これは多重解決なのか
2024/04/28 18:54
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投稿者:しゅんじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
メフィスト賞消化計画第3弾。ノベルズで呼んでるはずなんだが、まあ20年前だもんな。改めて読んでもぶっとんでいるな。中世イスラム圏を舞台にしただけでもアレだけど、スーフィズムの教義と事件解決がセットになっているのも凄いな。形而上と形而下の多重解決(というのかな?)。新作も楽しみ。
安易に勧められる作品ではないかな
2024/02/16 17:02
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投稿者:栄本勇人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「評価に困る」という感想が真っ先に浮かんでしまうが、納得感もあり、楽しく読むことが出来た。名作復刊の流れがこのまま続いてほしい。
イスラム×ミステリー
2024/01/19 23:28
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投稿者:ミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
私にとって当たり外れの大きいメフィスト賞受賞作品。
舞台は12世紀の中東。
イスラム神秘主義修行者を描いた物語なのですが、そもそもイスラム世界に明るい日本人なんているのだろうか?
これを題材に持ってくる辺り、さすがメフィスト賞って感じはしますが・・・
イスラム知識皆無でも問題なく読めます、というレビューは散見されますが、それにしては専門用語が説明もなく頻繁に登場しますし、説明されていたとしてもよく意味がわからないものが多いし・・・
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ミステリであって幻想小説でもある、しかしどちらでもない中間の……といった雰囲気で今までに読んだことの無いタイプの小説だった。
あらすじをまとめることは出来るが、無意味な気がしてならない。前情報は入れず、何も考えずにあるがまま読んで欲しいな、と思った。
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物語は十二世紀の中東。聖者たちの伝記録編纂を志す詩人のファリードが語り手となる。伝説の聖者の教派であるウワイス派に繋がる男を訪ねる。その男が語ったのはアリーという語り手と同じ名前の修行者の物語。
その物語は、アリーが修行者だけが住う山の閉ざされた穹盧に赴き、遭遇した連続殺人の物語であった。
イスラム教の神秘主義をモチーフに描かれている作品ではあるが,イスラム教や神秘主義などを知らなくても、作中で解説してくれるので理解できる。また、修行中に起きた殺人事件の解決が中心の話にはなっているが、この殺人自体も修行の一環としてアリーが紡ぎ出した物語にすぎないのではないか、とファリードが結論づけているのも面白かった。さらには、最後のファリードが、これらの物語と思しき物語はファリードのために紡がれた物語ではあったが、火蛾になれず、俗世に戻っていくしかない悲しさを受けつつも生きていくところも良かった。
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舞台設定などが特異なので、お話がどう進むのかが全く見えずに戸惑う。この五里霧中感を愉しむものですね。ミステリとしてはロジカルで緻密な推理が展開する。もちろん、お話的にはだからどうした的に扱われてしまうが。それも含めて最後はきちんと落とし前を付ける。ミステリファンとしては満足だけれど、逆にそれが不満という人もいそうな感じかな。
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第17回メフィスト賞受賞作として2000年に刊行。2001年版本格ミステリ・ベスト10第2位。当時、話題になっているのは気づいていたが、手に取ることはなかった。
著者の古泉迦十氏の第2作が出ないまま23年が経過し、本作『火蛾』が文庫化された。解説によると、2017年に電子書籍化されている。どうにか読み終えて思う。電子書籍で読んでいたら、最後まで読み通せなかったのではないか?
これは手強い…。読み始めてすぐに覚悟する。苦手な苦手な宗教ネタなのだから。イスラームにシーア派とスンニ派があることくらいは知っているが、神秘主義などもちろん知らない。文章は平易だが、すっと頭に入ってくるかは別問題だ。
かなりざっくり言うと、師に従い修業の旅に出た行者が、殺人事件に遭遇する話である。現場の不可解さに一抹の本格らしさを感じるものの、正直地味。時代設定は西暦1100年代後半らしいので、そもそも本格という概念が存在しないのだが。
ハウダニットとしてはパッとしない。フーダニットとしては意味がない(内容を素直に受け取るなら)。ホワイダニットとして価値を見出せるかどうか。本ミス第2位なのだから業界人受けはよかったのだろうが、一般向け娯楽作品とは対極にある。
身も蓋もない言い方をすると、これは「夢オチ」の一種だ。一読者に過ぎない自分が、信仰心が薄い人間であることを差し引いても。これほどまでにイスラームに造詣が深い古泉迦十氏。信仰心の持ち主でなければ、こんな作品は書けないはずだ。
本作に描かれた信仰の究極形の凄まじさは、一読に値するだろう。世俗に塗れた我々はもちろん、メッカへの巡礼者も、カトリックもプロテスタントも、あらゆる宗教の信者たちも、このような境地に達することは決してないのだから。
古泉迦十氏の第2作が、近々星海社より刊行されるそうである。また宗教を背景にした作品なのだろうか。手を出すべきかどうか悩ましい。
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まさかの文庫化。
23年前だそうです、ノベルス。それが今さら文庫化。ニュース見て思わず叫んだよね。
この話、どうジャンルわけしたらいいのかが分からないんだよな。ミステリではあると思う。本格かと言われたら首を傾げるけど、新本格ではあるかもしれない。
イスラム神秘主義の行者が巡礼の途中で聖者に会い、導かれるまま《山》へ向かう。そこで起こる殺人。
実際に殺人が起こっていたのかどうかも疑わしい。起こってなかったのかね。すべて妄想のなかのことなのか。妄想、幻覚内でのことに合理的な説明を求めてもねぇ、って。
イスラム教に詳しくなくても、話の邪魔にならない程度に解説は入っているのでまったくチンプンカンプンになるってことはないです。書かれていることが本当にイスラムの教義というか、神秘主義の目指すところが正しく表わされているかどうかは分からない。けど、言わんとしていることは分かりやすく説明されていると思います。
スーフィーは創造されない、っとこが今改めて思うとよく分かってないかな?
