紙の本
目を逸らしたいけど逸らせない女子的ディストピア小説
2023/08/18 18:40
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投稿者:甘いっ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
未成年女子たちのそりゃあもう過酷どころじゃないディストピア・ストーリーです。文字でも痛い、辛い(笑)。けどエンタテインメントとして素晴らしい読み応え…いやもう映画一本見終わったくらいの満足感があるストーリーで、でもやっぱり女の私が読むとめちゃくちゃ辛い内容。辛い、嫌だ、でも読むのを止められない傑作です。
ただこれ、酷いディストピアと言ったけど、今の日本でも似たようなことって山ほどあるよな…って女性が読んだら皆思ってるんじゃないか??とも感じる。主人公周りの女子たち、村の男や成人女性の行動・心理にはほとんど既視感(女子的カーストやイジメに至る経緯とか女の敵は女とか性的被害はそう思わせた女が悪いとされる傾向とか女が子を産むことはまだ義務に近い柵があるとかとか…)があるし、そんなに実世と掛け離れた話でもないなと。
過酷な中でも主人公が颯爽と駆け抜ける姿はまさに一矢の光、個人的には帯でウテナの幾原監督が推してるきっかけで買ったのだけど、確かに読後感がウテナのそれに通じるものがあるかも。いわゆる女子から女性へと変貌する過渡期の、見てはいけないような滲み出る艶かしさって薔薇の花嫁アンシーのそのものだし。
映画化するなら主人公は、やっぱり若かりし頃のナタリー・ポートマンがいいかな…とか、古いけど「17歳のカルテ」当時のウィノナ・ライダーをおさげにするか…とか思ってたんだけど、この作品もやっぱり映画化決定してるんだそうで。しかしあの熾烈残酷なディストピアを映像化してもマトモに見てられる人そうそう居ないんじゃ…(;_;)
紙の本
通過儀礼はいつでも命懸け
2023/02/10 14:35
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
女子に魔力がある。ガーナー郡の16歳の女子は魔力を解き放ち、清浄な存在になるために一年間隔絶された森の中で暮らす。グレイス・イヤーと呼ばれるその一年を過す前に女子たちは街を歩き、男性から花嫁に選ばれる。女子に拒否権はないし、誰からも選ばれない娘もいる。グレイス・イヤーで命を落とす娘もいる。
主人公のティアニーは友だちと信じていたマイケルから花嫁のヴェールを贈られる。自分は誰の妻にもならず労働者で生きるつもりだったのに……。
森のキャンプでは主導権を握ろうとする娘、強い者になびくが楽とする娘、はじめから仲間外れの娘、医者の父譲りの理詰めの思考で冷静さを保とうとする主人公と、団結とは程遠い。一年間、いかにして生き残り、魔力を捨て去れるか。
ぞっとすること間違いない。
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結構期待して読んだけど、それほどではなかった。でも、まあ、面白かった。
現代に生きてていろんな歴史や差別や偏見を知ってる者から見ると、さもありなんな設定、世界観、展開。
逆にほとんどなんもないのに一年生き延びる少女達すごすぎる。ここら辺もうちょっと現実味がある設定が欲しかったな。毎月、食料が投げ込まれるとか。
主人公がモテるところにはあまり共感が持てなかった。マイケルなんでだ。
ライカーとの仲は別に良かったけど、その別離まで描くとは。逃亡エンドでも良かった気がするけど、それでも、改革していこうエンド。マイケルすげえよ。主人公は、マリアで、マイケルはヨセフだったのかもな。
キルスティンは嫌いすぎてイライラして、時間を置かないとダメだった。実際できるかは別としてささっと始末したい。最後も助けたのがっかりした。問題のある者でも受け入れるのは素晴らしいが、自分はそんな素晴らしい人間じゃないし、なれそうにない。改心したら助けても良いかな程度。
あと帰ってからも描写が続くなと思ったら、楽な暮らしをしてて笑ってしまった。トップの妻だもんな。
読んでてやっぱ自分の経験や観察力、目に見えるもの、そして科学最高って気持ちになる。よくわからんものを信じるより、よくわからんけどまあ解明出来る人には出来る科学を信じたいよ。
何だかんだ女性達は団結してるよエンドだったのは良かった。でも、これ乗り越えても問題やまづみなんだろうな。だるいなって気持ち。
映像化したら、まあ見てみたい。
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早川書房さんのTwitterで知り、自分好みのディストピア系かと期待して手に取ってみた。
舞台は森に囲まれた村、ガーナー郡。この地では、女は男を惑わす"魔力"を持っているとされており、"魔力"が開花する16歳にそれらを全て解き放ち、"清らか"な女として男に妻として迎えてもらうため、少女たちは森の奥に閉ざされたキャンプ地で1年間の共同生活を送る。<グレイス・イヤー>―――それについて話をすることも禁じられた、無事に帰還することが保証されない謎に包まれた風習。16歳となり<グレイス・イヤー>を迎えるティアニーは、その真相を目の当たりにする―――。
