紙の本
神々の定める運命
2024/03/17 20:39
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投稿者:DB - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公も時代もどんどん変わっていくオーリエラントシリーズですが、今回は短編集だった。
最初の「セリアス」はセリアスという名の全天で最も青い星を守護星とするイザベリウスと妻のロルリアの物語です。
修復の魔道を使うことができるイザベリウスは、壊れた鍋を直したり枯れそうになった水源を元通りにしたりと村人たちに頼りにされていた。
だが新しい領主がやってきてから風向きが変わる。
人間の集団心理がうまく描かれた話だった。
「運命女神の指」はタペストリーの工房を共同で持つ三人の女の話だった。
糸を紡ぐエディア、運命を織り込んでタペストリーにするユーディット、鋏で糸を切るマレイナだ。
運命の三女神そのままの設定だが、それぞれ元奴隷、元商家の嫁、そして元女剣闘士という出自も育ちもバラバラな三人が仲良く暮らしていた。
タペストリーも健康を祈るものや幸せを願うようなおまじないのようなものもあり、脱走した剣闘士奴隷の姿をくらませてしまうような便利なものもあり。
剣闘士奴隷の話はそのままスパルタクスだったが、タペストリーとの絡みが面白い。
「ジャッカル」では以前にも登場した本の魔道師ケルシュが、怪我をした少年を拾ったことで話は始まります。
ミルドを守る忠犬のようにジャッカルが一頭ついてきて、そのままケルシュの家の居候になる。
ミルドという名の少年の親は瓦製造をしていて裕福な家庭だったが、奴隷にそそのかされて跡取息子を長男のミルドから弟に変えようとしていた。
だが自分が引き起こしたトラブルが予想以上に大きくなり、瓦製造の工場は乗っ取られて落ちぶれてしまう。
ジャッカルの正体と石像造りの道に進んだミルドの将来が垣間見えて終わる。
「ただ一滴の鮮緑」の主人公は生命をよみがえらせる力を持つ魔道師チャファです。
死の淵にいる人を引き戻す力を持っていたが、それは同時に自分の生命を削っていく力でもあった。
チャファに命を救われた青年モールモーと一緒に暮らしていたが、出会ったときは緑の瞳が印象的な若い女性だったチャファは数年後にはすでに老婆の姿になっていた。
死を司る女神に忠告されながらも助けを求められれば拒めない性格が、自分の生命をすり減らすことになったようです。
度を越した吝嗇家の両親とは絶縁状態だったが、母親が危篤だという知らせに自らの闇と向き合うことに。
かつて命を救った少年の贈りものが素敵だった。
最後の「神々の宴」では、拡張を続けるコンスル帝国の第四皇子テリオスの物語だ。
隣国ヴィテス王国を攻略する軍隊の大将としての出陣だったが、十四歳の皇子の言葉には誰も耳も傾けずにヴィテス侵略が進められていく。
テリオスが神々の宴に同席したことで得た者は何だったか、ヴィテスの運命と共に語られます。
それぞれ時代も趣も違う短編でしたがオーリエラントの世界を楽しめました。
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ただ一滴の鮮緑
チャファの葛藤に惹かれる
神々の宴
少年の背骨の中心に柱となる
この言葉がとても好き。
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セリアス/運命女神の指/ジャッカル/
ただ一滴の鮮緑/神々の宴
魔導師 少しばかり不思議な能力を使える人たち
能力ゆえに認められたり迫害されたり利用されたり
皆が安心して暮らせるといいのだけれど。
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短編よりも長編が好きだ。
短編でもそれぞれの話がどこかしらで繋がっているのは興味深いが、本作はどうだろう。オーリエラントの物語としては繋がっているけれど。
それなりに面白い内容だけれど途中で興味が薄れてしまって遅々として読み進められなかった。
一番面白かったのは、表題にもある『神々の宴』。オーリエラントの話で実際に神々が出てきたのは初めてでは?
魔導士の中では紐結びの魔導士リクエンシスが好きだが、オーリエラントの神々がエンスに似ているような気がするのは私だけだろうか。お気に入りだからかも。
乾石智子のあとがきも面白かった笑
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なんだか懐かしい名前が出てきて、そんな人もいたよなぁなんて思いながら読みました。
3人の機織り話は良いですね。
後は、最後の人質となる王子の話がすきだったな。人を癒すのに自分の命を使っちゃう女性も。
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「オーリエラントの魔道師」シリーズ。
“シリーズ”というか、“サーガ”といった感があるこの乾石ワールド。しっかりと創られた壮大な世界観が魅力です。(巻末の年表で、それぞれの作品の時系列がわかるのも良いですね)
さて、本書は市井に生きる魔導師たちの姿を描く短編集。五話が収録されています。
この世界の魔道師たちは、それぞれの特性を活かした魔法を使うのですが、ある時は職人のように重宝されたり、ある時はその力を疎まれていわれなき迫害を受けたりすることもあります。
今回は、オーリエラントの神々の力とリンクした魔法を使う魔導師が登場するのが特徴的。
例えば「運命女神(リトン)の指」の三人の魔道師はそれぞれ分担作業で機織りをする際に、運命の女神・リトンの“指”となって、未来が織り込まれたタペストリーを創り上げますし、「ただ一滴の鮮緑」の生命の魔導師・チャファは、冥府の神・イルモアとリンクして、瀕死の人を“冥府”から連れ戻す力を持ちます。
で、チャファの場合、人の生命を助けるたびに、自身が老いてしまうので、本来は若いのに人助けをし過ぎてヨボヨボになってしまうのが切ないです。
そんなチャファの側に、以前彼女に命を助けられた青年・モールモーがずっと付き添っているのが救いでした。
そして表題作「神々の宴」では、特に魔導師は登場しないのですが、そのものズバリ、“オーリエラントの神々”が登場して、心優しいコンスル帝国の皇子・テリオスに助言するという展開で、人間っぽい茶目っ気と神様としての雄大さを併せ持つ“オーリエラントの神”のキャラが魅力的でした。
この、神様のキャラ設定については、作者の乾石さんもあとがきで描かれていましたが、所謂ギリシャ神話やローマ神話の神々とはちょっと違う精神レベルにあるとのことで、その辺も面白いですね。
と、いうわけで、どの話も心温まる読後感で、〈オーリエラント〉の世界をたっぷり堪能させて頂きました~。
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【収録作品】セリアス/運命女神(リトン)の指/ジャッカル/ただ一滴の鮮緑/神々の宴
平穏な暮らしを望み、人として平等であることを願い、助けを必要としている人を助けようとする。そんなまっとうな魔導師たちの日々を描く。報われることも、報われないどころか狡猾な敵の扇動に乗った隣人たちに襲われそうになることもある。それでも己の矜持を守り、良き魔道師たらんとする彼らの姿のなんと尊いことか。
幸い、この短編集は心穏やかに読むことができる。
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オーリエラントの魔道師シリーズ
徹底した乾石ワールド!
表紙の絵は、タイトルの神々だったのか。ということに、読んだ後に気づいた。
それにしても魔道師って、生きていくの大変。
しかし、そこにこそドラマが生まれる。
生きることの喜び、苦しみがいつも痛いほど描かれている。
短編なので読みやすかったし、穏やかな気持ちで読み終えられる一冊でした。
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短編集5篇
コンスル帝国の600年頃から1170年頃のいろんな時代いろんな場所でのささやかで確かな魔導師の営み。人々をそっと助けながら目立たぬように生きる姿が美しい。
自分の命を削って人を助けるチャファの物語「ただ一滴の鮮緑」が特に好きだ。