これを読んだ当時にはもちろん知らなかったんだけど、あれね、山の翁についても言及されてたんだねぇ。イスラム系の話をするとき、避けてとおれないんかね、じぃじの存在は。
ただね、この話の本筋というか、ウワイス派の求めるところを読んだあとだと、こうして言葉にして文章を残すことに抵抗ができるんだよなぁ。
あとがきはなし。解説は佳多山さん。古泉迦十、二作目を出すらしいよ。
用語の覚書。
・イスラーム
預言者ムハンマドを開祖とする教え。支流が多くある。
・シーア宗
ムハンマドの後継者たる教皇(カリフ)の正統性をめぐりうまれた。
ムハンマドの従弟であり女婿のアリー・ブン・アビー・ターレブとその子孫のみを、イスラームの教えを伝える正統な指導者(イマーム)として認めている。
イマームにたいする解釈のちがいから多くの分派へ枝分かれした。
・スンナ宗
シーア宗にたいしてほかのムスリムたちが、預言者の教えをもとに緻密な法体系(シャリーア)を築き上げて現実社会への実践をこころみた教派。
・イスラーム神秘主義、スーフィズム
スンナ宗の形骸さに不審を覚え、不可視次元に存在する神の領域への直接到達、《内面への道》にこそ絶対帰依(イスラーム)の真の在り方があるという考え。
・スーフィー
イスラーム神秘主義者。
徹底的な禁欲主義と激しい自己修練のすえに自我の滅却と神との逢遇を追求し、神との合一をはかる人々。
・聖者(ワリー)
優れたスーフィー。
・導師(ピール)
スーフィズムにおいて不可欠な存在。
教えは導師から弟子へと伝承される。
弟子は導師へ絶対的な忠誠を誓う。
・神秘階梯(マカーマート)
行者の道しるべ。至聖に通ずる唯一の道。
第一階梯《回心(タウバ)》己の罪を認め、悔い改め、真なる道(タリーカ)を歩むことを誓う
第二階梯《遵法(ワラア)》聖法を肉体、精神に刻んで厳守し、実践する
第三階梯《隠遁(ハル��)》ひとり修行に専心する
第四階梯《清貧(ファクル)》富への執着を棄て、神以外への欲求(リヤー)を断絶する
第五階梯《心との戦い(ムジャーハダ)》いっさいの我欲(ナフス)を滅却する
第六階梯《神への絶対信頼(タワックル)》克己のすえすべてを神にゆだね、満足(リダー)をえる
そうして至上の第七階梯《境地(ハール)》に至る
・巡礼(ハッジ)
決められた時期決められた作法でおこなわれる、カーバ神殿への参詣
・巡礼(ウムラ)
任意の時期に個人的に行う巡礼
・《夜の旅(イスラー)》
預言者ムハンマドの天界飛行、奇蹟の名。
・奇蹟(ムウジザ)
神の恩寵。預言者が引き起こす? 身に起こる?
神の意志《天命(カダル)》に起因する。
・奇蹟(カラーマ)
聖者が引き起こす? 身に起こる?