「男性が女性を従属させる村社会+隔絶された地で繰り広げられる少女たちのサバイバル」。ストーリー概要に目を通した時点でフェミニズム要素がある作品だとは思っていたが、予想以上に社会的メッセージが強かった。「"フェミニズム"・ディストピア作品」と言い切ってしまっても良いかと。別段、そういった作品を毛嫌いする訳ではないのだが、その社会的メッセージを伝えたいためか、エンタメ的な面白さが不足していたように思う。個人的には、少々期待外れ。
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「グレイス」という言葉がその中に抱くさまざまな意味を思い知った気がする。
何十年も続く16歳になる少女たちへの通過儀礼。命を懸けたその1年間を「グレイス」と呼ぶことの、その恐ろしさ。
なぜ今まで誰もその儀式に対して疑問を抱かなかったのか。なぜ女たちは唯々諾々とその儀式を受け入れ続けてきたのか。なぜ、彼女たちは女としての尊厳を踏みにじられ続けてきたのか。
架空の都市の、架空の儀式だと思いながら読み始めたけれど、読んでいる途中自分の中に生まれ、読み終わった後もずっと育ち続けている熱いマグマのようなものに焼き尽くされそうだ。
この熱はなんなんだろう。悲しみか、怒りか、いや、多分これはあきらめない希望の熱だ。
女として生まれた多くの人が、どのような形であってもさらされるこの理不尽さ。蹂躙され翻弄され搾取され、そしてその命さえ軽々と奪われていく。
この理不尽を終わらせるのは多分いま私の中でも燃えている怒りと希望なのだろう。女たちの小さな抗いが、ひとつひとつと集まってきっと終わらせるのだ。
1人の少女の命を懸けた戦いが、この狂った世界を変えていく。
私たちも試されているのだろう。あなたたちは何もしないの?と問いかけられているのだろう。16歳の少女たちに。
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これは希望と継続と、それができることを信じる物語。きつくてきつくて読むのをやめようと思ったけど乗り越えて良かった。若い子たちに希望を見よう。
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・面白かったし、素晴らしかった。
・現実世界をメタファーとした、「女性」の物語としても読めるし、元がヤングアダルト小説なので純粋なダークファンタジー小説としても当然読める。自分はこの小説内に立ち込める濃厚な湿度、発泡塞がりで息の詰まる様な「暗黒」の空気に、結構やられてしまった。まぁ当然それは現実と重なる事も多いのだけど。
・途中のストーリーラインにあるロマンスの部分も、苦さや厳しさの部分も含めて良かった。自分は主人公の少女と全く属性は違うけど、めちゃ感情移入してしまった。なんで?
・元がヤングアダルト小説という事でこれを若い子達が読むのか…凄い、と思ってしまった。
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最高に面白く
最高に苦しい
こんな世界はいやだな…
いや…世界はこんなだな
今年は例年より本を読んだけど、ある意味断トツ!
続きが読みたくて読みたくて仕方ない。そして進んだら進んだでもっとこの先を知りたい!!
とまるで自分に毒が回ったかのように読んだ
たくさんの方達にせひ読んで欲しい最高の一冊。
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過去に敬意を払い、未来に希望や願いをたくした物語。
最初はただただ残酷なディストピア小説かと思っていて、何が起こるかわからない恐怖にゾワッとしたし本を閉じて目を背けたくなるくらい嫌悪感にかられたけど、読み終えたときにはなんとも言えないあたたかさで心が満ちた。
この小説はフィクションだけど、完全なる空想の世界ではないと感じてしまうのはやはり未だに女性蔑視の風習がこの世界には根強く残っているからだと思った。これは現代に必要な物語だし、これからも誰かの救いになってほしい。
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すごいものを読んでしまった!という読後感。
アメリカの作家が書いた本。
恐ろしい話だった。
ジェンダー問題どころではない。
みんなで生き残るか、ひとりで死ぬか。
女性同士が手を取り合って闘うことが世界を変える道。それにはまず、見方を変えること。
ティアニーの生きる力、立ち直る力が素晴らしい。
後から気づくのだが、両親も姉もティアニーに生き抜いて欲しいと希望を託していた。
ライカーとの未来は、太陽のようだった。
勇敢なティアニーを、ライカーは最初から認めていたのだと思う。
映画化されるそうで、ぜひ見てみたいと思った。
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一気読み。
ディストピアのサバイバルYAエンタメ小説で、フェミニズム小説。
面白くないわけがない!
