私の祖父が安城清二のように復員後警察官となったことを思い出すと、祖父が亡くなる前に警察官が背負うこの苦悩について聞いてみたい、と叶いもしない疑問を抱きながら読み終えた本を閉じたのでした。