神の意志《天命(カダル)》に起因する。
・ズィクル
スーフィーの代表的な行。連唱の行。神の名や聖句を唱え続ける修行。
・《神の絶対唯一性》
タウヒード。イスラームにおける至上命題。すべては神の創造のもと。神に並ぶものはない。
・《受肉(フルール)》
キリスト者の教え。預言者イエス(イーサー)に対する最大の冒涜的解釈。
・ホセイン・マンスール・ハッラージ
“我は神なり(アナー・アル・ハック)”を叫び火あぶりにされた神秘家。
自我の消滅による神人合一がゆえの言葉ととるもの、受肉説ととるもの、解釈は様々。
・キブラ
メッカの方角。
・シーア宗ニザール派
暗殺教団とまで呼ばれた教派。
シーア宗イスマーイール派の一分派。
開祖は《山の長老》ハサン・サッバーフ。
ちからを持つセルジューク王国に対し暗殺という手段で対抗した。
異端者の暗殺が成功すれば天国での生活が約束される、と説いた。イスラームの聖戦の教えに准じたもの。
一説によれば、刺客たちに大麻(ハシーシュ)を与えて洗脳を施していたとか。
・ハシーシーユーン
大麻を喫う者。ニザール派に対する蔑称。
・シーア宗イスマーイール派
第六代イマームの息子イスマーイール(廃嫡され夭死した)こそ真の第七代イマームであり、彼は死んだのではなくガイバ(神隠れ)したのだと主張する教派。
・ウワイス派
特定の導師を持たず、亡き聖者や預言者に直接教えを承ける教派。
・ウワイス・カラニー
伝説的な聖者。その出現を予言されていた。
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イスラム教についての知識が全然ないので、読む前から不安はあったものの、この話に必要な部分の知識はちゃんと教えてくれるのでわかりにくいとか難しいとかあまり思うことなく、楽しく読むことができた。
もっと小難しい文章なのかと思ってたけど、文章自体も読みやすかった。
ミステリ…ではあるけど本格ではないし…なんて言ったらいいんだこれ…という感じがあって、メフィスト賞受賞ということに納得した。
いろいろあって最後に『ウワイスは、きっと、死んでもいない人間の教えなど聴く気になれなかったのだ』というところにもっていくのがとても良かった。
火蛾というタイトルも、初めてみたときはなんだこれ?と思ったけど、最高のタイトルでした。
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大麻じゃ幻覚は見れないのだが…
インドハシーシュあたりの超高濃度THCが含まれるとまた違ってくるのだろうか
聖典に着いた血に興奮を覚える、ってそういう禁忌的な淫靡さは理解できるなあ
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『アラビアの夜の種族』ばりのエキゾチックで素敵な雰囲気を醸しながら物語を語りはじめ、しかし人がしっかり殺されて犯人は誰だ?みたいな話をはじめるのでちょっと笑ってしまう。
信仰とはなにかという問いに対して示される「言語の届かぬもの」というヒントが、やがては「本格ミステリ」自体をも解体していく。なぜ犯人は見つけられねばならぬのか、なぜ理路整然とした謎解きが必要とされるのか、なぜ人は殺されてはいけないのか。そういった根源的な問いを詰めていくとやがて「そもそも誰が殺されたのか? 殺されるとはどういうことなのか?」という問いに行き着く。
新本格という枠組みを使いながら、読者を、信仰のうちがわ、言語と非言語の狭間へ連れていく秀作。
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まさかの文庫化ですか。
ノベルズの時に読みましたよ。
再読しましたけど、はやり圧巻ですね。
ただ私みたいなイスラム教素人には少々難しいです。
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ずーっと読みたかった『火我』、まさかの文庫化!
本屋さんで見つけた時に、びっくりしすぎてリアルに声が漏れちゃいました
イスラム教と殺人事件の融合
読みながら、こんな世界観に密室殺人とか登場させて大丈夫なの?なんて思っていたのだけど、そこは流石の一言
アリーの過去の宗教との決別と絡めて、何の違和感もない仕上がりになってました
基本的に作中で自作解説をし過ぎる作品て苦手なんですけど、この本の「第七章・詩人ファリード」はめちゃくちゃありがたかったです
自分の脳にはもう深い考察をするだけの力は残っていなかったもので……
冒頭から神秘的な描写や文体でお話が進んでいく中、第三章の冒頭で
「男の語る物語はいよいよその内容からして、夢がたりめいてきた。いかに神秘主義的な聖者譚とはいえ、にわかに受け容れがたい話である」
なんて書かれていてちょっとフフッとなってしまった
同じこと考えながら読んでたよ!って(笑)
ちょっと幻想的に過ぎるかな……と思ってたタイミングでのまさにそれ!な文章で、その後を落ち着いた気持ちで読み切る事が出来ました
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中学のとき1回手に取った。世界史Bをやる前だったからマジでイスラム教についての知識が無くて、ちんぷんかんぷんのまま途中で読むのを辞めた記憶がある。諦めずに読んでたら、世界史の点数もう少し伸びたのだろうか。
第17回メフィスト賞受賞作とだけあって、メフィスト賞の始祖、京極夏彦の作品を意識したような(特に「鉄鼠の檻」)、宗教とミステリの幸福なブレンド。始まり方、流れ、オチ、全部綺麗にまとまってて好きでした。大地くんとかにオススメ。
余談だけど講談社文庫って文字がデカイからか、ケレン味溢れる内容が特に映えるんだよな、スピリチュアル教義書ぽいからかな。
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専門的なイスラム教知識が大量に並んでいるにもかかわらず、文章が異常に読みやすい
語り手アリーが見つめる蝋燭のゆらめき、イスラム世界の風をまざまざと感じられた