家父長制が支配するディストピアはもちろん現代の社会のメタファーであり、おぞましさの度合いは現実を超えて酷ければ酷いほど、なぜかリアルな現実感となる。
そうなのだ。私たちはこんなサバイバルの毎日を生きている。
「傷つけ合うのは、それがわたしたちに許された唯一の怒りを示す方法だから。選択肢が奪われたとき、わたしたにの内側には炎が生まれる。」
グレイスイヤーでの怒りの放出は、内に向かうしかない女たちの鬱屈の吐き出し口。
グレイスイヤーというものでそれを表現するなんて上手い!
家父長制に傷つくのは女ばかりではないことも描かれる。
「グレイスイヤーの女の子たちだけがガーナーの犠牲者なわけじゃない、密猟者も、警備隊も、妻たちも、アウトスカーツの女たちも…みんなこの一部、わたしたちは同じなのだ。」
そして、女たちの密かな連帯がカッコいい。レジリエンスを持つ女たちのたくましさ!YA小説はこう出なくっちゃ!希望が必要です!
後半のストーリー展開はご都合主義だと言われるかもしれないが、こういう小説を書く人がいること、読む人がいること、そしてそれがヤング向けだということ、その意味は大きい。
映画化もされるとのこと。楽しみだなあ。
続編もあるとのこと。これもまたグレイスのその後が楽しみだな。
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魔力が開花すると言われる16歳を迎えた少女たちが森の奥のキャンプに一年間追放され生死をかけた闘いをするディストピア小説でハンガーゲーム感あってめちゃくちゃ面白い。家父長制が支配するディストピアには現実世界へのメタファーが散りばめられていて現実も地獄だよねとなる。男女問わず読んでほしい
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図書館でこの本を借り出したとき、カバー画で悪い予感がしたけれど、残念ながらその予感は当たってしまった。
読み始めて間もなく、十代の頃に読んだ「蝿の王」を思い出した。訳者あとがきには、そのほかに「侍女の物語」と「ハンガー・ゲーム」を持ち出してあるが、後者は未読のためよくわからない。若い世代らしき人たちからは、なかなかに高い評価が書かれているけど、あちこちに破綻の多いこの小説は、大人の読み手には、あっという間に忘れ去られるレベルにしか感じない。そこらは世代間ギャップなのかも。
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ずっと自分の大切なところに閉まっておきたいと思った。
いつの時代のどこの国の女の子達の話かはわからないけど、確かに繋がってる気がしたんだ〜
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物語を通して漂う狂気や異常さには、読んでいて顔を顰めることも多々あったが、制約や制限をされる女性たちが生き残るための希望を見つける姿に心が震えた。
少女には”魔力”があると信じられており、その力が最大になる16歳になると森の奥のキャンプ地へ1年間送られる。それが”グレイス・イヤー”。そこで魔力を解き放ち、清らかな女性になって戻り妻となる。しかし、旅立つ前に求婚されヴェールを送られた少女が生きて戻った場合である。ヴェールを送られなかった少女が生きて戻ってもどこかの労働所送りになる。
そんな理不尽な風習がまかり通る世界そのものに怒りを覚える方も多いだろうが、読み進めていくと現実世界に類似する状況がいくつも浮かんできて目を逸らすことができなくなる。先の風習はきっかけであって、実際に送り込まれた少女たちの状況や心理の恐ろしさこそ現実を思い起こさせる。その中で、絆や信頼が希望となり変化していくことに救われる。また、言語以外に花言葉も要所で使われており、暗く不穏な世界の中で暖かみを感じる。
中盤までは非常に苦しい気持ちになることも多かったが、グレイス・イヤーを終えた少女たちと抗う一部の人達の未来をもっと知りたいと思い、『少女たちの聖域』というサブタイトルが示すことに想像を巡らせる。